『え?みんな弱すぎない?』現代では俺の魔法は古代魔法で最強でした!100年前の勇者パーティーの魔法使いがまた世界を救う

さかいおさむ

文字の大きさ
54 / 77
第三章 エルフの森

54

しおりを挟む
 ボアモルチの西の山
 アルカンタラとミルリーフはエルフの森に向け、山越えをしていた。

「ふぅ、すごい森ね……もはやジャングルだわ」
「はぁはぁはぁ……ああ、相変わらずキツい山だ……」肩で息をするアルカンタラ。

 二人は木々がうっそうと生い茂る、あたり一面、緑に覆われた山中を西へと進む。

 ミルリーフは初めての、アルカンタラにとっては100年ぶり2度目のエルフの森に行くためには避けて通れない山だ。


『ガザガサ……』
「はぁ、また来たか……」

 二人をめがけ、茂みからヘビが飛び出す。人な腕ほどの太さのある立派なヘビだ。もうこの山に来て何度目かの光景だ。
 アルカンタラはそのヘビを指差し、細いビームのようにヘビを撃ち抜く。

「いいわね、小さい衝撃波も出せるのね」ミルリーフが言う。
「ああ、ヘビが出るたびに森を吹き飛ばしてたら、山の形が変わっちまうよ」

 モンスターに慣れた2人にとって、多少大きいとはいえ、普通のヘビは飛びまわるハエと何ら変わらなかった。

「まてよ? おいミルリーフ! 今度からヘビはお前がおっぱらえ」
「ええ? いいけど……どうして?」
 ニヤリと笑うアルカンタラにミルリーフは首をかしげる。

「ただし、魔法は禁止だ。使っているのは剣だけだ」
 ミルリーフの腰に下げた剣を指さす。

「剣だけ……? なるほど、剣の修行ってわけね! 望むところよ」

 ミルリーフはポピーの父親から譲り受けた剣を抜く。
 幼い頃、勇者の家系のミルリーフは剣の稽古を受けていた。しかし、実戦で使うとなるとまだ心配な技術だ。

「さあ、どっからでもかかってきなさい!」

『ガザガサ……』
「ん! 来たわねぇ! そりゃ!」
 襲いかかるヘビを輪切りにする。

「お、いいぞ! その調子だ。フフ、これで歩くのがラクになったぜ……」
「……なんか私、利用されてるだけのような気が……」

 ミルリーフが先導し、山を歩く二人。

「懐かしいな、ソーサーやアゼリともこの道を歩いたんだな……」
 100年前、仲間たちと歩いたこの道を、今は子孫のミルリーフと歩いてる不思議さを感じるアルカンタラだった。

「それで……エルフの森はあとどれぐらいで着くのよ? アルカンタラは昔行ったことあるんでしょ?」
 ミルリーフはヘビを斬りながらアルカンタラに視線をやる。

「ああ、もう少しじゃねぇかな? スゲェ分かりづらい道でな、前に通った時は迷いに迷ったから、次に来る時のために目印を残しておいたんだ」

「へぇー、目印ね。それは分かりやすくていいわね。どんな目印なの?」

「ふふふ、それがな、びっくりするくらい綺麗な石を拾ってな、それを目印に置いたんだよ。一目見れば分かると思うんだけどなぁ? おかしいな?」
 アルカンタラは足元をチラチラと眺める。

「い、石……?」
 ミルリーフは顔をしかめる。

「ああ、綺麗な石だぞ! たしかアゼリがその辺の道端で見つけてな、それをソーサーがエルフの森の入り口に置いておこうって! 『ガハハ、そうすれば次くる時も分かるだろ?』ってな。賢いんだぜ! ソーサーは」
 アルカンタラは得意げな笑みを浮かべる。

「……ち、ちなみにソレはどれくらいの大きさの石なの……?」
 ミルリーフの脳裏に嫌な予感がよぎる。

「んー、こんくらいだな? 手のひらに乗るくらいの――」
「アンタねぇ! バッカじゃないの!? 100年前よ!? そんな石ころが今も残ってるわけないでしょうがッ!」
 アルカンタラの話の途中でミルリーフは怒鳴りつける。

「そ、そんな……俺たちの思い出の石なのに……」

「もう! なによ、アルカンタラもおじいちゃん達もみんなバカなんじゃないの……? アンタたち、そんなパーティーでよく魔王を倒せたわね……」
 ミルリーフは頭を抱える。『道は分かるから安心しろよ!』と強気だったアルカンタラを信じた自分が馬鹿だった……と。

『ガザガサ』

「ミ、ミルリーフ……ヘビが来た――来ましたよー……?」気まずそうにボソボソとアルカンタラが言う。
「もう! うっさいわね!」
 ミルリーフがイラつきながら茂みに向かって剣を振り回す。

「ぎゃあぁああ! やめてぇえ!」
 その時、剣を刺した茂みから声が響く。

「え!? な、なによ? ヘビが喋ったの!?」
 突然の叫び声にミルリーフは目を丸くする。
「いや、そんな訳ねぇだろ……!?」

 謎の声に、二人は恐る恐る茂みを覗き込む。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

処理中です...