14 / 15
第14話 戦闘準備
しおりを挟む
あれから丸3日が経過した。魔王幹部達は訪れることなく、町の中には異様に張り詰めた雰囲気だけが残されていた。
「はぁ...まさか王都が受け入れ拒否するだなんてな」
「あり得ねぇよ...本当に」
俺らは町の至る所に項垂れている冒険者達を横目にギルドへと向かっていた。
「あ、まお...いや、シルクちゃん達。ご苦労様です」
「ただいまなのじゃ」
ローゼさんはいつもと変わらずニコニコ笑顔で応対してくる。ただ、目だけはずっと死んだままだ。
「あの、どれほどジュエルは集まったのですか?」
「んー、スピノよ、どれくらい集まった?」
「ざっと1000リットルくらいですかね」
魔王は手を顎に当て、暫く黙り込んだ。
俺は未だにこのジュエルを何に使うのかは知らない。しかし、彼女はただ集めろとだけ言ってきたのだ。
1000リットルはお風呂約10杯分だ。かなりの量になってくると思うのだが、足りないのだろうか。
「スライム達は元気かの?」
「元気みたいですね。あの場所に拠点を置いて正解だったかもしれません」
「そうか、じゃああと少し頑張ってもらうぞ」
俺たちはあそこ周辺のスライム達を実質的に配下に置いた。約五十匹のスライム達である。
彼らの任務はスライムジュエルの生産、そして俺らへの譲渡だ。
いい感じに湿っており、美味しい草の多く生えている場所を提供し、その場所に住んでもらっている。
「ふっふっふっ、妾にも遂に奴隷ができたのじゃ」
会話にスライムが出てくる都度こう言っているが、一日に何度もスライム達の様子を気にしている。実はスライム達を気に入っているのかもしれない。
「それにしてもローゼよ。先程冒険者達が死にかけておったぞ」
「あぁ...それは...」
「国からの出兵命令じゃよ」
ローゼさんの後ろから例の老人、ギルド長が出てきた。
「出兵ですか? 王都に避難することができないんですかね」
「そうじゃ。ここの町はかなり平和な方での、駆け出しの冒険者が集うのじゃよ。だから、ここの冒険者を起用しても仕方がないとは思うのだがの...」
俺にはシルバ王国の動向がよく理解できない。敵国からは魔王幹部三人がくるのだ。負け戦は逃れられない。なのに明け渡さないのだ、なけなしの戦力を使ってまで。
「この国には強大な、魔王幹部を凌駕する武力があるのですかね?」
「さぁ、どうだろうな」
老人はそう言うと再び奥の部屋へと入っていった。
「魔王様、そろそろ幹部達来そうですけど。どうされますか?」
「んー、やるかぁ...」
「スライムジュエルをどうするんですか?」
魔王は一回咳払いをし、両手を腰に当てた。
「ローゼよ。お主は硬質化したスライムジュエルを見たことがあるかの?」
「ありますけど...ただの宝石ではないですか?」
「ふっふっふっ。あれを砕くとどうなるか知っておるか?」
ローゼさんは固まり、右手で口を抑えた。
「しかし、魔王様! それではこの町も!」
「大丈夫じゃ、十分距離を取る」
ん? 何の話をしているんだ、この人たちは。
「あの、何の話を...」
「おい、スピノ。お主は町中に居る冒険者達をかき集めてこい。そして、団扇か扇子を持って来させるのじゃ。全員でジュエルを乾かすぞ」
魔王は俺のことをギルドから押し出し、シッシと手で追い払った。
なんか俺悪いことしたかな?
町には至る所に冒険者が居た。全員の目に正気は感じられず、この状況に対して絶望しているようであった。
取り敢えず誰かに話しかけよう。扇子と団扇って言ってたっけか、みんな持ってるかな。
「あの、すみません。ちょっといいですか?」
俺は目の前にいる冒険者に話しかけてみることにした。その人はギルドの前の壁に寄りかかって座り、どこかを見つめていた。
「...」
「あの...」
よくよく見るとその冒険者は女性だった。しかもとても若く、装備にも年季が入っていなかった。
俺より年下かもしれない。
「なんですか...なんか用ですか? 体なら売りませんよ?」
「何の話だ? いや、ちょっと手伝って貰いたくてですね。扇子か団扇持ってたりしませんか?」
彼女は呆れ顔になり、またシッシといった様な仕草をし、俺のことを追い払おうとした。
俺今日嫌われてんな...
「どうせ死ぬんですよ、私たち。あなたも例外ではないです」
彼女の手は震えていた。瞳も焦点がぶれ始め、それを覆っている眼球も濡れ始めていた。
「私、冒険者なんて向いてないんですよ。体力もなければスキルもない。ゴブリンにだって苦戦するんです...でも仕方ないでしょう。こうしないと生きれないんですよ!」
彼女の話はよく分からなかった。なんでそんな話になるのか。でも、彼女の伝えたいことは分かった気がする。
「死なないですよ」
「はぁ? 魔王幹部三人に勝てるわけ無いでしょ」
「勝てます。所詮相手は三人ですよ。こっちには何人いると思っているんですか?」
「力の差がありすぎる...」
「俺たちは雑魚です。ゴブリンすらまともに倒せない雑魚ですよ。でも、一人で立ち向かうより仲間がいた方が心強いじゃないですか」
彼女は目を丸くしてこちらを見ていた。
「戦うつもりなの?」
「勿論」
「なんで...」
なぜ戦うのかと聞かれたら、魔王が命令したからだとしか言えない。でも、俺にもある種の矜持があるのかもしれない。
だから、なんとしてでも勝ちたい。
俺は彼女の手を引っ張り、ギルドの扉へと向かった。
「それに、そんなに苦しそうな人生送ってきたのであれば、最後くらい仲間達と死ねばいいじゃ無いですか」
「何言ってんの...私は死にたく無いの。死んだらどうしてくれんの?」
「じゃあ、死なせませんよ。必ず守って見せますよ」
彼女の手は震えていた。恐怖からなのかは知らないが、彼女の足はスムーズにギルドへと向かっていた。
「だから、スライムのうんこ固めましょう?」
「は?」
「はぁ...まさか王都が受け入れ拒否するだなんてな」
「あり得ねぇよ...本当に」
俺らは町の至る所に項垂れている冒険者達を横目にギルドへと向かっていた。
「あ、まお...いや、シルクちゃん達。ご苦労様です」
「ただいまなのじゃ」
ローゼさんはいつもと変わらずニコニコ笑顔で応対してくる。ただ、目だけはずっと死んだままだ。
「あの、どれほどジュエルは集まったのですか?」
「んー、スピノよ、どれくらい集まった?」
「ざっと1000リットルくらいですかね」
魔王は手を顎に当て、暫く黙り込んだ。
俺は未だにこのジュエルを何に使うのかは知らない。しかし、彼女はただ集めろとだけ言ってきたのだ。
1000リットルはお風呂約10杯分だ。かなりの量になってくると思うのだが、足りないのだろうか。
「スライム達は元気かの?」
「元気みたいですね。あの場所に拠点を置いて正解だったかもしれません」
「そうか、じゃああと少し頑張ってもらうぞ」
俺たちはあそこ周辺のスライム達を実質的に配下に置いた。約五十匹のスライム達である。
彼らの任務はスライムジュエルの生産、そして俺らへの譲渡だ。
いい感じに湿っており、美味しい草の多く生えている場所を提供し、その場所に住んでもらっている。
「ふっふっふっ、妾にも遂に奴隷ができたのじゃ」
会話にスライムが出てくる都度こう言っているが、一日に何度もスライム達の様子を気にしている。実はスライム達を気に入っているのかもしれない。
「それにしてもローゼよ。先程冒険者達が死にかけておったぞ」
「あぁ...それは...」
「国からの出兵命令じゃよ」
ローゼさんの後ろから例の老人、ギルド長が出てきた。
「出兵ですか? 王都に避難することができないんですかね」
「そうじゃ。ここの町はかなり平和な方での、駆け出しの冒険者が集うのじゃよ。だから、ここの冒険者を起用しても仕方がないとは思うのだがの...」
俺にはシルバ王国の動向がよく理解できない。敵国からは魔王幹部三人がくるのだ。負け戦は逃れられない。なのに明け渡さないのだ、なけなしの戦力を使ってまで。
「この国には強大な、魔王幹部を凌駕する武力があるのですかね?」
「さぁ、どうだろうな」
老人はそう言うと再び奥の部屋へと入っていった。
「魔王様、そろそろ幹部達来そうですけど。どうされますか?」
「んー、やるかぁ...」
「スライムジュエルをどうするんですか?」
魔王は一回咳払いをし、両手を腰に当てた。
「ローゼよ。お主は硬質化したスライムジュエルを見たことがあるかの?」
「ありますけど...ただの宝石ではないですか?」
「ふっふっふっ。あれを砕くとどうなるか知っておるか?」
ローゼさんは固まり、右手で口を抑えた。
「しかし、魔王様! それではこの町も!」
「大丈夫じゃ、十分距離を取る」
ん? 何の話をしているんだ、この人たちは。
「あの、何の話を...」
「おい、スピノ。お主は町中に居る冒険者達をかき集めてこい。そして、団扇か扇子を持って来させるのじゃ。全員でジュエルを乾かすぞ」
魔王は俺のことをギルドから押し出し、シッシと手で追い払った。
なんか俺悪いことしたかな?
町には至る所に冒険者が居た。全員の目に正気は感じられず、この状況に対して絶望しているようであった。
取り敢えず誰かに話しかけよう。扇子と団扇って言ってたっけか、みんな持ってるかな。
「あの、すみません。ちょっといいですか?」
俺は目の前にいる冒険者に話しかけてみることにした。その人はギルドの前の壁に寄りかかって座り、どこかを見つめていた。
「...」
「あの...」
よくよく見るとその冒険者は女性だった。しかもとても若く、装備にも年季が入っていなかった。
俺より年下かもしれない。
「なんですか...なんか用ですか? 体なら売りませんよ?」
「何の話だ? いや、ちょっと手伝って貰いたくてですね。扇子か団扇持ってたりしませんか?」
彼女は呆れ顔になり、またシッシといった様な仕草をし、俺のことを追い払おうとした。
俺今日嫌われてんな...
「どうせ死ぬんですよ、私たち。あなたも例外ではないです」
彼女の手は震えていた。瞳も焦点がぶれ始め、それを覆っている眼球も濡れ始めていた。
「私、冒険者なんて向いてないんですよ。体力もなければスキルもない。ゴブリンにだって苦戦するんです...でも仕方ないでしょう。こうしないと生きれないんですよ!」
彼女の話はよく分からなかった。なんでそんな話になるのか。でも、彼女の伝えたいことは分かった気がする。
「死なないですよ」
「はぁ? 魔王幹部三人に勝てるわけ無いでしょ」
「勝てます。所詮相手は三人ですよ。こっちには何人いると思っているんですか?」
「力の差がありすぎる...」
「俺たちは雑魚です。ゴブリンすらまともに倒せない雑魚ですよ。でも、一人で立ち向かうより仲間がいた方が心強いじゃないですか」
彼女は目を丸くしてこちらを見ていた。
「戦うつもりなの?」
「勿論」
「なんで...」
なぜ戦うのかと聞かれたら、魔王が命令したからだとしか言えない。でも、俺にもある種の矜持があるのかもしれない。
だから、なんとしてでも勝ちたい。
俺は彼女の手を引っ張り、ギルドの扉へと向かった。
「それに、そんなに苦しそうな人生送ってきたのであれば、最後くらい仲間達と死ねばいいじゃ無いですか」
「何言ってんの...私は死にたく無いの。死んだらどうしてくれんの?」
「じゃあ、死なせませんよ。必ず守って見せますよ」
彼女の手は震えていた。恐怖からなのかは知らないが、彼女の足はスムーズにギルドへと向かっていた。
「だから、スライムのうんこ固めましょう?」
「は?」
0
あなたにおすすめの小説
魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!
川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。
だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。
だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。
馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。
俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
追放先で気づいた。この世界の精霊使いは全員、聞き方を間違えている~最安もふもふ白狐と始めた、問いかけの冒険~
Lihito
ファンタジー
精霊と暮らす世界で、ノエルはギルドを追い出された。処理ミスは誰より少ない。でも「やりづらい」の一言で、理由には足りた。
手元に残ったのは、最安で契約した手のひらサイズの白い子狐だけ。言葉はたどたどしいし、力もない。誰が見ても「使えない」と笑う精霊だ。
たどり着いた町では疫病が広がっていた。高額な精霊が三度探して見つからない薬草。ノエルは最弱の白狐と半日で見つけ出す。
力で勝ったんじゃない。聞く範囲を絞り、段階を分け、小さな鼻に合った問いを重ねただけ。
——なぜこの世界では、誰も精霊への「聞き方」を知らないのか。
その違和感が、ノエルの旅を動かしていく。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。
再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。
妻を一途に想い続ける夫と、
その想いを一ミリも知らない妻。
――攻防戦の幕が、いま上がる。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる