12 / 15
第12話 作戦
しおりを挟む
俺の手はただ震えていた。大きくなる鼓動と同時に掠れゆく文字。
全員魔王幹部クラスの模様
内容は変わらず、俺に非情な現実を突きつけていた。
「魔王様...俺って魔王幹部の中で、その、どのくらい強いんですかね?」
魔王は俺の震える手を覗き、腕を組んで考える素振りをした後、思い切り頭を下げた。
ん? どう言うことだ?
なんでそんな動作するんだ? なんか心配になる。
「申し訳ない! 黙っていたことがある」
「え...何ですか?」
「じつは...じつはの...」
彼女は手に持っていた麦わら帽子を胸に抱き、俯いた。
「魔王幹部というのは、自身の強さの他に担当の魔王の強さが加算されるのじゃ...」
ん? どういうことだ? そんなの聞いたことないぞ。
「魔王様、なんの冗談を言ってるんですか?」
「スピノ。魔物学校では教えられないことは多々あるのじゃ。そのうち一つが精神の老化について、そして今スピノの目の前に現れた事実がこれじゃ」
魔王幹部は自身の強さに魔王の強さが上乗せされる...
これが何を意味しているか...
「スピノ、言わずもがなじゃが...妾は最弱の魔王じゃ...しかもダントツの」
そう。つまり
「スピノ、お主はかなり弱い魔王幹部なのじゃ」
最弱魔王幹部
どうしたことでしょう。我が軍は最弱魔王幹部一人。対する敵軍は最強魔王幹部三人。勝算は...
雷に当たる方が高そうだ
「シルクち...いや、魔王様。やっぱり逃げましょう? よく分かりませんけど、勝てなさそうですし」
ローゼさんが再びソワソワし出した。確かに彼女の今置かれている状況はかなり深刻だろう。
目の前に戦力がいる。敵軍に対しては取るに足らない程度であろうが、多少足止め出来る強さはあることは想像できる。
町民を守るため、自分の命を守るために俺らを利用するのもでだろう。
しかし、良心の呵責からだろうか、彼女は俺らを利用するという判断はしなかった。
「いや、戦うぞ。スピノ」
「死ぬ気でってことですか?」
魔王は麦わら帽子を被り直し、二回首を横に振った。
「妾達の勝算は100パーセントじゃ。それもただの勝利ではない、圧の字がつくほどのものになるじゃろうな」
何を言っているんだこの魔王。力の差は歴然、どうやって勝つって言うのか。
「戦争は総力戦じゃ、個人の力だけで決まるものではない。こちらには物資が山ほどあるじゃろう?」
にやけ顔でこちらを見てくる。物資...? そんなものあったか?
「ローゼさん。この町って特産品とかあるんですか?」
「そうじゃない! 妾達で取ったであろう。スライムのうんちを」
確かに俺らには今山ほどスライムジュエルがある。それもほぼ新品のゲル状のものだ。
しかし、それがどうしたと言うのだろう。
「魔王様しかし、これらをどう活用すると言うのですか?」
「ふっふっふっ。ローゼよスライムジュエルの活用法を言ってみなさい」
指を差されたローゼさんは腕を組み、空を見上げた。
「あ、薬の原料ですね」
「それ以外じゃ」
それ以外? 俺が魔王に聞かされたのはそれだけだ。他にもあるのだろうか。
ローゼさんは唸った。
「いや、知らないです」
「ふっふっふ、そうじゃろそうじゃろ」
魔王は口を押さえて笑い始め、次はこちらに指を差した。
「スピノよ! 再びスライムジュエルを取りに行くぞ! ついでにスライム達も仲間にする」
俺の憂鬱は予想以上に早くやってきた。
「あの、もしかしてピンクの子もですか?」
魔王はニコニコ顔で首を縦に振った。
あぁ...またか、またあのゴミを見るような目で見られなきゃいけないのか。
「お主もピンクの誤解を解きたいじゃろ?」
「あれはもはや誤解ではないですけどね...」
「まぁ、黙ってうんちを取ったのは悪かったの。でもじゃ、ピンクもスライムと言っては大人の年齢じゃ! 話を聞けば分かってくれるじゃろう」
彼女はそう言うと先ほど居た山の方向へと走り出した。
あぁ...今のうちにスピーチの内容考えておこう。
全員魔王幹部クラスの模様
内容は変わらず、俺に非情な現実を突きつけていた。
「魔王様...俺って魔王幹部の中で、その、どのくらい強いんですかね?」
魔王は俺の震える手を覗き、腕を組んで考える素振りをした後、思い切り頭を下げた。
ん? どう言うことだ?
なんでそんな動作するんだ? なんか心配になる。
「申し訳ない! 黙っていたことがある」
「え...何ですか?」
「じつは...じつはの...」
彼女は手に持っていた麦わら帽子を胸に抱き、俯いた。
「魔王幹部というのは、自身の強さの他に担当の魔王の強さが加算されるのじゃ...」
ん? どういうことだ? そんなの聞いたことないぞ。
「魔王様、なんの冗談を言ってるんですか?」
「スピノ。魔物学校では教えられないことは多々あるのじゃ。そのうち一つが精神の老化について、そして今スピノの目の前に現れた事実がこれじゃ」
魔王幹部は自身の強さに魔王の強さが上乗せされる...
これが何を意味しているか...
「スピノ、言わずもがなじゃが...妾は最弱の魔王じゃ...しかもダントツの」
そう。つまり
「スピノ、お主はかなり弱い魔王幹部なのじゃ」
最弱魔王幹部
どうしたことでしょう。我が軍は最弱魔王幹部一人。対する敵軍は最強魔王幹部三人。勝算は...
雷に当たる方が高そうだ
「シルクち...いや、魔王様。やっぱり逃げましょう? よく分かりませんけど、勝てなさそうですし」
ローゼさんが再びソワソワし出した。確かに彼女の今置かれている状況はかなり深刻だろう。
目の前に戦力がいる。敵軍に対しては取るに足らない程度であろうが、多少足止め出来る強さはあることは想像できる。
町民を守るため、自分の命を守るために俺らを利用するのもでだろう。
しかし、良心の呵責からだろうか、彼女は俺らを利用するという判断はしなかった。
「いや、戦うぞ。スピノ」
「死ぬ気でってことですか?」
魔王は麦わら帽子を被り直し、二回首を横に振った。
「妾達の勝算は100パーセントじゃ。それもただの勝利ではない、圧の字がつくほどのものになるじゃろうな」
何を言っているんだこの魔王。力の差は歴然、どうやって勝つって言うのか。
「戦争は総力戦じゃ、個人の力だけで決まるものではない。こちらには物資が山ほどあるじゃろう?」
にやけ顔でこちらを見てくる。物資...? そんなものあったか?
「ローゼさん。この町って特産品とかあるんですか?」
「そうじゃない! 妾達で取ったであろう。スライムのうんちを」
確かに俺らには今山ほどスライムジュエルがある。それもほぼ新品のゲル状のものだ。
しかし、それがどうしたと言うのだろう。
「魔王様しかし、これらをどう活用すると言うのですか?」
「ふっふっふっ。ローゼよスライムジュエルの活用法を言ってみなさい」
指を差されたローゼさんは腕を組み、空を見上げた。
「あ、薬の原料ですね」
「それ以外じゃ」
それ以外? 俺が魔王に聞かされたのはそれだけだ。他にもあるのだろうか。
ローゼさんは唸った。
「いや、知らないです」
「ふっふっふ、そうじゃろそうじゃろ」
魔王は口を押さえて笑い始め、次はこちらに指を差した。
「スピノよ! 再びスライムジュエルを取りに行くぞ! ついでにスライム達も仲間にする」
俺の憂鬱は予想以上に早くやってきた。
「あの、もしかしてピンクの子もですか?」
魔王はニコニコ顔で首を縦に振った。
あぁ...またか、またあのゴミを見るような目で見られなきゃいけないのか。
「お主もピンクの誤解を解きたいじゃろ?」
「あれはもはや誤解ではないですけどね...」
「まぁ、黙ってうんちを取ったのは悪かったの。でもじゃ、ピンクもスライムと言っては大人の年齢じゃ! 話を聞けば分かってくれるじゃろう」
彼女はそう言うと先ほど居た山の方向へと走り出した。
あぁ...今のうちにスピーチの内容考えておこう。
0
あなたにおすすめの小説
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる