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第4章:紀元前0世紀に
4-1 新たな動き
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新たな動き
浅間山は、縄文の森と呼ばれていた。
あの婆様は、まだ生きていた。いったい幾つになったんだろうか?
ブナの林の中で、小さなキツネが木の皮をカリカリと食べている。
そこを見つめる静かな視線があった。
シュッ、ツン
音もなく、キツネが倒れた。
倒したキツネを担ぎ、婆様の小屋にはいる男がいた。
「婆様、石切を貸してくれ、キツネをとった。一緒に食べよう」
「なんたよ。お前、自分で捌けないのか?面倒くさがってると、熊さまに食われてしまうぞ」
「いや、婆様にやってもらう方が、早いじゃろ」
「ま、いい、かせ」
婆様は、元気に血抜きを始めた。
この若い男は、浅間山のブナ林に住んでる数少ない若者だった。
ムラはとうに無くなっていたが、この若者は、しつこく、婆様の近くで暮らしを続けていた。
浅間山の噴煙が、少し近づいて見えた。
麓の佐久の集落では、新たな佐久の巫女が誕生し、新たな侍女が向かい入れられていた。
侍女は、佐久の集落の米を作る民の娘で、覚えが良いと12になった時、長が見いだして、新たな佐久の巫女の侍女に推薦したのであった。
一方、移動するグループにも子どもが育っていた。かつて、佐久の集落に移住させた検分役の息子の息子であった。
長が、移動するグループの息子を見ながら、新たな巫女に話しかけた。
「巫女よ、お前は、母から厳しい教育を受け、巫女として今日から動いてもらう。浅間山の婆様に挨拶して、浅間山と佐久の、いまを確認しておくのだ。移動するグループの息子に、警護を頼むことにしたのだ。よろしく頼む。」
「はい、お父様、侍女を連れて行きたいと考えています。よろしいでしょうか?」
「おお、良いぞ。侍女もなりたてなのだから、婆様のことも知っておいた方が良いな。それから我のことは、長と呼ぶのだ」
巫女は、父である長が堅苦しいのを知っていてわざと言っていた。巫女にはなったが、まだ幼かった。
深々と頭を下げ、佐久の集落から、浅間山へ向かうことにした。
浅間山は、相変わらず噴煙が出ていたが、青空に吸い込まれるように立ち上っていた。風がない。
移動するグループの息子が先行して婆様の小屋に入って行った。
「婆様、新たな巫女が今日からお努めになるので、ご挨拶に来た。」
「おお、佐久の巫女の娘か?その小さいのは誰じゃ」
侍女の娘は、初めて入る縄文の小屋にキョロキョロしながら、自分のことを言われておることに気が付き、頭をさげた。
「あ、私は、侍女です。姫様、いや巫女様の身の回りのお世話役です」
「ほー、佐久の集落では、巫女に侍女を付けるのか?平地では、変わったことをするのだな」
「婆様、おれもこれから警護につくことになった。これから、巫女様が来る時には、おれも来る」
「ほほー、若(わか)も、偉くなったのぉ。チビと若だな。分かった。」
「そちらの男は?」
「おお、これは、弓使いじゃ、キツネを狩ってきてな。いま、焚こうとしていたところじゃ」
弓使いと呼ばれた男は、軽く頭を下げた。
婆様は、キツネの肉をさばきながら、
「風が止んでいたろ。気づいたか?揺れると思う。だが、心配するな」
「地震ですか?」
「そうじや、揺れるんだよ。」
「風が止むと、起きるんじゃ、起きない時もある。ま、今日は夕方頃に揺れる」
婆様は話を続けた。
「別の話があってな、それどころでないぞ。直江津王国の方の海側が大雨でのう、長岡で大きな水害があった。稲が埋もれたようじゃ。何かあるかもしれぬ。若よ、動きを見に行くようオヤジに言ってくれ」
「長岡か、随分と大きな集落だったのになぁ。雨は仕方がないよな。分かった」
「長岡なら、余り関係ないんじゃないのですか?」
「巫女よ、動きは動きだ。知ることが大事。小さなこと、そう、今日の風が止んだのも。動きじゃ」
焚き火に平らな石を置いて、肉が焼かれていた。チビと言われた侍女は、ふてくされていたが、珍しいものを見たという風に、感心しながら、お裾分けを頂いていた。
その日の夕方、ガタガタっと地面が揺れた。
浅間山は、縄文の森と呼ばれていた。
あの婆様は、まだ生きていた。いったい幾つになったんだろうか?
ブナの林の中で、小さなキツネが木の皮をカリカリと食べている。
そこを見つめる静かな視線があった。
シュッ、ツン
音もなく、キツネが倒れた。
倒したキツネを担ぎ、婆様の小屋にはいる男がいた。
「婆様、石切を貸してくれ、キツネをとった。一緒に食べよう」
「なんたよ。お前、自分で捌けないのか?面倒くさがってると、熊さまに食われてしまうぞ」
「いや、婆様にやってもらう方が、早いじゃろ」
「ま、いい、かせ」
婆様は、元気に血抜きを始めた。
この若い男は、浅間山のブナ林に住んでる数少ない若者だった。
ムラはとうに無くなっていたが、この若者は、しつこく、婆様の近くで暮らしを続けていた。
浅間山の噴煙が、少し近づいて見えた。
麓の佐久の集落では、新たな佐久の巫女が誕生し、新たな侍女が向かい入れられていた。
侍女は、佐久の集落の米を作る民の娘で、覚えが良いと12になった時、長が見いだして、新たな佐久の巫女の侍女に推薦したのであった。
一方、移動するグループにも子どもが育っていた。かつて、佐久の集落に移住させた検分役の息子の息子であった。
長が、移動するグループの息子を見ながら、新たな巫女に話しかけた。
「巫女よ、お前は、母から厳しい教育を受け、巫女として今日から動いてもらう。浅間山の婆様に挨拶して、浅間山と佐久の、いまを確認しておくのだ。移動するグループの息子に、警護を頼むことにしたのだ。よろしく頼む。」
「はい、お父様、侍女を連れて行きたいと考えています。よろしいでしょうか?」
「おお、良いぞ。侍女もなりたてなのだから、婆様のことも知っておいた方が良いな。それから我のことは、長と呼ぶのだ」
巫女は、父である長が堅苦しいのを知っていてわざと言っていた。巫女にはなったが、まだ幼かった。
深々と頭を下げ、佐久の集落から、浅間山へ向かうことにした。
浅間山は、相変わらず噴煙が出ていたが、青空に吸い込まれるように立ち上っていた。風がない。
移動するグループの息子が先行して婆様の小屋に入って行った。
「婆様、新たな巫女が今日からお努めになるので、ご挨拶に来た。」
「おお、佐久の巫女の娘か?その小さいのは誰じゃ」
侍女の娘は、初めて入る縄文の小屋にキョロキョロしながら、自分のことを言われておることに気が付き、頭をさげた。
「あ、私は、侍女です。姫様、いや巫女様の身の回りのお世話役です」
「ほー、佐久の集落では、巫女に侍女を付けるのか?平地では、変わったことをするのだな」
「婆様、おれもこれから警護につくことになった。これから、巫女様が来る時には、おれも来る」
「ほほー、若(わか)も、偉くなったのぉ。チビと若だな。分かった。」
「そちらの男は?」
「おお、これは、弓使いじゃ、キツネを狩ってきてな。いま、焚こうとしていたところじゃ」
弓使いと呼ばれた男は、軽く頭を下げた。
婆様は、キツネの肉をさばきながら、
「風が止んでいたろ。気づいたか?揺れると思う。だが、心配するな」
「地震ですか?」
「そうじや、揺れるんだよ。」
「風が止むと、起きるんじゃ、起きない時もある。ま、今日は夕方頃に揺れる」
婆様は話を続けた。
「別の話があってな、それどころでないぞ。直江津王国の方の海側が大雨でのう、長岡で大きな水害があった。稲が埋もれたようじゃ。何かあるかもしれぬ。若よ、動きを見に行くようオヤジに言ってくれ」
「長岡か、随分と大きな集落だったのになぁ。雨は仕方がないよな。分かった」
「長岡なら、余り関係ないんじゃないのですか?」
「巫女よ、動きは動きだ。知ることが大事。小さなこと、そう、今日の風が止んだのも。動きじゃ」
焚き火に平らな石を置いて、肉が焼かれていた。チビと言われた侍女は、ふてくされていたが、珍しいものを見たという風に、感心しながら、お裾分けを頂いていた。
その日の夕方、ガタガタっと地面が揺れた。
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