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第2部:黒薔薇の刻印
第16話:煉獄の扉
「ロゼノア! 今、戻った」
王宮に帰還したアルカディアスは、居並ぶ臣下たちを一顧だにせず、一直線に王妃のもとへ向かった。
黄金の瞳に映るのは、ただ一人。
彼は人目も憚らずロゼノアの腰を引き寄せると、食らいつくように唇を重ねた。
「ん……っ、ぁ……」
「黒幕の貴族は捕えた。これで、余計な心配は――」
言いかけたところで、アルカディアスの視線が――整列している家臣たちの一団へと向けられた。
その瞬間、彼の黄金の瞳が驚愕に見開かれる。
「――!?」
その視線の先にいたのは、死んだはずの男。近衛騎士団長ユリウス・ノヴァ。
(生きている、だと? ……聖女の癒しが、間に合ったか)
だが、王の勘が捉えたのは、そこではなかった。
ユリウスの視線は、王ではなく――ロゼノアに、絡みつくように注がれていた。
(……ほう?)
アルカディアスは、瞬時に理解した。
忠誠という皮の下に隠された、抑えきれない渇望と、ドロリとした嫉妬の炎を。
(……なるほど)
こいつは今、一人の「男」として、俺の妻に欲情している。
人一倍鋭い王の勘が、隠された真実を暴く。
アルカディアスは、隣に立つ妻の横顔を盗み見た。
その潤んだ瞳は、無意識にユリウスの視線に応えるように、熱く彼を見つめ返していたのだ。
(……ロゼノア、お前もか)
夫である自分の腕の中にいながら、他の男と視線で絡み合っている。
その事実は、王の矜持を最も残酷な形で逆撫でした。
胸の奥が焼けつくような屈辱に軋み、抑えきれない怒りが噴き上がった。
(俺のものに懸想するとは、あの堅物が……。そしてロゼノア、お前も……!)
最も愛する者からの裏切り――。
殺すのは容易い。だが、それではつまらない。
アルカディアスの脳裏に、もっと愉しく、残酷で、背徳的な考えが浮かんだ。
(面白い。……分からせてやるか、誰のものなのかを)
アルカディアスはユリウスに近づくと、その耳元に囁いた。
「ユリウス。無事だったのか」
「はっ――」
「ロゼノアを守った褒美をやろう。……今夜は俺たちの寝室の前で番をしろ。特別に聞かせてやる」
その命令を理解した瞬間、ユリウスの顔色が蒼白になった。
「……!」
「聞こえなかったか? 俺は妻をたっぷりと、朝まで愛でてやるつもりだ」
アルカディアスはロゼノアの方をチラリと見て、ユリウスにしか聞こえない声で命じた。
「誰にも邪魔をされたくない。お前が扉の真ん前で守れ。……中の音が、よーく聞こえるようにな」
それは、王が思いついた最高に嗜虐的で陰湿な余興。
懸想する女が、別の男に犯され、乱れる音を、一晩中聞かせ続けるという精神的な拷問。
ユリウスは拳を強く握りしめた。屈辱と絶望。
「……御意に」
血を吐くような声で、騎士は頭を垂れた。
*
その夜。
寝室の扉が閉ざされた。
だが、アルカディアスは扉を完全には閉めず、わずかな隙間を残したままにした。
そして、私を抱き上げると寝台へと連れていく。彼は上機嫌にシャツを脱ぎ捨て、私のドレスに手をかけた。
「……陛下。随分とご機嫌がよろしいようですね」
私が上目遣いに尋ねると、彼は黄金の瞳を細め、ニヤリと笑った。
「ああ。趣向がな……。今夜は最高の『スパイス』があるからな」
「スパイス?」
「すぐにわかる」
彼は意味深に扉の方を一瞥すると、私の唇を塞いだ。
「んっ……!」
「お前は俺に隠し事をするつもりか」
突然、荒々しくなり、乱暴にドレスの胸元が引き裂かれた。
ビリィッ! と布が裂ける音が響く。
「きゃあぁぁっ!」
「どうやら、お前にはお仕置きが必要なようだ」
露わになった肌に、彼が熱い舌を這わせる。首筋から鎖骨へ、そして胸の谷間へ。
彼の舌が這うたびに、私の口からは甘い声が漏れてしまう。
「あ……んんっ……」
「ふ……お前は、そそる……」
アルカディアスが覆い被さると、胸を両手で中央に寄せ、その頂を交互に舌で転がし始めた。
「あ……っ、んぅ……」
左の蕾を舌で弄ばれながら、反対側を親指でこねくり回される。そして、さらに空いている手が秘所へと這う。そこは、すでに情けないほど溢れていた。
「いやらしい体だ。もう、こんなになっている」
耳元で囁くアルカディアスの低音に、私はビクリと震えた。
「もっと、大きな声で啼け。外に聞こえるくらいな」
その言葉で――私は彼の言った「スパイス」の意味を理解してしまった。
顔から火が出るほどの羞恥に襲われ、扉の方を見る。
一枚隔てた向こうに、ユリウスがいる。彼に、この情事を聞かせるつもりなのだ。
「あ……っ、やっ、……ッ!」
「どうした? ……あいつに聞かれていると思うと、興奮するのか?」
アルカディアスは私の反応を見逃さなかった。
(私の気持ちに気づかれた――!?)
私は否定するように首を横に振るが、体は嘘をつけない。
恥ずかしい。聞かれたくない。
けれど、あの真面目な騎士に今の乱れた私を聞かれているという背徳感が、恐ろしいことにさらなる蜜を溢れさせていた。
「ち、違いま……そんなこと……っ」
「嘘をつくな。正直に言え。この体で、あの男を救ったのか?」
「――!!」
「俺に抱かれるための体で、俺以外の男に触れたのかと聞いているんだ!」
「――そ、そんなこと、してな……んっ」
アルカディアスの瞳が、独占欲で濁る。狂気を孕んだ、愛と殺意が紙一重になった金色の目。
「許さない! 許さない! お前は誰のものだ!?」
「……ッ」
「言えないのか? あいつの方がいいのか? もう、あの男に抱かれたのか――!?」
彼は濡れそぼった入り口に自身の剛直をあてがった。
そして、一気に最奥まで侵入してくる。
「あぐっ、あぁぁぁーーッ!!」
私はシーツを握りしめ、弓なりになって絶叫した。
羞恥で心は拒むのに、体は絡みつくように王を受け入れてしまう。
熱く、太い楔が、私の中を容赦なく抉る。
「くっ……こんなに吸いつきやがって……!」
アルカディアスが叫んだ。
寝台が激しく軋む。
肌が打ち付け合う音、生々しい水音、そして私たちの抑えきれない吐息が、扉の隙間から漏れていく。
(だめ、聞こえてしまう……ユリウスに、聞かれて……ッ)
「はあぁんッ……あっ……ぁぁ……!」
「いい声だ、ロゼノア。……聞こえていないかもしれんぞ? もっと大きな声で、お前の男に届けてやれ!」
王は意地悪く囁き、私を快楽と羞恥の煉獄へと突き落としていった。
幾度目かの激しい嵐が過ぎた後。
事果てたアルカディアスは、乱れた私の髪に指を絡め、耳元に口づけをした。
「愛している、ロゼノア。……お前を誰にも渡さない」
その言葉は、呪いのように甘く重い。
私は彼に抱きしめられながら、掠れた声で答えた。
「……陛下。私は、あなたのものです……」
*
一方、扉の外。
近衛騎士団長ユリウス・ノヴァにとって、そこは地獄だった。
ガッ――!!
彼は石壁に拳を叩きつけ、崩れ落ちそうになる身体を必死に支えていた。
「ぐ、ぅ……ッ!」
扉の向こうから聞こえる、愛しい人の喘ぐ声。睦み合う男と女の音。寝台の軋むリズム。
そして、最後に聞こえた甘い愛の言葉。
そのすべてが、鋭利な刃物となってユリウスの心臓を抉り、尊厳を切り刻む。
(……ロゼノア様。あぁ、ロゼノア様……)
元々秘めていた、主君の妻への清らかな恋心。
それが今、黒薔薇の力で蘇生された肉体の「渇き」と結びつき、制御不能になっていた。
胸にある黒薔薇の刻印が、ドクンドクンと脈打ち、主を欲する。死から蘇った魂が、彼女を求めて叫んでいる。
――奪いたい。
あの扉を蹴破り、あの男を引き剥がし、彼女を私のものにしたい。
その甘い声を、私だけに向けさせたい。
想像しないようにすればするほど、脳裏に鮮明に浮かぶ。
野獣のような王に組み敷かれ、乱されている彼女の姿が。
先刻触れた、あの陶酔の感触。柔らかく、甘い香り。自分のものを口で犯す彼女の淫らな顔。その極上の快楽。
それが今、アルカディアスの手によって蹂躙され、塗り変えられていく。
(ロゼノア様……ッ!)
ユリウスは唇を強く噛み締め、口の中に血の味を広げた。
理性だ。理性で抑えろ。
私は騎士だ。王の命令だ。ただの番犬だ。
だが、扉の向こうから聞こえるロゼノアの声が、一段と高く、甘くなる。
『……あっ、陛下ッ……だめ……あぁッ……』
『……そんな……陛下、すごい……!』
ビキッ、と乾いた音がした。
ユリウスが押し当てた拳の周囲、堅牢な壁に亀裂が入っていた。
嫉妬。絶望。劣情。そして、殺意にも似た欲求。
冷徹な氷の騎士の仮面の下で、ドロドロとした感情が溢れ出そうになっていた。
(許さない……許さない……!)
誰を? 王をか? それとも、こんな辱めを受けてなお、興奮している自分自身をか?
答えの出ない問いを抱えたまま、ユリウスは地獄の番犬として、彼女の声が枯れる朝まで、そこで立ち尽くすしかなかった。
王宮に帰還したアルカディアスは、居並ぶ臣下たちを一顧だにせず、一直線に王妃のもとへ向かった。
黄金の瞳に映るのは、ただ一人。
彼は人目も憚らずロゼノアの腰を引き寄せると、食らいつくように唇を重ねた。
「ん……っ、ぁ……」
「黒幕の貴族は捕えた。これで、余計な心配は――」
言いかけたところで、アルカディアスの視線が――整列している家臣たちの一団へと向けられた。
その瞬間、彼の黄金の瞳が驚愕に見開かれる。
「――!?」
その視線の先にいたのは、死んだはずの男。近衛騎士団長ユリウス・ノヴァ。
(生きている、だと? ……聖女の癒しが、間に合ったか)
だが、王の勘が捉えたのは、そこではなかった。
ユリウスの視線は、王ではなく――ロゼノアに、絡みつくように注がれていた。
(……ほう?)
アルカディアスは、瞬時に理解した。
忠誠という皮の下に隠された、抑えきれない渇望と、ドロリとした嫉妬の炎を。
(……なるほど)
こいつは今、一人の「男」として、俺の妻に欲情している。
人一倍鋭い王の勘が、隠された真実を暴く。
アルカディアスは、隣に立つ妻の横顔を盗み見た。
その潤んだ瞳は、無意識にユリウスの視線に応えるように、熱く彼を見つめ返していたのだ。
(……ロゼノア、お前もか)
夫である自分の腕の中にいながら、他の男と視線で絡み合っている。
その事実は、王の矜持を最も残酷な形で逆撫でした。
胸の奥が焼けつくような屈辱に軋み、抑えきれない怒りが噴き上がった。
(俺のものに懸想するとは、あの堅物が……。そしてロゼノア、お前も……!)
最も愛する者からの裏切り――。
殺すのは容易い。だが、それではつまらない。
アルカディアスの脳裏に、もっと愉しく、残酷で、背徳的な考えが浮かんだ。
(面白い。……分からせてやるか、誰のものなのかを)
アルカディアスはユリウスに近づくと、その耳元に囁いた。
「ユリウス。無事だったのか」
「はっ――」
「ロゼノアを守った褒美をやろう。……今夜は俺たちの寝室の前で番をしろ。特別に聞かせてやる」
その命令を理解した瞬間、ユリウスの顔色が蒼白になった。
「……!」
「聞こえなかったか? 俺は妻をたっぷりと、朝まで愛でてやるつもりだ」
アルカディアスはロゼノアの方をチラリと見て、ユリウスにしか聞こえない声で命じた。
「誰にも邪魔をされたくない。お前が扉の真ん前で守れ。……中の音が、よーく聞こえるようにな」
それは、王が思いついた最高に嗜虐的で陰湿な余興。
懸想する女が、別の男に犯され、乱れる音を、一晩中聞かせ続けるという精神的な拷問。
ユリウスは拳を強く握りしめた。屈辱と絶望。
「……御意に」
血を吐くような声で、騎士は頭を垂れた。
*
その夜。
寝室の扉が閉ざされた。
だが、アルカディアスは扉を完全には閉めず、わずかな隙間を残したままにした。
そして、私を抱き上げると寝台へと連れていく。彼は上機嫌にシャツを脱ぎ捨て、私のドレスに手をかけた。
「……陛下。随分とご機嫌がよろしいようですね」
私が上目遣いに尋ねると、彼は黄金の瞳を細め、ニヤリと笑った。
「ああ。趣向がな……。今夜は最高の『スパイス』があるからな」
「スパイス?」
「すぐにわかる」
彼は意味深に扉の方を一瞥すると、私の唇を塞いだ。
「んっ……!」
「お前は俺に隠し事をするつもりか」
突然、荒々しくなり、乱暴にドレスの胸元が引き裂かれた。
ビリィッ! と布が裂ける音が響く。
「きゃあぁぁっ!」
「どうやら、お前にはお仕置きが必要なようだ」
露わになった肌に、彼が熱い舌を這わせる。首筋から鎖骨へ、そして胸の谷間へ。
彼の舌が這うたびに、私の口からは甘い声が漏れてしまう。
「あ……んんっ……」
「ふ……お前は、そそる……」
アルカディアスが覆い被さると、胸を両手で中央に寄せ、その頂を交互に舌で転がし始めた。
「あ……っ、んぅ……」
左の蕾を舌で弄ばれながら、反対側を親指でこねくり回される。そして、さらに空いている手が秘所へと這う。そこは、すでに情けないほど溢れていた。
「いやらしい体だ。もう、こんなになっている」
耳元で囁くアルカディアスの低音に、私はビクリと震えた。
「もっと、大きな声で啼け。外に聞こえるくらいな」
その言葉で――私は彼の言った「スパイス」の意味を理解してしまった。
顔から火が出るほどの羞恥に襲われ、扉の方を見る。
一枚隔てた向こうに、ユリウスがいる。彼に、この情事を聞かせるつもりなのだ。
「あ……っ、やっ、……ッ!」
「どうした? ……あいつに聞かれていると思うと、興奮するのか?」
アルカディアスは私の反応を見逃さなかった。
(私の気持ちに気づかれた――!?)
私は否定するように首を横に振るが、体は嘘をつけない。
恥ずかしい。聞かれたくない。
けれど、あの真面目な騎士に今の乱れた私を聞かれているという背徳感が、恐ろしいことにさらなる蜜を溢れさせていた。
「ち、違いま……そんなこと……っ」
「嘘をつくな。正直に言え。この体で、あの男を救ったのか?」
「――!!」
「俺に抱かれるための体で、俺以外の男に触れたのかと聞いているんだ!」
「――そ、そんなこと、してな……んっ」
アルカディアスの瞳が、独占欲で濁る。狂気を孕んだ、愛と殺意が紙一重になった金色の目。
「許さない! 許さない! お前は誰のものだ!?」
「……ッ」
「言えないのか? あいつの方がいいのか? もう、あの男に抱かれたのか――!?」
彼は濡れそぼった入り口に自身の剛直をあてがった。
そして、一気に最奥まで侵入してくる。
「あぐっ、あぁぁぁーーッ!!」
私はシーツを握りしめ、弓なりになって絶叫した。
羞恥で心は拒むのに、体は絡みつくように王を受け入れてしまう。
熱く、太い楔が、私の中を容赦なく抉る。
「くっ……こんなに吸いつきやがって……!」
アルカディアスが叫んだ。
寝台が激しく軋む。
肌が打ち付け合う音、生々しい水音、そして私たちの抑えきれない吐息が、扉の隙間から漏れていく。
(だめ、聞こえてしまう……ユリウスに、聞かれて……ッ)
「はあぁんッ……あっ……ぁぁ……!」
「いい声だ、ロゼノア。……聞こえていないかもしれんぞ? もっと大きな声で、お前の男に届けてやれ!」
王は意地悪く囁き、私を快楽と羞恥の煉獄へと突き落としていった。
幾度目かの激しい嵐が過ぎた後。
事果てたアルカディアスは、乱れた私の髪に指を絡め、耳元に口づけをした。
「愛している、ロゼノア。……お前を誰にも渡さない」
その言葉は、呪いのように甘く重い。
私は彼に抱きしめられながら、掠れた声で答えた。
「……陛下。私は、あなたのものです……」
*
一方、扉の外。
近衛騎士団長ユリウス・ノヴァにとって、そこは地獄だった。
ガッ――!!
彼は石壁に拳を叩きつけ、崩れ落ちそうになる身体を必死に支えていた。
「ぐ、ぅ……ッ!」
扉の向こうから聞こえる、愛しい人の喘ぐ声。睦み合う男と女の音。寝台の軋むリズム。
そして、最後に聞こえた甘い愛の言葉。
そのすべてが、鋭利な刃物となってユリウスの心臓を抉り、尊厳を切り刻む。
(……ロゼノア様。あぁ、ロゼノア様……)
元々秘めていた、主君の妻への清らかな恋心。
それが今、黒薔薇の力で蘇生された肉体の「渇き」と結びつき、制御不能になっていた。
胸にある黒薔薇の刻印が、ドクンドクンと脈打ち、主を欲する。死から蘇った魂が、彼女を求めて叫んでいる。
――奪いたい。
あの扉を蹴破り、あの男を引き剥がし、彼女を私のものにしたい。
その甘い声を、私だけに向けさせたい。
想像しないようにすればするほど、脳裏に鮮明に浮かぶ。
野獣のような王に組み敷かれ、乱されている彼女の姿が。
先刻触れた、あの陶酔の感触。柔らかく、甘い香り。自分のものを口で犯す彼女の淫らな顔。その極上の快楽。
それが今、アルカディアスの手によって蹂躙され、塗り変えられていく。
(ロゼノア様……ッ!)
ユリウスは唇を強く噛み締め、口の中に血の味を広げた。
理性だ。理性で抑えろ。
私は騎士だ。王の命令だ。ただの番犬だ。
だが、扉の向こうから聞こえるロゼノアの声が、一段と高く、甘くなる。
『……あっ、陛下ッ……だめ……あぁッ……』
『……そんな……陛下、すごい……!』
ビキッ、と乾いた音がした。
ユリウスが押し当てた拳の周囲、堅牢な壁に亀裂が入っていた。
嫉妬。絶望。劣情。そして、殺意にも似た欲求。
冷徹な氷の騎士の仮面の下で、ドロドロとした感情が溢れ出そうになっていた。
(許さない……許さない……!)
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