5 / 15
第5話 魔王襲来
しおりを挟む
やべぇ、きっと気付かれた...。俺がぼーっとしていたばっかりに...。
このままじゃ魔王の命が危ない。さっさとこの町を潰して...
「あなた、まさか...勇者様ですか...?」
「は?」
「この数値...あり得ませんよ...しかも悪魔族なんて聞いたことがありません...」
「え?」
まてよ、この姉ちゃんもしかして
「昔絵本で読んだことがあるんですよ! 勇者様がこの世界を救ってくれるって! 貴方なんですね!?」
ただの学がないお馬鹿さんかもしれん!
でも待てよ。このまま俺が勇者になってしまうと、魔王討伐の旅とか意味のわからないことになりかねない。なんとかして話を逸らそう。
「いや、あの、違くて。ボードの故しょ...」
「これは黙っていられません! ギルド長に言ってきます!」
「あ! ちょっと待って!!」
俺はカウンターを飛び越え、奥の部屋へ入っていった彼女を追いかけた。
「ギルド長! ご紹介します。勇者様です!」
彼女はそう大声で言うと、こちらへ両腕をむけてきた。
目の前には、大きな椅子に腰をかけている長い白髪の老人がいた。彼は目をまん丸にし、いきなりの事態に驚いている様であった。
「あ、いや、あの、違くてですね。あれは...」
「あぁ...そういうことじゃな。ははっ、ローゼちゃん、ちょっと早とちりじゃよ」
「え、いやでも。このボード見てくださいよ」
「ははっ、このボードは壊れているんじゃよ。数年前かの、似たような数値を出したものがおったんじゃよ。その時も勇者だ勇者だ言われておったのぉ...」
本当に壊れていたらしい。
良かった。たまたま壊れたボードに当たった様だ。これで勇者にも魔王の幹部にもならなくて済む。
「そうなんですか...じゃあ違うボードを...」
「いや、大丈夫じゃ、持ってこなくていい。わしが許可する。それよりローゼちゃん、少し席を外してくれ。このスピノくんと話したい」
彼女は少し困惑しながら、「はい」と言ってカウンターに戻っていった。
「それで、スピノくん。君にいくつか問いたい」
「何でしょうか」
それまでヨボヨボだった老人の目は急に鋭いものになり、俺のことを強く凝視した。
とんでもない威圧感だ。この人何者だ...?
「君は、シルクちゃんとどう言った関係だね。赤の他人とは言わせないよ?」
「他人です」
「違うだろ」
声に力が入っていた。
「主従関係です」
「そうかね、では質問を変えよう。君たちはこの町をどうしたいのかね」
拍子抜けだ。全部お見通しの様だ。この老人、本当に何者なのだろうか。
というか、俺ら一体何したいんだ? この町で。このおじいさんすごく深刻な顔してるけど。俺らただただお金に困って出稼ぎに来たみたいなもんだからな。
恥ずかしい。流石にお金に困っていますは恥ずかしい。
「占領しに来た。俺には大陸一つを滅ぼす力がある。逆らえばどうなるか分かるな」
「うぅ...」
老人は額から物凄い量の汗を流している。
俺も手に物凄い汗を握っている。すげぇ嘘ついちゃった...
「占領して何をしたい...」
住む場所と食料と多少の金銭を要求する!
いや、恥ずかしい...ダメだ...
「世界征服の第一歩だ。世界の情報をありったけ集める為の拠点を作るんだ」
これは嘘を言ってない。ちょっとかっこいい。
「では、何も危害は加えないんじゃな...?」
「何も抵抗しなければな?」
「分かった...用意する。少し時間をくれ」
俺はゆっくりとその部屋から出た。
やべぇ! うまくいったの!?
俺は小さくガッツポーズをし、手汗を服で拭った。
「え!? クエストの許可降りたんですか? 良かったですね!」
「あ、あぁ、そうみたいです。やったぜ!」
部屋を出ると目の前に受付のローゼさんがいた。
俺はもう一度同じポーズをして見せた。
「そう言えばシルクはどこですか?」
「あー、えっと。あそこですね、絵の前にいます」
カウンターの左側には大広間があり、多くの冒険者たちが談笑したり、次受けるクエストの話し合いなどをしていた。その中にポツンと一人、壁にかかっている絵をまじまじと見ている少女がいた。
「どうかしたんですか?」
俺が近くに行って話しかけると、魔王は絵に向かって指を差した。
「これは、魔法が込められておる。多分、未来であろうな。この絵に描かれていることは」
その絵には、先程走ってきた草原と、寂れてしまった町が描かれていた。人は一人も外に出ておらず、建造物は廃れ始めていた。
「一見普通の絵ですけどね。未来予知の絵を描く人って。いましたっけ?」
「人間にはおらんだろうな。神か、その類であろうな」
俺はその絵を眺め、少し寒気をもよおした。俺のせいだったらどうしようか、俺がこの町を占領したから...
「疫病じゃ、間違いない。この町で感染症が流行する」
「はぁ...?」
「スピノよ、一つクエストを受けるぞ。いいな?」
「はい、わかりました」
そういうと彼女はカウンターへ行き、何か一枚紙をもらってきた。
ニコニコ顔で紙をこちらへ見せる。
「スライムジュエルの採取じゃ!」
スライムジュエル...スライムジュエル...?
ん? スライムのうんこ!?
このままじゃ魔王の命が危ない。さっさとこの町を潰して...
「あなた、まさか...勇者様ですか...?」
「は?」
「この数値...あり得ませんよ...しかも悪魔族なんて聞いたことがありません...」
「え?」
まてよ、この姉ちゃんもしかして
「昔絵本で読んだことがあるんですよ! 勇者様がこの世界を救ってくれるって! 貴方なんですね!?」
ただの学がないお馬鹿さんかもしれん!
でも待てよ。このまま俺が勇者になってしまうと、魔王討伐の旅とか意味のわからないことになりかねない。なんとかして話を逸らそう。
「いや、あの、違くて。ボードの故しょ...」
「これは黙っていられません! ギルド長に言ってきます!」
「あ! ちょっと待って!!」
俺はカウンターを飛び越え、奥の部屋へ入っていった彼女を追いかけた。
「ギルド長! ご紹介します。勇者様です!」
彼女はそう大声で言うと、こちらへ両腕をむけてきた。
目の前には、大きな椅子に腰をかけている長い白髪の老人がいた。彼は目をまん丸にし、いきなりの事態に驚いている様であった。
「あ、いや、あの、違くてですね。あれは...」
「あぁ...そういうことじゃな。ははっ、ローゼちゃん、ちょっと早とちりじゃよ」
「え、いやでも。このボード見てくださいよ」
「ははっ、このボードは壊れているんじゃよ。数年前かの、似たような数値を出したものがおったんじゃよ。その時も勇者だ勇者だ言われておったのぉ...」
本当に壊れていたらしい。
良かった。たまたま壊れたボードに当たった様だ。これで勇者にも魔王の幹部にもならなくて済む。
「そうなんですか...じゃあ違うボードを...」
「いや、大丈夫じゃ、持ってこなくていい。わしが許可する。それよりローゼちゃん、少し席を外してくれ。このスピノくんと話したい」
彼女は少し困惑しながら、「はい」と言ってカウンターに戻っていった。
「それで、スピノくん。君にいくつか問いたい」
「何でしょうか」
それまでヨボヨボだった老人の目は急に鋭いものになり、俺のことを強く凝視した。
とんでもない威圧感だ。この人何者だ...?
「君は、シルクちゃんとどう言った関係だね。赤の他人とは言わせないよ?」
「他人です」
「違うだろ」
声に力が入っていた。
「主従関係です」
「そうかね、では質問を変えよう。君たちはこの町をどうしたいのかね」
拍子抜けだ。全部お見通しの様だ。この老人、本当に何者なのだろうか。
というか、俺ら一体何したいんだ? この町で。このおじいさんすごく深刻な顔してるけど。俺らただただお金に困って出稼ぎに来たみたいなもんだからな。
恥ずかしい。流石にお金に困っていますは恥ずかしい。
「占領しに来た。俺には大陸一つを滅ぼす力がある。逆らえばどうなるか分かるな」
「うぅ...」
老人は額から物凄い量の汗を流している。
俺も手に物凄い汗を握っている。すげぇ嘘ついちゃった...
「占領して何をしたい...」
住む場所と食料と多少の金銭を要求する!
いや、恥ずかしい...ダメだ...
「世界征服の第一歩だ。世界の情報をありったけ集める為の拠点を作るんだ」
これは嘘を言ってない。ちょっとかっこいい。
「では、何も危害は加えないんじゃな...?」
「何も抵抗しなければな?」
「分かった...用意する。少し時間をくれ」
俺はゆっくりとその部屋から出た。
やべぇ! うまくいったの!?
俺は小さくガッツポーズをし、手汗を服で拭った。
「え!? クエストの許可降りたんですか? 良かったですね!」
「あ、あぁ、そうみたいです。やったぜ!」
部屋を出ると目の前に受付のローゼさんがいた。
俺はもう一度同じポーズをして見せた。
「そう言えばシルクはどこですか?」
「あー、えっと。あそこですね、絵の前にいます」
カウンターの左側には大広間があり、多くの冒険者たちが談笑したり、次受けるクエストの話し合いなどをしていた。その中にポツンと一人、壁にかかっている絵をまじまじと見ている少女がいた。
「どうかしたんですか?」
俺が近くに行って話しかけると、魔王は絵に向かって指を差した。
「これは、魔法が込められておる。多分、未来であろうな。この絵に描かれていることは」
その絵には、先程走ってきた草原と、寂れてしまった町が描かれていた。人は一人も外に出ておらず、建造物は廃れ始めていた。
「一見普通の絵ですけどね。未来予知の絵を描く人って。いましたっけ?」
「人間にはおらんだろうな。神か、その類であろうな」
俺はその絵を眺め、少し寒気をもよおした。俺のせいだったらどうしようか、俺がこの町を占領したから...
「疫病じゃ、間違いない。この町で感染症が流行する」
「はぁ...?」
「スピノよ、一つクエストを受けるぞ。いいな?」
「はい、わかりました」
そういうと彼女はカウンターへ行き、何か一枚紙をもらってきた。
ニコニコ顔で紙をこちらへ見せる。
「スライムジュエルの採取じゃ!」
スライムジュエル...スライムジュエル...?
ん? スライムのうんこ!?
0
あなたにおすすめの小説
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる