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第1章 イマドキの高校生
16話~形を成すのは~
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「へぇええっくしゅい!!」
しんと静まり返った教室に響いたくしゃみ。
その主である蓮斗に、クラス中の刺すような視線が集まる。
「……悪い。花粉症なんだ」
「え?なに?慢性鼻炎?」
「言ってねえよ。…あ。慢性鼻炎と満州事変って似てね?」
「…マンシュウジヘン?なにそれ。」
話が始まるアホとバカ。
今は形成学の授業中。
ある意味、すべての魔法の基礎と言ってもいい形成学。
魔法を生み出す力、魔力を具現化しそれを保つ。
それが形成学である。
本日の課題は自分の属性魔法を操ること。
具体的にいえば、右手には自分の強い方の属性を、左手には弱い方の属性を灯し、維持することである。
蓮斗の場合は右手に火を、左手に風を灯すこと。
しかしこれが中々難しい。
折角灯した魔法も集中力を欠くと簡単に消えてしまう。
それはクラスのほぼ全員に言えることである。
故に集中を邪魔したくしゃみの主へクラス中の痛い視線が向けられたのだ。
だが、そんな中で平気な顔をして喋っている生徒が1人。
それはこのバカ、坂崎雹太である。
彼の両手には丸く形成された氷。
「……お前のそれ、狡いな」
火、風、雷は先ほども述べた通り、集中力を欠くと簡単に飛散する。
水は更に悪く、手から溢れて机や制服を濡らす。
しかし氷はどうだろうか。
氷は他と違い固形である。
その為、例え集中を欠いたところですぐに消えることはない。
一度形成してしまえばこちらのもの、といった状況だ。
「へへ、俺凄いよね。体育以外でこんなに上手いこといく授業初めてかも」
照れ臭そうに笑う水色の金平糖に蓮斗は溜息を吐く。
不意に、乾いた音が響いた。
そちらを見ると先ほどまで教卓に肘を突いて眠っていたこの授業の教員の姿。
手を叩いたのだと理解すると同時に彼女が口を開く。
「形成学は自転車の運転とおんなじ。慣れちゃえばどうってことないんだ。完璧にこなすには練習あるのみ。ということで今日はこれで残りは自習ね。私はこれで失礼…ふう、眠い…」
欠伸を隠すことなく零しつつ、彼女は教室から出ていく。
その姿に生徒達は密かに、自身のクラスの担任、風間遥を想像する。
その適当かつやる気のない様子はあまりにも似ていた。
「…この学校はとても、その…自由な先生が多いですね」
「確かにー!でも中学とかにも1人くらいいなかった?」
苦笑いを零しそう言葉を紡いだ聖。
それに対し惜しげなく顔いっぱいに笑顔を浮かべた雹太が扁桃をする。
それを肯定出来ず聖は困ったように首を軽く横に傾けた。
「そういえば、榊は聖ディアリー学園だったんだっけ、中学。」
「えぇ。そうですよ。」
「あー、前言ってたお金持ちの大学まで一貫の学校だっけ。」
聖ディアリー学園。
入学金や授業料は莫大であり学力もそれに比例するように高く求められる。
聖ディアリー学園卒業というだけで就職先に困ることはなく、出世も確実と言われている。
そんな聖ディアリー学園に中学まで通っていた榊聖。
蓮斗はずっと不思議に思っていた。
何故そんな名門学校を辞めて、この藍鐘高校に入学したのか。
「あの学校は、設備も授業も確かに素晴らしかった。それは間違いありません。しかし…私のやりたい教科が無かった。それだけです。」
その疑問に答えるように聖は薄く形の良い唇を開いた。
爽やかな笑み。
好青年の微笑みだった。
しかしどこか寂しげで、切なげで。
それを感覚的に感じ取った雹太はひとり、首を傾げた。
しかしその違和感は、授業終了よ昼休みを告げるチャイムにより彼の頭から掻き消されてしまったのだった。
しんと静まり返った教室に響いたくしゃみ。
その主である蓮斗に、クラス中の刺すような視線が集まる。
「……悪い。花粉症なんだ」
「え?なに?慢性鼻炎?」
「言ってねえよ。…あ。慢性鼻炎と満州事変って似てね?」
「…マンシュウジヘン?なにそれ。」
話が始まるアホとバカ。
今は形成学の授業中。
ある意味、すべての魔法の基礎と言ってもいい形成学。
魔法を生み出す力、魔力を具現化しそれを保つ。
それが形成学である。
本日の課題は自分の属性魔法を操ること。
具体的にいえば、右手には自分の強い方の属性を、左手には弱い方の属性を灯し、維持することである。
蓮斗の場合は右手に火を、左手に風を灯すこと。
しかしこれが中々難しい。
折角灯した魔法も集中力を欠くと簡単に消えてしまう。
それはクラスのほぼ全員に言えることである。
故に集中を邪魔したくしゃみの主へクラス中の痛い視線が向けられたのだ。
だが、そんな中で平気な顔をして喋っている生徒が1人。
それはこのバカ、坂崎雹太である。
彼の両手には丸く形成された氷。
「……お前のそれ、狡いな」
火、風、雷は先ほども述べた通り、集中力を欠くと簡単に飛散する。
水は更に悪く、手から溢れて机や制服を濡らす。
しかし氷はどうだろうか。
氷は他と違い固形である。
その為、例え集中を欠いたところですぐに消えることはない。
一度形成してしまえばこちらのもの、といった状況だ。
「へへ、俺凄いよね。体育以外でこんなに上手いこといく授業初めてかも」
照れ臭そうに笑う水色の金平糖に蓮斗は溜息を吐く。
不意に、乾いた音が響いた。
そちらを見ると先ほどまで教卓に肘を突いて眠っていたこの授業の教員の姿。
手を叩いたのだと理解すると同時に彼女が口を開く。
「形成学は自転車の運転とおんなじ。慣れちゃえばどうってことないんだ。完璧にこなすには練習あるのみ。ということで今日はこれで残りは自習ね。私はこれで失礼…ふう、眠い…」
欠伸を隠すことなく零しつつ、彼女は教室から出ていく。
その姿に生徒達は密かに、自身のクラスの担任、風間遥を想像する。
その適当かつやる気のない様子はあまりにも似ていた。
「…この学校はとても、その…自由な先生が多いですね」
「確かにー!でも中学とかにも1人くらいいなかった?」
苦笑いを零しそう言葉を紡いだ聖。
それに対し惜しげなく顔いっぱいに笑顔を浮かべた雹太が扁桃をする。
それを肯定出来ず聖は困ったように首を軽く横に傾けた。
「そういえば、榊は聖ディアリー学園だったんだっけ、中学。」
「えぇ。そうですよ。」
「あー、前言ってたお金持ちの大学まで一貫の学校だっけ。」
聖ディアリー学園。
入学金や授業料は莫大であり学力もそれに比例するように高く求められる。
聖ディアリー学園卒業というだけで就職先に困ることはなく、出世も確実と言われている。
そんな聖ディアリー学園に中学まで通っていた榊聖。
蓮斗はずっと不思議に思っていた。
何故そんな名門学校を辞めて、この藍鐘高校に入学したのか。
「あの学校は、設備も授業も確かに素晴らしかった。それは間違いありません。しかし…私のやりたい教科が無かった。それだけです。」
その疑問に答えるように聖は薄く形の良い唇を開いた。
爽やかな笑み。
好青年の微笑みだった。
しかしどこか寂しげで、切なげで。
それを感覚的に感じ取った雹太はひとり、首を傾げた。
しかしその違和感は、授業終了よ昼休みを告げるチャイムにより彼の頭から掻き消されてしまったのだった。
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