『シンデレラ、断罪されに来ました』

ALMA

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シンデレラ、断罪されに来ました

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 「この令嬢シンデレラ、ついに悪役として覚醒いたしました!」

 朝の食堂に響きわたる第一声。召使いは皿を落とし、継母はスプーンを止め、義姉たちは同時に固まった。

「……どうしたの、朝から」

「わたくし、今日から“悪役令嬢ロール”で生きると決めましたの!」

 シンデレラは拳を握って高らかに宣言する。

「王子の恋路を邪魔し、ヒロインに断罪され、舞踏会で華麗に散る予定ですわ!」

「えぇ……なんでそんな自爆前提……」

 義姉のアナスタシアがバターを塗りかけたパンを持ったまま、静かにため息をついた。

「また変な書物を読んだのね」

 シンデレラは目を輝かせていた。長年、灰まみれの地味なモブとして生きてきたが、いまこそ「物語的に映える存在」になる時が来たのだ。

 その夜。
 納屋の前で仁王立ちするシンデレラのもとに現れたのは、スーパーの袋を提げた丸眼鏡のおばちゃんだった。

「どちら様?」

「フェアリー・ゴッド・マザー……なんだけど、みんな“ゴドママ”って呼ぶわ。よろしく~」

「……安っぽい!」

「今日の魔法はSDGs仕様。素材は自前でお願いね」

 シンデレラは納屋から、やや萎びたカボチャと履き古したビーサンを持ってきた。
 ゴドママはそれを見ると、「まぁ、これでいっか」と適当にステッキを振った。

 するとカボチャは馬車っぽいオブジェに。ビーサンは、うっすら透明の「ガラスの靴風」になった。

「……本当に“それっぽい”だけだわね」

「そうそう。じゃ、23時59分までには帰ってきてね。魔法、まあたぶん保つと思うよ」

「何その設定!?」

 シンデレラは半分不安を抱えながら、それっぽい靴を履き、それっぽい馬車もどきに乗って城へ向かった。

 舞踏会会場に入った瞬間。
 金髪でチャラそうな雰囲気の王子が、なぜかダンスを中断してまっすぐ近づいてきた。

「やば、めっちゃキレイじゃん。名前、なんていうの?」

「シンデレラですわ」

「シンデレラ~~! いいじゃん、いいじゃん!」

 (やばい、めっちゃ食いつかれてる!)

 想定と違う展開に、シンデレラは心の中で悲鳴を上げた。
 これは悪役令嬢ムーブじゃない。
 このままでは“ヒロインルート”に突入してしまう――!

 焦ったシンデレラは、白いドレスをまとった令嬢、クラリッサのもとへ駆け寄った。
 いかにも正統派、瞳もきらきら、喋り方もやわらかい。見た目はヒロインそのものだ。

「お願いがあります! わたくしを……断罪してください!」

「はい?」

 クラリッサは目をぱちくりさせている。

「王子に気に入られてしまいましたが、これは筋違いです。あなたこそがヒロインですから、わたくしを“泥棒猫”とか“卑しい娘”とか、盛大にやってください!」

「ええと……つまり……叱ればよろしいのですわね?」

「はいっ!」

 クラリッサはこくりと頷き、ひと呼吸おいて──

「悪い子っ!!」

 ピシッと指を差して、にっこり笑う。

「……これで、断罪、されましたか?」

「……はい、多分、されました……」

 ゴーン……ゴーン……
 そのとき、城の塔の大時計が23時を告げた。

 右足にスースーした感触が走り、思わず下を見る。
 ――ビーサン。

(えっ!? 23時!? 59分までって言ってたよね!?)

 慌てて駆け出そうとしたその瞬間、ビーサンの片方がスポンと脱げて、コーンコーンと床を転がる。

「落としたよ」

 すぐ近くにいた王子が、それを拾った。

「このラバーの質感……親指の跡……土踏まずのカーブ……すり減り方……」

 ビーサンをじっと見つめる王子。

「……運命、きたわ」

「ちがう!!!!!!」


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