龍の花嫁

アマネ

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準備完了

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そうして1時間半なんて、あっという間に過ぎ次は用意の時間だ。


「ドレスですが…何にしましょうかね?」

「ハルカ様の可愛らしさを際立たせるものは…」


会話はいつものメイド2人のもので、カナタはというと挨拶やマナー礼儀などの暗記担当である。


「はい、次はこれを読んで下さいね!」

「は、はい…」

「ああ、その前に着付けを先にしましょう」

「ところでハルカ様…コルセットってつけたことあります…?」

「こるせっと?」

「…そのご様子ではご存知ないようですね」

「じゃあ頑張ってもらいましょ!」


何か頑張らなければならないことがあるのだろうか、とハルカは思いつつ嫌と言うことも出来ないので乾いた笑いを返した。



————————



「うっ…うー苦しい…」

「もう…少し…でっす!」


これでもかというくらいウエストを絞られる。
ハルカの人生では経験したことのないものだったし、もうしたくないと思った。


「よし…これくらいですね!」


メイドの1人が満足気に息をつく。
もう1人も頷いている。


「ハルカ様…大丈夫ですか?」


唯一ハルカを気遣うのはカナタだ。


「大丈夫です…」

「そうですか…じゃあ…暗記、できますね」


にっこりと笑顔でいうカナタに鬼を見る。
ハルカは逆らえずに、暗記を頑張るしかないのだった。

化粧をしているときも延々と勉強をしていると、あっという間に時間が過ぎていく。

気がついたときにはハルカの用意は出来上がっていた。


「…終わりましたよ!さ、立ってみてください」

「は、はい…」


ゆっくりと立ち上がる。
ヒールが不慣れなハルカに低めのものを用意してくれていたので歩きやすそうだ。


「まあ…!ハルカ様…なんてお可愛らしい…」

「本当に…きっと龍の君もお喜びになりますよ!」


ハルカは照れながらもお礼を言った。
それを見ていたカナタは頷く。


「見た目は完璧に令嬢ですね…あとは…今、ここでカーテシーをしてみて下さい」


返事をして、少しぎこちないがぐらついたりすることも、震えることもなく礼をする。


「いいですね。では、挨拶を述べて下さい」


これも教えられた通りにする。
確認したカナタは非常に満足そうだった。


「大丈夫でしょう!では龍の君をお呼びします」


扉を開けると、ヒスイは既に廊下にいたらしい。
すぐに入室をする。
そしてハルカを見てほんのり頬を染めながら微笑んだ。


「ハルカ…とても似合っている。いつも可愛らしいが、更に可愛らしい。知らなかったハルカの魅力をひとつ、知ることが出来たな」


などと言うものだから、ハルカは何も言えずに俯いてしまった。
こっそりヒスイを覗き見れば正装で決めている姿が、とても凛々しく見えた。
確かに、普段では分からない魅力を知ることが出来たのだ。


「あの…とってもかっこいいよ」


ヒスイの方もそんなハルカの顔を見てしまい、皇帝なんてどうでもいいから部屋でハルカとゆっくり過ごしたい…と心の底から思ったのだった。

しかし、これからもそんな時間を作るためには今から皇帝の元へと行かねばならない。

もう一頑張り、とヒスイは一人喝を入れ、慣れない格好のハルカをエスコートして報告に向かった。
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