獣の国~獣人だらけの世界で僕はモフモフする~

雅乃

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はじまり

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僕は動物が大好きだ。

気まぐれにしかモフモフさせてくれない猫が好き。
従順でずっと撫でさせてくれる犬が好きだ。
キメ細かく、フワフワとした兎が好き。
触った事はないが、狐も羊も鳥達だって大好きだ。

でもそれ以上に獣人を愛している。
二次元もコスプレも関係なく、あの人と獣が混ざり合った姿に興奮するのだ。
言葉や表情以上に語る耳や尻尾。
たまに見せる動物特有の仕草や行動。
その全てに興奮する。

だから信仰心が強い訳でもないが、何故か異様に気になった神社で僕は願った。
賽銭箱に一万円札を入れ、頭を深く下げ大声で叫んだ。

「俺を獣人の住む世界に連れて行ってください!」

突如視界が暗転して、謎の浮遊感に襲われる。
そこからの記憶は意識が無かったので覚えていない。

「ネコの名を持つ者よ、目を覚ますのじゃ。」

薄目を開け声のする方を向く。
何故か真っ白な空間の中で、狐の尾が生えてた幼女に起こされている。

「眠いのかの?でも起きて欲しいのじゃ。」

手足には毛が生え、よく見るとぷにぷにしてそうな肉球も見える。
しかし、巫女のような服装の胸元からは、人のような肌が覗けた。

「お願いじゃから起きて・・・何か間違えてしまったのかの・・・」

観察していると声の元気が無くなっていき、尻尾も垂れ下がってしまった。
悲しませるのは本望ではないので、慌てて体を起こす。

「っ!お、おはようネコの名を持つ者よ、わた・・・我はキコ。恐れ多くも稲の神様からこの世界を任された者じゃ。」
「おはようございますキコさん。僕の名前は猫山精一ねこやま せいいちです、よろしくお願いします。」
「うむ、やはり我が見込んだ通りの好青年じゃ。では、早速ネコの・・・精一を呼んだ理由を話すとしよう。」

見込んだとか何処に呼ばれた等と聞きたい事は沢山あるが、話しかけた途端に揺れだした尻尾が気になる。しかし、ガン見するのは失礼ではないだろうか。そもそも獣人にとって尻尾はどのような存在なのだろう?

「つまり纏めるとな。精一には我が世界【ラミナ】に赴いてもらい、自由に暮らして欲しいのじゃ。獣人を愛する精一なら、きっと大丈夫。期限は向こうの世界で亡くなるまでじゃ。」

話の大半を聞き逃したが、纏めてくれて助かった。それにしても亡くなるまでとは長すぎないだろうか。流石に両親に何も言わずは辛いものがある。

「むっ、家族を心配しているのか?案ずるな、この世界は次元が独立しておる。つまりこの世界で何百年経とうと、向こうの世界では限りなく0に近い時間しか経過しないのじゃ!」

満面の笑みで説明する自信満々のキコ。その尻尾は風を起こす勢いで振れている。・・・襦袢から除くカンペらしき紙は、見なかった事にしてあげよう。悩みが消えた今、聞きたいことは一つしかない。

「キコさん。」
「なんじゃ精一?」
「すみませんがモフらせてください。」
「モフ?我に出来る事なら構わんぞ。」

許可は得た。素早くキコの後ろに回り、尻尾を優しく両手で触る。すると、包み込んだ筈の両手が毛で包まれた。未体験の幸せに包まれ、思わず顔がにやけてしまう。

「モフらせるとは、尻尾の事であったか。我ら狐は尻尾を誇りに思っておる。母様程は心地よくはないと思うが、優しく触る分には問題ないぞ。」

素晴らしいことを聞いた。思う存分堪能しよう。

「それでは精一、この世界で自由を満喫するのじゃ。精一がこの世界にいる間、我は修業を重ねながら見守っておる。・・・もし母様に出会えたら、キコは元気だと伝えて欲しいのじゃ。」

キコが頭を下げると、空間が揺らぎだし、視界が曖昧になってゆく。待ってくれ、まだ満足出来ていない。優しくなおかつ高速でモフる。

「ふおっ!?転送が始まってしまったのじゃ!精一、この世界で生きる力は転送後に与えられる・・・筈じゃ。」

空間が輝きだし、目が開けられなくなった。それどころか幸せの感覚が薄れていく。そしてまた、謎の浮遊感に襲われる。

「頼んだぞ精一、お主が良き風となる事を祈っておる。」

その言葉を最後に、僕は意識を再び失った。
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