イマドキ!

灰色

文字の大きさ
7 / 24
第1章 イマドキの高校生

7話~例年通りはいかない模様~

しおりを挟む
「へえ、じゃあ雹太んちの母さん暫くいるんだ。」

「うん、いるみたい。蓮斗にも久々に会いたいーって言ってたから今度遊びに来てよ」

「あの、お二人。」

美しく咲き誇る桜の花びらが舞い落ちる様など見向きもしない二人による上記の会話は朝のホームルームが終え、すぐに始まった。
そこに遠慮がちに割って入るのは聖。
その手には『呪文学』と書かれた教科書。

「そろそろ教室を移動しませんか?」

ふと見ると教室に三人以外の影はない。
暫しの間の後、二人が慌てて鞄をひっくり返す。
そしてやっと見つけた教科書を手に、廊下へ、そして呪文学の教室へと走り出した。





「いいですか?呪文とはとても古い歴史があり…」

長々とした教員による前置きの中、蓮斗がそっと聖に顔を寄せた。

「…ありがとな、声掛けてくれて。危うく遅刻するとこだった。」

囁くような言葉をきちんと聞き取った聖はゆっくりと蓮斗を見て微笑した。
雹太もそれを見て聖笑いかける。

「さあ、ここからが本題です。」

眠気に支配されつつあった教室が、教員のその言葉ではっと目を覚ます。
彼女、栗山霞くりやまかすみはふうっと一つため息を吐いた後、全体を見渡した。


「呪文学とは、魔法の中でもとても古く、神聖なものです。授業における私の言葉はきちんとメモし、覚えること。いいですね」

テキパキとした口調でそこまで言うとチョークを手に取り黒板へとそれを滑らせる。

「『攻撃アタック』『防衛ガード』『支援バッキング』『支配ルール』」

書かれた文字を読み上げ、霞はまた全体を見渡した。
そしてクラス全体がそれをノートに写しているのを見、満足そうに笑う。

「呪文とは、大体がこの4つで分けられます。今日はこの4つの違いを勉強して貰います」

そこまで言い、縁のない眼鏡を左手の中指で持ち上げる。
そしてまた口を開いた。

「まずは『攻撃』ですが、言葉の通り、何かを傷つける魔法です。初歩的なものだと…『ニードル』!」

霞が片手を挙げ、そう唱えると指先から無数の光が飛び、生徒一人一人の机に突き刺さる。
きらりと銀に輝くそれは、呪文通り『針』のようだった。
驚き声を上げる生徒や興奮した様子で机に刺さった針を掴む生徒を見て満足そうに笑う教員。
そしてその騒がしい教室で声を張り上げる。

「さあ、次は『防御』です。この中で力自慢の人はいますか?」

「あ、はい!」

机に刺さった針が自然と飛散する様子を暫し見ていた水色髪の彼、雹太が手を上げ立ち上がる。
平均より少し背の高い雹太をまじまじと見、霞は前に出るよう促す。

「『フレーム』。……さあ、坂崎くん。私を殴ってみて」

再びざわつく教室。
何か呪文を唱えたようであったが霞の周囲には何の変化もない。

「はーい、じゃ、いきまーす」

しかし雹太はというと、そんなことは気にせず指の関節をぱきぱきと鳴らす。
そして軽い口振りでそう言うと右手を大きく振りかぶりその拳を霞の胸辺りへ振り下ろした。

「っ、?」

しかしその拳は霞には届かず、10センチ程離れたところで止まっている。
まるで見えない壁にぶつかっているような感覚に雹太は目を見開いた。
霞はクラス全体へ目をやる。

「このように外部からの攻撃から身を守る呪文を『防御』と言います。…坂崎くん?ありがとう、もういいですよ」

「……悔しい」

呪文による壁を介した先にいる雹太の呟きはきちんと霞の耳に届く。
そしてその拳が、着実に自らへ近づいていることもきちんと目視することが出来た。

「そんな!魔法も使っていないのに…り、『リペル』!」

胸の前へ両手を組むと呪文を唱える。
ほぼ同時に雹太の拳が『囲』による壁を越えた。
直後、雹太の体が後方へ吹っ飛ぶ。
壁へ頭を強く打った雹太の視界は、そのまま暗転した。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

三年目の離婚から始まる二度目の人生

あい
恋愛
三年子ができなければ、無条件で離婚できる――王国の制度。 三年目の夜、オーレリアは自らその条文を使い、公爵ルートヴィッヒに離婚を告げた。 理由はただ一つ。 “飾り”として生きるのをやめ、自分の手で商いをしたいから。 女性が公の場で立てる服を作るため、彼女は屋敷を去り、仕立て屋〈オーレリア・テイラーズ〉を開く。 店は順調に軌道に乗り、ついに王女の式典衣装を任されることに。 だが、その夜――激しい雨の中、彼女は馬車事故に遭い命を落とす。 (あと少し早く始めていたら、もっと夢を叶えられたのに……) そう思った瞬間、目を覚ますと――三年前、ルートヴィッヒと結婚する前の世界に戻っていた。 これは、“三年目の離婚”から始まる、二度目の人生。 今度こそ、自分の人生を選び取るために。 ーーー 不定期更新になります。 全45話前後で完結予定です、よろしくお願いします🙇

処理中です...