43 / 100
♡純粋系乙女と第1回イベント2日目♡
暇つぶしでクエスト! 〜大賢者のタンポポを探せ!〜
しおりを挟む「スキルで他職種の装備を身につけることを可能にする……って、わざわざ貴重なチュートリアル限定スキルを潰してまで手に入れるものか? 器用貧乏になりはしないだろうか?」
「現にユキノさんはめちゃくちゃ強いじゃないですか」
クラウスさんとキラくんの議論に熱がこもる。正直私はああいう議論に入れるほどこのゲームに詳しくないし、聞いててもあまり面白くないので、隣に立っていたミルクちゃんとアオイちゃんに声をかけた。
「ねぇねぇ、暇だし、女の子同士で仲良くクエストでもやりに行かない?」
「賛成ばい!」
嬉々とした様子のミルクちゃん。よほどキラくんと一緒にいたくないらしい。
「アオイちゃんはどうする?」
私がもふもふのアオイちゃんに尋ねると
「あの……念の為なんですけど……アオイは女の子ではないのです」
――え
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?」
突然私が大声を上げたので、周りの注目を浴びてしまった。私は真っ赤になりながら身振り手振りで「なんでもないです!」とアピールする。
「わ、私はてっきりアオイちゃんのこと女の子だと思ってたわ……」
「よく間違われて……アオイも困っているのです」
いやいや、困ってるってその可愛いらしい見た目がいけないんでしょうが! でも確かに身につけているのは男の子であるレーヴくんの装備だし、男の子だと言われたら「あーそうかな」ってなるような感じもする。とにかくややこしい!
「あーもう、どっちでもいいから行くよっ!」
「は、はいっ」
私は片手でミルクちゃん、片手でアオイちゃんを引っ張るという両手に花状態で、人でごった返す噴水広場を後にしたのだった。
◇ ◆ ◇
「えっと、この家のはずだけど……」
私たち3人は石造りの街の奥の方――入り組んだ路地の先のとある家の前までやってきた。イベント期間中で客もほとんど来ないのか、暇そうにしていた装備屋のオッサンに尋ねて、街の中で簡単そうなクエストが発生する場所を教えてもらったのだ。
「大通りの薬草屋の角を曲がって三本目の路地を左に行って20メートルくらい来たら右に曲がって3軒目……だよね確か」
「うーん、そうだと思うばい」
「そうだったような気がするですよ」
頼りないな! まあ仕方ない。この中では私が一番年長なんだから(ミルクちゃんの年齢は分からないけれど、精神年齢的に私よりも年下だろう)私がしっかりしないとね!
「よーし、じゃあこの家に入るよ!」
オッサンによると、クエストは寝たきりのお母さんのために森の奥で薬草を採ってきて欲しいと子供に頼まれるとかいうオーソドックスなものらしい。森に現れるモンスターも大して強くないので初心者も安心してこなせるクエストなんだって。
私は意を決して家の扉を開けた。
――ギィィィッ
耳障りな音がして扉が開く。中は予想外に真っ暗で、微かにかび臭い。よく見えないな、ランプでも買ってくればよかったかなと思いながら一歩一歩恐る恐る前に進む。ミルクちゃんとアオイちゃんの二人も私の背中にしがみつくようにしてピッタリついてきた。
――ガタンッ
背後で突然扉が閉まる音がして、目の前が本当に真っ暗になってしまった!
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
私たちの悲鳴がひとしきり空間に響き渡る。扉の所にかけ戻ったアオイちゃんが何やらガチャガチャと閉まった扉を開けようと格闘していたが、やがて「開かないです!」と絶望感溢れる声でコメントした。
「閉じ込められた!?」
どうする!? ミルクちゃんに変身してもらって力ずくで脱出するか、私の【ディストラクション】で力ずくで脱出するか、アオイちゃんに魔法をかけてもらって力ずくで脱出するしかない!
「――よく来たな勇者よ」
脱出方法を考えていた私に、突然前からそんな声がかけられた。おじいちゃんの声のようだけど、相手の姿はよく見えない。
「あのぅ……ひ、人違いではないでしょうか! 私はただのロリ巨乳ホムンクルスですし!」
「アオイはただのケットシーですにゃん!」
「うちはただの邪龍ばい!」
咄嗟に訳の分からないことを口走る私たち。パニックは最高潮!
「勇者――選ばれし者よ。――我の与える試練を見事乗り越え、その力を示してみせよ」
――ピカァッ
何かが目の前で光る。と、同時にその光に照らされて謎の人物もその全貌が明らかになった。それは、紺色のローブを目深に被った老人で、古びた木の杖を持っている。皺の刻まれた表情はよく読み取れないが、顔の下半分は真っ白い髭で覆われていた。――『賢者』ってやつなのかもしれない。
光を放っているのは、どうやらおじいちゃんの手のひらのようだ。
すると、私の目の前のウィンドウにこんなメッセージが浮かび上がった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
クエスト【追憶の試練】を受注しますか?
はい ◀
いいえ
【追憶の試練】
『大賢者 ルドルフ』の試練を見事乗り越え、その力を示せ。
達成条件︰『迷いの森』に咲く『タンポポ』の採集
達成報酬︰種族スキルの解放
編成条件︰1パーティ4名まで
禁止種族職業︰なし
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
こ、これがクエスト!? 要するに森でタンポポ採ってくればいいのね? そんなんどこにでも生えてるでしょ? やったね! と、私は『はい』をタップした。
なんか、オッサンに聞かされていたクエストとはだいぶ雰囲気は違うし、お母さんも子供も出てこないけれど、クエストがどんなものかを知る上ではちょうどいいかもしれない。楽そうだし。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
クエスト【追憶の試練】を受注しました!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「では勇者よ。――くれぐれも自分を見失わないことじゃ。健闘を祈る」
「あっ、ちょっと待っておじいちゃん!」
立ち去ろうとするおじいちゃん――『大賢者 ルドルフ』とやらを私は呼び止めようとしたけれど、彼はどうやらイベントのためだけのNPCらしくて、そのまま霧のようにすーっと消えてしまった。同時に背後の扉が開いて光が差し込む。――やはりおじいちゃんはどこにもいない。
「ミルクちゃん、アオイちゃん……大変……」
私は、扉が開いたことによって喜んでいたミルクちゃんとアオイちゃんを振り返る。
「どうしたと?」
「なんですか?」
「――『迷いの森』ってどこにあるの……?」
6
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
───────
自筆です。
アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
まほカン
jukaito
ファンタジー
ごく普通の女子中学生だった結城かなみはある日両親から借金を押し付けられた黒服の男にさらわれてしまう。一億もの借金を返済するためにかなみが選ばされた道は、魔法少女となって会社で働いていくことだった。
今日もかなみは愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミとなって悪の秘密結社と戦うのであった!新感覚マジカルアクションノベル!
※基本1話完結なのでアニメを見る感覚で読めると思います。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる