俺、最弱魔王の配下になったんすけど、世界征服の手伝いってどうやればいいんすか?

桜木開花

文字の大きさ
11 / 15

第11話 三人組③

しおりを挟む
 三人は老人の言葉に従い、村の中で最も大きな建物の中に入っていた。老人曰く、いつもは集会等に使っており、今日に限っては旅人の寝床として使わせる様だ。

「あー、えっと。食べ物なんですが...これからの襲撃に備えて...その...」
「あー! お気になさらず、沢山食料は持ってますので!」
「お、お腹減ったでふ...」
「ブタは黙ってろ...!」

 ティノがブタのお腹にパンチする。うずくまるブタを横目にバクは続ける。

「あの、この村は全く王都の情報は入らないんですか...?」

 老人は数回顎を撫で、腕を組んだ。

「そうですねぇ...全くと言ったら嘘になりますかね。数ヶ月に一度税の回収に来ますし、たまに王都へ買い出しに行くこともありますからね」
「そうですか...じゃあ」

 バクは数回咳払いをし、老人の方へ向き直した。

「王都の爆弾開発について知っていることってありますか?」

 ブタも立ち上がり、老人の方向へとならった。三人の雰囲気はどこか強ばったもので、その場の空気は先程よりも張り詰めたものになった。

「さぁ、聞いたことはありませんね。まぁ、この王国は大きい方なので、もしかしたらそちらの方の研究は進んでいるのかもしれませんね」
「そうですか。寝場所だけではなく情報までくださってありがとうございます」

 恐縮する老人に向かって三人は軽くお辞儀をした。

「では、私はもうこの部屋から出ますので、あとはゆっくりしてください」

 老人の出て行った後、三人は脱力し、その場に項垂れた。

「なんか疲れたでふ...」
「そうだなぁ...予想外のことが起きるとこんなに疲れるとは...」
「どうする? 本来ここら辺にいる人間を王都へ送るか殲滅するのが私たちの任務のひとつなんだよ?」

 三人は全員天井を見上げた。天井には多数穴があり空の青色が薄らと見えていた。
 ティノの目には天井の穴から一匹の鳥が写っていた。その鳥はミミズを咥え、今にも飲み込もうとしている。しかし、ティノと目のあった瞬間飛び去ってしまった。

「なぁ、別に見逃してもバレないんじゃねーか?」
「なんで?」
「俺らが強いのは自明だろ? だったらこんな村直ぐに滅ぼせる。誰も見逃すなんて思わないだろ。上司の奴らがわざわざここに来なきゃバレないんだよ」
「つまり?」
「つまり...俺らがこんなにバカだなんて誰も思ってないってこと」

 ブタとバクは腕を組んで再び天井を見上げた。

「私こう見えて魔物学校主席だったんだよ?」
「そう言うことじゃないって...バカじゃん...」
「ふふ、まぁオイラ達は相当バカでふからねぇ...この中で動物以外殺傷したことある人っているでふか?」

 三人はお互いの顔を見合わせた。続く沈黙、誰も手をあげることなく暫くの時間経過した。

「「「バカだなぁ...」」」

 三人は床に寝転んだ。

 この三人は魔王アルファの幹部であり、かつ問題児である。誰一人として他人を殺めたことがない、魔王の元で働く魔物としてあり得ない経歴の持ち主達だ。
 しかし、仕事の出来は逸品もの。武力以外の能力を駆使し、その場を乗り切ってきた。

 今回の仕事、殺傷を毛嫌いする彼らにとってはだいぶハードな内容なのであった。

「まぁ、上司にバレそうになったらいつでも俺が...」

__ガタンッ

 物音がする方向には、ドアの隙間から三人を覗き込んでいる先ほどの少年がいた。
 会話内容に怖気付いているわけでもなく、困惑しているわけでもなく、ただただ目をキラキラさせ、三人を眺めていた。

「なんだよガキ。あんまジロジロしてるとかじるぞ」
「ティノ君歯癖悪いもんねぇ...どうしたの、僕?」

 少年はドアを開き、モジモジしながら部屋へと入ってきた。

「ツノのお兄ちゃんと遊びたい...」
「は? 俺?」

 少年は俯いたままコクコク頷いた。

「いいんじゃないでふか? 暇でふよね?」
「いやぁ、でも。俺魔王幹部だぜ? そう言うことは...ん?」

 少年の後ろを覗くと、数人の他の少年達がいた。ティノよりも若干年下の男の子達である。

 仲間に入れたそうにこちらをみている。

「あー! もう分かったよ。少しだけな?」

 少年たちは大喜びし、ティノを外へと引っ張って行った。

「あー! ちょっと! ツノ引っ張んな!」

 扉が閉められ、ブタとバクの二人だけになった部屋の中、二人は微笑み合う。

「ふふ、ティノ君って10歳だっけ。すごい飛び級したんだよね」
「そうでふねぇ。天才でふよ、本物の。魔神に最も近い魔物の一人でふ」

 バクは再び寝転がり、天井を見上げた。そして、収納魔法を使って小さな紙切れ一つを取り出し、溜息をついた。

「彼には酷だよね。こんな任務」
「そうでふねまだ小さいのに。ティノ君はこうやって遊ぶことが1番必要なことの筈なんでふよ」



任務内容

シルバ王国 国王殺害


 彼女は手から出した火で紙を燃やした。煤となったそれが顔にかかる。

「ふーっ。何人死者が出ると思う?」
「さぁ...それにしてもアルバート王国。馬鹿極まりないでふね」

 そう言って二人は眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...