15 / 16
第4章
第15話
しおりを挟む
ミクルちゃんが抱えて持って来てくれた自分の服を着てから、ハンカチで犬の右足をテーピングし、このワンコを警察に届けようと移動を開始する事にした。
その間、終始ミクルちゃんは『すごい、すごい』を連呼してオレを称えてくれていた。
正直、寒中水泳を敢行したせいで身体が悴んでいたが、この娘にコレだけ称えて貰えるのなら、この程度って気持ちになってくる。
派出所までもう少しというところで……。
「ラッキー‼ ああ……アナタ方がラッキーを保護して下さったんですね! ラッキー……‼ 無事で……無事で良かった……‼」
どうやら、このワンコの飼い主さんの様だ。
この寒い時期なのに汗を大量に掻いていて、どれだけ熱心に探していたのかという事と、このワンコがどれだけ愛されているのかが窺えた。
「この子の飼い主さんですね。たまたまボクたちがこの子を見付けて警察に届けるところでした。」
言って、ワンコを飼い主さんに差し出す。
飼い主さんは、ワンコを抱き留めてから頭を軽く撫でて……、
「本当に、ありがとうございます。」
深く頭を下げてお辞儀をし、ワンコに頬擦りをしようとして右足のハンカチに目を留めて……、
「ラッキー‼ 右足を怪我してて手当てして貰ってたのね⁉ それに、ちょっと身体が濡れている?」
飼い主さんは、ハッとした様に、コチラに目を向けて来た。
「その子、右足を怪我して白鷺橋の下の海で溺れていたんです。それで、お兄ちゃんが泳いで助けて上げたんです。」
「そんな事になっていたんですか⁉ 私、この子を乗せた車を運転していたんですけど、この子を後部座席に乗せて窓を開けていたんです。この子、窓から顔を出すのが好きで、窓を開けないと怒るんです。でも、ふと気付いたらこの子が居なくなってて…。多分、橋を通っている途中で、窓から落ちて、右足を怪我しながら、更に橋から海に落ちたんですね。」
なるほど、そういう事だったのか。
しかし、窓から飛び出したら足を怪我して、更に橋から海に落ちて溺れるという不運の大連鎖をしたワンコの名前がラッキーとは皮肉が効いている。
「でも、何はともあれ、大事に至らなくて良かったですね。」
「ええ、お二人のお陰です。」
飼い主さんが朗らかに笑って答える。
そこで…、
「お兄ちゃんのラトルミレショニーがイクトデシブしたからその子を助けられたんですよ。私は、ただエナジーウェーブを間接転送しただけで何もしてないです。全部お兄ちゃんの力です。」
ミクルちゃんの電波が炸裂する!
どうも興奮状態が続いた為にオレのでっち上げたイニシエーションという決まり事を忘れてしまったらしい。
飼い主さんの笑顔が、どんどん曇って行き、怪訝そうな顔になる。
しかし、飼い主さんは、何とか笑顔をもう一度作って…、
「な…何かお礼をしないといけませんわ。」
何とか言葉を紡いでいく。
しかし…、
「その子は、チャイファーのウルトアクティを私に送ってくれたから、もうお礼は頂いています。」
必死の抵抗を阻む様に放射される電波。
飼い主さんの顔が見る見る青くなっていく。
多分、ここで、オレが方向修正しないといけない場面なんだろうけど、今のオレは……。
「そういう訳で、もう、お礼は要りません。それに、オレ達は世界を救う為にやっただけですから。」
ミクルちゃんの世界を肯定する!
彼女の世界が、悲しい過去を乗り越える為のモノだと知ったのだから‼
そりゃ、いつかは『世界』を見詰め直さなきゃいけなくなるだろう。
このままでは通用しない。
でも、今はまだ支えてやる奴が必要なんだ。
それはオレであるべきはずだッ‼
だってオレはッ! ミクルちゃんの、お兄ちゃんなんだからッッ‼
飼い主さんはパクパクと口を動かして止まってしまう。
それを横目に、ミクルちゃんの手を取る。
「さぁ、行こうか、ミクル!」
「うん! お兄ちゃん!」
ニッコリと笑い合って出発する。
もう飼い主さんから声が掛かる事は無かった。
今日のこの事で、オレも電波野郎として噂されるかもしれないが、この娘とお揃いなら悪くない。
その間、終始ミクルちゃんは『すごい、すごい』を連呼してオレを称えてくれていた。
正直、寒中水泳を敢行したせいで身体が悴んでいたが、この娘にコレだけ称えて貰えるのなら、この程度って気持ちになってくる。
派出所までもう少しというところで……。
「ラッキー‼ ああ……アナタ方がラッキーを保護して下さったんですね! ラッキー……‼ 無事で……無事で良かった……‼」
どうやら、このワンコの飼い主さんの様だ。
この寒い時期なのに汗を大量に掻いていて、どれだけ熱心に探していたのかという事と、このワンコがどれだけ愛されているのかが窺えた。
「この子の飼い主さんですね。たまたまボクたちがこの子を見付けて警察に届けるところでした。」
言って、ワンコを飼い主さんに差し出す。
飼い主さんは、ワンコを抱き留めてから頭を軽く撫でて……、
「本当に、ありがとうございます。」
深く頭を下げてお辞儀をし、ワンコに頬擦りをしようとして右足のハンカチに目を留めて……、
「ラッキー‼ 右足を怪我してて手当てして貰ってたのね⁉ それに、ちょっと身体が濡れている?」
飼い主さんは、ハッとした様に、コチラに目を向けて来た。
「その子、右足を怪我して白鷺橋の下の海で溺れていたんです。それで、お兄ちゃんが泳いで助けて上げたんです。」
「そんな事になっていたんですか⁉ 私、この子を乗せた車を運転していたんですけど、この子を後部座席に乗せて窓を開けていたんです。この子、窓から顔を出すのが好きで、窓を開けないと怒るんです。でも、ふと気付いたらこの子が居なくなってて…。多分、橋を通っている途中で、窓から落ちて、右足を怪我しながら、更に橋から海に落ちたんですね。」
なるほど、そういう事だったのか。
しかし、窓から飛び出したら足を怪我して、更に橋から海に落ちて溺れるという不運の大連鎖をしたワンコの名前がラッキーとは皮肉が効いている。
「でも、何はともあれ、大事に至らなくて良かったですね。」
「ええ、お二人のお陰です。」
飼い主さんが朗らかに笑って答える。
そこで…、
「お兄ちゃんのラトルミレショニーがイクトデシブしたからその子を助けられたんですよ。私は、ただエナジーウェーブを間接転送しただけで何もしてないです。全部お兄ちゃんの力です。」
ミクルちゃんの電波が炸裂する!
どうも興奮状態が続いた為にオレのでっち上げたイニシエーションという決まり事を忘れてしまったらしい。
飼い主さんの笑顔が、どんどん曇って行き、怪訝そうな顔になる。
しかし、飼い主さんは、何とか笑顔をもう一度作って…、
「な…何かお礼をしないといけませんわ。」
何とか言葉を紡いでいく。
しかし…、
「その子は、チャイファーのウルトアクティを私に送ってくれたから、もうお礼は頂いています。」
必死の抵抗を阻む様に放射される電波。
飼い主さんの顔が見る見る青くなっていく。
多分、ここで、オレが方向修正しないといけない場面なんだろうけど、今のオレは……。
「そういう訳で、もう、お礼は要りません。それに、オレ達は世界を救う為にやっただけですから。」
ミクルちゃんの世界を肯定する!
彼女の世界が、悲しい過去を乗り越える為のモノだと知ったのだから‼
そりゃ、いつかは『世界』を見詰め直さなきゃいけなくなるだろう。
このままでは通用しない。
でも、今はまだ支えてやる奴が必要なんだ。
それはオレであるべきはずだッ‼
だってオレはッ! ミクルちゃんの、お兄ちゃんなんだからッッ‼
飼い主さんはパクパクと口を動かして止まってしまう。
それを横目に、ミクルちゃんの手を取る。
「さぁ、行こうか、ミクル!」
「うん! お兄ちゃん!」
ニッコリと笑い合って出発する。
もう飼い主さんから声が掛かる事は無かった。
今日のこの事で、オレも電波野郎として噂されるかもしれないが、この娘とお揃いなら悪くない。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる