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第4話 町
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「あの、魔王様。まずは住居を...」
「あぁ、そうじゃの。じゃあまずは火を起こすぞ! 薪をもってこい」
この世界には建築魔法というものがある。とても高度な魔法で、それこそ魔王クラスの魔物しか使えないのだが...この様子だと使えないようだ。
俺は「ははっ」と笑いながら炎の魔法を使った。目の前に背丈ほどの火の玉が出来る。これくらいであれば暖を取れるだろう。少し難易度は高いが、このくらいの魔法なら魔物学校を上位で卒業していれば誰でも...
「ふふ、すごいのぉ」
あれ、この魔王すごく恍惚顔で見てる。
「わ、妾にも出来るぞ! そんな、変な顔しないでもらいたい」
彼女は「えいっ!」と言って両腕を前にかざした。
すごく小さな火の玉が出来た。可愛い火の玉、まるで魔法初心者だ。
「ほらほら!」
嬉しそうにこちらを見てくる。
なるほど、事態は想像以上に深刻だった。
仕方がないので、俺は簡単な魔法を使って二つの岩を出した。膝程度の高さのものである。これがあれば椅子の代わりになるだろう。
俺らは対になるように座り、これからの予定を話し合うことにした。
「先ずは住居ですね。これがないと何にも始まりません。そういえば魔王様、いつもはどのようにして寝床を確保していたんですか?」
「ん? 原っぱに寝ておったぞ」
ん? 魔王が平原の真ん中で寝ていた? そんなに危ないことがあっていいのか!?
魔物達の大柱である魔王の一人、常に人間に命を狙われている重役が、野ざらしにされていたってどう言う状況だ?
「しかし、魔王様! 人間などに見つかったりしないのですか?」
「あぁ、数回あったな。冒険者にみつかったわ」
「え!? いや、どうやって逃げたのですか? それとも、戦ったのですか?」
「なんか、保護されての。『お嬢ちゃん、大丈夫かい?』など馬鹿にしおって、町に連れて行かれたわ。あぁ! 思い出しただけでもイライラしてくる」
あぁ、なるほど、分かります。冒険者の皆さん。本当にありがとうございます。俺も同じことしようとしたしな。
あれ、保護されて町に行った? てことはこの近くに町があるのか。
「あの、その町というのはここからどれくらい先にあるのですか?」
「大体10キロほどかの...あ! クエストの途中であったことすっかり忘れておったわ...」
少し涙目になりかけている顔をこちらに向けて来る。
「スピノ...クエスト手伝ってくれないかの...?」
クエスト? もしかして、この魔王...
「あの、魔王様。クエストってもしかして...人間のギルドに所属しているのですか?」
彼女はしょぼくれ顔で小さくこくこくと頷いた。
ギルド、一般的に人間たちの同業組合のことを指すが、最近は対魔物組織のことを意味するようになっている。
そして、ギルドの最終目標は、魔物達の殲滅。
「あの、魔王様...」
「分かっておる...でも、やむを得ない事情があっての...」
「はぁ...と言うと...?」
「お金が...無い...」
暫くの沈黙が続いた。彼女は泣きそうな顔を下に向け、その場を凌ごうとしている。泣きたいのはこちらの方だ。
世界征服とか言っておきながら、自ら魔王討伐に加担しているのだ...あぁ、気が滅入る...。
「だが、だがの? スピノ。妾は魔物討伐は受け合ってないぞ! 今日はモンシロチョウ三匹の捕獲じゃ!」
「じゃあ、まぁ。いいと思います」
「だからの、スピノ。手伝っておくれ、クエスト」
「じゃあ、明日ですね。今日は寝ましょう」
「ふふ、宜しくの。スピノ」
俺は「はい」と一言言って炎を小さくした。
「スピノぉ、もっとゆっくり歩いてくれぇ...」
「ダメですよ。納品今日の10時まででしょ? 結局全部取ったの俺ですし...魔王様はずっと寝てたし...」
後ろから「うぅ...」とうなっている声が聞こえて来る。でも仕方ない、受けた仕事は完遂しなくては。
ギルドのある町は先ほどいたところから北に約10キロほど。残り3キロで現時刻は9時30分、割と危ない。
「魔王様、小走りしますよ!」
「えぇ...! 待ってくれぇ...!」
俺は悪魔の象徴であるツノと尻尾を隠し、進める脚を速くした。
案外早く町には着いた。町はそこそこ大きいく、商店も多数あり、食料や衣服、武器装備などは一通り手に入れることができそうであった。また、町の周りに柵などはなく、外敵もほぼいないことが容易に想像できた。
ギルドは町の重要な施設らしく、中央に立地していた。しっかり手入れされているようで、外装は町の中でも1番綺麗であった。
中に入るとすぐにカウンターがあり、一人の女性が中にいた。
「ご用件は何でしょうか?」
「あ、えっと。納品したくて。あ、二人で一緒にやったんですけど」
俺がそう言うと後ろから魔王がひょっこり顔を出した。
「あー! シルクちゃんの! あれ、二人はどう言った御関係で?」
「妾の僕じゃ! さっき平原で出会った」
「あー、また迷子になってたんでしょ? 本当にすみませんね、この子こう言うこと多くて...」
「お気になさらず」
俺はこの女性に話を合わせることにした。魔王に乗っかると色々と厄介なことになりそうだ。
後ろを覗くと頬をぷっくりと膨らませている魔王がいた。
「では、納品の手続きをしますね」
「あ!!」
魔王がいきなり叫んだ。そうかと思えば後ろでカタカタ音を立て
「居ない...1匹逃げられた...どうしようスピノ」
ふるふるした腕で俺の裾を引っ張り、虫籠を見せてきた。
確かに2匹しかその中には居なかった。恐らく走っている間に隙間から逃げられてしまったのだろう。申し訳ないことをしてしまった。
「すみません、この場合ってどうなりますか?」
「そうですねぇ、本来であれば遂行出来なかったということで罰則があるのですが、今回は特別に無しにします。でも、報酬はあげられませんね」
後ろから哀愁がしてきた。かなり落ち込んでいるようである。
「あの、どうされますか? お金もらえない様ですが」
「お金が必要じゃ...」
確かに、今後魔王軍を作っていくとなると資金が必要になって来る。ここで得られるお金は限度があるだろうが、多少のお金でも今後の様々な可能性に繋がっていくわけだ。この機を利用するのも悪くは無いのかもしれない。
「あの、俺が受けますよ。クエスト」
「分かりました。では先ずステータス確認からですね。こちらのボードに手をかざしてください」
「え? それって個人情報どこまで分かっちゃいますか?」
「そうですねぇ、体力、攻撃力、魔法適正に賢さ、スキルだったり。強さに関することですかね。あとは年齢、種族なんかも分かりますよ?」
「あー、年齢わかっちゃうんですかー...」
あー、種族わかっちゃうんですかー...
まずい、とんでもない地雷踏んだかもしれん。ここで俺が悪魔族であることが分かってしまったら、ここにいる人達が俺のことを攻撃しようとするだけではなく、この魔王も攻撃の対象になってしまうかもしれない。そうなったら、この町は滅ぼすしか...
「どうしたんですか? 早く登録しちゃいましょう」
「あー、やっぱり今日はやめておこうかな...」
「何言ってるんですか。ほーらこうして」
「あ、ちょ!」
彼女が強引に手をひき、俺の手はボードの上に乗ってしまった。
文字がボード上に現れる。
ステータス『スピノ』 種族 悪魔族
年齢 18
体力 S
攻撃力 S
素早さ S
賢さ S
魔法適正 SS +
スキル 無し
まずい、気付かれたか...!?
「これって、貴方...そんな...」
「あぁ、そうじゃの。じゃあまずは火を起こすぞ! 薪をもってこい」
この世界には建築魔法というものがある。とても高度な魔法で、それこそ魔王クラスの魔物しか使えないのだが...この様子だと使えないようだ。
俺は「ははっ」と笑いながら炎の魔法を使った。目の前に背丈ほどの火の玉が出来る。これくらいであれば暖を取れるだろう。少し難易度は高いが、このくらいの魔法なら魔物学校を上位で卒業していれば誰でも...
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あれ、この魔王すごく恍惚顔で見てる。
「わ、妾にも出来るぞ! そんな、変な顔しないでもらいたい」
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「ほらほら!」
嬉しそうにこちらを見てくる。
なるほど、事態は想像以上に深刻だった。
仕方がないので、俺は簡単な魔法を使って二つの岩を出した。膝程度の高さのものである。これがあれば椅子の代わりになるだろう。
俺らは対になるように座り、これからの予定を話し合うことにした。
「先ずは住居ですね。これがないと何にも始まりません。そういえば魔王様、いつもはどのようにして寝床を確保していたんですか?」
「ん? 原っぱに寝ておったぞ」
ん? 魔王が平原の真ん中で寝ていた? そんなに危ないことがあっていいのか!?
魔物達の大柱である魔王の一人、常に人間に命を狙われている重役が、野ざらしにされていたってどう言う状況だ?
「しかし、魔王様! 人間などに見つかったりしないのですか?」
「あぁ、数回あったな。冒険者にみつかったわ」
「え!? いや、どうやって逃げたのですか? それとも、戦ったのですか?」
「なんか、保護されての。『お嬢ちゃん、大丈夫かい?』など馬鹿にしおって、町に連れて行かれたわ。あぁ! 思い出しただけでもイライラしてくる」
あぁ、なるほど、分かります。冒険者の皆さん。本当にありがとうございます。俺も同じことしようとしたしな。
あれ、保護されて町に行った? てことはこの近くに町があるのか。
「あの、その町というのはここからどれくらい先にあるのですか?」
「大体10キロほどかの...あ! クエストの途中であったことすっかり忘れておったわ...」
少し涙目になりかけている顔をこちらに向けて来る。
「スピノ...クエスト手伝ってくれないかの...?」
クエスト? もしかして、この魔王...
「あの、魔王様。クエストってもしかして...人間のギルドに所属しているのですか?」
彼女はしょぼくれ顔で小さくこくこくと頷いた。
ギルド、一般的に人間たちの同業組合のことを指すが、最近は対魔物組織のことを意味するようになっている。
そして、ギルドの最終目標は、魔物達の殲滅。
「あの、魔王様...」
「分かっておる...でも、やむを得ない事情があっての...」
「はぁ...と言うと...?」
「お金が...無い...」
暫くの沈黙が続いた。彼女は泣きそうな顔を下に向け、その場を凌ごうとしている。泣きたいのはこちらの方だ。
世界征服とか言っておきながら、自ら魔王討伐に加担しているのだ...あぁ、気が滅入る...。
「だが、だがの? スピノ。妾は魔物討伐は受け合ってないぞ! 今日はモンシロチョウ三匹の捕獲じゃ!」
「じゃあ、まぁ。いいと思います」
「だからの、スピノ。手伝っておくれ、クエスト」
「じゃあ、明日ですね。今日は寝ましょう」
「ふふ、宜しくの。スピノ」
俺は「はい」と一言言って炎を小さくした。
「スピノぉ、もっとゆっくり歩いてくれぇ...」
「ダメですよ。納品今日の10時まででしょ? 結局全部取ったの俺ですし...魔王様はずっと寝てたし...」
後ろから「うぅ...」とうなっている声が聞こえて来る。でも仕方ない、受けた仕事は完遂しなくては。
ギルドのある町は先ほどいたところから北に約10キロほど。残り3キロで現時刻は9時30分、割と危ない。
「魔王様、小走りしますよ!」
「えぇ...! 待ってくれぇ...!」
俺は悪魔の象徴であるツノと尻尾を隠し、進める脚を速くした。
案外早く町には着いた。町はそこそこ大きいく、商店も多数あり、食料や衣服、武器装備などは一通り手に入れることができそうであった。また、町の周りに柵などはなく、外敵もほぼいないことが容易に想像できた。
ギルドは町の重要な施設らしく、中央に立地していた。しっかり手入れされているようで、外装は町の中でも1番綺麗であった。
中に入るとすぐにカウンターがあり、一人の女性が中にいた。
「ご用件は何でしょうか?」
「あ、えっと。納品したくて。あ、二人で一緒にやったんですけど」
俺がそう言うと後ろから魔王がひょっこり顔を出した。
「あー! シルクちゃんの! あれ、二人はどう言った御関係で?」
「妾の僕じゃ! さっき平原で出会った」
「あー、また迷子になってたんでしょ? 本当にすみませんね、この子こう言うこと多くて...」
「お気になさらず」
俺はこの女性に話を合わせることにした。魔王に乗っかると色々と厄介なことになりそうだ。
後ろを覗くと頬をぷっくりと膨らませている魔王がいた。
「では、納品の手続きをしますね」
「あ!!」
魔王がいきなり叫んだ。そうかと思えば後ろでカタカタ音を立て
「居ない...1匹逃げられた...どうしようスピノ」
ふるふるした腕で俺の裾を引っ張り、虫籠を見せてきた。
確かに2匹しかその中には居なかった。恐らく走っている間に隙間から逃げられてしまったのだろう。申し訳ないことをしてしまった。
「すみません、この場合ってどうなりますか?」
「そうですねぇ、本来であれば遂行出来なかったということで罰則があるのですが、今回は特別に無しにします。でも、報酬はあげられませんね」
後ろから哀愁がしてきた。かなり落ち込んでいるようである。
「あの、どうされますか? お金もらえない様ですが」
「お金が必要じゃ...」
確かに、今後魔王軍を作っていくとなると資金が必要になって来る。ここで得られるお金は限度があるだろうが、多少のお金でも今後の様々な可能性に繋がっていくわけだ。この機を利用するのも悪くは無いのかもしれない。
「あの、俺が受けますよ。クエスト」
「分かりました。では先ずステータス確認からですね。こちらのボードに手をかざしてください」
「え? それって個人情報どこまで分かっちゃいますか?」
「そうですねぇ、体力、攻撃力、魔法適正に賢さ、スキルだったり。強さに関することですかね。あとは年齢、種族なんかも分かりますよ?」
「あー、年齢わかっちゃうんですかー...」
あー、種族わかっちゃうんですかー...
まずい、とんでもない地雷踏んだかもしれん。ここで俺が悪魔族であることが分かってしまったら、ここにいる人達が俺のことを攻撃しようとするだけではなく、この魔王も攻撃の対象になってしまうかもしれない。そうなったら、この町は滅ぼすしか...
「どうしたんですか? 早く登録しちゃいましょう」
「あー、やっぱり今日はやめておこうかな...」
「何言ってるんですか。ほーらこうして」
「あ、ちょ!」
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文字がボード上に現れる。
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