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第1章 守護龍の謎
第24話 契約には代償があるようです
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フラウは寂しげに答える。
「はぁ……やっぱりよく分かんない」
アイシアはため息をつくと、俺の方をチラッと見て、すぐにフラウに視線を戻した。
「ねえ、ウチに何か用があるなら早く済ませてくれないかな。あと人間に話すことはないからさっさと消えて欲しいんだけど」
アイシアは苛立った口調で急かす。
「待ってくれよ。君に聞きたいことがあるんだ」
俺は慌てて言った。しかし、彼女は聞く耳を持たずに背を向ける。
「あ、あの……」
フラウが呼び止めようとすると、アイシアは振り返らずに言った。
「あんたたち、フラウに免じて今までのことは水に流してあげるからもう二度とここへ来ないでくれる? 次戻ってきた時にまたいたら、今度こそ殺すから」
アイシアはそのままドラゴンの姿に戻ると飛び去って行った。
「……」
残された俺達はしばらく無言になる。
「……ロイごめんなさい。姉様はいつもあんな感じだから」
沈黙を破ったのはフラウだ。その声音には元気がない。
「いや、ここにフラウの姉ちゃんが住んでいたことも想定外だし、ドラゴンスレイヤーのおっさんがフラウと間違えてアイシアを襲ったのも想定外だ。……仕方ないさ」
俺は肩を落とすフラウに声をかける。
「でも、このままじゃいけないと思うんです。私も姉様も……。だって私のせいで姉様が殺されかけたんですよ? それなのに何もできないなんて嫌です」
フラウは涙ぐんだ瞳で訴えかける。
「そうだな。……一緒に飲んだ手前少し気が引けるが、ドラゴンスレイヤーのおっさんを捕まえてアイシアのところに引っ張っていったら機嫌直してくれるかな?」
俺は冗談交じりに提案した。
「そうですね。……でも、相手は姉様を追い詰めた相手です。無理はしないでくださいね」
フラウは心配そうな顔でこちらを見つめる。
「大丈夫だよ。なんてったって俺は最強のドラゴンライダーで救世主になる予定の男だし、なによりフラウがいてくれるからな」
俺は笑顔で答えた。
「ありがとうございます。……なんだか、ロイはいつでも前向きで本当に凄い人ですね。そんな人に会えてよかった……」
フラウも微笑みを返してくれた。そして、彼女の身体が淡く光を放つ。つられるようにして、俺の身体もぼんやりと光り始めた。
「え!? なんですかこれ? 一体どうなって……」
フラウは戸惑っているようだ。
「フラウ! 落ち着いてくれ。俺にも何が起こっているのか分からないんだ!」
俺は焦ってフラウの手を握る。
「あ……ごめんなさい。……なんだか、力が抜けていくみたいで……」
フラウの声は弱々しい。
「フラウ、しっかりしてくれ。これからおっさんを捕まえてアイシアのところに行くっていうのに、こんなところで倒れられたら困るんだよ」
俺は必死に呼びかけるが、フラウは力なく首を横に振る。
「ごめんなさい。私にはもう時間が無いみたいなんです」
「どういうことだよ?」
「ロイ、私はロイに黙っていたことが一つだけありました」
フラウは静かに語り始める。
「守護龍がドラゴンライダーと契約するのは一度だけ。契約相手を失った守護龍は普通、守護龍の役目を子どもに委ねると、寿命を迎えるまで永い眠りについてほとんど姿を現すことはありません」
「で、でもフラウは俺の前にマリオンとかいうやつと契約してたんだろ?」
「はい。……私がロイと契約したのは本来掟破りなんです。守護龍とドラゴンライダーの契約はその性質上、両者にとってとても負担が大きい。二度も人間に魔力を譲渡した私は、きっともう限界だったのでしょう」
フラウは悲しげに笑う。
「そ、そんなこと急に言われても……どうして……」
俺は激しく動揺していた。きっと、フラウと俺が完全契約を結んだのが引き金だったのだろう。彼女がやたらと俺との交尾を望むようになったのも、自分の死期を悟っていて、その前に子孫を残したいという本能だとしたら頷ける。
……でも、そんなこと王宮図書館の書物にも、守護龍の書にも書かれてなかったぞ?
「ごめんなさい。ロイは私の命を救ってくれたのに、私は何も恩返しができませんでした」
フラウの目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「……そんなこと言うなよ。俺はフラウのおかげでここまでやって来れたんだぜ。俺は君に何度も助けられてきたし、君のことを大切な仲間だと思ってる」
俺はフラウを励まそうと言葉をかける。
「仲間……それだけですか?」
「いや……フラウは世界一大切な恋人だよ」
「嬉しい……。ロイはやっぱり優しいですね」
フラウは嬉しさに顔をほころばせる。しかし、その表情はすぐに曇ってしまった。
「もう時間がありません。私が動けるうちに女神との決着をつけたいところですが……ふぅ」
フラウの言葉はそこで途切れた。疲れた様子で息をついている。あまり無理しない方がよさそうだ。でも、アイシアが帰ってくる前にここから出ないといけない。
「……立てそうか?」
俺はフラウに手を差し伸べる。
「はい」
フラウは俺の手を取る。なんとか立ち上がることができたものの、彼女の足取りはかなり危うい。
「俺がおぶっていこうか? それなら多少楽になるだろ?」
俺はフラウの身体を支えるように腕を伸ばす。
「ありがとうございます。では、お願いしますね」
フラウは背中に体重をかけてくる。
「じゃあ行こうか」
俺はフラウを背負って歩き出す。……そういえば、ドラゴンスレイヤーのおっさんはどこに行ったんだろうな。まさかとは思うけど、俺たちの後をつけてきていたりしないだろうか。
いずれにせよ、さっさとここから立ち去るに限る。俺はフラウを背負いながら駆け出した。
「はぁ……やっぱりよく分かんない」
アイシアはため息をつくと、俺の方をチラッと見て、すぐにフラウに視線を戻した。
「ねえ、ウチに何か用があるなら早く済ませてくれないかな。あと人間に話すことはないからさっさと消えて欲しいんだけど」
アイシアは苛立った口調で急かす。
「待ってくれよ。君に聞きたいことがあるんだ」
俺は慌てて言った。しかし、彼女は聞く耳を持たずに背を向ける。
「あ、あの……」
フラウが呼び止めようとすると、アイシアは振り返らずに言った。
「あんたたち、フラウに免じて今までのことは水に流してあげるからもう二度とここへ来ないでくれる? 次戻ってきた時にまたいたら、今度こそ殺すから」
アイシアはそのままドラゴンの姿に戻ると飛び去って行った。
「……」
残された俺達はしばらく無言になる。
「……ロイごめんなさい。姉様はいつもあんな感じだから」
沈黙を破ったのはフラウだ。その声音には元気がない。
「いや、ここにフラウの姉ちゃんが住んでいたことも想定外だし、ドラゴンスレイヤーのおっさんがフラウと間違えてアイシアを襲ったのも想定外だ。……仕方ないさ」
俺は肩を落とすフラウに声をかける。
「でも、このままじゃいけないと思うんです。私も姉様も……。だって私のせいで姉様が殺されかけたんですよ? それなのに何もできないなんて嫌です」
フラウは涙ぐんだ瞳で訴えかける。
「そうだな。……一緒に飲んだ手前少し気が引けるが、ドラゴンスレイヤーのおっさんを捕まえてアイシアのところに引っ張っていったら機嫌直してくれるかな?」
俺は冗談交じりに提案した。
「そうですね。……でも、相手は姉様を追い詰めた相手です。無理はしないでくださいね」
フラウは心配そうな顔でこちらを見つめる。
「大丈夫だよ。なんてったって俺は最強のドラゴンライダーで救世主になる予定の男だし、なによりフラウがいてくれるからな」
俺は笑顔で答えた。
「ありがとうございます。……なんだか、ロイはいつでも前向きで本当に凄い人ですね。そんな人に会えてよかった……」
フラウも微笑みを返してくれた。そして、彼女の身体が淡く光を放つ。つられるようにして、俺の身体もぼんやりと光り始めた。
「え!? なんですかこれ? 一体どうなって……」
フラウは戸惑っているようだ。
「フラウ! 落ち着いてくれ。俺にも何が起こっているのか分からないんだ!」
俺は焦ってフラウの手を握る。
「あ……ごめんなさい。……なんだか、力が抜けていくみたいで……」
フラウの声は弱々しい。
「フラウ、しっかりしてくれ。これからおっさんを捕まえてアイシアのところに行くっていうのに、こんなところで倒れられたら困るんだよ」
俺は必死に呼びかけるが、フラウは力なく首を横に振る。
「ごめんなさい。私にはもう時間が無いみたいなんです」
「どういうことだよ?」
「ロイ、私はロイに黙っていたことが一つだけありました」
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「守護龍がドラゴンライダーと契約するのは一度だけ。契約相手を失った守護龍は普通、守護龍の役目を子どもに委ねると、寿命を迎えるまで永い眠りについてほとんど姿を現すことはありません」
「で、でもフラウは俺の前にマリオンとかいうやつと契約してたんだろ?」
「はい。……私がロイと契約したのは本来掟破りなんです。守護龍とドラゴンライダーの契約はその性質上、両者にとってとても負担が大きい。二度も人間に魔力を譲渡した私は、きっともう限界だったのでしょう」
フラウは悲しげに笑う。
「そ、そんなこと急に言われても……どうして……」
俺は激しく動揺していた。きっと、フラウと俺が完全契約を結んだのが引き金だったのだろう。彼女がやたらと俺との交尾を望むようになったのも、自分の死期を悟っていて、その前に子孫を残したいという本能だとしたら頷ける。
……でも、そんなこと王宮図書館の書物にも、守護龍の書にも書かれてなかったぞ?
「ごめんなさい。ロイは私の命を救ってくれたのに、私は何も恩返しができませんでした」
フラウの目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「……そんなこと言うなよ。俺はフラウのおかげでここまでやって来れたんだぜ。俺は君に何度も助けられてきたし、君のことを大切な仲間だと思ってる」
俺はフラウを励まそうと言葉をかける。
「仲間……それだけですか?」
「いや……フラウは世界一大切な恋人だよ」
「嬉しい……。ロイはやっぱり優しいですね」
フラウは嬉しさに顔をほころばせる。しかし、その表情はすぐに曇ってしまった。
「もう時間がありません。私が動けるうちに女神との決着をつけたいところですが……ふぅ」
フラウの言葉はそこで途切れた。疲れた様子で息をついている。あまり無理しない方がよさそうだ。でも、アイシアが帰ってくる前にここから出ないといけない。
「……立てそうか?」
俺はフラウに手を差し伸べる。
「はい」
フラウは俺の手を取る。なんとか立ち上がることができたものの、彼女の足取りはかなり危うい。
「俺がおぶっていこうか? それなら多少楽になるだろ?」
俺はフラウの身体を支えるように腕を伸ばす。
「ありがとうございます。では、お願いしますね」
フラウは背中に体重をかけてくる。
「じゃあ行こうか」
俺はフラウを背負って歩き出す。……そういえば、ドラゴンスレイヤーのおっさんはどこに行ったんだろうな。まさかとは思うけど、俺たちの後をつけてきていたりしないだろうか。
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