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第2章 イマドキの呼び出し
23話~人外コンビ~
しおりを挟む腕を組み、目の前の背中をただ静かに、ひたすらに見つめる。
そしてその背が少しでも動くようであればその背に容赦なく電流を流す。
「ッだぁ!?」
バチン、という少し大きな音。
少し強力な静電気程度の電流、電圧だけれど、飛び上がるには充分な痛みを与えることが出来ているようだ。
目の前に座る彼は後輩、坂崎雹太くん。
昨日の放課後に弟子入りを申し込まれたのでこうして今、座禅をさせている。
「今俺動いてないのに…!」
「動いてたよ」
「ほんのちょっとでしょ?」
「ほんのちょっとでも、動いたでしょ。」
文句ありげにぷくりと頬を膨らます彼を軽く鼻で笑う。
まったく、こんな私に弟子入りしたいと言い出す人がいるとは思わなかったな。
自分で言うのもなんだけど、私、人外だし?
まあ雹太くんも十分、人外のようだけど。
「でも…召喚の修行で座禅って、関係あるんですか?」
「召喚に必要なのは、一握りの才能と適当な自信。そして十分な精神力と自己理解。そう教わらなかった?」
彼、雹太くんの場合、才能は十分だ 。
『呼名紙』は私と同じ濃いめのオレンジ色に染まった。
自信も過剰というわけではないが、劣等感の塊というわけでもない。
つまり彼に足りないものは精神力と自己理解。
そのふたつを高めるには座禅が1番、と思ったわけで。
こうして放課後、使っていない学習室を利用し座禅をしてもらっているわけですが…。
はじめは電流を流すなんてスパルタなことしてなかった。
だけどあまりにも、彼には集中力が無かった。
そこで私はやむを得ず…そう、嫌々ながらこうして電流を流している。
この方法なら痛みへの恐怖から、集中力も上がるだろう、と。
しかし彼はその意図を汲み取ってくれてはいないようだ。
今も眉を寄せ、首を傾げている。
さあ考えろ。
いつもはきっと、あの目付きの悪い茜さんの弟くんが助けてくれるんだろうけど。
今は君1人なんだ。
いつも放棄していたのであろう考えるという過程に全力で取り組むんだよ。
「……よく分かんないけど俺に足りないものを補うには座禅がいいってこと、ですよね」
「勿論。無駄なことをさせるつもりはないよ。…さあ、あと10分、集中して。」
※
「うああ…体中がビリビリする……」
雹太はひとり、帰路についていた。
凜音はアルバイトをしているとのことで、一足先に帰ってしまっている。
幾度となく電気を流され続けたせいで、未だに雹太は体が痺れているような感覚に浸っていた。
普段から金平糖のようになっている髪も、心無しかいつも以上に逆立っている。
「あれ、雹太。」
そんな彼に声を掛けるのは、赤髪の長身、蘇芳蓮斗。
竹刀を背負いまっすぐと鋭い眼光にて前を見据えるその姿に、人が避け自然と道が出来ている。
「あ……蓮斗じゃん。部活帰り?」
そんな周囲の目も気にせず、雹太はふにゃりと顔の筋肉を緩めて笑う。
その屈託のない笑みに蓮斗は、ほっと息を吐く。
蓮斗のヤンキー顔は今に始まったことではない。
それこそ小学生に上がった頃から顔が怖いと級友たちに恐れられていた。
しかしそんな中、雹太だけは蓮斗を恐れることもなく、他者と同様に扱ってくれていた。
蓮斗は他に友人がいないという訳ではない。
それでも、無条件に自身を受け入れてくれた雹太は、今でも蓮斗にとって最も大切な友人のひとりである。
無論、本人には言わないのだが。
「おう。で、帰って姉貴と召喚の為になんかやるらしい」
「あ、それ、俺もさっきやって来たんだけどさー…なんていうの?エレクトリカル?」
「………エレクトリカル?」
首を傾げて言葉を紡ぐ雹太。
その雹太の言葉に首を傾げる蓮斗。
2人の付き合いは長い。
だが、それでも、未だに会話がスムーズに行かないのであった。
(…で、蓮斗のとこの修行はデストロイになりそうだよねー)
(……否定できないことが恐ろしい……)
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