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こんな男知らない
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出版社から少し離れたところにある居酒屋。
おしゃれな雰囲気を保ちつつそれでいて気取りすぎない。
できる男は飲み屋探しもできるらしい。
霞は吉村より一足早く指定された居酒屋に来ていた。
吉村と別れた後、もう少し業務が残っているから後日でも、と言う吉村の申し出を霞が断ったためだ。
(ここで会ったのも、何かの縁かもしれないし、このあたり時間潰すのにはいいお店いっぱいあるからね)
霞が入店してからほどなくして待ち人、もとい吉村が現れた。
「すまない、遅くなった・・・!」
少し走ってきたのだろうか、彼の肩が少しだけ揺れている。
「別に遅れてないし、大丈夫だよ」
別に約束に遅れているわけではないので急ぐ必要はないのだが、急いでくれたことがほんの少し嬉しかった。
自分との約束のために、急いでくれたのだ。嬉しくないわけがない。
向かいの席に吉村が腰を下ろす。
改めて見るその顔はどことなく記憶の中の”吉村君”と重なるものがあるように思えた。
座った時ほんの少し猫背になるところも、真面目を絵にかいたような黒縁の眼鏡から覗く切れ長の瞳も。
「取り敢えず、なんか頼むか?」
「じゃあ取り敢えずビールで!」
運ばれた金色の液体を二人でのどに流し込む。
大人になってよかったと思える場面の一つだ。
「「っぷは~」」
お互いのいい飲みっぷりに自然に笑みがこぼれる。
小学生の頃もこんな感じで笑いあってたっけ。
「お互い大人、だな」
「なにそれ 私そんなに変わった?」
「まあ、な」
それから私たちの話題はお互いの仕事のことに移っていった。
吉村はもともとは編集、と言っても小説部門に希望を出していたらしい。
本の虫であった彼なら納得だ。
しかし、まさかの配属先は少年誌の編集部。
ちなみに先程話に出てきた木島さんは吉村の上司にあたる人だという。
上司つながりで三角ともたまに飲む仲間だという。
霞のことはペンネームの冴島スミとしては知っていたものの、それがまさか小学校時代の同級生だとは夢にも思わなかったそうだ。
___そこからは話が二人が別々の道を歩んでいた12年間の話になった・・・はずだ。
そのあとの記憶は・・・ない。
少し重たい瞼を開けると朝なのだろうか太陽の光が感じられた。
(・・・この天井、知らない!)
こんな天井知らない。アカントス文様のダークブラウン。それでいて天井の周りをほんのりと間接照明が照らしている。
(どう考えたってここは・・・ラブホテルなのだろう)
そして隣にいるのは・・・もちろん吉村以外のだれであるはずもなく。
(やってしまった)
一糸まとわぬ自らと鈍い痛みの残る腰が昨夜の出来事の証拠だ。
吉村はぐっすりと眠っている。
出ていくなら今かもしれない。
目覚めた彼に言われる言葉、それがただただ恐ろしかった。
一夜の過ち。ただそれだけなのだから。
おしゃれな雰囲気を保ちつつそれでいて気取りすぎない。
できる男は飲み屋探しもできるらしい。
霞は吉村より一足早く指定された居酒屋に来ていた。
吉村と別れた後、もう少し業務が残っているから後日でも、と言う吉村の申し出を霞が断ったためだ。
(ここで会ったのも、何かの縁かもしれないし、このあたり時間潰すのにはいいお店いっぱいあるからね)
霞が入店してからほどなくして待ち人、もとい吉村が現れた。
「すまない、遅くなった・・・!」
少し走ってきたのだろうか、彼の肩が少しだけ揺れている。
「別に遅れてないし、大丈夫だよ」
別に約束に遅れているわけではないので急ぐ必要はないのだが、急いでくれたことがほんの少し嬉しかった。
自分との約束のために、急いでくれたのだ。嬉しくないわけがない。
向かいの席に吉村が腰を下ろす。
改めて見るその顔はどことなく記憶の中の”吉村君”と重なるものがあるように思えた。
座った時ほんの少し猫背になるところも、真面目を絵にかいたような黒縁の眼鏡から覗く切れ長の瞳も。
「取り敢えず、なんか頼むか?」
「じゃあ取り敢えずビールで!」
運ばれた金色の液体を二人でのどに流し込む。
大人になってよかったと思える場面の一つだ。
「「っぷは~」」
お互いのいい飲みっぷりに自然に笑みがこぼれる。
小学生の頃もこんな感じで笑いあってたっけ。
「お互い大人、だな」
「なにそれ 私そんなに変わった?」
「まあ、な」
それから私たちの話題はお互いの仕事のことに移っていった。
吉村はもともとは編集、と言っても小説部門に希望を出していたらしい。
本の虫であった彼なら納得だ。
しかし、まさかの配属先は少年誌の編集部。
ちなみに先程話に出てきた木島さんは吉村の上司にあたる人だという。
上司つながりで三角ともたまに飲む仲間だという。
霞のことはペンネームの冴島スミとしては知っていたものの、それがまさか小学校時代の同級生だとは夢にも思わなかったそうだ。
___そこからは話が二人が別々の道を歩んでいた12年間の話になった・・・はずだ。
そのあとの記憶は・・・ない。
少し重たい瞼を開けると朝なのだろうか太陽の光が感じられた。
(・・・この天井、知らない!)
こんな天井知らない。アカントス文様のダークブラウン。それでいて天井の周りをほんのりと間接照明が照らしている。
(どう考えたってここは・・・ラブホテルなのだろう)
そして隣にいるのは・・・もちろん吉村以外のだれであるはずもなく。
(やってしまった)
一糸まとわぬ自らと鈍い痛みの残る腰が昨夜の出来事の証拠だ。
吉村はぐっすりと眠っている。
出ていくなら今かもしれない。
目覚めた彼に言われる言葉、それがただただ恐ろしかった。
一夜の過ち。ただそれだけなのだから。
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