俺、最弱魔王の配下になったんすけど、世界征服の手伝いってどうやればいいんすか?

桜木開花

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第10話 三人組②

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「まだでふかぁ...もう限界でふよぉ」
「う、うるさい...! あともうちょいだよ」

 彼らは砂漠を抜け、大きな山を越えようとしていた。
 ブタはもう疲労困憊の様で、至る所から汗を流し、すすめる足は千鳥足になっていた。

「なんでこんなところ通らなきゃいけないんでふか」
「以前は国交のための大きな道があったらしいんだけどね。だいぶ昔に交易をやめてしまったみたいで、もはや茨の道みたいになってるみたい」
「やめんじゃねーよ...せめて少しは道残しておけよ」

 正直ティノももう限界であった。身長が人一倍小さい分、一歩で進める距離も限られており、足に相当な負担がかかっていたのだ。

「私はまだ余裕だけどね。早く王子様に会いたい一心って感じ」
「はぁ...脳内空っぽで荷物が少ないってか」

__バタン

「ん?」

 ティノが後ろを見るとブタが倒れ、顔を激しくしかめているのを見つけた。
 二人は急いで駆けつける。

「おい大丈夫か!? 誰かにやられたのか? 畜生...まさか、他の魔王の幹部が俺らの作戦を」

 ブタがピクピク口を動かす。その声に力はなく、周りのノイズでかき消されてしまう。

「なに?」

 ティノはブタの口元に耳を近づけた。

「お腹が空いたでふ...」

「「あぁ...」」



「おら、もう少しで...もう少しで最初の村だぞ...」
「ブタさんどんだけ重いんですか...パワータイプの私ですら流石にこれは...」
「申し訳ないでふ...」

 二人はブタを運んで大きな山を越えた。途中、彼らは何度か休憩を挟んだが、ブタが自分で歩くことはなかった。

「お前結構顔余裕そうじゃね?」
「そ、そんなことないでふよ! 歩く気力すらないでふ...」
「嘘だよね...絶対...」

 二人は大きなため息をつき、その場に項垂れた。

「あそこだよね、多分。いくつか小さな家があるんだよね。ポツポツって、小さな村じゃないかな?」

 バクの指差す方向には、耕された土地とその中心に佇む小さな建物がいくつかあった。
 木造の建物以外何もなく、家だったり小屋だったり、素材が同じで形が変わったものばかりで、農地以外からと言って目に留まるものがなかった。

「しけてるな。全然栄えてない」
「そうだねぇ、人は居るかな? 皆んな避難してるとは思うんだけど」

 ブタは大きな鼻でクンクン匂いを嗅ぎ、眉間に皺を寄せた。

「居るでふよ。全然いっぱい居るでふ」
「は? でも、魔王幹部三人が来るんだぜ? 避難命令くらい来るだろ」
「取り敢えず行ってみましょう」

 彼らはゆっくり歩き出し、村の門の前まで進んだ。住宅のある場所は柵で囲われており、入れる場所が限られていたのだ。
 見る限り人は誰も外に出ておらず、生活音すら聞こえてこなかった。

「すんませーん。魔王幹部きましたよぉー」
「早く出てきてくださーい。さもないと、えっと。酷い目に遭いますよぉー」

 声を出すが誰も出てこない。ティノは頭を掻きむしり、黙って門の中に入った。

「待つでふよ。なんの手続きも無しに入るのは良くないでふよ」
「はぁ? 戦争始めようとしてるんだぜ? しかもどうせ隠れてるのは騎士とかだろ。蹂躙するくらいの勢いじゃなきゃな」
「どうやらそうでもない様なんでふ...」

 当然、近くにあった家のドアが開き、一人の男性が出てきた。着ている服はボロボロで、頭には寝癖が付いており、いかにも寝起きといった様な具合だった。

「あ、え!? 旅のお方...!?」
「え、あ、いや。魔王幹部で...」
「旅のお方ですか!? いやぁ、嬉しいな!! ちょっと待っていてくださいね、村長を呼んできます!」

「「「え?」」」

 男性は走って村の奥へ行き、しばらくするとヨボヨボの老人ともう一人、小さな少年を連れてきた。みんな似た様な服装で貧相この上なさそうである。

「あぁ...よくぞいらっしゃいました旅のお方...何もない村ですが、どうぞごゆっくりと...」
「あ、いや、あの。俺たち魔王幹部で...」

「すみません。避難勧告ってきませんでした?」

 バクがそう尋ねると、老人はしばらく黙り込み、老人を呼んで来た男性の方を凝視した。

「いや、何も来てないですよ? なんかあったんですか?」
「あ、いえ。その、魔王幹部がこれから攻め込んでくるらしいです」

「魔王幹部?」

 小さい少年は老人の方を向き、老人の裾を数回引っ張った。

「はっはっはっ。まさかこんな辺境の村を襲撃したりなどするはずがないですよ」
「あ、いや。俺たちがその...」
「ティノ君黙って」

 ティノは二人に口を抑えられ、暫く暴れてから大人しくなった。

「本当なんですか? 魔王幹部が襲撃にくるとは」
「そうですね。いつかは分からないですけど」

 老人は「そうかぁ...」と呟き、暫く黙り込んだ。

「まぁ、その時はその時で降参しますよ。十分かは分かりませんが、多少の食糧を与えます」
「そうですか...」

 三人はその老人をただ見つめていた。老人は隣にいる少年の頭を撫で、また三人の方へと向き直した。

「可愛そうになぁ...こんな村に生まれてしまって...この村はなんの生産性も無いんです。土地は痩せていて農作物はうまく育たないし、鉱石などは出ないしで何も生み出せないんです。それに、移住しようとも、祖先が厄介者達の集まりであったばっかりに断られ、もう、国にも見捨てられてしまったんです」

 少年は顔をしかめて老人の手を振り解いてどこかへ走っていってしまった。

「おそらく、厄介者としか思われていないんでしょうね...」

 老人は小さく頭を下げた。

「私たちはここで魔王幹部が来るのを待つので、どうぞ、早く王都へと避難してください。その方がいい」

 三人は顔を見合わせ、一度大きく頷いた。

「少し待っててくださいね?」

 門の外に出て、十分老人達から距離をとり、密集する。

「どうするでふ? オイラなんの罪もない人間は殺したくないでふよ」
「私も...なんか可愛そうで仕方がない...」
「お、俺は別に殺しても良いんだぜ? で、でも、二人がそう言うなら仕方ないかなぁ...」

 三人はもう一度大きく頷くと、老人達の元へ戻った。

「ここで一日泊まらせてください」
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