紀元前0世紀の物語

真田熊

文字の大きさ
20 / 81
第2章:新たな領地と佐久

2-8 先の集落の奉納

しおりを挟む
先の集落の奉納

新たな領地は、冬を越して、2年目の秋になり、初めて米の奉納を行うことが決まった。

移動するグループの検分役は、新たな領地の報告をすでに昨年中に、王にしていた。

その報告は、まず、この新たな領地の移住は成功し、開発も順当に進んだこと。
しかし、近くに住んでいた縄文が、自身の暮らしを手放さないので、当分、共生していくことを話したのであった。
さらに、移住後の奉納は、今回は延期させてもらいたいことを願い出た。

王は、縄文が今後、集落に吸収されることを予測し、その準備は、怠らないようにと指示を出した。

また、川を丸木船で渡ることを許可していた。その後は、馬で籾を運ぶ。王は検分役の判断に頷き、今度の秋の奉納を許すことにした。

そして、相談の末、名前は川前の集落のより下った場所にあるという事で、《先の集落》となった。

秋になった。爽やかな風の吹く中、刈り取りが始まった。
縄文のオヤジとともに検分役も狩りに参加していた。狩られた苗は、干されることになった。オヤジは、検分役に聞いた。
「検分役よ、お主は、移動するグループからは、離れたのか?」
「オヤジ、おれは、移動するグループの仲間とともに検分役のグループとして、直江津王国の為に動いているのだ。仲間は変わらない」
「そうか、長く同じ暮らしをしていれば、それで良いと感じていたが、変わるものだな」
冬の蓄えの米を融通してもらい、縄文のオヤジの暮らしにも変化があったようだ。

そして乾燥した苗から籾を叩いて落とす作業が始まった。
検分役は、移動するグループの仲間とともに出来上がった丸木舟を川の下まで引いて行き、川に乗せた。

長は、初めての奉納に緊張しているようだ。若者達に、丁寧に扱うよう指示している。
縄文のオヤジも静かに見守っていた。

籾は、木の皮で底を編んでその周りを苗の柄で編んだ籠を作り、入れた。それをいくつも作って、集落の若者が順に担ぎ上げ、川下まで運び、丸木舟に乗せた。
移動するグループの仲間が船をゆっくり、動かし、川を渡ると、そこに馬を待たせておいて、籾の籠を乗せ、縄で縛りつけた。

「では、行ってくるぞ」
検分役は、監視役の長や集落の若者たちに声をかけて進んでいった。

秋の空は高く、太陽は真上に輝いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

処理中です...