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第4話 『魔女狩り』に追われることになってしまったんだが
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***
王宮は、王都の中でも中心部に位置する巨大な施設だ。中には王族やそれに仕える近衛兵たちがおり、貴族でさえも容易に中に入ることができない。
そんな王宮のとある部屋に、『魔女狩り』と呼ばれる組織の長であるベネディクト・ケーニッヒベルクは鎮座していた。痩せぎすで鋭い目が特徴の彼は、黒いローブを身にまとい、黒い革張りの椅子に腰掛け、木のテーブルを神経質に人差し指で叩いている。その音に、何者かが木の扉をノックする音が重なる。
コンッ、コンッ、コン……。
「入れ」
彼がノックに応えると、木製のドアが開かれた。そこには背が高く体格の良い、屈強そうな男が立っていた。男は恭しく頭を下げると部屋の中に入り、扉を閉める。
そしておもむろにその場にひれ伏した。
「申し訳ありません! 例の『魔女』を取り逃しました!」
「なんだと!?」
ベネディクトは苛立ちもあらわに椅子から立ち上がると、男の胸ぐらを掴み上げて、その顔をまじまじと見つめた。彼の部下たちの間では『鬼』と呼ばれている男の顔だ。
「おいおい……、あまり私を苛立たせるな。いくらおまえでも許さないぞ?」
「しかし……思わぬ邪魔が入りまして……」
「ほう? 王宮直属の『魔女狩り』に仇なすとはどこの愚か者だ?よほど命知らずなのか? あるいはよほどのバカなのか?」
「いえそれが……いくら攻撃を当てようともすぐにHPが回復してしまう化け物のような人間で……」
「回復……だと?」
ベネディクトは男の胸ぐらから手を離すと思案した。
「……聖フランシス教団の手の者か?」
「不明です」
「聖フランシス教団の馬鹿どもめ、よもや我らを裏切ったわけではあるまいな? ……真偽の程を確かめる。馬を出せ」
「承知いたしました」
男は頭を下げ、足早に部屋から出て行った。
「教団が『魔女』を生み出していることは調べがついている。──じきにことを構えることになろうとは思っていたが」
ベネディクトは、にやりと口元に笑みを浮かべると、黒檀でできた杖を手に取り、それを勢いよく床に突き立てた。乾いた大きな音が響き渡る。
「面白い。今こそあの忌々しい教団を完膚なきまでに潰す好機! 我ら『魔女狩り』に仇なしたこと、地獄で後悔するといいだろう!」
***
俺はクロエの後について山道を歩いていた。王都まではまだ道のりが長い。途中で聖フランシス教団の連中や、『魔女狩り』に遭遇する危険もある。
「なあ、そういえばその背中の剣って……」
「あぁこれね」
クロエはそう言って背中の大剣の柄を掴むと、そのまま一息に引き抜いた。漆黒の刀身を持つ大剣だ。まるで生きているかのように禍々しく輝くその様子は、見るもの全てを魅了してしまいそうだ。
俺が『魔女狩り』と戦う時に使った際には必死だったせいもあってあまり意識していなかったが、見れば見るほど不思議な剣だ。それに一番謎なのは、あれほど大きいのに武器もまともに握ったことがない俺でも軽々と扱えるくらい軽かったことだ。
「それ、魔剣ってやつだよな?」
「……だとしたらどうなの?」
一瞬、クロエの目の奥に暗い影がさした気がして俺は慌てて首を横に振った。詮索しないって言ったばかりじゃないか。それにクロエだって彼女なりに辛い思いをしながら生きてきたはずだし、それはきっとこれからの人生の中でゆっくりと時間をかけて……!
「この子はね。私の実験に使われていた魔剣なの」
「そっか……やっぱり……」
「この子には、所有者のHPを吸って強化するスキルがある。……だから、私は死ぬギリギリまで体力を吸われて、教団の連中に回復されて──っていうのを繰り返されて、回復スキルの発現を促されていたのよ。ひどい話でしょう?」
「なんて奴らだ……人の心がないのかよ……」
クロエの過去を知って少しだけ悲しくなった。そんな酷い目にあいながら彼女はどうして笑顔でいられるんだろう。彼女の顔を見る度に胸の中に暗い気持ちが渦巻いてしまう。彼女は酷い実験をされても、『魔女狩り』に殺されかけても、いつもわりとあっけらかんとしている。もはや悲しいという感情も忘れてしまったのだろうか。
そんな気持ちを見透かされたのだろうか、彼女は明るい声でこう続けた。
「でも大丈夫、もうそんな実験に付き合う必要は無くなったしね」
俺は一連の話から生まれた疑問をクロエにぶつけてみることにした。それがただの想像でしかないことを祈りながら。
「じゃあさ、クロエが魔女として追われている理由──実験の結果発現した人を害する可能性のあるスキルって……」
「そう。私が発現したスキルは『ライフドレイン』。──対象に触れることでそのHPを吸収することができるスキルよ。これはHPが減っていると私の意思とは関係なく発動する。教団から逃げる途中で体力を消耗した私は……助けてくれた人のHPを吸い取って殺してしまったの」
「そんな……!」
俺が絶句しているとクロエは自嘲するように笑ってから、言葉を続けた。
「あの時は死にかけてたから仕方なかったとはいえ、スキルのせいで人を殺してしまったんだから『魔女狩り』に追われるのは当然よね」
確かにそれも理屈としては通るけど……。でも俺は知っている。クロエはすすんで人を殺したがるようなやつじゃない。きっと心の中では深く後悔しているはずだ。彼女の性格からあまり深刻そうに見えないだけで……。
王宮は、王都の中でも中心部に位置する巨大な施設だ。中には王族やそれに仕える近衛兵たちがおり、貴族でさえも容易に中に入ることができない。
そんな王宮のとある部屋に、『魔女狩り』と呼ばれる組織の長であるベネディクト・ケーニッヒベルクは鎮座していた。痩せぎすで鋭い目が特徴の彼は、黒いローブを身にまとい、黒い革張りの椅子に腰掛け、木のテーブルを神経質に人差し指で叩いている。その音に、何者かが木の扉をノックする音が重なる。
コンッ、コンッ、コン……。
「入れ」
彼がノックに応えると、木製のドアが開かれた。そこには背が高く体格の良い、屈強そうな男が立っていた。男は恭しく頭を下げると部屋の中に入り、扉を閉める。
そしておもむろにその場にひれ伏した。
「申し訳ありません! 例の『魔女』を取り逃しました!」
「なんだと!?」
ベネディクトは苛立ちもあらわに椅子から立ち上がると、男の胸ぐらを掴み上げて、その顔をまじまじと見つめた。彼の部下たちの間では『鬼』と呼ばれている男の顔だ。
「おいおい……、あまり私を苛立たせるな。いくらおまえでも許さないぞ?」
「しかし……思わぬ邪魔が入りまして……」
「ほう? 王宮直属の『魔女狩り』に仇なすとはどこの愚か者だ?よほど命知らずなのか? あるいはよほどのバカなのか?」
「いえそれが……いくら攻撃を当てようともすぐにHPが回復してしまう化け物のような人間で……」
「回復……だと?」
ベネディクトは男の胸ぐらから手を離すと思案した。
「……聖フランシス教団の手の者か?」
「不明です」
「聖フランシス教団の馬鹿どもめ、よもや我らを裏切ったわけではあるまいな? ……真偽の程を確かめる。馬を出せ」
「承知いたしました」
男は頭を下げ、足早に部屋から出て行った。
「教団が『魔女』を生み出していることは調べがついている。──じきにことを構えることになろうとは思っていたが」
ベネディクトは、にやりと口元に笑みを浮かべると、黒檀でできた杖を手に取り、それを勢いよく床に突き立てた。乾いた大きな音が響き渡る。
「面白い。今こそあの忌々しい教団を完膚なきまでに潰す好機! 我ら『魔女狩り』に仇なしたこと、地獄で後悔するといいだろう!」
***
俺はクロエの後について山道を歩いていた。王都まではまだ道のりが長い。途中で聖フランシス教団の連中や、『魔女狩り』に遭遇する危険もある。
「なあ、そういえばその背中の剣って……」
「あぁこれね」
クロエはそう言って背中の大剣の柄を掴むと、そのまま一息に引き抜いた。漆黒の刀身を持つ大剣だ。まるで生きているかのように禍々しく輝くその様子は、見るもの全てを魅了してしまいそうだ。
俺が『魔女狩り』と戦う時に使った際には必死だったせいもあってあまり意識していなかったが、見れば見るほど不思議な剣だ。それに一番謎なのは、あれほど大きいのに武器もまともに握ったことがない俺でも軽々と扱えるくらい軽かったことだ。
「それ、魔剣ってやつだよな?」
「……だとしたらどうなの?」
一瞬、クロエの目の奥に暗い影がさした気がして俺は慌てて首を横に振った。詮索しないって言ったばかりじゃないか。それにクロエだって彼女なりに辛い思いをしながら生きてきたはずだし、それはきっとこれからの人生の中でゆっくりと時間をかけて……!
「この子はね。私の実験に使われていた魔剣なの」
「そっか……やっぱり……」
「この子には、所有者のHPを吸って強化するスキルがある。……だから、私は死ぬギリギリまで体力を吸われて、教団の連中に回復されて──っていうのを繰り返されて、回復スキルの発現を促されていたのよ。ひどい話でしょう?」
「なんて奴らだ……人の心がないのかよ……」
クロエの過去を知って少しだけ悲しくなった。そんな酷い目にあいながら彼女はどうして笑顔でいられるんだろう。彼女の顔を見る度に胸の中に暗い気持ちが渦巻いてしまう。彼女は酷い実験をされても、『魔女狩り』に殺されかけても、いつもわりとあっけらかんとしている。もはや悲しいという感情も忘れてしまったのだろうか。
そんな気持ちを見透かされたのだろうか、彼女は明るい声でこう続けた。
「でも大丈夫、もうそんな実験に付き合う必要は無くなったしね」
俺は一連の話から生まれた疑問をクロエにぶつけてみることにした。それがただの想像でしかないことを祈りながら。
「じゃあさ、クロエが魔女として追われている理由──実験の結果発現した人を害する可能性のあるスキルって……」
「そう。私が発現したスキルは『ライフドレイン』。──対象に触れることでそのHPを吸収することができるスキルよ。これはHPが減っていると私の意思とは関係なく発動する。教団から逃げる途中で体力を消耗した私は……助けてくれた人のHPを吸い取って殺してしまったの」
「そんな……!」
俺が絶句しているとクロエは自嘲するように笑ってから、言葉を続けた。
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