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柔らかな木漏れ日が、白銀のテーブルクロスの上に踊っている。
帝都ヴェルカの皇城、その奥深くにあるプライベートガーデン。
そこは今、甘い蜂蜜の香りと、弾けるような笑い声に包まれていた。
「ママ! 見て! おほしさま、きれいに焼けたよ!」
愛らしい声を上げたのは、ふわふわとしたプラチナピンクの髪を揺らす小さな少女。
私とヴァルゼイド様の間に生まれた第一皇女、リゼルテだ。
彼女は、私の「幸運」と「ポジティブさ」、そしてヴァルゼイド様の「美貌」をこれでもかと受け継いで生まれてきた。
「まあ、リゼルテ! とっても上手に焼けたわね。これならデュラン料理長もびっくりしちゃうわ」
私は、小さな手に乗せられた星型のクッキーを見て、目を細めた。
あの日、私が雨の中でヴァルゼイド様に差し出したあのクッキー。
今ではこの国の「幸せの象徴」として、国民の間でも親しまれるお菓子になっている。
結婚から三年。
私は今、ヴェルカ帝国の皇后として、最高に充実した日々を送っている。
「本当、リリフィアの教育は独特だわ。皇女殿下を立派なパティシエにするつもり?」
扇子を優雅に揺らしながら、ベルメール様がくすくすと笑う。
彼女は相変わらず華やかで、今は私の良き相談相手であり、リゼルテを誰よりも可愛がってくれる「最強の義姉様」だ。
「いいじゃありませんか。美味しいものを作れる人は、自分も周りも幸せにできるんですもの。ね、フィズちゃん?」
「その通り! リゼルテ様、将来は私の店の共同経営者になりませんか?」
隣で新作のタルトを並べていたフィズが、おどけてウィンクをする。
彼女の店は今や帝都一番の人気店となり、私は時折お忍びで(と言いつつヴァルゼイド様の厳しい護衛付きだが)遊びに行っている。
そんな穏やかな茶会の席に、一際凛々しく、けれど私を見る時だけはとろけるように甘い気配を纏った男性が現れた。
「……賑やかだな。私の許可なく、私の最愛の妻と娘を独占しているのは誰だ?」
冷徹な皇帝の仮面を脱ぎ捨て、一人の「溺愛夫」としての顔を隠そうともしないヴァルゼイド様だ。
彼は真っ直ぐに私の元へ歩み寄ると、当然のように私の腰を引き寄せ、額に深い口づけを落とした。
「ヴァルゼイド様! お仕事はよろしいのですか? 今日は夕方までかかると仰っていたのに」
「ゼフィランに『あとは死ぬ気で終わらせろ』と言ってきた。……君の笑顔を補給しないと、私の魔力が枯渇してしまうからな」
「まあ、そんな困ったことを……。ゼフィラン様がまた泣いてしまいますわ」
私は苦笑しながらも、彼の温かい胸板に寄りかかった。
この温もり、この香り。三年前と変わらない、いえ、年を重ねるごとに深まっていく彼の愛。
ふと、ヴァルゼイド様が私の耳元で、少しだけ真面目なトーンで囁いた。
「……リリフィア。例の『元公爵』の末路について、報告が届いた」
その名を聞いた瞬間、私の心に一瞬だけ、遠い記憶の残像が浮かんだ。
冷え切った屋敷、蔑みの視線、そして「人生の無駄」だと言われたあの日。
「ガルドス様……。いいえ、あの平民の方は、今どうされているのですか?」
「リファル国の最果て、荒れ果てた鉱山で労働に従事しているそうだ。……彼は、いまだに君の名前を呼びながら、泥水を啜って生きているという。自分が捨てたものが、どれほど巨大な幸運だったのか……その呪縛から、一生逃れることはできないだろうな」
ヴァルゼイド様の声には、一欠片の情けもなかった。
彼は、私を傷つけた者を決して許さない。それが彼の愛の形でもある。
「……そうですか。彼にも、彼なりの『これから』があるのでしょうね」
私は静かに答えた。
驚くほど、私の心は波立たなかった。
憎しみも、怒りも、悲しみもない。
ただ、今のこの眩しいほどの幸せが、過去の暗い思い出を完全に塗り潰してしまっていたのだ。
「リリフィア。もし君が望むなら、奴をさらに追い込むこともできるが?」
「いいえ、ヴァルゼイド様。もう十分ですわ。……私にとって、彼はもう『どなた様でしたっけ?』という存在なんです。それよりも、このクッキーを食べてくださいな。リゼルテが一生懸命焼いたんですよ」
私がクッキーを彼の口元へ運ぶと、ヴァルゼイド様は満足そうに目を細めて、それを口にした。
「……美味いな。君の愛と、リゼルテの純粋さが詰まっている」
「パパ、おいしい? リゼ、もっと焼くね!」
リゼルテが嬉しそうに庭を駆け回る。
その背中を見守りながら、私は心の中で、かつての自分に語りかけた。
(……見て、私。離婚した時は、あんなに怖かったけれど。一歩踏み出してみれば、こんなに素敵な世界が待っていたわ)
あの時、ガルドス様に捨てられなかったら、私は自分の「幸運」を知ることもなかった。
冷たい雨に打たれなかったら、ヴァルゼイド様の温もりに気づくこともなかった。
不幸に見える出来事は、実は最高の幸せへ辿り着くための、ただの「入り口」に過ぎないのだ。
「リリフィア。何を考えている?」
ヴァルゼイド様が、私の手を握り、指先に誓いのような口づけを落とす。
「……いいえ。ただ、私は世界で一番、運がいい女の子なんだなって、改めて思っていただけですわ」
「女の子、か。……ふふ、私にとっては、いつまでも出会ったあの日のまま、眩しすぎるほど可憐な少女だよ」
「まあ、ヴァルゼイド様ったら!」
私たちは顔を見合わせて笑い合った。
空はどこまでも青く、太陽は私たちの未来を祝福するように燦々と降り注いでいる。
離婚からの幸せ。
それは、ただの偶然の産物ではない。
前向きに、自分を信じて歩き続けた結果、手に入れた最強の「ハッピーエンド」。
「愛しているよ、リリフィア。……永遠に、私の光でいてくれ」
「はい、ヴァルゼイド様。私も愛しています。……貴方と一緒に、明日も明後日も、最高に美味しいお菓子を焼き続けますわ!」
二人の影が、穏やかな午後の光の中で一つに重なる。
リリフィアの物語は、ここで一旦幕を閉じるけれど。
彼女の周りには、これからも変わらぬ笑顔と、甘いお菓子の香りと、そして底なしの溺愛が、どこまでも、どこまでも続いていく。
――完――
帝都ヴェルカの皇城、その奥深くにあるプライベートガーデン。
そこは今、甘い蜂蜜の香りと、弾けるような笑い声に包まれていた。
「ママ! 見て! おほしさま、きれいに焼けたよ!」
愛らしい声を上げたのは、ふわふわとしたプラチナピンクの髪を揺らす小さな少女。
私とヴァルゼイド様の間に生まれた第一皇女、リゼルテだ。
彼女は、私の「幸運」と「ポジティブさ」、そしてヴァルゼイド様の「美貌」をこれでもかと受け継いで生まれてきた。
「まあ、リゼルテ! とっても上手に焼けたわね。これならデュラン料理長もびっくりしちゃうわ」
私は、小さな手に乗せられた星型のクッキーを見て、目を細めた。
あの日、私が雨の中でヴァルゼイド様に差し出したあのクッキー。
今ではこの国の「幸せの象徴」として、国民の間でも親しまれるお菓子になっている。
結婚から三年。
私は今、ヴェルカ帝国の皇后として、最高に充実した日々を送っている。
「本当、リリフィアの教育は独特だわ。皇女殿下を立派なパティシエにするつもり?」
扇子を優雅に揺らしながら、ベルメール様がくすくすと笑う。
彼女は相変わらず華やかで、今は私の良き相談相手であり、リゼルテを誰よりも可愛がってくれる「最強の義姉様」だ。
「いいじゃありませんか。美味しいものを作れる人は、自分も周りも幸せにできるんですもの。ね、フィズちゃん?」
「その通り! リゼルテ様、将来は私の店の共同経営者になりませんか?」
隣で新作のタルトを並べていたフィズが、おどけてウィンクをする。
彼女の店は今や帝都一番の人気店となり、私は時折お忍びで(と言いつつヴァルゼイド様の厳しい護衛付きだが)遊びに行っている。
そんな穏やかな茶会の席に、一際凛々しく、けれど私を見る時だけはとろけるように甘い気配を纏った男性が現れた。
「……賑やかだな。私の許可なく、私の最愛の妻と娘を独占しているのは誰だ?」
冷徹な皇帝の仮面を脱ぎ捨て、一人の「溺愛夫」としての顔を隠そうともしないヴァルゼイド様だ。
彼は真っ直ぐに私の元へ歩み寄ると、当然のように私の腰を引き寄せ、額に深い口づけを落とした。
「ヴァルゼイド様! お仕事はよろしいのですか? 今日は夕方までかかると仰っていたのに」
「ゼフィランに『あとは死ぬ気で終わらせろ』と言ってきた。……君の笑顔を補給しないと、私の魔力が枯渇してしまうからな」
「まあ、そんな困ったことを……。ゼフィラン様がまた泣いてしまいますわ」
私は苦笑しながらも、彼の温かい胸板に寄りかかった。
この温もり、この香り。三年前と変わらない、いえ、年を重ねるごとに深まっていく彼の愛。
ふと、ヴァルゼイド様が私の耳元で、少しだけ真面目なトーンで囁いた。
「……リリフィア。例の『元公爵』の末路について、報告が届いた」
その名を聞いた瞬間、私の心に一瞬だけ、遠い記憶の残像が浮かんだ。
冷え切った屋敷、蔑みの視線、そして「人生の無駄」だと言われたあの日。
「ガルドス様……。いいえ、あの平民の方は、今どうされているのですか?」
「リファル国の最果て、荒れ果てた鉱山で労働に従事しているそうだ。……彼は、いまだに君の名前を呼びながら、泥水を啜って生きているという。自分が捨てたものが、どれほど巨大な幸運だったのか……その呪縛から、一生逃れることはできないだろうな」
ヴァルゼイド様の声には、一欠片の情けもなかった。
彼は、私を傷つけた者を決して許さない。それが彼の愛の形でもある。
「……そうですか。彼にも、彼なりの『これから』があるのでしょうね」
私は静かに答えた。
驚くほど、私の心は波立たなかった。
憎しみも、怒りも、悲しみもない。
ただ、今のこの眩しいほどの幸せが、過去の暗い思い出を完全に塗り潰してしまっていたのだ。
「リリフィア。もし君が望むなら、奴をさらに追い込むこともできるが?」
「いいえ、ヴァルゼイド様。もう十分ですわ。……私にとって、彼はもう『どなた様でしたっけ?』という存在なんです。それよりも、このクッキーを食べてくださいな。リゼルテが一生懸命焼いたんですよ」
私がクッキーを彼の口元へ運ぶと、ヴァルゼイド様は満足そうに目を細めて、それを口にした。
「……美味いな。君の愛と、リゼルテの純粋さが詰まっている」
「パパ、おいしい? リゼ、もっと焼くね!」
リゼルテが嬉しそうに庭を駆け回る。
その背中を見守りながら、私は心の中で、かつての自分に語りかけた。
(……見て、私。離婚した時は、あんなに怖かったけれど。一歩踏み出してみれば、こんなに素敵な世界が待っていたわ)
あの時、ガルドス様に捨てられなかったら、私は自分の「幸運」を知ることもなかった。
冷たい雨に打たれなかったら、ヴァルゼイド様の温もりに気づくこともなかった。
不幸に見える出来事は、実は最高の幸せへ辿り着くための、ただの「入り口」に過ぎないのだ。
「リリフィア。何を考えている?」
ヴァルゼイド様が、私の手を握り、指先に誓いのような口づけを落とす。
「……いいえ。ただ、私は世界で一番、運がいい女の子なんだなって、改めて思っていただけですわ」
「女の子、か。……ふふ、私にとっては、いつまでも出会ったあの日のまま、眩しすぎるほど可憐な少女だよ」
「まあ、ヴァルゼイド様ったら!」
私たちは顔を見合わせて笑い合った。
空はどこまでも青く、太陽は私たちの未来を祝福するように燦々と降り注いでいる。
離婚からの幸せ。
それは、ただの偶然の産物ではない。
前向きに、自分を信じて歩き続けた結果、手に入れた最強の「ハッピーエンド」。
「愛しているよ、リリフィア。……永遠に、私の光でいてくれ」
「はい、ヴァルゼイド様。私も愛しています。……貴方と一緒に、明日も明後日も、最高に美味しいお菓子を焼き続けますわ!」
二人の影が、穏やかな午後の光の中で一つに重なる。
リリフィアの物語は、ここで一旦幕を閉じるけれど。
彼女の周りには、これからも変わらぬ笑顔と、甘いお菓子の香りと、そして底なしの溺愛が、どこまでも、どこまでも続いていく。
――完――
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