7 / 7
1-7
しおりを挟む
「どの部屋がいい?」
「ここは?」
「おっけー」
正直なところ、部屋などどうでもいい。彼と過ごせる時間と場所があるならばそれでいい。
「今日は泊まり?」
「いいや、帰るよ」
「泊まろうよ」
「嫌だ」
彼が泊まりを嫌うことを知りつつ、毎回同じことを聞いてしまう。
「私、洗面所見て来るね」
「おう」
そう言って、上着を脱ぐ彼を横目に私は洗面所の確認をした。が、特に洗面所に興味があるわけでもないのだが。
「このホテル、お風呂もトイレも綺麗だった・・・よ」
「由佳」
部屋に戻るやいなや、彼、私を抱きしめた。それに応えるように彼の背中に手を回す。
お互い、やはり、好きとは言わない。
「由佳、キス」
「えっ?」
エスカレーターでは軽くできたものが、この場所になって尻込みしてしまうのが私の癖である。と、いうのも、彼の声が明らかに外でいる時とは違うことが分かるから。
ほんの少し唇を合わせると、彼が私の唇をなぞり、口を開けるように促した。
「駄目駄目、慧、お風呂入るんでしょ?」
「いいじゃん」
「まだ駄目だって」
少し不満げな顔をした彼は、私の体からそっと離れた。
いつか、彼があの声で「好き」と囁きながら彼女を抱く日はくる。「彼女」になれなかったことよりも、彼がどんなふうに愛する人を抱くのか、そのことが時折頭を巡る。
今は静かに彼の愛が私に向くことを願うしかない。
「ここは?」
「おっけー」
正直なところ、部屋などどうでもいい。彼と過ごせる時間と場所があるならばそれでいい。
「今日は泊まり?」
「いいや、帰るよ」
「泊まろうよ」
「嫌だ」
彼が泊まりを嫌うことを知りつつ、毎回同じことを聞いてしまう。
「私、洗面所見て来るね」
「おう」
そう言って、上着を脱ぐ彼を横目に私は洗面所の確認をした。が、特に洗面所に興味があるわけでもないのだが。
「このホテル、お風呂もトイレも綺麗だった・・・よ」
「由佳」
部屋に戻るやいなや、彼、私を抱きしめた。それに応えるように彼の背中に手を回す。
お互い、やはり、好きとは言わない。
「由佳、キス」
「えっ?」
エスカレーターでは軽くできたものが、この場所になって尻込みしてしまうのが私の癖である。と、いうのも、彼の声が明らかに外でいる時とは違うことが分かるから。
ほんの少し唇を合わせると、彼が私の唇をなぞり、口を開けるように促した。
「駄目駄目、慧、お風呂入るんでしょ?」
「いいじゃん」
「まだ駄目だって」
少し不満げな顔をした彼は、私の体からそっと離れた。
いつか、彼があの声で「好き」と囁きながら彼女を抱く日はくる。「彼女」になれなかったことよりも、彼がどんなふうに愛する人を抱くのか、そのことが時折頭を巡る。
今は静かに彼の愛が私に向くことを願うしかない。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる