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第12話 ロリはロリ
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「なんですの藪から棒に」
結は白米を口に運びながら尋ねる。
「結さんは友達に対して冷たすぎますわ。もう少し心を許してもいいんですのよ? ......例えば、『お姉ちゃん』と呼んでくれたりとか」
「どうしてあなたのことをそんな呼び方しなければいけないのか、純粋に意味がわからないのですが」
「そうですわね! わたくしと結さんは恋人同士なのですから、確かに『お姉ちゃん』はおかしいですわね!」
「......どういう脳みその構造してますの?」
もはや怒る気にもなれなかった結は呆れつつ卵焼きを食べ終わり、次にタコの形をしたウインナーにフォークを差した。すると、それに目ざとく気づいた乃慧流が期待の眼差しで結を見つめる。結はその無言の要望を受け流してそれを自分の口に入れ、咀嚼するとよく味わってから静かに飲み込むと、小さくため息をついて尋ねた。
「何か?」
「えっと……」
明らかに何かを期待する表情の乃慧流を見て、結はまた始まったかと言わんばかりに頭を抱えた。
「......ご馳走様ですわ」
「結さん、わたくしにあーんしてあーん!」
「うるさいですわね......死んでも御免ですわ」
「では結さん! 食後にパイなどいかがでしょう?」
「......私、スイーツの味にも少しうるさいですわよ?」
結が面倒くさそうに応じると、乃慧流は目を輝かせた。
「ええ、ええ! では是非ともわたくしのパイを味わってくださいませ!」
そう告げると、乃慧流はセーターを脱ぎ始める。
「一体何をなさいますの……?」
全くこの状況に慣れていない結はとりあえず困惑の言葉を口にしてみたが、実のところある程度彼女の思考が理解できていた。
(思えば……乃慧流さんのせいでエキセントリックな状況に慣れすぎて、彼女がなにをしてきても無の境地に到れるようになってきた気がしますわ……)
冷めた瞳で見守る結を尻目に、乃慧流は制服の上を脱ぎ、さらにシャツのボタンを開けて下着に包まれたたわわな胸元を露出させる。
「さあ結さん、遠慮なく召し上がってくださいな。わたくしの渾身の『パイ』を!」
「......」
期待に満ち満ちた眼差しを向けてくる乃慧流をまるでゴミのように見つめてから、結は澄ました顔で弁当箱を片付け、何事も無かったかのように教室に戻ろうとする。
が、当然乃慧流はそれを許さなかった。彼女は結の前に屋上の出口を塞ぐように立ちはだかる。そして胸の下に両腕を添え、たゆんと蠱惑的に揺らしながら甘い声を出した。
「結さん♡」
「お呼びでなくてよ? さっきから気持ち悪いにも程がありますわ」
結は眉間を指で押さえながら無遠慮な物言いをすると、乃慧流の脇の下をすり抜けて出口へと向かおうとする。
しかし乃慧流は諦めるということを知らず、結の身体に抱きつこうとしたが、結はその手を掻い潜るようにして足早に去っていってしまった。
「......やりますわね」
逃がした獲物に対し小さく舌を出した乃慧流は、結が去っていった方にしばらくただならぬ視線を向けていた。
☆ ☆
放課後、結が荷物をまとめて廊下に出ると、当然のように教室前で待機していた乃慧流が横に並んできた。
「結さん、部活どこに入るか決めましたの?」
「......」
乃慧流を無視してすたすた歩く結だが、彼女は全くめげずにその背中を追いかけてくる。
「わたくし、結さんがどんな部活に入るのか、興味がありますわ」
「ついてこないでもらえます?」
鬱陶しそうにそう言いながら振り返った結は、これ以上ないほどに嫌そうな顔を作ると、はっきりと拒絶するように告げた。
「私がどの部活に入ろうがあなたには一切関係ないでしょう?」
「関係ならありますわ。私と結さんは『友達』ではありませんか。もっと結さんのことが知りたいですわぁ」
「鬱陶しいですわね」
もはやその場で蹴りの2、3発はお見舞いしたいところだが、さすがに目上の人間(厳密には違うのだが)の前でそんな無礼な真似をするわけにはいかない。結が乃慧流をあしらうためにどんな言葉を選ぶか悩んでいると、ふと目の前の女が不穏な空気を醸し出してきたことに気づいた。
「まあ、教えたくないならそれでもいいですわ。こちらには優秀な情報屋がいますので」
「......はぁぁ」
(どうしてこう厄介な人と友達になってしまったんでしょうね……)
結がため息をつくと、乃慧流はその顔を覗き込みながら尋ねてくる。
「で、どうしますの?」
「どうって?」
「入る部活についてですわ」
「......部活に入る気はありませんわ。ただ、使用人たちには部活をやっていると伝えてあるので、適当に時間潰してから帰りますわ」
「あら」
結の返答に、乃慧流は少し驚いたような表情をしていた。
「部活動はお友達を作るチャンスですわよ?」
「分かってますわよそんなこと。でも、私には無理でしたわ。この前も囲碁将棋部に見学に行きましたが──」
その時のことを思いだしたのだろう、結は虚ろな目をするとぽつりと零す。
「私のような人間が馴染めるような場所ではなく......」
「……」
「とにかく! どんな場所でも大体そうでしたけれど、人間関係なんて煩わしいだけなのです。私には『ぼっち』がお似合いでしてよ」
「勿体ないですわねぇ……今だってわたくしと話していてこんなに仲を深めることができているんですのに」
そう言って自分の胸をゆさっ、と揺らしてみせる乃慧流を冷めた目で見つめ、結は早口にまくしたてた。
「あなたが特殊なのですわ。普通の人は私を『大企業社長の孫娘』とか『元裏社会系の娘』のようなレッテルを貼って距離をとって接しますわ。そこに憐れみや好奇心、嫉みを含んだ禍々しい視線を向けながらね」
「そうなんですか?」
「そうですわよ」
さも当たり前のことのように告げた結の言葉を真に受けて神妙な表情を浮かべる乃慧流を見て、結は思わず自嘲気味にふふふっと笑い出す。それを見て乃慧流は首を傾げた。
「ロリはロリ。それ以上でも以下でもありませんわよ?」
「……喋りすぎましたわね。このお話はこれでお終いですわ」
そう言って話を無理やり終わらせると、結はそのまま歩き去ろうとした。
だが、またしても乃慧流によって行先を阻まれてしまう。
「どういたしましたの?」
もはや本心を隠す気もなかった結は苛立ちを隠さずに尋ねる。すると、乃慧流は満面の笑みを浮かべながらとんでもないことを言ってきた。
「入りましょう! 囲碁将棋部に!」
結は白米を口に運びながら尋ねる。
「結さんは友達に対して冷たすぎますわ。もう少し心を許してもいいんですのよ? ......例えば、『お姉ちゃん』と呼んでくれたりとか」
「どうしてあなたのことをそんな呼び方しなければいけないのか、純粋に意味がわからないのですが」
「そうですわね! わたくしと結さんは恋人同士なのですから、確かに『お姉ちゃん』はおかしいですわね!」
「......どういう脳みその構造してますの?」
もはや怒る気にもなれなかった結は呆れつつ卵焼きを食べ終わり、次にタコの形をしたウインナーにフォークを差した。すると、それに目ざとく気づいた乃慧流が期待の眼差しで結を見つめる。結はその無言の要望を受け流してそれを自分の口に入れ、咀嚼するとよく味わってから静かに飲み込むと、小さくため息をついて尋ねた。
「何か?」
「えっと……」
明らかに何かを期待する表情の乃慧流を見て、結はまた始まったかと言わんばかりに頭を抱えた。
「......ご馳走様ですわ」
「結さん、わたくしにあーんしてあーん!」
「うるさいですわね......死んでも御免ですわ」
「では結さん! 食後にパイなどいかがでしょう?」
「......私、スイーツの味にも少しうるさいですわよ?」
結が面倒くさそうに応じると、乃慧流は目を輝かせた。
「ええ、ええ! では是非ともわたくしのパイを味わってくださいませ!」
そう告げると、乃慧流はセーターを脱ぎ始める。
「一体何をなさいますの……?」
全くこの状況に慣れていない結はとりあえず困惑の言葉を口にしてみたが、実のところある程度彼女の思考が理解できていた。
(思えば……乃慧流さんのせいでエキセントリックな状況に慣れすぎて、彼女がなにをしてきても無の境地に到れるようになってきた気がしますわ……)
冷めた瞳で見守る結を尻目に、乃慧流は制服の上を脱ぎ、さらにシャツのボタンを開けて下着に包まれたたわわな胸元を露出させる。
「さあ結さん、遠慮なく召し上がってくださいな。わたくしの渾身の『パイ』を!」
「......」
期待に満ち満ちた眼差しを向けてくる乃慧流をまるでゴミのように見つめてから、結は澄ました顔で弁当箱を片付け、何事も無かったかのように教室に戻ろうとする。
が、当然乃慧流はそれを許さなかった。彼女は結の前に屋上の出口を塞ぐように立ちはだかる。そして胸の下に両腕を添え、たゆんと蠱惑的に揺らしながら甘い声を出した。
「結さん♡」
「お呼びでなくてよ? さっきから気持ち悪いにも程がありますわ」
結は眉間を指で押さえながら無遠慮な物言いをすると、乃慧流の脇の下をすり抜けて出口へと向かおうとする。
しかし乃慧流は諦めるということを知らず、結の身体に抱きつこうとしたが、結はその手を掻い潜るようにして足早に去っていってしまった。
「......やりますわね」
逃がした獲物に対し小さく舌を出した乃慧流は、結が去っていった方にしばらくただならぬ視線を向けていた。
☆ ☆
放課後、結が荷物をまとめて廊下に出ると、当然のように教室前で待機していた乃慧流が横に並んできた。
「結さん、部活どこに入るか決めましたの?」
「......」
乃慧流を無視してすたすた歩く結だが、彼女は全くめげずにその背中を追いかけてくる。
「わたくし、結さんがどんな部活に入るのか、興味がありますわ」
「ついてこないでもらえます?」
鬱陶しそうにそう言いながら振り返った結は、これ以上ないほどに嫌そうな顔を作ると、はっきりと拒絶するように告げた。
「私がどの部活に入ろうがあなたには一切関係ないでしょう?」
「関係ならありますわ。私と結さんは『友達』ではありませんか。もっと結さんのことが知りたいですわぁ」
「鬱陶しいですわね」
もはやその場で蹴りの2、3発はお見舞いしたいところだが、さすがに目上の人間(厳密には違うのだが)の前でそんな無礼な真似をするわけにはいかない。結が乃慧流をあしらうためにどんな言葉を選ぶか悩んでいると、ふと目の前の女が不穏な空気を醸し出してきたことに気づいた。
「まあ、教えたくないならそれでもいいですわ。こちらには優秀な情報屋がいますので」
「......はぁぁ」
(どうしてこう厄介な人と友達になってしまったんでしょうね……)
結がため息をつくと、乃慧流はその顔を覗き込みながら尋ねてくる。
「で、どうしますの?」
「どうって?」
「入る部活についてですわ」
「......部活に入る気はありませんわ。ただ、使用人たちには部活をやっていると伝えてあるので、適当に時間潰してから帰りますわ」
「あら」
結の返答に、乃慧流は少し驚いたような表情をしていた。
「部活動はお友達を作るチャンスですわよ?」
「分かってますわよそんなこと。でも、私には無理でしたわ。この前も囲碁将棋部に見学に行きましたが──」
その時のことを思いだしたのだろう、結は虚ろな目をするとぽつりと零す。
「私のような人間が馴染めるような場所ではなく......」
「……」
「とにかく! どんな場所でも大体そうでしたけれど、人間関係なんて煩わしいだけなのです。私には『ぼっち』がお似合いでしてよ」
「勿体ないですわねぇ……今だってわたくしと話していてこんなに仲を深めることができているんですのに」
そう言って自分の胸をゆさっ、と揺らしてみせる乃慧流を冷めた目で見つめ、結は早口にまくしたてた。
「あなたが特殊なのですわ。普通の人は私を『大企業社長の孫娘』とか『元裏社会系の娘』のようなレッテルを貼って距離をとって接しますわ。そこに憐れみや好奇心、嫉みを含んだ禍々しい視線を向けながらね」
「そうなんですか?」
「そうですわよ」
さも当たり前のことのように告げた結の言葉を真に受けて神妙な表情を浮かべる乃慧流を見て、結は思わず自嘲気味にふふふっと笑い出す。それを見て乃慧流は首を傾げた。
「ロリはロリ。それ以上でも以下でもありませんわよ?」
「……喋りすぎましたわね。このお話はこれでお終いですわ」
そう言って話を無理やり終わらせると、結はそのまま歩き去ろうとした。
だが、またしても乃慧流によって行先を阻まれてしまう。
「どういたしましたの?」
もはや本心を隠す気もなかった結は苛立ちを隠さずに尋ねる。すると、乃慧流は満面の笑みを浮かべながらとんでもないことを言ってきた。
「入りましょう! 囲碁将棋部に!」
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