ヘルメースの遺児

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 1階に降り、取り調べ室に向かおうとすると廊下で婦警が3人何事か話し合っていた。俺が3人に近づくと1人がこちらに気づいた。こちらに視線を向けた婦警に合わせるように他の2人もこちらを向いた。俺が
「殺人だって?」
 と切り出すと3人は表情を曇らせた。そして年上の婦警が代表するかのように話しだす。
「小林さん・・まさか・・あなたが担当するんですか?」
 その表情から
(よりによって・・)
 という半ば諦めにも似た気持ちを窺い知ることができた。
(・・嫌われたものだ)
 と俺は心の中でため息をついた。
「係長と黒崎さん、お二人からのご指名でね?給料泥棒させるわけにはいかないそうだ」
 俺の言い訳がましい物言いに、3人の婦警は顔を見合わせ同時にため息をつく。そしてやはり年上の婦警が口を開く。
「・・では聴き取りした内容を話します」
 俺は間髪を入れず
「要点だけでいい・・」
 と釘を刺した。3人はまたしても顔を見合わせると、年上の婦警が話し出す。
「では要点だけ。3人の女の子達がこの近くのライブハウスで地下アイドルのライブの後に、サインをもらおうと楽屋に行った所、楽屋で女の人の死体を発見したそうです」
 それだけを聞くと、俺は疑問が浮かび、解決と確認の意味で尋ねた。
「楽屋に入るには本人かスタッフの許可がいるだろう?」
 さっきとは別の婦警が口を開く。
「・・それが、ライブの後『サインを貰おう』と3人の中の1人が言いだしてスタッフの許可無く楽屋の方に忍び込んで行ったそうです」
 俺はすぐに
「例え忍び込めたとしても、楽屋の周りや廊下にはスタッフがうろついてるはずだ!見つかって追い出されるのが関の山だと思うが?」
 当然の疑問を口にするも、今まで黙っていた婦警が
「それが・・スタッフが誰もいなかったそうです。誰にも見つかることなく楽屋まで行くことができたと言ってます」
 俺は頭をボリボリと掻くと
「・・現場保存はどうなってる?」
 年上の婦警に聞くと
「警官が2名、既に向かっています」
 (ともかく現場にいかないとな)
 俺が考えていると、年上の婦警が
「3人の女の子達に話を聴かないんですか?」
「連絡先は聞いてるんですよね?ひとまず、現場に行くよ」
 俺は、そう答えると傍らの片倉を振り返り
「さて・・俺と来るのか?」
 尋ねると片倉は
「当然ですよ!色々と勉強させていただきます!」
 (コイツの物言い、時々引っかかるんだよな・・)
 俺は駐車場に向かって歩き出し、ふと気がついて振り返りがてら婦警達に
「女の子達は帰してやってよ!色々緊張してるだろうから。後で話を聴くかもしれないとも伝えといて」
 俺と片倉は駐車場に向かって行った。
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