海の星

りゅう

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海の星

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ある星があった。その星の表面は海に覆われていて、見渡す限り真っ青だった。だが、その星には海しかない、という訳ではない。魚がいて、鳥もいる、ゾウはいないが、浅い所があるので、ワカメもある。虫はいないが、深い所もあるので、深海魚もいる。
   1人の探索員が、その星にやってきた。着いてすぐに、星の周りを宇宙船で1周した。星は小さいので、すぐ1周できた。
   探索員は「海しかない星だ。生き物もこれといった珍しいものはいない。報告書には問題なしと書こう。この星に用はもうないかな」と言った。 
   彼はとある星の宇宙調査員で、生き物調査の仕事をしている。各星を宇宙船で移動し、目視で、生き物の調査をしているのだ。
   彼は次の星へ行こうと宇宙船を操作した。しかし、彼はその操作をすぐに中止した。宇宙船の窓から、海に浮かぶ小島が見えたからだ。
   彼は小型の1人乗りの乗り物で、その小島に向かった。
   その小島は、マンガなどでよく見かける無人島だった。しかし、無人島と言えるほど大きくなく、また、そこにいて暇がつぶせるほど、何かあるわけでもなかった。ヤシの木が1本生えているが、彼が、その小島に着くまで気付かなかった。
   乗り物を小島に着陸させ、しばらく辺りをうろついてみたが、海に見える魚たちは普通で、空を見上げて見える鳥たちもまた、普通だった。
   数分して、ある一匹の年老いたカメが彼の所にやってきた。
「旅の方ですか?」
とカメ。
「まあ、そんなもんですね」
と彼は答えた。
  「ならばここからさっさと立ち去った方がいい。悪いことは言わん」
カメは真剣な眼差しでこちらを見て言った。
「何故そんなことを言うんです?ここの生き物たちは、とても穏やかで、僕に襲いかかる気配も見せないのですよ?」
「あんたのためではない、私たちのためだ」
「ますますわけがわかりません。どうゆうことか説明してください」
「あんたは何をしにこの星に来た?」
「生き物の調査ですよ。各星を回っているんです」
「そうか、なら話しても構わないな」
「今の僕の答えが、僕が今すぐ帰らなければならない理由と関係しているんですか?」
「大いにある」
カメははっきりと答えた。そして、一呼吸置いてこんな話をした。
「私が産まれる前の大昔の頃、この星には大陸があったんじゃ。その大陸の上では、人間という生き物がこの星を支配していた。人間が支配していた頃のこの星は、酷いもんだった。大陸も海も汚され、多くの生き物が殺された。誰もが人間に悩まされていた。しかし、人間の支配は永遠には続かず、人間たちは絶滅したんじゃ。」
「人間たちはなぜ、絶滅したんですか?」
彼はふと気になった疑問を、カメに問いかけた。
「人間たちは、人間という生き物を超える生き物に出会わなかったからじゃよ。人間たちが恐怖を覚えるのは、同じ人間にだけ、人間たちがスリルを味わうのは、同じ人間だけになる。なぜなら、人間以上に恐怖も、スリルも味わえる対象がいないからじゃ。」
ここまで話を聞いて、彼は、カメに質問した。
「そんなことがあったなんて、話はおおかたわかりましたが、僕が早く帰らなければならない理由はなんですか?」
「私たちの星は、人間たちの支配から解放されて平和になっておる。もう新しい支配者を生み出したくないのじゃよ。そこで、たまに来る訪問者を、好奇心を利用して、この小島におびき寄せる。そして、私があんたに話した話をする。本来、すぐ帰ってもらうのだが、万が一、この星を気に入りここに住むと言う訪問者のために、私が話し始めて数分したら、魚と鳥の大群が訪問者を襲うように訓練されておるんじゃ。そうすれば、私たちの平和が維持される。だから、あんたには早く帰ってもらいたい。」
「そうだったんですか...」
「そういうことじゃ。ここには何もいない。すまないが、早く帰ってくれないか?」
「わかりました。では、さようなら」
彼は、小型の乗り物に乗って、宇宙船の中に入った。
   窓の外の小島を見ると、さっきのカメが手を振ってくれていた。
   彼は宇宙船で海の星を出ていった。そして、彼は、小さくなっていく青い星を眺めながら、呟いた。
「人間。そんな野蛮な生き物が存在していたとは...まだまだ僕の知らない生き物が、存在するかもしれないな」
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