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第14話 戦闘準備
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あれから丸3日が経過した。魔王幹部達は訪れることなく、町の中には異様に張り詰めた雰囲気だけが残されていた。
「はぁ...まさか王都が受け入れ拒否するだなんてな」
「あり得ねぇよ...本当に」
俺らは町の至る所に項垂れている冒険者達を横目にギルドへと向かっていた。
「あ、まお...いや、シルクちゃん達。ご苦労様です」
「ただいまなのじゃ」
ローゼさんはいつもと変わらずニコニコ笑顔で応対してくる。ただ、目だけはずっと死んだままだ。
「あの、どれほどジュエルは集まったのですか?」
「んー、スピノよ、どれくらい集まった?」
「ざっと1000リットルくらいですかね」
魔王は手を顎に当て、暫く黙り込んだ。
俺は未だにこのジュエルを何に使うのかは知らない。しかし、彼女はただ集めろとだけ言ってきたのだ。
1000リットルはお風呂約10杯分だ。かなりの量になってくると思うのだが、足りないのだろうか。
「スライム達は元気かの?」
「元気みたいですね。あの場所に拠点を置いて正解だったかもしれません」
「そうか、じゃああと少し頑張ってもらうぞ」
俺たちはあそこ周辺のスライム達を実質的に配下に置いた。約五十匹のスライム達である。
彼らの任務はスライムジュエルの生産、そして俺らへの譲渡だ。
いい感じに湿っており、美味しい草の多く生えている場所を提供し、その場所に住んでもらっている。
「ふっふっふっ、妾にも遂に奴隷ができたのじゃ」
会話にスライムが出てくる都度こう言っているが、一日に何度もスライム達の様子を気にしている。実はスライム達を気に入っているのかもしれない。
「それにしてもローゼよ。先程冒険者達が死にかけておったぞ」
「あぁ...それは...」
「国からの出兵命令じゃよ」
ローゼさんの後ろから例の老人、ギルド長が出てきた。
「出兵ですか? 王都に避難することができないんですかね」
「そうじゃ。ここの町はかなり平和な方での、駆け出しの冒険者が集うのじゃよ。だから、ここの冒険者を起用しても仕方がないとは思うのだがの...」
俺にはシルバ王国の動向がよく理解できない。敵国からは魔王幹部三人がくるのだ。負け戦は逃れられない。なのに明け渡さないのだ、なけなしの戦力を使ってまで。
「この国には強大な、魔王幹部を凌駕する武力があるのですかね?」
「さぁ、どうだろうな」
老人はそう言うと再び奥の部屋へと入っていった。
「魔王様、そろそろ幹部達来そうですけど。どうされますか?」
「んー、やるかぁ...」
「スライムジュエルをどうするんですか?」
魔王は一回咳払いをし、両手を腰に当てた。
「ローゼよ。お主は硬質化したスライムジュエルを見たことがあるかの?」
「ありますけど...ただの宝石ではないですか?」
「ふっふっふっ。あれを砕くとどうなるか知っておるか?」
ローゼさんは固まり、右手で口を抑えた。
「しかし、魔王様! それではこの町も!」
「大丈夫じゃ、十分距離を取る」
ん? 何の話をしているんだ、この人たちは。
「あの、何の話を...」
「おい、スピノ。お主は町中に居る冒険者達をかき集めてこい。そして、団扇か扇子を持って来させるのじゃ。全員でジュエルを乾かすぞ」
魔王は俺のことをギルドから押し出し、シッシと手で追い払った。
なんか俺悪いことしたかな?
町には至る所に冒険者が居た。全員の目に正気は感じられず、この状況に対して絶望しているようであった。
取り敢えず誰かに話しかけよう。扇子と団扇って言ってたっけか、みんな持ってるかな。
「あの、すみません。ちょっといいですか?」
俺は目の前にいる冒険者に話しかけてみることにした。その人はギルドの前の壁に寄りかかって座り、どこかを見つめていた。
「...」
「あの...」
よくよく見るとその冒険者は女性だった。しかもとても若く、装備にも年季が入っていなかった。
俺より年下かもしれない。
「なんですか...なんか用ですか? 体なら売りませんよ?」
「何の話だ? いや、ちょっと手伝って貰いたくてですね。扇子か団扇持ってたりしませんか?」
彼女は呆れ顔になり、またシッシといった様な仕草をし、俺のことを追い払おうとした。
俺今日嫌われてんな...
「どうせ死ぬんですよ、私たち。あなたも例外ではないです」
彼女の手は震えていた。瞳も焦点がぶれ始め、それを覆っている眼球も濡れ始めていた。
「私、冒険者なんて向いてないんですよ。体力もなければスキルもない。ゴブリンにだって苦戦するんです...でも仕方ないでしょう。こうしないと生きれないんですよ!」
彼女の話はよく分からなかった。なんでそんな話になるのか。でも、彼女の伝えたいことは分かった気がする。
「死なないですよ」
「はぁ? 魔王幹部三人に勝てるわけ無いでしょ」
「勝てます。所詮相手は三人ですよ。こっちには何人いると思っているんですか?」
「力の差がありすぎる...」
「俺たちは雑魚です。ゴブリンすらまともに倒せない雑魚ですよ。でも、一人で立ち向かうより仲間がいた方が心強いじゃないですか」
彼女は目を丸くしてこちらを見ていた。
「戦うつもりなの?」
「勿論」
「なんで...」
なぜ戦うのかと聞かれたら、魔王が命令したからだとしか言えない。でも、俺にもある種の矜持があるのかもしれない。
だから、なんとしてでも勝ちたい。
俺は彼女の手を引っ張り、ギルドの扉へと向かった。
「それに、そんなに苦しそうな人生送ってきたのであれば、最後くらい仲間達と死ねばいいじゃ無いですか」
「何言ってんの...私は死にたく無いの。死んだらどうしてくれんの?」
「じゃあ、死なせませんよ。必ず守って見せますよ」
彼女の手は震えていた。恐怖からなのかは知らないが、彼女の足はスムーズにギルドへと向かっていた。
「だから、スライムのうんこ固めましょう?」
「は?」
「はぁ...まさか王都が受け入れ拒否するだなんてな」
「あり得ねぇよ...本当に」
俺らは町の至る所に項垂れている冒険者達を横目にギルドへと向かっていた。
「あ、まお...いや、シルクちゃん達。ご苦労様です」
「ただいまなのじゃ」
ローゼさんはいつもと変わらずニコニコ笑顔で応対してくる。ただ、目だけはずっと死んだままだ。
「あの、どれほどジュエルは集まったのですか?」
「んー、スピノよ、どれくらい集まった?」
「ざっと1000リットルくらいですかね」
魔王は手を顎に当て、暫く黙り込んだ。
俺は未だにこのジュエルを何に使うのかは知らない。しかし、彼女はただ集めろとだけ言ってきたのだ。
1000リットルはお風呂約10杯分だ。かなりの量になってくると思うのだが、足りないのだろうか。
「スライム達は元気かの?」
「元気みたいですね。あの場所に拠点を置いて正解だったかもしれません」
「そうか、じゃああと少し頑張ってもらうぞ」
俺たちはあそこ周辺のスライム達を実質的に配下に置いた。約五十匹のスライム達である。
彼らの任務はスライムジュエルの生産、そして俺らへの譲渡だ。
いい感じに湿っており、美味しい草の多く生えている場所を提供し、その場所に住んでもらっている。
「ふっふっふっ、妾にも遂に奴隷ができたのじゃ」
会話にスライムが出てくる都度こう言っているが、一日に何度もスライム達の様子を気にしている。実はスライム達を気に入っているのかもしれない。
「それにしてもローゼよ。先程冒険者達が死にかけておったぞ」
「あぁ...それは...」
「国からの出兵命令じゃよ」
ローゼさんの後ろから例の老人、ギルド長が出てきた。
「出兵ですか? 王都に避難することができないんですかね」
「そうじゃ。ここの町はかなり平和な方での、駆け出しの冒険者が集うのじゃよ。だから、ここの冒険者を起用しても仕方がないとは思うのだがの...」
俺にはシルバ王国の動向がよく理解できない。敵国からは魔王幹部三人がくるのだ。負け戦は逃れられない。なのに明け渡さないのだ、なけなしの戦力を使ってまで。
「この国には強大な、魔王幹部を凌駕する武力があるのですかね?」
「さぁ、どうだろうな」
老人はそう言うと再び奥の部屋へと入っていった。
「魔王様、そろそろ幹部達来そうですけど。どうされますか?」
「んー、やるかぁ...」
「スライムジュエルをどうするんですか?」
魔王は一回咳払いをし、両手を腰に当てた。
「ローゼよ。お主は硬質化したスライムジュエルを見たことがあるかの?」
「ありますけど...ただの宝石ではないですか?」
「ふっふっふっ。あれを砕くとどうなるか知っておるか?」
ローゼさんは固まり、右手で口を抑えた。
「しかし、魔王様! それではこの町も!」
「大丈夫じゃ、十分距離を取る」
ん? 何の話をしているんだ、この人たちは。
「あの、何の話を...」
「おい、スピノ。お主は町中に居る冒険者達をかき集めてこい。そして、団扇か扇子を持って来させるのじゃ。全員でジュエルを乾かすぞ」
魔王は俺のことをギルドから押し出し、シッシと手で追い払った。
なんか俺悪いことしたかな?
町には至る所に冒険者が居た。全員の目に正気は感じられず、この状況に対して絶望しているようであった。
取り敢えず誰かに話しかけよう。扇子と団扇って言ってたっけか、みんな持ってるかな。
「あの、すみません。ちょっといいですか?」
俺は目の前にいる冒険者に話しかけてみることにした。その人はギルドの前の壁に寄りかかって座り、どこかを見つめていた。
「...」
「あの...」
よくよく見るとその冒険者は女性だった。しかもとても若く、装備にも年季が入っていなかった。
俺より年下かもしれない。
「なんですか...なんか用ですか? 体なら売りませんよ?」
「何の話だ? いや、ちょっと手伝って貰いたくてですね。扇子か団扇持ってたりしませんか?」
彼女は呆れ顔になり、またシッシといった様な仕草をし、俺のことを追い払おうとした。
俺今日嫌われてんな...
「どうせ死ぬんですよ、私たち。あなたも例外ではないです」
彼女の手は震えていた。瞳も焦点がぶれ始め、それを覆っている眼球も濡れ始めていた。
「私、冒険者なんて向いてないんですよ。体力もなければスキルもない。ゴブリンにだって苦戦するんです...でも仕方ないでしょう。こうしないと生きれないんですよ!」
彼女の話はよく分からなかった。なんでそんな話になるのか。でも、彼女の伝えたいことは分かった気がする。
「死なないですよ」
「はぁ? 魔王幹部三人に勝てるわけ無いでしょ」
「勝てます。所詮相手は三人ですよ。こっちには何人いると思っているんですか?」
「力の差がありすぎる...」
「俺たちは雑魚です。ゴブリンすらまともに倒せない雑魚ですよ。でも、一人で立ち向かうより仲間がいた方が心強いじゃないですか」
彼女は目を丸くしてこちらを見ていた。
「戦うつもりなの?」
「勿論」
「なんで...」
なぜ戦うのかと聞かれたら、魔王が命令したからだとしか言えない。でも、俺にもある種の矜持があるのかもしれない。
だから、なんとしてでも勝ちたい。
俺は彼女の手を引っ張り、ギルドの扉へと向かった。
「それに、そんなに苦しそうな人生送ってきたのであれば、最後くらい仲間達と死ねばいいじゃ無いですか」
「何言ってんの...私は死にたく無いの。死んだらどうしてくれんの?」
「じゃあ、死なせませんよ。必ず守って見せますよ」
彼女の手は震えていた。恐怖からなのかは知らないが、彼女の足はスムーズにギルドへと向かっていた。
「だから、スライムのうんこ固めましょう?」
「は?」
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