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第三章 エルフの森

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 エルフの戦士たちに捕獲され、アルカンタラとミルリーフは牢屋に入れられる。
 緑豊かな森の中心に作られた、頑丈な檻だ。
 どこか遠くから見張っているのかもしれないが、今のところ辺りには人影は無い。

「どうなってんのよ? アンタ、エルフと顔なじみじゃないの!?」

「……うるせぇ! あの女戦士はガキだろ? 見た感じせいぜい5.60才だ。俺がここに来たのは100年前だからな」

「もう! どうするのよ? 私たち死刑だって言われたわよ? いやだ……こんなことで死ぬなんて……」
 目に涙を浮かべ、アルカンタラに当たり散らすミルリーフ。

「まあ落ち着け。とりあえずこの檻をぶっ壊すことなんて楽勝だよ。脱獄すっか!」
 アルカンタラは檻をコンコンと叩く。太い木を組み合わせ作られた檻だが、古代魔法を使えば壊すことは訳ないだろう。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。確かにアンタの魔法なら脱出はできるかもしれないけど……それはまずいんじゃないの?」

「あ?」

「私たちはエルフから宝玉を貰わなくちゃいけないのよ? きっとエルフたちにとっても宝物なんでしょ? それなのに檻を壊して脱走してなんて揉めたら貰える物も貰えないわよ?」

「……ん、まあそうだな」アルカンタラは顔をしかめる。
「とりあえず今は誰か話の通じるエルフが来るのを待ちましょう。アルカンタラを知ってるエルフもいるって言ってたじゃない?」

「あーいるにはいるんだが……少しめんどくさい奴なんだ……」歯切れの悪いアルカンタラ。

「めんどくさくてもその人に賭けるしかないでしょ! でも本当にヤバくなった時は脱獄よ!」

 ◇

 しばらくして、檻の外にいくつもの足音が響く。

「お? 俺たちの処刑道具でも持ってきたのかな?」
「バカなこと言ってんじゃないわよ!」

 数名のゴツいエルフの戦士たち。その中心にはヒラヒラとした衣服をまとい、頭には木で作られた王冠を載せている。
 圧倒的なオーラを放つ美しい女エルフだった。

「お、噂をすれば……」アルカンタラはその女に目をやる。
「……ほ、本当にアルカンタラなのか?」
 アルカンタラを見た女エルフの顔が硬直する。

「え? なになに? アンタあの綺麗なエルフと知り合いなの……?」
 ミルリーフはアルカンタラと女エルフを交互に目をやる。

 今にも泣き出しそうにアルカンタラに駆け寄る女エルフ。周りの男たちはそれを制する。
「姫! 危険です。あまり近づかないでください!」

「……ひ、姫!?」ミルリーフは目をぱちくりさせる。

「うぅ……信じられん。愛の力は時空を越えるのか!?」姫と呼ばれる女エルフは涙を流しながら近づく。

「……あ、愛?」
 訳が分からず首をかしげるミルリーフ。アルカンタラはめんどくさそうにうつむく。

「アルカンタラは……ワタクシと結婚するために時を超えて来たのだな!? アルカン――――」

『ガッ!』
 アルカンタラに抱きつこうと飛びかかる姫、しかし、当然二人の間にある太い檻にぶつかる。
 姫は「ウゲッ」とあううめき声をあげ、檻の前に倒れ込む。

「ひ、姫!! クソ、侵入者め! 姫様になんてことを!」「許せなん! 殺すぞ!」
 殺気立つエルフの戦士たち。

「俺に言うなよ……エルフはバカしかいねぇのか……?」
 呆れた顔のアルカンタラ。

「……ど、どうなってるのよ……? 結婚? アルカンタラが? エルフの姫と……?」

 ミルリーフはもう危機感は感じず、突然のことに頭がこんがらがっていた。

「うぅ……アルカン……タラ……嬉しい……ぞ……」
 恍惚な表情で気絶する姫だった。
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