解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流

文字の大きさ
23 / 40
第1章 守護龍の謎

第23話 姉ドラゴンとの対面

しおりを挟む
「フラウ! 避けろ!」

 俺は咄嵯に叫んで回避行動を取る。

「はいっ」

 フラウもすぐに反応して飛び退いた。俺は地面に伏せた姿勢のまま、ファイアブレスを避け続ける。

「フラウ、こいつは一体なんだ?」

 俺はドラゴンの隙をついてフラウの手を引いて物陰に隠れながら尋ねると、彼女は少し驚いた表情で答える。

「……そういえば忘れてました。実は私には姉がいるんです」
「なんだって!?」

 俺は驚きの声を上げた。しかし、よく考えてみればフラウだって元々は普通のドラゴンだったわけだし、姉がいたとしてもおかしくはないのか……。

「はい。といっても、私が生まれた直後に彼女は守護龍になることを放棄してどこかへ消えてしまったんです。それで、私が代わりに母の跡を継いで守護龍になりました」

 フラウは悲しげに目を細めた。

「そうか……」

 なんとも言えない気持ちになる。

「ちなみに、名前はなんていうんだ?」
「アイシアです」
「アイシアって名前なのか……あのドラゴンは」
「ええ。彼女はとても強いんですよ。ただ、気まぐれで飽きっぽい性格なので、あまり戦闘はしたがらないのですが……」

 フラウは心配そうな面持ちで言う。

「なあ、なんとかしてアイシアを説得できないか?」
「ドラゴンは巣の中に勝手に入ってくる者を嫌います。今はものすごく気が立ってるみたいなので説得は多分無理じゃないかなと……一応やってみますけど」

 フラウは自信なさげに言う。

「俺はドラゴンの家族関係のことはよく分からないけれど、さすがに、実の妹相手に問答無用で襲いかかってくるようなことはないんじゃないか?」

 俺は思ったことをそのまま口にする。すると、フラウは苦笑した。

「それは……確かにそうかもしれませんけど」
「だろ? 俺もフラウの姉ちゃんとやり合いたくはないんだよ。だから頼む」
「分かりました」

 フラウは力強くうなずくと、アイシアの前に進み出た。

「お久しぶりですね姉様。元気にしてましたか?」

 フラウは優しく語りかけるように話しかける。

「…………」

 だが、アイシアは無言でこちらを睨みつけてくるだけだ。

「フラウですよ。覚えてますか?」

 フラウは微笑を浮かべながら続けた。すると、アイシアの身体が光に包まれて、人間の姿をとる。フラウと同じ銀髪の、美しい女性だった。しかも、フラウよりも歳上で圧倒的にスタイルが良い。そして、どこかチャラチャラした雰囲気を感じる。

「……本当にフラウなの?」

 アイシアは困惑した様子でフラウを見つめながら尋ねた。

「はい、そうです。フラウです」

 フラウは優しい口調で答えた。

「……どうしてウチに人間の言葉で語りかけてくるの?」

 アイシアは不思議そうに首を傾げる。

「ここにはロイが……人間がいるからそっちの方がいいと思って……だめですか?」

 フラウがそう言うと、アイシアはふるふるとかぶりを振る。ダメではないけれど面倒くさいということだろうか。

「じゃあ、私の話を聞いてくれますか?」

 フラウは提案するが、それに対して

「嫌。てかウチ、あんたたち嫌いだから」

 アイシアはつれなく返した。

「そんな……」

 フラウはショックの表情を見せる。

「勝手にウチの巣に入ってきて、何してるのか知らないけど、とっとと出て行ってくれないかしら」

 アイシアは迷惑そうに言った。

「ちょっと待ってくれ。俺たちは君と争いに来たんじゃないんだ」

 俺は慌てて間に入るが、アイシアは冷たい視線を向けるだけだった。

「ていうかあんた誰?フラウの彼氏? フラウ、人間の彼氏ができたの?」

 アイシアは小馬鹿にしたように尋ねてきた。

「ちっ、違います! 彼はただの旅の仲間で……」

 フラウは顔を真っ赤にして否定する。

「へぇー。でも、その割にはずいぶん仲良さそうだよね。もしかして、もうヤっちゃったとか?」
「ま、まだやってません! そういうこと言わないでください!」

 フラウはさらに赤くなって反論した。

「え、あんた守護龍になって契約もしてたくせにもしかしてまだ処女なの? ウソぉ、マジで?」

 アイシアは信じられないという顔で驚く。
 フラウの顔はますます紅潮していった。

「こら、いい加減にしろ」

 俺は二人の会話を遮るように口を挟む。

「人間風情が、ウチに話しかけんな。守護龍でもないウチはフラウみたいに人間に好意的なわけじゃないから」

 アイシアは不快そうに吐き捨てた。

「まあまあ、そう怒らないでくれ。君はフラウのお姉さんなんだろ? だったら俺とも仲良くしてくれよ。勝手に巣に入ったことは謝るからさ……ここにドラゴンが住んでるなんて知らなかったんだ」

 俺は必死に取り繕う。しかし、アイシアは依然として冷淡な態度を崩さない。

「……別にウチはフラウに怒ってるわけじゃないけど、フラウがいなくなってからこの巣に戻って100年くらい寝てたら昨日、大剣を持った人間が現れていきなり襲われて、マジで意味わからなかっただけだし」

 身体の傷はその時についたものだろうか。大剣の男は多分あの王都の酒場で出会ったドラゴンスレイヤーだろう。もしアイシアがフラウと間違えられて襲われたのだとしたら申し訳ないことをしたと思う。

「ごめんなさい……私のせいで姉様に怖い思いをさせちゃって……きっとその人は私を狙ってる人ですよ」

 フラウは悲しげに謝罪した。

「ウチは人間が嫌いだし、あんたがウチのことを嫌ってることも知ってたけど、だからといってこんな仕打ちはひどいわ。いくらなんでもウチを殺す気だったとしか思えないし。人間には逃げられるし……」

 アイシアは恨めしそうに言う。

「でも、私は姉様を傷つけるつもりはなかったんです。ただ、人間を守るために女神と戦おうとしてただけなのに……」

 フラウは辛そうな面持ちで言った。

「ふーん、人間を守るために? 人間の味方をしてる女神と戦う? ちょっと何言ってるか分からないんだけど」

 アイシアは困惑した様子で言う。

「私を暴走させて封印したのは全部女神が仕組んだことだったんですよ……」

 フラウは悔しそうに唇を噛む。

「どういうこと?」

 アイシアは怪しげな表情を浮かべた。

「詳しくはわかりませんけれど、守護龍とドラゴンライダーとして活躍する私たちが目障りだったのかもしれないです……」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

神眼のカードマスター 〜パーティーを追放されてから人生の大逆転が始まった件。今さら戻って来いと言われてももう遅い〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「いいかい? 君と僕じゃ最初から住む世界が違うんだよ。これからは惨めな人生を送って一生後悔しながら過ごすんだね」 Fランク冒険者のアルディンは領主の息子であるザネリにそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 父親から譲り受けた大切なカードも奪われ、アルディンは失意のどん底に。 しばらくは冒険者稼業をやめて田舎でのんびり暮らそうと街を離れることにしたアルディンは、その道中、メイド姉妹が賊に襲われている光景を目撃する。 彼女たちを救い出す最中、突如として【神眼】が覚醒してしまう。 それはこのカード世界における掟すらもぶち壊してしまうほどの才能だった。 無事にメイド姉妹を助けたアルディンは、大きな屋敷で彼女たちと一緒に楽しく暮らすようになる。 【神眼】を使って楽々とカードを集めてまわり、召喚獣の万能スライムとも仲良くなって、やがて天災級ドラゴンを討伐するまでに成長し、アルディンはどんどん強くなっていく。 一方その頃、ザネリのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 ダンジョン攻略も思うようにいかなくなり、ザネリはそこでようやくアルディンの重要さに気づく。 なんとか引き戻したいザネリは、アルディンにパーティーへ戻って来るように頼み込むのだったが……。 これは、かつてFランク冒険者だった青年が、チート能力を駆使してカード無双で成り上がり、やがて神話級改変者〈ルールブレイカー〉と呼ばれるようになるまでの人生逆転譚である。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

【第2章完結】王位を捨てた元王子、冒険者として新たな人生を歩む

凪木桜
ファンタジー
かつて王国の次期国王候補と期待されながらも、自ら王位を捨てた元王子レオン。彼は自由を求め、名もなき冒険者として歩み始める。しかし、貴族社会で培った知識と騎士団で鍛えた剣技は、新たな世界で否応なく彼を際立たせる。ギルドでの成長、仲間との出会い、そして迫り来る王国の影——。過去と向き合いながらも、自らの道を切り開くレオンの冒険譚が今、幕を開ける!

処理中です...