ツンデレでごめんなさい!〜素直になれない僕〜

ハショウ 詠美

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第二章

出来た!

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 出来た!出来た、出来たぁ!

 お庭を歩ける様になった!

 少しなら走れる様になった!

 食器を落とさなくなった!

 あと、カレア曰く、儚い度が減ったらしい!

 僕、出来る事が増えました~!


 そして、団長職に、復帰出来る事になりましたぁ!


 やった~!

 いやぁ、一ヶ月でここまで回復出来るとは思っていなかった。嬉しい誤算ってヤツだね!

 まだ朝早く起きるのはダメだからって、七時からの出勤となった。ルンルンと団長服を身にまとったのだが・・・。

 服って、こんなに重かったっけ?久しぶりに着たら、団長服が重く感じるよぉ・・・。あれ、靴ってこんなに歩きにくかったっけ?そういえばずっとスリッポンみたいなの履いてたじゃん。ヒール、歩きにく!

 僕、ヒールで歩けるかな?

 でも、でも!身長盛りたいじゃん!カツカツ音鳴るの良いじゃん!団長らしくかっこよく居たいじゃん!ヒールは履きたいよ・・・。マントも外せないよ・・・。


「お兄ちゃん、元気出して!お兄ちゃんはいつでもヒールで身長盛りたいの、カレア達は分かってるから!ヒールのために団長服をどうにかしよう?で、考えたんだけど、服に軽量化魔道具付ければ良いじゃん?」

「カレアったら天才!大好き!」

「グハッ・・・!」


 カレアをノックアウトしておいて準備を進める。

 カチッと軽量化魔道具をマントに着けてみれば、ふわっと軽くなった。コレならヒールでも歩けそうだと安心する。試しにつま先で床をトントンと蹴ると、笑みが零れた。

 凄く嬉しい。こうやってまた、団長として服を纏う事が出来るのが。

 でも緊張するなぁ・・・。誰ですか、って言われたらどうしよう。皆が超絶にサボってたらどうしよう。皆にちゃんと言えるかな・・・。



 ―――数分後



「随分と緩くなったなぁ!走れ走れ!そこ!姿勢が悪い!お前もだ!お前は剣を持つ位置を下にしろと言っただろう!覚えていないのか!俺が居なかった分、この一日で叩きのめしてやる!おいそこ!足の運び方が悪い!」

「「「はい団長!」」」


 言えないとか、全然そんな事なかった。兎に角駄目、駄目、駄目!出来てた事が出来てない!言いたい事が山ほどあって止まらない!そしてどうして怒られて嬉しそうなんだよ!

 うわぁ~ん!僕も皆に会えて嬉しいよって言ってやりたい!でも、取り敢えず休んでた分の事を取り返したい!でも取り敢えず・・・。

 喉が痛い。大きな声出し過ぎたかな?でも立ってるのでも疲れてくるから歩きたくないし、壁の花と化しているカレアからの視線は痛いから下手に歩けない。

 あ、可愛いカレアに見惚れて集中力が低下しているじゃないか。


「集中しろ!」

「「「はい!」」」


 それから三時間程、根性を叩き直して鍛え上げてやった。でも限界は来る訳で。

 あ・・・喉が痛い。やばいやばいやばい、咳が出ちゃう。喉に咳が居る、もう・・・無理かも。


「・・・げふっ・・・ごほっ、ごほっ・・・げほげほっうぅ・・・」

「っお兄ちゃん!大丈夫?!」


 うわぁ、咳が止まんない。凄く喉がイガイガする。息吸えないし、もうヤダ。めっちゃ見られてるし、カレアに迷惑掛けてるし・・・。うぅ・・・また咳出る・・・

 止まらない咳を膝を付きながら出して、カレアに背中を摩ってもらって、騎士団の皆の視線を感じて・・・──────喀血した。

 もう咳はコレで最後だと何故か分かって居て、咳き込んだ。それと同時に、僕の手のひらには赤い液体が付着していた。・・・血が出ちゃった。

 可笑しいな、元気なのに。まぁ、平気か。

 僕はスっと立ち上がり、足に付いた砂を片手で払った。そしてハンカチで、手と口元を綺麗にした。仕上げにハンカチを綺麗に畳んで、元気だ、と言った。


「・・・お兄ちゃん?何、言ってるの?」

「もう元気になった、ょ・・・?」

「あはは、お兄ちゃん。カレアと一緒にさぁ、お家に帰ろうねぇえ?ねぇ、帰るよねぇえ?ほらぁ、『今直ぐ』帰ろう?」


 カレアの右手から不穏な空気を感じた瞬間、ピリッとした物が伝わった。

 視界がグルンと一回転して、意識が無くなった。


 
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