『老婆』

皆木 亮

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『老婆』

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「本当に…イクのかい? イってしまうのかい?」
 とても心配そうな顔で、おばあちゃんが聞いて来る。


 おばあちゃんと言っても、血のつながりは無い。


 元より、『この世界』の元チャンピョンと言われる、
 この、おばあちゃんには、
 そもそも、す事ができないのだが…。


「大丈夫! 私…イクよ!
 その為に…おばあちゃんから…色々いろいろ…習ったんだから!」
 私の、その不退転ふたいてんの決意に、
 おばあちゃんが、さらけわしい顔をする。


「これは…ばあちゃんの…『老婆心ろうばしん』だがねぇ。

 本当に…この道を突き進むんだったら…。
 もう…普通の道には…戻って来れないんだよ…?

 オマエは…本当に…それで良いのかい…?」
 とても真摯しんしな、その眼からは、
 本当に…本当に…、
 私を心配しての言葉なのが見て取れた。


「大丈夫! 私…後悔してない!
 これからも…後悔なんてしない…!

 この道が…私の選んだ…最愛の道だから…!」
 強い意志を持って、おばあちゃんに向かって言い抜く私。


「ああ…。オマエも…戻れなくなったんだね…。

 それが本当にイイ事なのは…私も知っている…。
 本当にイイ事だ…。」
 そう…まぶしいモノでも見る様に…、
 おばあちゃんは…目を細め…。


「オマエが…突き進むというなら…おイキ…!

 ばあちゃんは…それで…せなくなった…。
 でもね…ばあちゃんは…後悔してない…。

 そう…後悔なんて…何も無い…!
 きっと…オマエも…そうなんだね…!

 だから…思う存分…おイキ…!」
 おばあちゃんの…ほころぶ…その笑顔に…!


「うん!
 BLTボーイズ・ラブ・トゥル-スバーガー大会!

 『妄想ボーイズ』たちの『ラブの妄想』を、
 『はさみ放題』の『アレ過ぎる大会』!
 私…『制覇』してみせる…!

 アダムとアダムのヘブンを妄想する事なら…!
 私は…誰にも負けない…!

 そして…賞金で…!

 同士たちの…アレな作品たちを…もっと増やして見せる!

 もっと…アッチの世界にイって見せる…!」
 強い…余りにも強い私のその決意に!


「ああ…おイキ…!
 あっちの世界に…!

 もう…二度と…戻れなくなるくらいに…ッ!」
 腐女子ふじょしの神様とうたわわれ、子孫も残せない程、
 ノーマルラブに興味を抱けなくなった、
 生きる伝説!


 BLTボーイズ・ラブ・トゥル-スバーガー大会、初代チャンプの、
 アレ過ぎる腐女婆ふじょばの、おばあちゃんが、
 私を送り出してくれる!


「イクよ! アダムとアダムたち‼
 ネタの貯蔵は十分か……ッ⁉」
 想う心は何より強い!
 きっと…今日で…私は……ッ‼
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