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第5話 魔王襲来
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やべぇ、きっと気付かれた...。俺がぼーっとしていたばっかりに...。
このままじゃ魔王の命が危ない。さっさとこの町を潰して...
「あなた、まさか...勇者様ですか...?」
「は?」
「この数値...あり得ませんよ...しかも悪魔族なんて聞いたことがありません...」
「え?」
まてよ、この姉ちゃんもしかして
「昔絵本で読んだことがあるんですよ! 勇者様がこの世界を救ってくれるって! 貴方なんですね!?」
ただの学がないお馬鹿さんかもしれん!
でも待てよ。このまま俺が勇者になってしまうと、魔王討伐の旅とか意味のわからないことになりかねない。なんとかして話を逸らそう。
「いや、あの、違くて。ボードの故しょ...」
「これは黙っていられません! ギルド長に言ってきます!」
「あ! ちょっと待って!!」
俺はカウンターを飛び越え、奥の部屋へ入っていった彼女を追いかけた。
「ギルド長! ご紹介します。勇者様です!」
彼女はそう大声で言うと、こちらへ両腕をむけてきた。
目の前には、大きな椅子に腰をかけている長い白髪の老人がいた。彼は目をまん丸にし、いきなりの事態に驚いている様であった。
「あ、いや、あの、違くてですね。あれは...」
「あぁ...そういうことじゃな。ははっ、ローゼちゃん、ちょっと早とちりじゃよ」
「え、いやでも。このボード見てくださいよ」
「ははっ、このボードは壊れているんじゃよ。数年前かの、似たような数値を出したものがおったんじゃよ。その時も勇者だ勇者だ言われておったのぉ...」
本当に壊れていたらしい。
良かった。たまたま壊れたボードに当たった様だ。これで勇者にも魔王の幹部にもならなくて済む。
「そうなんですか...じゃあ違うボードを...」
「いや、大丈夫じゃ、持ってこなくていい。わしが許可する。それよりローゼちゃん、少し席を外してくれ。このスピノくんと話したい」
彼女は少し困惑しながら、「はい」と言ってカウンターに戻っていった。
「それで、スピノくん。君にいくつか問いたい」
「何でしょうか」
それまでヨボヨボだった老人の目は急に鋭いものになり、俺のことを強く凝視した。
とんでもない威圧感だ。この人何者だ...?
「君は、シルクちゃんとどう言った関係だね。赤の他人とは言わせないよ?」
「他人です」
「違うだろ」
声に力が入っていた。
「主従関係です」
「そうかね、では質問を変えよう。君たちはこの町をどうしたいのかね」
拍子抜けだ。全部お見通しの様だ。この老人、本当に何者なのだろうか。
というか、俺ら一体何したいんだ? この町で。このおじいさんすごく深刻な顔してるけど。俺らただただお金に困って出稼ぎに来たみたいなもんだからな。
恥ずかしい。流石にお金に困っていますは恥ずかしい。
「占領しに来た。俺には大陸一つを滅ぼす力がある。逆らえばどうなるか分かるな」
「うぅ...」
老人は額から物凄い量の汗を流している。
俺も手に物凄い汗を握っている。すげぇ嘘ついちゃった...
「占領して何をしたい...」
住む場所と食料と多少の金銭を要求する!
いや、恥ずかしい...ダメだ...
「世界征服の第一歩だ。世界の情報をありったけ集める為の拠点を作るんだ」
これは嘘を言ってない。ちょっとかっこいい。
「では、何も危害は加えないんじゃな...?」
「何も抵抗しなければな?」
「分かった...用意する。少し時間をくれ」
俺はゆっくりとその部屋から出た。
やべぇ! うまくいったの!?
俺は小さくガッツポーズをし、手汗を服で拭った。
「え!? クエストの許可降りたんですか? 良かったですね!」
「あ、あぁ、そうみたいです。やったぜ!」
部屋を出ると目の前に受付のローゼさんがいた。
俺はもう一度同じポーズをして見せた。
「そう言えばシルクはどこですか?」
「あー、えっと。あそこですね、絵の前にいます」
カウンターの左側には大広間があり、多くの冒険者たちが談笑したり、次受けるクエストの話し合いなどをしていた。その中にポツンと一人、壁にかかっている絵をまじまじと見ている少女がいた。
「どうかしたんですか?」
俺が近くに行って話しかけると、魔王は絵に向かって指を差した。
「これは、魔法が込められておる。多分、未来であろうな。この絵に描かれていることは」
その絵には、先程走ってきた草原と、寂れてしまった町が描かれていた。人は一人も外に出ておらず、建造物は廃れ始めていた。
「一見普通の絵ですけどね。未来予知の絵を描く人って。いましたっけ?」
「人間にはおらんだろうな。神か、その類であろうな」
俺はその絵を眺め、少し寒気をもよおした。俺のせいだったらどうしようか、俺がこの町を占領したから...
「疫病じゃ、間違いない。この町で感染症が流行する」
「はぁ...?」
「スピノよ、一つクエストを受けるぞ。いいな?」
「はい、わかりました」
そういうと彼女はカウンターへ行き、何か一枚紙をもらってきた。
ニコニコ顔で紙をこちらへ見せる。
「スライムジュエルの採取じゃ!」
スライムジュエル...スライムジュエル...?
ん? スライムのうんこ!?
このままじゃ魔王の命が危ない。さっさとこの町を潰して...
「あなた、まさか...勇者様ですか...?」
「は?」
「この数値...あり得ませんよ...しかも悪魔族なんて聞いたことがありません...」
「え?」
まてよ、この姉ちゃんもしかして
「昔絵本で読んだことがあるんですよ! 勇者様がこの世界を救ってくれるって! 貴方なんですね!?」
ただの学がないお馬鹿さんかもしれん!
でも待てよ。このまま俺が勇者になってしまうと、魔王討伐の旅とか意味のわからないことになりかねない。なんとかして話を逸らそう。
「いや、あの、違くて。ボードの故しょ...」
「これは黙っていられません! ギルド長に言ってきます!」
「あ! ちょっと待って!!」
俺はカウンターを飛び越え、奥の部屋へ入っていった彼女を追いかけた。
「ギルド長! ご紹介します。勇者様です!」
彼女はそう大声で言うと、こちらへ両腕をむけてきた。
目の前には、大きな椅子に腰をかけている長い白髪の老人がいた。彼は目をまん丸にし、いきなりの事態に驚いている様であった。
「あ、いや、あの、違くてですね。あれは...」
「あぁ...そういうことじゃな。ははっ、ローゼちゃん、ちょっと早とちりじゃよ」
「え、いやでも。このボード見てくださいよ」
「ははっ、このボードは壊れているんじゃよ。数年前かの、似たような数値を出したものがおったんじゃよ。その時も勇者だ勇者だ言われておったのぉ...」
本当に壊れていたらしい。
良かった。たまたま壊れたボードに当たった様だ。これで勇者にも魔王の幹部にもならなくて済む。
「そうなんですか...じゃあ違うボードを...」
「いや、大丈夫じゃ、持ってこなくていい。わしが許可する。それよりローゼちゃん、少し席を外してくれ。このスピノくんと話したい」
彼女は少し困惑しながら、「はい」と言ってカウンターに戻っていった。
「それで、スピノくん。君にいくつか問いたい」
「何でしょうか」
それまでヨボヨボだった老人の目は急に鋭いものになり、俺のことを強く凝視した。
とんでもない威圧感だ。この人何者だ...?
「君は、シルクちゃんとどう言った関係だね。赤の他人とは言わせないよ?」
「他人です」
「違うだろ」
声に力が入っていた。
「主従関係です」
「そうかね、では質問を変えよう。君たちはこの町をどうしたいのかね」
拍子抜けだ。全部お見通しの様だ。この老人、本当に何者なのだろうか。
というか、俺ら一体何したいんだ? この町で。このおじいさんすごく深刻な顔してるけど。俺らただただお金に困って出稼ぎに来たみたいなもんだからな。
恥ずかしい。流石にお金に困っていますは恥ずかしい。
「占領しに来た。俺には大陸一つを滅ぼす力がある。逆らえばどうなるか分かるな」
「うぅ...」
老人は額から物凄い量の汗を流している。
俺も手に物凄い汗を握っている。すげぇ嘘ついちゃった...
「占領して何をしたい...」
住む場所と食料と多少の金銭を要求する!
いや、恥ずかしい...ダメだ...
「世界征服の第一歩だ。世界の情報をありったけ集める為の拠点を作るんだ」
これは嘘を言ってない。ちょっとかっこいい。
「では、何も危害は加えないんじゃな...?」
「何も抵抗しなければな?」
「分かった...用意する。少し時間をくれ」
俺はゆっくりとその部屋から出た。
やべぇ! うまくいったの!?
俺は小さくガッツポーズをし、手汗を服で拭った。
「え!? クエストの許可降りたんですか? 良かったですね!」
「あ、あぁ、そうみたいです。やったぜ!」
部屋を出ると目の前に受付のローゼさんがいた。
俺はもう一度同じポーズをして見せた。
「そう言えばシルクはどこですか?」
「あー、えっと。あそこですね、絵の前にいます」
カウンターの左側には大広間があり、多くの冒険者たちが談笑したり、次受けるクエストの話し合いなどをしていた。その中にポツンと一人、壁にかかっている絵をまじまじと見ている少女がいた。
「どうかしたんですか?」
俺が近くに行って話しかけると、魔王は絵に向かって指を差した。
「これは、魔法が込められておる。多分、未来であろうな。この絵に描かれていることは」
その絵には、先程走ってきた草原と、寂れてしまった町が描かれていた。人は一人も外に出ておらず、建造物は廃れ始めていた。
「一見普通の絵ですけどね。未来予知の絵を描く人って。いましたっけ?」
「人間にはおらんだろうな。神か、その類であろうな」
俺はその絵を眺め、少し寒気をもよおした。俺のせいだったらどうしようか、俺がこの町を占領したから...
「疫病じゃ、間違いない。この町で感染症が流行する」
「はぁ...?」
「スピノよ、一つクエストを受けるぞ。いいな?」
「はい、わかりました」
そういうと彼女はカウンターへ行き、何か一枚紙をもらってきた。
ニコニコ顔で紙をこちらへ見せる。
「スライムジュエルの採取じゃ!」
スライムジュエル...スライムジュエル...?
ん? スライムのうんこ!?
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