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エージェント契約を求めたカトは、自分の事しか考えていない

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 「ところでエージェント契約とか、ネットニュースに出ていました。メジャーリーグのフリコさんや、トルネードさん級をイメージしているのでしょうか」

 一般客席ももうまばらになっていた。オレの力のなさで退屈したのだろうか。当然のことながら、オレのトークにアカやマツのような人を惹き付けるものは皆無だ。

 「カトが提案したとか。力がなければ契約しないし、晩年の日本人メジャーリーガーのように、契約球団がなければ、引退に追い込まれる」

 バシッバシッバンバンバシッバンバン!!

 もう拍子は片付けられたので、さっきの休憩時間に、色んなバリエーションの拍子の音を録音しておいた。その都度小型録音機をマイクの前で作動させた。


 「そして結局、ギャラの数%は、代理人に持っていかれる。代理人は、取り分を多くしようと、会社に吹っ掛ける」

 バシッ!!

 「会社は、芸人を切りやすくなる」 

 バシッバシッバンバン!!

 うしろを見ると、200人ぐらいの芸人が集まっていた。アカやマツの姿もあった。

 その時裁判官席のオクが空中へ飛んだ。彼は、ニヤニヤしながら天井付近でオレにウインクした。

 もう時間ですという合図だ。

 オレは、まとめに入った。ここからが正念場だ。

 𠮷本騒動(つちよしほんそうどう)でバラバラになった芸人たちを、ひとつにできるか、オレの命が果ててしまうかの、正念場だった。

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