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第2章
第33話
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「はあっ……。」
リリは物憂げそうな顔で大きなため息を付いた。
エルがリリの静止を振り切り迷宮に旅立ってから、1ヶ月の時が過ぎていた。その後のエルの行方はようとして知れず、不安だけが募る。もしや魔物の凶手に掛かったのではないかと悪い想像ばかりが浮かんでは、リリの年相応の控え目な胸は千切れんばかりの悲しみに包まれた。
金の雄羊亭の酒場にはライエルやカイ達のパーティの姿もあった。どの顏色も優れず、沈んだ昏い表情を湛えていた。
ライネルも普段の陽気な雰囲気は影を潜め、深い後悔に苛まれていた。
リリにエルのことを相談されても、当初はエルの境遇ならしょうがないと、少しぐらい迷宮に籠って憂さ晴らしした方がストレス解消になるだろうと楽観視してしまったのだ。
パーティのお目付け役であるエミリーでさえも、エルには適度なガス抜きは必要であろうと迷宮に行くことを止めなかった。エルが帰らなくなって1週間過ぎたあたりで、ようやくことの重要性に気が付いたのだ。慌ててエルが滞在していると思われる、16、7階層付近を虱潰しに探したが見つける事は出来なかった。それからただ徒に時間を浪費するだけで、1ヶ月経った今でさえエルの行方は分からなかった。宿に戻れば笑顔で出迎えてくれる弟分がいない。それだけで、ライネル達の心は火が消えたように消沈してしまっていた。
同様にカイ達も皆一様に沈んだ表情を浮かべていた。エルから連絡が無くなってしばらくした後、どうにもおかしいと金の雄羊亭に訪れ、事のあらましをリリから聞いたのだ。恐ろしい魔神との遭遇、そして臨時パーティの仲間の死。その後の迷宮探索からのエルの失踪。カイ達が気付いた時には既に手遅れの状況だったのだ。
カイ達の成長が著しいといっても、彼等では10階層を探索するのが限度で、とてもエルの行ける階層には探しには行けない。協会の冒険者酒場でエルの情報を聞き込みしたりしてなんとか探そうと試みたが、上手くいかなかった。
カイ達にとって、エルは迷宮都市で初めてできた友である。最初の出会いだけは良くなかったがその後打ち解け、お互いの出自や夢を語り合う仲にまでなった。その友の行方がわからないのだ。どんなに懸命に探そうともエルの行方は分からず、ただ時だけが過ぎていく。最悪の予想が頭をちらつくこともあったが、その度に頭(かぶり)を振っては切にエルの生存を願うのだった。
「ライネルの旦那、やりましたぜ!!」
そんな昏い雰囲気を打ち壊す様に、オルドが酒場に駆け込んできた。オルドの表情は明るい。エルについて何らかの情報を得たのは間違いないだろう。
全員が座っていた椅子から一斉に立ち上がり、オルドの方に振り向いた。ライネルが詰問するかのように話を急かした。
「オルド、エルの居場所が分かったのか?
早く言えっ!!」
「旦那、そんなに急かさないでくださいよ。
お察しの通り、エルの居場所が分かりやした」
オルドの肯定に、全員が喜びを露わにした。この様子ならエルは死んではいないだろう。ライネルは安堵の表情を浮かべながらも、再度オルドに話す様に促した。
「いいからさっさとしゃべれ。
今の俺は気が短いんだ」
「へへっ、すいやせん。
エルの居場所についてですが、驚かないでくだせえ。
エルは今29階層にいるようです」
「29階層!?」
予想外の数字に驚きが広がる。オルド達の現在の到達階層は30階層であるから、ほとんど変わらない。
それが本当なら、たった1ヶ月で自分達の数年分の成果に落ち着いたということだ。エルの類稀な才能と凄まじい研鑚の末の成果だとしても、俄には信じ難い事実である。だが、ライネル達の予想を上回る脅威的なスピードで迷宮を攻略していたなら、エルの行方が掴めなかったのも頷ける。
「それは本当か?」
「へいっ。
もしかしたら30階層に行っているかもしれやせんが、あるパーティが29階層の奥地で翡翠色の道着と薄い黄土色の籠手をした中肉中背の少年に出会ったそうです。
しかも、単独行動していたそうなのでまず間違いないかと……」
「その装備でソロなら、エル君に間違いなさそうね」
エミリーもオルドの得た情報が正しいと判断したようで、ほっと安堵の息を吐いた。
「ただ、悪い情報もありやす。
そのパーティは運悪く魔物達の集団と出会ってしまい乱戦になってしまったんですが、そこにエルが横入りしてきたそうです」
「エルがか?
あのエルがそんなことするとは思えないが……」
「まず続きを聞いてくだせえ。
エルはパーティに目もくれず、魔物目掛けて襲い掛かったそうです。
禍々しい漆黒の闘気に身を包み、その拳や足が放たれる度に魔物達は絶命し、あっという間に魔物の集団を屠り去ったそうです。
その後どうやったかは分かりやせんが、魔物達の魔素が迷宮に還るのではなくエルに吸い込まれていったようです。
冒険者達はエルに文句が言いたくて近寄ったんですが、鬼の様な表情に何も言えなかったそうです。
とても正気には見えなかったらしいですぜ」
オルドの報告に皆押し黙り、沈黙が訪れた。
エルの余りの変貌ぶりに理解が追い付かなかったのだ。エルは純朴で、人を和やかな気分にさせる穏やかな笑顔を浮かべる少年だ。
魔物との闘いでは激しい闘争心を見せる場合もあるが、普段は人見知りの所もあるまだ幼さの抜けない童顔の少年である。鬼の顔とは全くもって正反対の温か味のある笑顔が特徴の少年だ。誰かの見間違いではないかとさえ思えてくる。
「本当にそいつはエルなのか?
エルは綺麗な純白の気を使うし、鬼の様な顔したエルなんて、今迄一度も見たことないぜ」
カイが疑問を口に出した。オルドの報告は、いつものエルからは想像も付かなかいほどかけ離れていたからだ。
「いやっ、オルドの報告に間違いないだろう。
その少年は間違いなくエルだ。
俺に心当たりがある」
「ダム?」
寡黙な翠熊族の壮年の戦士ダムが重々しく口を開いた。パーティ間の話し合いでも二言三言しかしゃべらないダムがだ。何か思い当たる事があるのだろう。
「ダム、何を知っている?
教えてくれないか?」
「あれは30年くらい昔のことだろうか。
理由は解らないが、俺の村が暗黒神の高位神官に襲われたことがある。
その神官は御霊喰いの邪法を使い、仲間達の命を吸い取る度に悪魔の様な変貌を遂げ、終には真面に言葉もしゃべれない、ただ殺戮行うだけの存在と化したのだ。
あいつを討ち取るために、俺の村は壊滅的な被害を被った」
「エルがその邪法を使ったと?
あいつは武神流の信徒だろう?」
ダムの言葉に驚愕を色を隠せないライネルが否定の言葉を発する。
「落ち着けっ!
俺はエルが御霊喰いを使ったとは言っていない。
先程オルドが魔素が迷宮に還らずエルに吸い込まれたと言ったが、御霊喰いに似た何らかの技法を身に付けたと考えている。
魔素だけではなく魔物の魂も吸収するような技法をだ。
そのせいで気も黒く変質し、鬼の様になってしまったのだ」
ダムの予想は的を得ているように思えた。そうでなければエルの変貌ぶりに説明がつかないのだ。
気とはその人の性格や本質が色となって現れると言われている。長い年月が経過して変化することは稀にあり得るが、気の色とはそうそう変わるものではない。
エルの気の質が変化するような何らかの要因、例えば魔物の魂を取り込むような事態が起きたと考える方が妥当だ。
それに加えて、正気を失い鬼のように成り果てた説明もつく。
カイが震える声で疑問を呈した。
「魔物の魂を取り込んだとして、エルは元に戻れるのか?」
「わからん」
ダムの無情な言葉に、シャーリーやミミ、そしてリリから悲痛な声が漏れる。このままエルを治す術がないのかと、悲嘆に暮れそうになった。
「わからんが可能性ならある。
御霊喰いを使い完全に魔人と化したならもう2度と戻らんが、オルドの話から察するに、エルにはまだ人を襲わないだけの分別があるようだ。
現時点なら生命の女神の魔法、邪心解放ならエルの心に吸い込まれた魔物の魂を開放できるかもしれん」
「その魔法なら私が修めております」
ダムの言葉に生命の女神の神官クリスが応えた。
希望が見えたことで皆に笑顔が戻る。
「だが、魔法を掛けようとすれば抵抗されるだろうし、正気を失ったエルに攻撃されるかもしれん」
「それなら俺の出番だな。
エルが正気に戻るまで押し止めておけばいい」
ライネルが力強く断念した。このままエルを魔人にさせる積りは微塵もなかった。茶化されては気恥ずかしげにはにかむ、優しい少年に戻って欲しかったのだ。
「急成長したエルは、俺達の手に余るかもしれんぞ?」
「覚悟の上だ。
矢面には俺が立とう。
事に依ったら、俺の命を賭けてもいい。
ダム、エミリー、クリス。
すまんが、俺に付いて来てくれないか?」
「ライネル……」
ライネルの熱い思いが仲間達の心を揺さぶった。長年パーティを共にしていたが、こんなに激情に駆られたライネルの姿を見たことがなかい。人を食った様な笑みを浮かべ、豪放磊落を地で行くのがライネルという男なのだ。エルにかける並々ならぬ思いには、何か訳があるのだろう。
皆の疑念に答えるように、ライネルは目を瞑り静かに語り出した。
「エルは姿形は似ても似つかないが、その振舞いや性根は俺の弟にそっくりなのさ。
死んだ俺の弟にな」
「ライネル、あなた……」
「そういえば、エミリーには酔った時に少しだけ話したことがあったな。
俺は田舎の騎士の家の出だ。
親は自分がしがない地方騎士なのが、心底悔しかったんだろう。
俺にとっては迷惑なことだが、親父は俺を城勤めの騎士にしたくて、幼い頃から厳しく扱いたんだ。
逆に弟は病弱でな、いつも寝たきりで俺の話をうれしそうに聞いていたよ。
俺が部屋に来るのをいつも心待ちにしていた、可愛い弟だった」
ライネルが一度言葉を切って、ゆっくり息を吸い込んだ。目を閉じたまま何かに耐える様に押し黙っている。これから話すことは実際にライネルの身に起きた、悲愴なできことなのだ。
しばし後、意を決するとライネルはゆっくりと話を再開した。
「悲劇が訪れたのは、俺が騎士隊への入隊試験を受けに王都に行っていた時のことだ。
俺の村が地竜の群れのスタンピードに巻き込まれんだ。
その事を聞きつけ、村に戻った時にはもう後の祭りさ。
慣れ親しんだはずの村の姿は何処にも無かった。
何もかも跡形も無くなり、俺は弟の遺骨さえ見つけられなかった。
俺は間に合わなかった。
全ては手遅れだったんだ……」
ライネルの低く野太い声での、悔恨の念の篭った独白だけが辺りに響く。
人に歴史ありとはよく言ったものだが、快活で陰気な様を見せたことがないライネルに、そんな過去を持っていたなんて思いもよらなかった。皆一言も発せない。
だが、ライネルがエルに執着していた理由としては、納得のいく話だ。エルの姿を弟に重ねていたのだろう。ライネルは激闘の後でさえも、エルを見つけると疲れも見せず、楽しそうに構っていた。時には本当の弟に接するように教え諭すこともあった。また時には、兄が弟に自慢するように冒険譚を聞かせることもあった。エルと過ごしている時は、本当にライネルはうれしそうだったのだ。
「感傷と言われればそれまでだが、俺はエルを、弟を失いたくないんだ。
暴走したエルは恐らく強いだろう。
下手したら敵わないかもしれない。
だが俺は、もう2度と間に合わないなんて後悔をしたくないんだ!!
頼む、俺に付いて来てくれ!!」
ライネルの激しい思いが仲間達の心を揺さぶる。
ライネルに言われなくとも、エミリーやクリス、そしてダムにしても、元々自分の可愛い弟分をみすみす魔人にさせる積りはなかった。
ライネルの思いに堪える様に、皆真剣な表情になる。
「ライネル、安心して。
私もエル君をこんな所で失う積りはないわ」
「ええ、私もです」
「暴走した弟は、無理やりにでも叩き起こしてやらないとな」
「みんな、すまない」
ライネルが頭を下げようとするが、ダムに押し止められる。そして、首を横に振られた。自分もエルを助けたい思いは同じだから、そんな行動は必要ないということだろう。
「はあっ、悔しいけど俺達じゃどうにもならない。
ここはライネルさん達に任せるしかないか。
力がないってのは、本当に歯痒いな」
「坊やは無謀な挑戦をしないだけ、まだましな方さ。
自分の実力に見合った行動ができない冒険者は、早死にするからな。
ここはライネルの旦那方に任せるのが、吉ってものさ」
悔しいそうに呟くカイに、オルドが年長者らしく格言と共に慰める。オルド自身も自分の力のなさに苛立たしい思いをしているが、おくびにも出さない。口に出して嘆いてもしょうがないことを理解しているが故である。
「みなさん、エルのことをお願いします」
「旦那っ、よろしくお願いしやす」
「「「お願いします」」」
オルドやカイ達、そしてリリがライネル達に願いを託す。
望みを託されたライネル達は、その思いを酌み深く頷いた。必ずエルを取り戻すと、各々が自分の言葉で誓いを口にする。
その後、ライネル達は意気軒昂と気を漲らせ、迷宮に赴くのだった。
30階層。
そこは、海原にぽつんと浮かぶ孤島を探検する階層だ。
一周するのに半日程度の小島である。
迷宮都市には四季があるが、この島には存在しない。
ここは常夏の島だ。
生態系は迷宮都市とは全く異なり、珍しい動植物が見受けられる。
魚貝類も一風変わったものが見られる。魔物さえいなかったら保養地として栄えたかもしれない。
しかし、ここは魔物の楽園でもある。
一筋縄ではいかない凶悪な魔物達が待ち構えている。ライネル達がこの階層に到達したのは、数ヶ月前のことだ。31階層への転移陣を護る守護者を倒すため、じっくり実力を付けていた所である。この階層の守護者はどれも強力だ。成長著しいエルをもってしても、そう簡単には倒せない難敵だろう。
この30階層を越えられたら、もはやライネル達の力ではエルを救えない。そして、エルが人を襲うようになったら手遅れだ。賞金首として討伐されるのがおちだろう。
この階層に居てくれと願いながら、エルの探索を開始するのだった。
ライネル達の願いが通じたのか、数時間後にエルを発見した。
エルは波打ち際で大勢の魔物達と闘いを繰り広げていた。1ヶ月も迷宮に篭りきりだったエルは、短く刈り揃えた髪もやや伸びている。靴も無くなったのか、裸足のまま闘っている。そして何より夢を抱き素直な輝きを放っていたエルの目は、瞳が見えずまさに鬼のように凶々しい光を湛えていた。エルとは思えない、いや思いたくはないほどの変貌ぶりだ。
オルドの話通り漆黒の気を纏い、ライネル達でも苦戦する魔物でさえやすやすと討ち取っていく。しかも、砂場だというのに動きが遅くなった印象も受けない。足が動いていないのに高速で砂の上を移動したり、攻撃を放った体勢のまま滑るように移動している。武神流の移動術なのであろうが、横から見ているライネル達でさえ時偶見失うほどの早さだ。恐ろしいまでの技の冴えであった。
魔素や魂を吸収し心身が成長しただけならまだやりようがあったが、エルは武神流の技も見違えるほど上達していた。1ヶ月前にエル自身の口から聞いていた段階とは、比べ物にならないほど成長している。また、嬉々として魔物を仕留めるエルの姿は、修羅さながらの姿であった。ライネル達に冷たい汗が流れる。あの場で襲われたら、抵抗する間もなく殲滅される未来が浮かんだ。
「砂場じゃ駄目だ。
俺達の動きが阻害されるだけで、圧倒的に分が悪い。
エルが魔物を仕留め終って砂浜から離れたら尾行して、しっかりした地面のある場所で仕掛けよう」
「ええ、その方が良さそうね」
「俺が回り込んでエルに話し掛ける。
その間にクリスが邪心解放で先制してくれ。
上手くいけば、それでエルは正気に戻るだろう。
戻らなかったら、戻るまで何度でも呪文を掛ければいい」
「わかりました」
クリスは金糸の髪を揺らし重々しく頷いた。自分が、エルを正気に戻すためのキーパーソンだと理解しているからだ。クリスの魔法に全てが掛かっているといっても過言ではない。
「ダムはクリスを守ってくれ。
エルをクリスに近づかせないでくれ」
「わかった」
「エミリーは上手くエルを牽制してくれ。
エルが正気に戻らず襲ってきたら、手荒なことをしてでも動きを止めてくれ。
まあ、今のエルなら俺達の攻撃も通じない可能性があるけどな」
「ええ、わかったわ。
心配を掛ける悪い弟分には痛い目を見せてでも、目を覚まさせないないとね」
皆エルの変わりように驚いていたが、希望を失っていない。何としても、エルを正気に戻すつもりであった。
ほどなくして全ての魔物を狩り尽くしたエルが移動を開始するのを待って、ライネル達は尾行を開始した。
そして、砂が土に変わり疎らに草が生えた辺りで、ライネルが遠回りしてエルを追い越し声を掛けた。
「エルっ!!
こんな所で何をしている?
みんなも心配しているぞ。
さあ、一緒に宿に戻ろう」
ライネルが大声で話し掛けるが、エルは全く反応を示さない。
興味もないとばかりにライネルの横を通り過ぎようとする。ライネルのことを認識できなくなっているようだが、人を襲わないだけの見境はあるようだ。まだ間に合うかもしれないと、ライネルはほっと胸を撫で下ろした。
だが、ここで去ってもらっては困る。今正気に戻してやるからなと、ライネルはエルの肩に手を伸ばし、再び話し掛ける。
「待て!!
エルっ、本当に俺が分からないのか?」
肩を掴もうとした手をエルはわずらわしげに打ち払った。
攻撃は加えないが、自分の邪魔をするなとばかりの態度だ。
茶化された頬を膨らませていた少年の見る影もない。
だが、ライネルが時間を稼いだおかげでクリスが呪文を唱え終わる。
「邪心解放!!」
クリスの力ある呪文の言葉に従い、エルの足元から天に向かって光の柱が立ち上がった!!
ライネル達を敵と見なさず、不意を突かれたエルはたちまち光の柱に飲み込まれてしまう。
すると、エルとは思えない獣の様な叫び声と共に、体の中から黒く禍々しい魂、魔物の魂が天に昇って行くではないか!!
ダムの予想通り邪心解放は効果があり、見事にエルの中から魔物の魂を開放しているようだ。
エルが激しく身を捩り、頭を押さえては苦痛にのたうっている。弟分のそんな姿を見るのは忍びなかった。だが、魔物の魂を抜くためには必要な行為なのだ。魔法が終わった後には元の優しい少年に戻ってくれることを、ライネル達は願った。
はたして光の柱が消えた後には、まだ正気を失い鬼の様な目のエルがいた。
完全にこちらを敵と見做しているようで、獣の様な唸り声を上げている。
クリスのマリスリバレーションで魂を解放できたが、エルが大量に取り込んだせいか、全てを解放できなかったようだ。
しかし、効果があったならば、正気に戻るまで何度でもエルに呪文を浴びせればいいだけだ。
ライネル達は素早く戦闘態勢を整えた。
「クリス、上出来だ!
エルが正気に戻るまで、何度でも魔法をぶつけてやれ!!」
「わかりました」
「皆は手筈通りに」
「「了解」」
ライネルの指示に従って、ダムがクリスの前に立ち、エミリーが自慢の弓に矢を番える。そしてクリスが再び呪文を唱え始めた。
ライネルはエルが動き出す前に先手必勝とばかりに、背に担いでいた身の丈ほどある大剣を抜き、雷神流の剣技で撃ちかかる。
「雷剣!」
大剣の刀身に雷を纏わせ、横薙ぎの斬撃をエルに放つ。無論手加減などしない。先程の戦闘をから、エルの実力は恐ろしいほど高いことを理解しているからだ。
油断すれば、やられるのはライネル達の方なのだ。
それに雷神流は気を属性変化させ、雷や風を操る流派である。雷なら相手を感電させ、麻痺させることもできる。エルを動けなくさせることが、ライネルの目的なのだ。
高速で胸の辺りに迫る斬撃を、エルは上体を反らすことによって回避した。
しかも、その状態のままクリスに向かって高速で移動している。人間としてありえない動きだ。エルにしても、一番の障害はクリスだと本能的に察しているのだろう。邪魔者を排除すべく一気にクリスに迫る。
クリスの前に仁王立ちしたダムは、左手に構えた大盾に気を貯めエルに突進した。
軍神流の気盾打である。
黒い魔鉱製の大盾に蒼い気を注ぎ込み、ダムの体重を乗せた盾での体当たりだ。
中柄のエルと巨体のダムとでは、体重差は激しい。ダムの巨体を受け止められず吹き飛ばされるかに思われたが、逆に吹き飛ばされ地面を転がったのはダムの方であった。
エルが上体を起こしダムとぶつかる際に、肩の側面を用いる発剄、纏震靠を放ったのである。
エルの強力な発剄の一撃は、ダムの気の攻撃をものともせず、軽々とダムを弾き飛ばした。
「ダムっ!?
くっ、気連射!」
エミリーがクリスに近づかせまいと、矢に気を籠め威力を増した気矢の連射技である、気連射(オーラバースト)を放った。
避け辛い胴回りを中心に無数の矢を放つ。加えて、クリスの方に近づけさせまいと、上手くエルの進行方向を遮るように幾つも矢を放っている。
後ろに下がるかと思われたエルだが、なんとエミリーの矢を気にも留めず前進するではないか。エルの全身を覆う漆黒の闘気が、鎧と見紛う程硬質化した。大量の気をつぎ込み、気の性質変化によって硬化させた気の鎧、纏鎧である。エミリーの矢は一矢として突き刺さることなく、虚しくエルの鎧に弾かれるだけであった。
邪悪な笑みを浮かべて、エルがクリスに迫る。
あと数歩でクリスに届くという所で、何とか体勢を立て直したダムが、再び横合いからシールドバッシュで突撃してくる。ダムの熊の様な巨大が高速でエルにぶつかっていく。
この技は大型の魔物をも弾き飛ばす、ダムの得意技である。
だが、悲しいかな、エルには通用しない。
興味ないとばかりに。膨大な漆黒の気を纏った前蹴りで迎撃されてしまう。ダムの魔鉱製の盾も気を用いているが、そんなものは歯牙にもかけず、エルの蹴りによって盾は凹み再び遠くで弾き飛ばされてしまう。予想はしていたが、エルの恐ろしい成長ぶりを目の当たりにすると、冷汗が止まらない。
ダムからクリスへと向き直ったエルが、ゆっくり拳を握る。
気は籠めていない。ライネル達を敵と認識しているようだが、どうやら殺すつもりはないようだ。クリスを殴って無力化する積りらしい。
一方、クリスはというとエルが眼前に迫るも、呪文を唱えるのを止めない。仲間を信じ、必死に言葉を紡いでいた。
エルがゆっくり拳を振り被った。
クリスに当たれば気絶させられそうな力を秘めた拳である。クリス目掛けて拳が放たれる刹那、側方からライネルが電気を纏った大剣をクリスとエルの間に挟むように突き出した。
エルは危なげなく後方に飛び退き、距離を取る事でライネルの突きを回避した。何とも憎らしいまでの余裕な態度だ。とはいえ、クリスとの間に割って入れたことで再び時間を稼げる。
ライネルは大剣を腰だめに水平に構え、エルに向かって突進する。そして、剣を突き出さずに体当たりのように体ごとぶつかりにいく。
エルは大剣をほんの少し横に移動すると、簡単に回避する。ライネルにしても、こんな攻撃が通用しないことは百も承知だ。
大剣を躱された瞬間に剣から手を放し、突撃の勢いを殺さずエルに掴みかかったのだ!
エルもこの攻撃を予想していなかったのか、ライネルに腕を掴まれてしまう。
ライネルが持ち前の剛力をもって押さえ付けようとするが、上手く行かない。直ぐに引き剥がされ、逆にエルに捕まってしまう。ライネルにしても30階層に到達した猛者である。加えて騎士になるべく厳しい訓練を積んできた下地がある。同階層の冒険者と比べても身体能力はかなり高い。
エルは身体能力を格段に向上させる神の御業、剛体醒覚を有している。エルが神の御業を行使しなければ、このまま押さえ付けられていたかもしれないが、現実は非情である。エルの恐ろしい膂力によってライネルは宙に浮かび、ぶんぶん振り回される。このまま投げ飛ばされそうとしていた所に、エミリーの魔法が飛んだ。
「風竜巻!!」
エミリーはライネルごと巻き込む様にエルを中心に竜巻を発生させたのだ!!
風神モウの信徒であるエミリーには風の縛めという、相手の動きを止める魔法はあるが、今のエル相手では一瞬の内に破られるとよみ、苦肉の策としてライネルを巻き込むのを承知で、この竜巻の魔法を唱えたのである。
驚いたエルはライネルを掴んでいた手を放してしまう。
ライネルは天高く舞い上げられ遠くに飛ばされてしまう。落下後の衝撃はかなりの痛みを伴うであろう。エミリーはライネルに心の中で謝った。
一方のエルはというと、飛ばされそうな暴風が巻き上がる竜巻の中でさえ、膨大な闘気にもの言わせ堪えている。信じられない肉体と気の力であるが、竜巻が収まるまでのわずかな間、目論見通りエルの動きを止めることに成功した。
「邪心解放!」
クリスの本日2度目の闇を払う聖なる光の魔法が、エルの身を包む。
光の柱の中で、苦しそうに吠えるエルの体内から無数の暗黒の魂が解放され天に昇って行く。
今度こそ、エルは正気に戻ったであろうか。
否が応でも期待が高まる。
ライネルは痛む身体を堪えつつエルに向かっていた。落下時に受け身を取り衝撃を抑えたが、それでも高所から落とされたのでかなりの痛みを受けたのだ。
「ライネル、ごめんなさい」
「いや、謝ることはない。
いい判断だった」
「私が回復させましょうか?」
「俺は自前の回復薬を飲む。
クリスは念のため、邪心解放の準備をしてくれ」
そう言い様に、ライネルは腰に下げた魔法の小袋から上級回復薬を取り出し、一気に飲み干した。
ダムも傷む身体をさすりながら、クリスの前に立つ。
竜巻の中で様子は分からないが、これでエルには正気に戻って欲しかった。
それは、ライネル達に共通する願いであった。
竜巻が収まった中心には、静かに目を閉じ佇むエルの姿があった。
逸る気持ちを押さえつつ、ライエルが一歩前に出てエルに話し掛ける。
「エル?
俺が解るか?」
願いを込めたライネルの問いに答えたのは、非情な現実であった。
見る間にエルの身から黒い気が吹き出し、見開いたエルの目は未だに狂気に満ちており、人間のする目ではなかった。
「邪魔を、するなあ!!」
クリスの聖なる魔法の効果があったのか、エルは言葉を取り戻したようだ。
もう一押しで、優しい穏やかな少年に戻るだろう。
だが、手負いの獣は恐ろしいように、エルの中の残っている負の部分が激しい抵抗を見せる。
今までライネル達を殺さぬよう、無意識に手加減していたエルが本気になったのだ。
エルの身から溢れ出した暗黒の気は荒れ狂い、暴風となって辺りに猛威を振るう。
そして、爆発的な加速をもって一番近くにいるライネルに急接近し、ライネルが身構える間もなく胸に漆黒の気を籠めた拳を突き出した。
その拳は簡単にライネルの鎧を砕き、ライネルの長身を小石を飛ばすかのように吹き飛ばした。地面を何度も跳ね飛ばされようやく止まった頃には、ライネルは激痛で地面に蹲っていた。
「「ライネルっ!?」」
仲間達の悲鳴が響く。
されど、エルの歩みは止まらない。
その表情はまさに鬼もかくやという、怖ろしげなものだ。
動かないライネルを心配しつつも、ダムやエミリーに戦慄がはしり、ごくりとつばを飲み込んだ。
何としてもクリスだけは守ろうと、心を奮い立たせダムが全身に気を纏わせると、エルの前に立ちはだかった。
エルは高速でダムに接近すると、今度はダムと激突する寸前で突如方向転換した。
向きを変え、エミリーに急襲したのだ。先ほどの竜巻を厄介に感じたのか、先に遠距離から攻撃を加える、邪魔なエミリーを倒しにかかった。
エミリーは驚愕に目を見開きつつも、矢を速射しエルの接近を阻もうとした。
だが、悲しいかな、本気になったエルの気と肉体を用いた本気の移動術は桁が違った。高速で飛来する矢を稲妻の様に駆け、躱しながら瞬く間にエミリーの元に辿り着いたのだ。
そして、優しく突き出すようにエミリーの下腹部に掌底を放った。見た目は嫋やかであるが、その掌の秘めたる威力は凄まじい。エミリーは強烈な衝撃を腹に受けると蹲り、呼吸も困難なほどの苦しみを味わった。
しばらくの間、動くことは叶わいだろう。
次々に仲間が倒れて伏していく。
エルの強さに慄きつつ、ダムは逆転の道を探っていた。ダム達の有利な点は、エルを倒さなくてもいいことだ。
邪心解放さえ当たればいいのだ。
エルが正気に戻れば、目的は達成できる。
力の差は歴然であるが、少しの間だけ時間稼ぎをすれば良い。それが自分の役目なのだ。そのためには、先程のライネルのように驚かせれば良いと、ダムは考えた。
無造作に歩み寄ってくるエルを前にして、あろうことかダムは剣と大盾を投げ捨てたのだ!
予想もしない事態にエルは訝しみ、歩調が鈍る。
ダムはそんなエルに男臭い笑みを浮かべると、握手を求めるかのように手を差し出した。闘っている人間に対する態度ではない。
エルがダムの元に辿り着いても、ダムの対応は変わらなかった。
エルはその手を打ち払い、ダムを殴り飛ばした。
しかし、ダムは立ち上がり再びエルに向かうと笑顔で握手を求める。
エルが殴り飛ばす。
するとまたダムが立ち上がり、手を差し出す。
エルが殴る。
それでもなお、ダムは笑顔を浮かべ手を出した!
終には、得体のしれぬものを見たかのようにエルが奇声を発し、全力で殴り飛ばすと、それきりダムは動かなくなった。
気絶したのだ。
エルは理解できない存在に恐怖を覚え、呼吸が乱れた。
だが、ダムは自分の目的を達成していた。
エルに武器を構え闘いを挑んだら、一合のもとに戦闘不能にさせられたことは、想像に難くない。
エルに理解できない、友好的な行動を取ったため、魔物の魂が少なくなったエルは混乱し、無意識に威力を減じたのだ。
そのおかげで、エルの拳を数発耐えることができたのだ。エルと相対しながらも、ダムは珠玉の時間を稼いだのである。
エルは理解不能な存在に寒気立ちつつも、クリスの前に立った。苛立ちか、怒りからかわからないが、身は震えている。さっさと目の前の敵を屠る心算のようだ。手に暗黒の気を集めている。
翻ってクリスはというと、ダムのおかげで呪文は唱え終わっていた。後は呪文の名を発し、魔法を発現させるだけだった。しかし、エルを見つめるだけで何もしない。魔法を躱されることを恐れたのだ。エルの高速移動術ならクリスの魔法を見てからでも、いとも簡単に回避できることは、容易に想像が付く。
エルが回避できないタイミング、すなわち攻撃した瞬間にクリスは魔法を発現させるつもりなのだ。そのためには、あの黒い気を纏った拳を受ける必要がある。クリスの身では耐え切れないかもしれないが、ライネルやエミリー、そしてダムの尽力を無駄にする積りは更々なかった。
世話の焼ける弟分だと思いながら、クリスはにこやかな微笑みを浮かべた。
その笑みに触発されたように、エルの拳が放たれる。
当たれば致命の可能性のある拳がだ。
拳が怖ろしい速さで迫り来るのを眺めながら、クリスは最後の言葉を口にする。
「邪心解放」
聖なる光がエルを包むと同時に、エルの拳は人体を貫いた。
横合いから飛び出し、クリスをかばったライネルの腹部を……。
ライネルの喀血がエルの顔や髪を濡らし、深紅に染める。
クリスの絹を切り裂いた様な悲鳴が辺りに響き渡る。
その悲鳴に呼応するかのように、傷だだらけのダムやシャーリーは傷む身体を無理やりに動かし駆け寄ってくる。
光に包まれるエルの動向を見守りながら……。
何か温かいものが顏に掛かったように感じる。
霞掛かり、靄の中を彷徨っていた意識に温かい光が降り注いだ。
エルの瞳にようやく生気が戻り、意識が覚醒した際に見た光景は、自分が兄貴分と慕うライネルを己が拳で貫いてる姿だった。
「なっ、なんで……」
「ようやく目が覚めやがったか。
この寝坊助が……」
震えるエルに、ライネルの慈しむ様な優しい声が掛かる。
はっきりと現状を理解したエルに、右手の温かく生々しい感触が伝わる。兄貴分の腹を貫いた感触だ。
恐慌に陥り叫び出しそうになる所を、横合いからエミリーが肩を叩き静止を掛けた。
「エル君、落ち着いてちょうだい。
エル君が下手に動いたら、ライネルの傷が深くなるわ。
いい?
良く聞いて。
クリスが回復の奇跡を唱えているから、私の合図に合わせてゆっくり手を引き抜くのよ」
エルはエミリーの言葉にがくがくと頷いだ。どんどん血の気を失っていくライネルの姿が痛ましかった。早くなんとかしないと手遅れになりそうだ。エルではどうしていいかわからない。暴れ出したくなるのをを必死でこらえ、エミリーの言葉に従うしかなかった。
「今よ!!
エル君、ゆっくり引き抜いて」
エミリーの合図に従い、エルは静かに拳を引き抜いた。臓腑を通る感覚が生々しい。
激痛にライネルの顔が歪み、また血を吐いた。
「神秘の奇跡!」
エルが手を引き抜くと、間を置かずクリスの癒しの奇跡が発動する。生命の女神の魔法の中でも、部位の欠損をも再生させる高等魔法だ。
それと同時にエミリーが最上級回復薬を一気に呷り、ライネルに口移しで飲ませていく。もはや気絶寸前のライネルでは、自力で飲むことは不可能と考えてのことだろう。
大魔法と最上級回復薬のおかげで、見る見るうちにライネルの回復は再生し、傷が塞がっていく。
心なしか顔色も良くなってきたようだ。
「どうやら間に合ったようね。
ライネルなら大丈夫よ」
エミリーの言葉に、エルは放心した。自分がライネルを殺すなんて冗談じゃない。そんな恐怖のできごとが現実にならなくてよかったと、大きな息を吐き安堵した。
「迷宮をさっさと脱出して、協会にある生命の女神の派出所に行きましょう。
ライネルはそこでもう一度治療を受けた方がいいわ。
私やダムは、回復薬かクリスの魔法でいいわね」
「ええ、魔物に襲われでもしたら大変だわ。
早く戻りましょう」
エルは訳も分からず頷いた。とにかくライネルの容体が心配だった。
ライネルは霞む目を気丈に開き笑みを浮かべると、エルのおでこにこつんと拳を当てた。
「みんなすまんが、後は頼んだ。
エルっ、今はいいが後でお仕置きだからな」
痛みを堪え陽気な声でそう言い残すと、ライネルはあっさり意識を手放した。
慌ててエルがライネルの腰辺り掴み、横抱きにして持ち上げた。ライネルの呼吸は安定している、気を失っただけで、命に別状はないだろう。
「さあ、行きましょう。
それと、エル君はみんなに沢山心配を掛けたんだから、後でいーっぱい説教だからね」
自分の意識の無い間に、いろいろ迷惑を掛けたであろうことは想像に難くない。
エルは神妙な顔で頷いた。
そして、ライネルを抱えながらエミリー達と急ぎ足で転移陣を目指すのだった。
リリは物憂げそうな顔で大きなため息を付いた。
エルがリリの静止を振り切り迷宮に旅立ってから、1ヶ月の時が過ぎていた。その後のエルの行方はようとして知れず、不安だけが募る。もしや魔物の凶手に掛かったのではないかと悪い想像ばかりが浮かんでは、リリの年相応の控え目な胸は千切れんばかりの悲しみに包まれた。
金の雄羊亭の酒場にはライエルやカイ達のパーティの姿もあった。どの顏色も優れず、沈んだ昏い表情を湛えていた。
ライネルも普段の陽気な雰囲気は影を潜め、深い後悔に苛まれていた。
リリにエルのことを相談されても、当初はエルの境遇ならしょうがないと、少しぐらい迷宮に籠って憂さ晴らしした方がストレス解消になるだろうと楽観視してしまったのだ。
パーティのお目付け役であるエミリーでさえも、エルには適度なガス抜きは必要であろうと迷宮に行くことを止めなかった。エルが帰らなくなって1週間過ぎたあたりで、ようやくことの重要性に気が付いたのだ。慌ててエルが滞在していると思われる、16、7階層付近を虱潰しに探したが見つける事は出来なかった。それからただ徒に時間を浪費するだけで、1ヶ月経った今でさえエルの行方は分からなかった。宿に戻れば笑顔で出迎えてくれる弟分がいない。それだけで、ライネル達の心は火が消えたように消沈してしまっていた。
同様にカイ達も皆一様に沈んだ表情を浮かべていた。エルから連絡が無くなってしばらくした後、どうにもおかしいと金の雄羊亭に訪れ、事のあらましをリリから聞いたのだ。恐ろしい魔神との遭遇、そして臨時パーティの仲間の死。その後の迷宮探索からのエルの失踪。カイ達が気付いた時には既に手遅れの状況だったのだ。
カイ達の成長が著しいといっても、彼等では10階層を探索するのが限度で、とてもエルの行ける階層には探しには行けない。協会の冒険者酒場でエルの情報を聞き込みしたりしてなんとか探そうと試みたが、上手くいかなかった。
カイ達にとって、エルは迷宮都市で初めてできた友である。最初の出会いだけは良くなかったがその後打ち解け、お互いの出自や夢を語り合う仲にまでなった。その友の行方がわからないのだ。どんなに懸命に探そうともエルの行方は分からず、ただ時だけが過ぎていく。最悪の予想が頭をちらつくこともあったが、その度に頭(かぶり)を振っては切にエルの生存を願うのだった。
「ライネルの旦那、やりましたぜ!!」
そんな昏い雰囲気を打ち壊す様に、オルドが酒場に駆け込んできた。オルドの表情は明るい。エルについて何らかの情報を得たのは間違いないだろう。
全員が座っていた椅子から一斉に立ち上がり、オルドの方に振り向いた。ライネルが詰問するかのように話を急かした。
「オルド、エルの居場所が分かったのか?
早く言えっ!!」
「旦那、そんなに急かさないでくださいよ。
お察しの通り、エルの居場所が分かりやした」
オルドの肯定に、全員が喜びを露わにした。この様子ならエルは死んではいないだろう。ライネルは安堵の表情を浮かべながらも、再度オルドに話す様に促した。
「いいからさっさとしゃべれ。
今の俺は気が短いんだ」
「へへっ、すいやせん。
エルの居場所についてですが、驚かないでくだせえ。
エルは今29階層にいるようです」
「29階層!?」
予想外の数字に驚きが広がる。オルド達の現在の到達階層は30階層であるから、ほとんど変わらない。
それが本当なら、たった1ヶ月で自分達の数年分の成果に落ち着いたということだ。エルの類稀な才能と凄まじい研鑚の末の成果だとしても、俄には信じ難い事実である。だが、ライネル達の予想を上回る脅威的なスピードで迷宮を攻略していたなら、エルの行方が掴めなかったのも頷ける。
「それは本当か?」
「へいっ。
もしかしたら30階層に行っているかもしれやせんが、あるパーティが29階層の奥地で翡翠色の道着と薄い黄土色の籠手をした中肉中背の少年に出会ったそうです。
しかも、単独行動していたそうなのでまず間違いないかと……」
「その装備でソロなら、エル君に間違いなさそうね」
エミリーもオルドの得た情報が正しいと判断したようで、ほっと安堵の息を吐いた。
「ただ、悪い情報もありやす。
そのパーティは運悪く魔物達の集団と出会ってしまい乱戦になってしまったんですが、そこにエルが横入りしてきたそうです」
「エルがか?
あのエルがそんなことするとは思えないが……」
「まず続きを聞いてくだせえ。
エルはパーティに目もくれず、魔物目掛けて襲い掛かったそうです。
禍々しい漆黒の闘気に身を包み、その拳や足が放たれる度に魔物達は絶命し、あっという間に魔物の集団を屠り去ったそうです。
その後どうやったかは分かりやせんが、魔物達の魔素が迷宮に還るのではなくエルに吸い込まれていったようです。
冒険者達はエルに文句が言いたくて近寄ったんですが、鬼の様な表情に何も言えなかったそうです。
とても正気には見えなかったらしいですぜ」
オルドの報告に皆押し黙り、沈黙が訪れた。
エルの余りの変貌ぶりに理解が追い付かなかったのだ。エルは純朴で、人を和やかな気分にさせる穏やかな笑顔を浮かべる少年だ。
魔物との闘いでは激しい闘争心を見せる場合もあるが、普段は人見知りの所もあるまだ幼さの抜けない童顔の少年である。鬼の顔とは全くもって正反対の温か味のある笑顔が特徴の少年だ。誰かの見間違いではないかとさえ思えてくる。
「本当にそいつはエルなのか?
エルは綺麗な純白の気を使うし、鬼の様な顔したエルなんて、今迄一度も見たことないぜ」
カイが疑問を口に出した。オルドの報告は、いつものエルからは想像も付かなかいほどかけ離れていたからだ。
「いやっ、オルドの報告に間違いないだろう。
その少年は間違いなくエルだ。
俺に心当たりがある」
「ダム?」
寡黙な翠熊族の壮年の戦士ダムが重々しく口を開いた。パーティ間の話し合いでも二言三言しかしゃべらないダムがだ。何か思い当たる事があるのだろう。
「ダム、何を知っている?
教えてくれないか?」
「あれは30年くらい昔のことだろうか。
理由は解らないが、俺の村が暗黒神の高位神官に襲われたことがある。
その神官は御霊喰いの邪法を使い、仲間達の命を吸い取る度に悪魔の様な変貌を遂げ、終には真面に言葉もしゃべれない、ただ殺戮行うだけの存在と化したのだ。
あいつを討ち取るために、俺の村は壊滅的な被害を被った」
「エルがその邪法を使ったと?
あいつは武神流の信徒だろう?」
ダムの言葉に驚愕を色を隠せないライネルが否定の言葉を発する。
「落ち着けっ!
俺はエルが御霊喰いを使ったとは言っていない。
先程オルドが魔素が迷宮に還らずエルに吸い込まれたと言ったが、御霊喰いに似た何らかの技法を身に付けたと考えている。
魔素だけではなく魔物の魂も吸収するような技法をだ。
そのせいで気も黒く変質し、鬼の様になってしまったのだ」
ダムの予想は的を得ているように思えた。そうでなければエルの変貌ぶりに説明がつかないのだ。
気とはその人の性格や本質が色となって現れると言われている。長い年月が経過して変化することは稀にあり得るが、気の色とはそうそう変わるものではない。
エルの気の質が変化するような何らかの要因、例えば魔物の魂を取り込むような事態が起きたと考える方が妥当だ。
それに加えて、正気を失い鬼のように成り果てた説明もつく。
カイが震える声で疑問を呈した。
「魔物の魂を取り込んだとして、エルは元に戻れるのか?」
「わからん」
ダムの無情な言葉に、シャーリーやミミ、そしてリリから悲痛な声が漏れる。このままエルを治す術がないのかと、悲嘆に暮れそうになった。
「わからんが可能性ならある。
御霊喰いを使い完全に魔人と化したならもう2度と戻らんが、オルドの話から察するに、エルにはまだ人を襲わないだけの分別があるようだ。
現時点なら生命の女神の魔法、邪心解放ならエルの心に吸い込まれた魔物の魂を開放できるかもしれん」
「その魔法なら私が修めております」
ダムの言葉に生命の女神の神官クリスが応えた。
希望が見えたことで皆に笑顔が戻る。
「だが、魔法を掛けようとすれば抵抗されるだろうし、正気を失ったエルに攻撃されるかもしれん」
「それなら俺の出番だな。
エルが正気に戻るまで押し止めておけばいい」
ライネルが力強く断念した。このままエルを魔人にさせる積りは微塵もなかった。茶化されては気恥ずかしげにはにかむ、優しい少年に戻って欲しかったのだ。
「急成長したエルは、俺達の手に余るかもしれんぞ?」
「覚悟の上だ。
矢面には俺が立とう。
事に依ったら、俺の命を賭けてもいい。
ダム、エミリー、クリス。
すまんが、俺に付いて来てくれないか?」
「ライネル……」
ライネルの熱い思いが仲間達の心を揺さぶった。長年パーティを共にしていたが、こんなに激情に駆られたライネルの姿を見たことがなかい。人を食った様な笑みを浮かべ、豪放磊落を地で行くのがライネルという男なのだ。エルにかける並々ならぬ思いには、何か訳があるのだろう。
皆の疑念に答えるように、ライネルは目を瞑り静かに語り出した。
「エルは姿形は似ても似つかないが、その振舞いや性根は俺の弟にそっくりなのさ。
死んだ俺の弟にな」
「ライネル、あなた……」
「そういえば、エミリーには酔った時に少しだけ話したことがあったな。
俺は田舎の騎士の家の出だ。
親は自分がしがない地方騎士なのが、心底悔しかったんだろう。
俺にとっては迷惑なことだが、親父は俺を城勤めの騎士にしたくて、幼い頃から厳しく扱いたんだ。
逆に弟は病弱でな、いつも寝たきりで俺の話をうれしそうに聞いていたよ。
俺が部屋に来るのをいつも心待ちにしていた、可愛い弟だった」
ライネルが一度言葉を切って、ゆっくり息を吸い込んだ。目を閉じたまま何かに耐える様に押し黙っている。これから話すことは実際にライネルの身に起きた、悲愴なできことなのだ。
しばし後、意を決するとライネルはゆっくりと話を再開した。
「悲劇が訪れたのは、俺が騎士隊への入隊試験を受けに王都に行っていた時のことだ。
俺の村が地竜の群れのスタンピードに巻き込まれんだ。
その事を聞きつけ、村に戻った時にはもう後の祭りさ。
慣れ親しんだはずの村の姿は何処にも無かった。
何もかも跡形も無くなり、俺は弟の遺骨さえ見つけられなかった。
俺は間に合わなかった。
全ては手遅れだったんだ……」
ライネルの低く野太い声での、悔恨の念の篭った独白だけが辺りに響く。
人に歴史ありとはよく言ったものだが、快活で陰気な様を見せたことがないライネルに、そんな過去を持っていたなんて思いもよらなかった。皆一言も発せない。
だが、ライネルがエルに執着していた理由としては、納得のいく話だ。エルの姿を弟に重ねていたのだろう。ライネルは激闘の後でさえも、エルを見つけると疲れも見せず、楽しそうに構っていた。時には本当の弟に接するように教え諭すこともあった。また時には、兄が弟に自慢するように冒険譚を聞かせることもあった。エルと過ごしている時は、本当にライネルはうれしそうだったのだ。
「感傷と言われればそれまでだが、俺はエルを、弟を失いたくないんだ。
暴走したエルは恐らく強いだろう。
下手したら敵わないかもしれない。
だが俺は、もう2度と間に合わないなんて後悔をしたくないんだ!!
頼む、俺に付いて来てくれ!!」
ライネルの激しい思いが仲間達の心を揺さぶる。
ライネルに言われなくとも、エミリーやクリス、そしてダムにしても、元々自分の可愛い弟分をみすみす魔人にさせる積りはなかった。
ライネルの思いに堪える様に、皆真剣な表情になる。
「ライネル、安心して。
私もエル君をこんな所で失う積りはないわ」
「ええ、私もです」
「暴走した弟は、無理やりにでも叩き起こしてやらないとな」
「みんな、すまない」
ライネルが頭を下げようとするが、ダムに押し止められる。そして、首を横に振られた。自分もエルを助けたい思いは同じだから、そんな行動は必要ないということだろう。
「はあっ、悔しいけど俺達じゃどうにもならない。
ここはライネルさん達に任せるしかないか。
力がないってのは、本当に歯痒いな」
「坊やは無謀な挑戦をしないだけ、まだましな方さ。
自分の実力に見合った行動ができない冒険者は、早死にするからな。
ここはライネルの旦那方に任せるのが、吉ってものさ」
悔しいそうに呟くカイに、オルドが年長者らしく格言と共に慰める。オルド自身も自分の力のなさに苛立たしい思いをしているが、おくびにも出さない。口に出して嘆いてもしょうがないことを理解しているが故である。
「みなさん、エルのことをお願いします」
「旦那っ、よろしくお願いしやす」
「「「お願いします」」」
オルドやカイ達、そしてリリがライネル達に願いを託す。
望みを託されたライネル達は、その思いを酌み深く頷いた。必ずエルを取り戻すと、各々が自分の言葉で誓いを口にする。
その後、ライネル達は意気軒昂と気を漲らせ、迷宮に赴くのだった。
30階層。
そこは、海原にぽつんと浮かぶ孤島を探検する階層だ。
一周するのに半日程度の小島である。
迷宮都市には四季があるが、この島には存在しない。
ここは常夏の島だ。
生態系は迷宮都市とは全く異なり、珍しい動植物が見受けられる。
魚貝類も一風変わったものが見られる。魔物さえいなかったら保養地として栄えたかもしれない。
しかし、ここは魔物の楽園でもある。
一筋縄ではいかない凶悪な魔物達が待ち構えている。ライネル達がこの階層に到達したのは、数ヶ月前のことだ。31階層への転移陣を護る守護者を倒すため、じっくり実力を付けていた所である。この階層の守護者はどれも強力だ。成長著しいエルをもってしても、そう簡単には倒せない難敵だろう。
この30階層を越えられたら、もはやライネル達の力ではエルを救えない。そして、エルが人を襲うようになったら手遅れだ。賞金首として討伐されるのがおちだろう。
この階層に居てくれと願いながら、エルの探索を開始するのだった。
ライネル達の願いが通じたのか、数時間後にエルを発見した。
エルは波打ち際で大勢の魔物達と闘いを繰り広げていた。1ヶ月も迷宮に篭りきりだったエルは、短く刈り揃えた髪もやや伸びている。靴も無くなったのか、裸足のまま闘っている。そして何より夢を抱き素直な輝きを放っていたエルの目は、瞳が見えずまさに鬼のように凶々しい光を湛えていた。エルとは思えない、いや思いたくはないほどの変貌ぶりだ。
オルドの話通り漆黒の気を纏い、ライネル達でも苦戦する魔物でさえやすやすと討ち取っていく。しかも、砂場だというのに動きが遅くなった印象も受けない。足が動いていないのに高速で砂の上を移動したり、攻撃を放った体勢のまま滑るように移動している。武神流の移動術なのであろうが、横から見ているライネル達でさえ時偶見失うほどの早さだ。恐ろしいまでの技の冴えであった。
魔素や魂を吸収し心身が成長しただけならまだやりようがあったが、エルは武神流の技も見違えるほど上達していた。1ヶ月前にエル自身の口から聞いていた段階とは、比べ物にならないほど成長している。また、嬉々として魔物を仕留めるエルの姿は、修羅さながらの姿であった。ライネル達に冷たい汗が流れる。あの場で襲われたら、抵抗する間もなく殲滅される未来が浮かんだ。
「砂場じゃ駄目だ。
俺達の動きが阻害されるだけで、圧倒的に分が悪い。
エルが魔物を仕留め終って砂浜から離れたら尾行して、しっかりした地面のある場所で仕掛けよう」
「ええ、その方が良さそうね」
「俺が回り込んでエルに話し掛ける。
その間にクリスが邪心解放で先制してくれ。
上手くいけば、それでエルは正気に戻るだろう。
戻らなかったら、戻るまで何度でも呪文を掛ければいい」
「わかりました」
クリスは金糸の髪を揺らし重々しく頷いた。自分が、エルを正気に戻すためのキーパーソンだと理解しているからだ。クリスの魔法に全てが掛かっているといっても過言ではない。
「ダムはクリスを守ってくれ。
エルをクリスに近づかせないでくれ」
「わかった」
「エミリーは上手くエルを牽制してくれ。
エルが正気に戻らず襲ってきたら、手荒なことをしてでも動きを止めてくれ。
まあ、今のエルなら俺達の攻撃も通じない可能性があるけどな」
「ええ、わかったわ。
心配を掛ける悪い弟分には痛い目を見せてでも、目を覚まさせないないとね」
皆エルの変わりように驚いていたが、希望を失っていない。何としても、エルを正気に戻すつもりであった。
ほどなくして全ての魔物を狩り尽くしたエルが移動を開始するのを待って、ライネル達は尾行を開始した。
そして、砂が土に変わり疎らに草が生えた辺りで、ライネルが遠回りしてエルを追い越し声を掛けた。
「エルっ!!
こんな所で何をしている?
みんなも心配しているぞ。
さあ、一緒に宿に戻ろう」
ライネルが大声で話し掛けるが、エルは全く反応を示さない。
興味もないとばかりにライネルの横を通り過ぎようとする。ライネルのことを認識できなくなっているようだが、人を襲わないだけの見境はあるようだ。まだ間に合うかもしれないと、ライネルはほっと胸を撫で下ろした。
だが、ここで去ってもらっては困る。今正気に戻してやるからなと、ライネルはエルの肩に手を伸ばし、再び話し掛ける。
「待て!!
エルっ、本当に俺が分からないのか?」
肩を掴もうとした手をエルはわずらわしげに打ち払った。
攻撃は加えないが、自分の邪魔をするなとばかりの態度だ。
茶化された頬を膨らませていた少年の見る影もない。
だが、ライネルが時間を稼いだおかげでクリスが呪文を唱え終わる。
「邪心解放!!」
クリスの力ある呪文の言葉に従い、エルの足元から天に向かって光の柱が立ち上がった!!
ライネル達を敵と見なさず、不意を突かれたエルはたちまち光の柱に飲み込まれてしまう。
すると、エルとは思えない獣の様な叫び声と共に、体の中から黒く禍々しい魂、魔物の魂が天に昇って行くではないか!!
ダムの予想通り邪心解放は効果があり、見事にエルの中から魔物の魂を開放しているようだ。
エルが激しく身を捩り、頭を押さえては苦痛にのたうっている。弟分のそんな姿を見るのは忍びなかった。だが、魔物の魂を抜くためには必要な行為なのだ。魔法が終わった後には元の優しい少年に戻ってくれることを、ライネル達は願った。
はたして光の柱が消えた後には、まだ正気を失い鬼の様な目のエルがいた。
完全にこちらを敵と見做しているようで、獣の様な唸り声を上げている。
クリスのマリスリバレーションで魂を解放できたが、エルが大量に取り込んだせいか、全てを解放できなかったようだ。
しかし、効果があったならば、正気に戻るまで何度でもエルに呪文を浴びせればいいだけだ。
ライネル達は素早く戦闘態勢を整えた。
「クリス、上出来だ!
エルが正気に戻るまで、何度でも魔法をぶつけてやれ!!」
「わかりました」
「皆は手筈通りに」
「「了解」」
ライネルの指示に従って、ダムがクリスの前に立ち、エミリーが自慢の弓に矢を番える。そしてクリスが再び呪文を唱え始めた。
ライネルはエルが動き出す前に先手必勝とばかりに、背に担いでいた身の丈ほどある大剣を抜き、雷神流の剣技で撃ちかかる。
「雷剣!」
大剣の刀身に雷を纏わせ、横薙ぎの斬撃をエルに放つ。無論手加減などしない。先程の戦闘をから、エルの実力は恐ろしいほど高いことを理解しているからだ。
油断すれば、やられるのはライネル達の方なのだ。
それに雷神流は気を属性変化させ、雷や風を操る流派である。雷なら相手を感電させ、麻痺させることもできる。エルを動けなくさせることが、ライネルの目的なのだ。
高速で胸の辺りに迫る斬撃を、エルは上体を反らすことによって回避した。
しかも、その状態のままクリスに向かって高速で移動している。人間としてありえない動きだ。エルにしても、一番の障害はクリスだと本能的に察しているのだろう。邪魔者を排除すべく一気にクリスに迫る。
クリスの前に仁王立ちしたダムは、左手に構えた大盾に気を貯めエルに突進した。
軍神流の気盾打である。
黒い魔鉱製の大盾に蒼い気を注ぎ込み、ダムの体重を乗せた盾での体当たりだ。
中柄のエルと巨体のダムとでは、体重差は激しい。ダムの巨体を受け止められず吹き飛ばされるかに思われたが、逆に吹き飛ばされ地面を転がったのはダムの方であった。
エルが上体を起こしダムとぶつかる際に、肩の側面を用いる発剄、纏震靠を放ったのである。
エルの強力な発剄の一撃は、ダムの気の攻撃をものともせず、軽々とダムを弾き飛ばした。
「ダムっ!?
くっ、気連射!」
エミリーがクリスに近づかせまいと、矢に気を籠め威力を増した気矢の連射技である、気連射(オーラバースト)を放った。
避け辛い胴回りを中心に無数の矢を放つ。加えて、クリスの方に近づけさせまいと、上手くエルの進行方向を遮るように幾つも矢を放っている。
後ろに下がるかと思われたエルだが、なんとエミリーの矢を気にも留めず前進するではないか。エルの全身を覆う漆黒の闘気が、鎧と見紛う程硬質化した。大量の気をつぎ込み、気の性質変化によって硬化させた気の鎧、纏鎧である。エミリーの矢は一矢として突き刺さることなく、虚しくエルの鎧に弾かれるだけであった。
邪悪な笑みを浮かべて、エルがクリスに迫る。
あと数歩でクリスに届くという所で、何とか体勢を立て直したダムが、再び横合いからシールドバッシュで突撃してくる。ダムの熊の様な巨大が高速でエルにぶつかっていく。
この技は大型の魔物をも弾き飛ばす、ダムの得意技である。
だが、悲しいかな、エルには通用しない。
興味ないとばかりに。膨大な漆黒の気を纏った前蹴りで迎撃されてしまう。ダムの魔鉱製の盾も気を用いているが、そんなものは歯牙にもかけず、エルの蹴りによって盾は凹み再び遠くで弾き飛ばされてしまう。予想はしていたが、エルの恐ろしい成長ぶりを目の当たりにすると、冷汗が止まらない。
ダムからクリスへと向き直ったエルが、ゆっくり拳を握る。
気は籠めていない。ライネル達を敵と認識しているようだが、どうやら殺すつもりはないようだ。クリスを殴って無力化する積りらしい。
一方、クリスはというとエルが眼前に迫るも、呪文を唱えるのを止めない。仲間を信じ、必死に言葉を紡いでいた。
エルがゆっくり拳を振り被った。
クリスに当たれば気絶させられそうな力を秘めた拳である。クリス目掛けて拳が放たれる刹那、側方からライネルが電気を纏った大剣をクリスとエルの間に挟むように突き出した。
エルは危なげなく後方に飛び退き、距離を取る事でライネルの突きを回避した。何とも憎らしいまでの余裕な態度だ。とはいえ、クリスとの間に割って入れたことで再び時間を稼げる。
ライネルは大剣を腰だめに水平に構え、エルに向かって突進する。そして、剣を突き出さずに体当たりのように体ごとぶつかりにいく。
エルは大剣をほんの少し横に移動すると、簡単に回避する。ライネルにしても、こんな攻撃が通用しないことは百も承知だ。
大剣を躱された瞬間に剣から手を放し、突撃の勢いを殺さずエルに掴みかかったのだ!
エルもこの攻撃を予想していなかったのか、ライネルに腕を掴まれてしまう。
ライネルが持ち前の剛力をもって押さえ付けようとするが、上手く行かない。直ぐに引き剥がされ、逆にエルに捕まってしまう。ライネルにしても30階層に到達した猛者である。加えて騎士になるべく厳しい訓練を積んできた下地がある。同階層の冒険者と比べても身体能力はかなり高い。
エルは身体能力を格段に向上させる神の御業、剛体醒覚を有している。エルが神の御業を行使しなければ、このまま押さえ付けられていたかもしれないが、現実は非情である。エルの恐ろしい膂力によってライネルは宙に浮かび、ぶんぶん振り回される。このまま投げ飛ばされそうとしていた所に、エミリーの魔法が飛んだ。
「風竜巻!!」
エミリーはライネルごと巻き込む様にエルを中心に竜巻を発生させたのだ!!
風神モウの信徒であるエミリーには風の縛めという、相手の動きを止める魔法はあるが、今のエル相手では一瞬の内に破られるとよみ、苦肉の策としてライネルを巻き込むのを承知で、この竜巻の魔法を唱えたのである。
驚いたエルはライネルを掴んでいた手を放してしまう。
ライネルは天高く舞い上げられ遠くに飛ばされてしまう。落下後の衝撃はかなりの痛みを伴うであろう。エミリーはライネルに心の中で謝った。
一方のエルはというと、飛ばされそうな暴風が巻き上がる竜巻の中でさえ、膨大な闘気にもの言わせ堪えている。信じられない肉体と気の力であるが、竜巻が収まるまでのわずかな間、目論見通りエルの動きを止めることに成功した。
「邪心解放!」
クリスの本日2度目の闇を払う聖なる光の魔法が、エルの身を包む。
光の柱の中で、苦しそうに吠えるエルの体内から無数の暗黒の魂が解放され天に昇って行く。
今度こそ、エルは正気に戻ったであろうか。
否が応でも期待が高まる。
ライネルは痛む身体を堪えつつエルに向かっていた。落下時に受け身を取り衝撃を抑えたが、それでも高所から落とされたのでかなりの痛みを受けたのだ。
「ライネル、ごめんなさい」
「いや、謝ることはない。
いい判断だった」
「私が回復させましょうか?」
「俺は自前の回復薬を飲む。
クリスは念のため、邪心解放の準備をしてくれ」
そう言い様に、ライネルは腰に下げた魔法の小袋から上級回復薬を取り出し、一気に飲み干した。
ダムも傷む身体をさすりながら、クリスの前に立つ。
竜巻の中で様子は分からないが、これでエルには正気に戻って欲しかった。
それは、ライネル達に共通する願いであった。
竜巻が収まった中心には、静かに目を閉じ佇むエルの姿があった。
逸る気持ちを押さえつつ、ライエルが一歩前に出てエルに話し掛ける。
「エル?
俺が解るか?」
願いを込めたライネルの問いに答えたのは、非情な現実であった。
見る間にエルの身から黒い気が吹き出し、見開いたエルの目は未だに狂気に満ちており、人間のする目ではなかった。
「邪魔を、するなあ!!」
クリスの聖なる魔法の効果があったのか、エルは言葉を取り戻したようだ。
もう一押しで、優しい穏やかな少年に戻るだろう。
だが、手負いの獣は恐ろしいように、エルの中の残っている負の部分が激しい抵抗を見せる。
今までライネル達を殺さぬよう、無意識に手加減していたエルが本気になったのだ。
エルの身から溢れ出した暗黒の気は荒れ狂い、暴風となって辺りに猛威を振るう。
そして、爆発的な加速をもって一番近くにいるライネルに急接近し、ライネルが身構える間もなく胸に漆黒の気を籠めた拳を突き出した。
その拳は簡単にライネルの鎧を砕き、ライネルの長身を小石を飛ばすかのように吹き飛ばした。地面を何度も跳ね飛ばされようやく止まった頃には、ライネルは激痛で地面に蹲っていた。
「「ライネルっ!?」」
仲間達の悲鳴が響く。
されど、エルの歩みは止まらない。
その表情はまさに鬼もかくやという、怖ろしげなものだ。
動かないライネルを心配しつつも、ダムやエミリーに戦慄がはしり、ごくりとつばを飲み込んだ。
何としてもクリスだけは守ろうと、心を奮い立たせダムが全身に気を纏わせると、エルの前に立ちはだかった。
エルは高速でダムに接近すると、今度はダムと激突する寸前で突如方向転換した。
向きを変え、エミリーに急襲したのだ。先ほどの竜巻を厄介に感じたのか、先に遠距離から攻撃を加える、邪魔なエミリーを倒しにかかった。
エミリーは驚愕に目を見開きつつも、矢を速射しエルの接近を阻もうとした。
だが、悲しいかな、本気になったエルの気と肉体を用いた本気の移動術は桁が違った。高速で飛来する矢を稲妻の様に駆け、躱しながら瞬く間にエミリーの元に辿り着いたのだ。
そして、優しく突き出すようにエミリーの下腹部に掌底を放った。見た目は嫋やかであるが、その掌の秘めたる威力は凄まじい。エミリーは強烈な衝撃を腹に受けると蹲り、呼吸も困難なほどの苦しみを味わった。
しばらくの間、動くことは叶わいだろう。
次々に仲間が倒れて伏していく。
エルの強さに慄きつつ、ダムは逆転の道を探っていた。ダム達の有利な点は、エルを倒さなくてもいいことだ。
邪心解放さえ当たればいいのだ。
エルが正気に戻れば、目的は達成できる。
力の差は歴然であるが、少しの間だけ時間稼ぎをすれば良い。それが自分の役目なのだ。そのためには、先程のライネルのように驚かせれば良いと、ダムは考えた。
無造作に歩み寄ってくるエルを前にして、あろうことかダムは剣と大盾を投げ捨てたのだ!
予想もしない事態にエルは訝しみ、歩調が鈍る。
ダムはそんなエルに男臭い笑みを浮かべると、握手を求めるかのように手を差し出した。闘っている人間に対する態度ではない。
エルがダムの元に辿り着いても、ダムの対応は変わらなかった。
エルはその手を打ち払い、ダムを殴り飛ばした。
しかし、ダムは立ち上がり再びエルに向かうと笑顔で握手を求める。
エルが殴り飛ばす。
するとまたダムが立ち上がり、手を差し出す。
エルが殴る。
それでもなお、ダムは笑顔を浮かべ手を出した!
終には、得体のしれぬものを見たかのようにエルが奇声を発し、全力で殴り飛ばすと、それきりダムは動かなくなった。
気絶したのだ。
エルは理解できない存在に恐怖を覚え、呼吸が乱れた。
だが、ダムは自分の目的を達成していた。
エルに武器を構え闘いを挑んだら、一合のもとに戦闘不能にさせられたことは、想像に難くない。
エルに理解できない、友好的な行動を取ったため、魔物の魂が少なくなったエルは混乱し、無意識に威力を減じたのだ。
そのおかげで、エルの拳を数発耐えることができたのだ。エルと相対しながらも、ダムは珠玉の時間を稼いだのである。
エルは理解不能な存在に寒気立ちつつも、クリスの前に立った。苛立ちか、怒りからかわからないが、身は震えている。さっさと目の前の敵を屠る心算のようだ。手に暗黒の気を集めている。
翻ってクリスはというと、ダムのおかげで呪文は唱え終わっていた。後は呪文の名を発し、魔法を発現させるだけだった。しかし、エルを見つめるだけで何もしない。魔法を躱されることを恐れたのだ。エルの高速移動術ならクリスの魔法を見てからでも、いとも簡単に回避できることは、容易に想像が付く。
エルが回避できないタイミング、すなわち攻撃した瞬間にクリスは魔法を発現させるつもりなのだ。そのためには、あの黒い気を纏った拳を受ける必要がある。クリスの身では耐え切れないかもしれないが、ライネルやエミリー、そしてダムの尽力を無駄にする積りは更々なかった。
世話の焼ける弟分だと思いながら、クリスはにこやかな微笑みを浮かべた。
その笑みに触発されたように、エルの拳が放たれる。
当たれば致命の可能性のある拳がだ。
拳が怖ろしい速さで迫り来るのを眺めながら、クリスは最後の言葉を口にする。
「邪心解放」
聖なる光がエルを包むと同時に、エルの拳は人体を貫いた。
横合いから飛び出し、クリスをかばったライネルの腹部を……。
ライネルの喀血がエルの顔や髪を濡らし、深紅に染める。
クリスの絹を切り裂いた様な悲鳴が辺りに響き渡る。
その悲鳴に呼応するかのように、傷だだらけのダムやシャーリーは傷む身体を無理やりに動かし駆け寄ってくる。
光に包まれるエルの動向を見守りながら……。
何か温かいものが顏に掛かったように感じる。
霞掛かり、靄の中を彷徨っていた意識に温かい光が降り注いだ。
エルの瞳にようやく生気が戻り、意識が覚醒した際に見た光景は、自分が兄貴分と慕うライネルを己が拳で貫いてる姿だった。
「なっ、なんで……」
「ようやく目が覚めやがったか。
この寝坊助が……」
震えるエルに、ライネルの慈しむ様な優しい声が掛かる。
はっきりと現状を理解したエルに、右手の温かく生々しい感触が伝わる。兄貴分の腹を貫いた感触だ。
恐慌に陥り叫び出しそうになる所を、横合いからエミリーが肩を叩き静止を掛けた。
「エル君、落ち着いてちょうだい。
エル君が下手に動いたら、ライネルの傷が深くなるわ。
いい?
良く聞いて。
クリスが回復の奇跡を唱えているから、私の合図に合わせてゆっくり手を引き抜くのよ」
エルはエミリーの言葉にがくがくと頷いだ。どんどん血の気を失っていくライネルの姿が痛ましかった。早くなんとかしないと手遅れになりそうだ。エルではどうしていいかわからない。暴れ出したくなるのをを必死でこらえ、エミリーの言葉に従うしかなかった。
「今よ!!
エル君、ゆっくり引き抜いて」
エミリーの合図に従い、エルは静かに拳を引き抜いた。臓腑を通る感覚が生々しい。
激痛にライネルの顔が歪み、また血を吐いた。
「神秘の奇跡!」
エルが手を引き抜くと、間を置かずクリスの癒しの奇跡が発動する。生命の女神の魔法の中でも、部位の欠損をも再生させる高等魔法だ。
それと同時にエミリーが最上級回復薬を一気に呷り、ライネルに口移しで飲ませていく。もはや気絶寸前のライネルでは、自力で飲むことは不可能と考えてのことだろう。
大魔法と最上級回復薬のおかげで、見る見るうちにライネルの回復は再生し、傷が塞がっていく。
心なしか顔色も良くなってきたようだ。
「どうやら間に合ったようね。
ライネルなら大丈夫よ」
エミリーの言葉に、エルは放心した。自分がライネルを殺すなんて冗談じゃない。そんな恐怖のできごとが現実にならなくてよかったと、大きな息を吐き安堵した。
「迷宮をさっさと脱出して、協会にある生命の女神の派出所に行きましょう。
ライネルはそこでもう一度治療を受けた方がいいわ。
私やダムは、回復薬かクリスの魔法でいいわね」
「ええ、魔物に襲われでもしたら大変だわ。
早く戻りましょう」
エルは訳も分からず頷いた。とにかくライネルの容体が心配だった。
ライネルは霞む目を気丈に開き笑みを浮かべると、エルのおでこにこつんと拳を当てた。
「みんなすまんが、後は頼んだ。
エルっ、今はいいが後でお仕置きだからな」
痛みを堪え陽気な声でそう言い残すと、ライネルはあっさり意識を手放した。
慌ててエルがライネルの腰辺り掴み、横抱きにして持ち上げた。ライネルの呼吸は安定している、気を失っただけで、命に別状はないだろう。
「さあ、行きましょう。
それと、エル君はみんなに沢山心配を掛けたんだから、後でいーっぱい説教だからね」
自分の意識の無い間に、いろいろ迷惑を掛けたであろうことは想像に難くない。
エルは神妙な顔で頷いた。
そして、ライネルを抱えながらエミリー達と急ぎ足で転移陣を目指すのだった。
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