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フレックスタイムなので

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柏木出版ではフレックスタイム制をとっている。
とはいってもさすがに12時までには出社しなければならない。

吉村は生まれて初めて出社のために走っていた。
時々痛む腰をさすりながら。

そんな忙しい中、吉村と同じく遅刻ギリギリのはずなのに全く危機感のない声がする。

「おっ・・・めっずらしーな、遅刻かぁ??」

「はっ・・はっ・・、三角さん、急がないんすかっ・・!」

「うん。俺常習だから、ね」

いやダメだろ。
そう思うも突っ込みを入れる暇さえ惜しい。

何とかして本当にギリギリに編集部に滑り込むとやけにニコニコした上司、木島が立っていた。

「おはよ、吉村。」

「おはよう、ございます。」

「ね、お前昨日なんかあったの?」

「き、、昨日ですか・・えっと、」

「ま、いいや。お前、昨日うわの空だったろ。」

垢出なおされた記事の下書きを目前に掲げられる。

「これ、直してけよ」

「すみません!!!」






仕事に支障をきたしているのはまずい。
切り替えなければ。

その為に。


いまだ既読のついていないラインにメッセージを追加する。


霞にはあって正式に交際を申し込もう。

そう、吉村は心の中で誓った。
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