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8、番外編(年齢、時列ばらばら)
8-1-02.八千代18歳、菊華24歳─元旦②
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「これ以上はやめろよ」
「やっくんを気持ちよくさせてあげたいの」
ボトムスに侵入した細い手が、八千代の眉をピクリと上げさせた。
トランクスの上からゆっくり擽る刺激は、快感とは程遠いもの、菊華から触ってきた事実に悦んでしまう。
「こら。もうやめろって」
それこそ上部だけの言葉だ。本当に嫌なら拒絶すればいいし、力づくで担いで部屋に連れ込めばいいのだ。それができないのは、年の差の象徴だった和服姿の菊華が、こんなにも近いからだ。
「おっきくなってきてるよ?」
やっていることは上下に擦るだけのものにしろ、菊華からしてきたのだからそうなるのは当たり前なのだ。
「……菊華」
奥歯を噛み締めて息を殺す。自慰よりも拙い動きなのに、やたら興奮して昂るのは嬉しいからだ。
「直接触ってもいい?」
それはまずい。ここはリビングだ。興奮して目を潤ませた菊華が見上げてきても、ブレーキをかけるべきなのだ。
けれど、本能には抗い難い。
「……ん」
先の丸みに触れた指先に反応して、思わず声が出てしまった八千代に、菊華が目を輝かせてうっとりとした。
「やっくん、かわいい」
それはタブーの言葉だった。トランスの入口手前の八千代は、精神力をすべて使って、ブレーキをかけた。四年間の寸止めはやはり修行だったのだ。
「キッカ。誰がなんだって?」
菊華から年下扱いは絶対にされたくない意地で、トランクスもボトムスも上げ直した。
「えっ!? きょあっ!」
屈んで菊華を肩に担ぎ上げ、自室へ向かう。
「返礼は倍返しでいいよな?」
「やややっくん?」
調子に乗っていた興奮から一気に醒めた菊華は、やや蒼い顔だ。
「まってまって。晩御飯作らなきゃだし、ね? 着替えもしたいし……ね?」
慌てている菊華を無視して部屋に入って、鍵をかけた。
スマホのミュージックをオーディオスピーカーにペアリングさせれば、気分転換用のUKロックが大音量で流れ始める。
さあ、これで邪魔者に侵入はさせない。(両親が帰宅した時の牽制的な意味で)
「遠慮するなよ」
ベッドに降ろした菊華を押し倒して、首筋に食らいついた。かわいいと言われてムッとしてたのが、トリガーになっただけで、早かれ遅かれこうしたかったのだ。
「あんっ」
無遠慮に衿を開いて襦袢の衿も開く。菊華がかわいくないと気にした和装用ブラジャーは、いっさい気することをせず、八千代は前ファスナーを下ろした。
胸を押し潰していた下着から、手品のように乳房の丸みがふっくらふるんと膨らんで八千代を誘う。
「あふ……、や……くん」
乳房の柔らかさを捏ねながら、広がった胸元の白い素肌にキスを落とす。
艷やかな乳首を指で舌で嬲れば、菊華は深い甘やかな息を零す。
「……ん、今日は、私が……してあげたいのに」
まだ言っている。
「そう? じゃあ、菊華にもがんばってもらおうか」
ここぞとばかりの八千代の優等生スマイルを見た菊華は、こんな時だけ察した。意地悪をされるのだと。
□
いい加減トロトロにされた菊華は、ほとんど和服を着ていないに等しい姿だ。脱いだのは、羽織と固い名古屋帯だけのしどけない姿になっている。
その乱れた和服の裾を持ち上げた菊華が、まろやかな尻を向けて八千代の膝の上に座ろうとしている。いいかげんグズグズの菊華の泥濘は愛液を滴らせ、獰猛な八千代の肉を濡らした。
「……ふ、ぁ……あぅ……はぁ、んん」
熱い媚肉を早く割り入りたがっているのに、ゆっくりと隘路に招き入れられ、快感に震える華奢な背中を抱きしめたくなった。
「やっくぅん、いい?」
「いいよ。……もっとこっちに来いよ」
菊華ががんばって全部取り込む。耐えていた甲斐が報われる以上の快感に、八千代は息を深く吐いた。持っていくように蠱惑的にうごめく襞に、歯を食いしばる。
「菊華、がんばるんだろ?」
「う、ん……ん、ま……って」
このままでは生殺しもいいところだ。乱れた髪が散らばる首筋にキスをすると、ぎゅううと菊華のなかが締めつけた。
「ふ、ふかいの……」
「うん。痛い?」
「ううん。ち、ちがうの……あ」
八千代をちらりと見ようとする横顔のまつ毛は、涙で濡れてふるふる小刻みに震えて美しい。
「こんな、体制……は、はじめてなのに……。わたし……」
「言って?」
言いにくそうにしているくちびるは、色づいて甘い溜息を零す。
「……きもち、いいの」
菊華の細い肩を堪りかねて抱きしめた。奥の熱い襞をぐりぐり圧し上げ華奢な身体ごと揺さぶる。
「あっ! やぁっ!」
「限界」
「はぁ……あっ。あっんっ、あっ」
抑えきれない衝動は、菊華が〈はじめて〉だと言ったから。
菊華が男性経験が皆無ではないのはわかっている。先に大人になったのは菊華だ。胸の内にある小さな嫉妬は消えることはない。過去の四年間もこの先を菊華が八千代しか見ないとわかっていても――、だからこそ。
「アッ、あっ。や……、さわっちゃ」
大きく乱れた裾を捲りあげ、交わりに昂っている小さな陰核を指でくちくち扱く。
菊華がビクビク震えるたびに、ぎゅうぎゅう八千代を締めつけるのがたまらない。
「い、いく……いっちゃ……ぁあ――っ」
身体を強ばらせた菊華は、みだれ髪をより乱して絶頂している。普段は匂わない菊華の女の香りが強くなり、八千代は酩酊感に襲われる。
「キッカ……すごくきれいだ」
和服姿の菊華としたことがあるが、その時とは桁外れに満たされる。それでいてなお、菊華を気遣う余裕なんてない。
「やっくん……はぁっ、やっくん」
恍惚としている菊華を抱きしめた。時を重ねる毎に、知れば知るほど、愛しい。
狂おしいほどの愛しさ込めて、八千代は夢中で穿つ。やがて来る一点へ向けて。
□
狭いシングルベッドだからこそ、隙間なく抱きしめているのに、菊華が抜け出ようとしているのが気に食わない。
「どこに行くんだ?」
「起きてたの?」
そもそも八千代は寝ていない。疲れて寝ていたのは菊華だ。あれから着替えて軽い夕食を済ませたあと、再び八千代が求めるまま蕩けきったせいだ。
「やっくん、勉強があるのに……私ってば」
菊華のまぶたを伏せた視線は、ベッドボードの目覚まし時計だ。
寝て起きたら夜中で、完全に受験勉強の邪魔をしてしまったのだと菊華がしょげている。
勉強をしていないのは八千代のわがままなのに、菊華は責めない。
「正月一日ぐらい、一緒にいさせろよ」
抱いている腕に力を入れ直して、菊華の瞼へ鼻へ頬へキスをする。
それでも一日じゃ足りない。満たされたのにすぐにほしくなる。こんなに近くにいるのに。
「甘えてるの?」
「おとしだまがわりに」
今まで菊華からお年玉を貰うのを拒否していた。金銭がどうのではなく、子供扱いされるのが嫌いだからだ。そう思っているのか、菊華はくすくす笑う。
「……ふふっ。やっくんかわ……んんっ、なんでもないよ」
さすがの菊華もさっきの今で懲りたのか、〈かわいい〉は禁句だと学習したようだ。そのうち忘れて懲りもせずに言うだろうが。
「今年も来年も再来年も……よろしくね」
「その先もずっとだろ?」
「うん」
ひめはじめ・・・おわり
「やっくんを気持ちよくさせてあげたいの」
ボトムスに侵入した細い手が、八千代の眉をピクリと上げさせた。
トランクスの上からゆっくり擽る刺激は、快感とは程遠いもの、菊華から触ってきた事実に悦んでしまう。
「こら。もうやめろって」
それこそ上部だけの言葉だ。本当に嫌なら拒絶すればいいし、力づくで担いで部屋に連れ込めばいいのだ。それができないのは、年の差の象徴だった和服姿の菊華が、こんなにも近いからだ。
「おっきくなってきてるよ?」
やっていることは上下に擦るだけのものにしろ、菊華からしてきたのだからそうなるのは当たり前なのだ。
「……菊華」
奥歯を噛み締めて息を殺す。自慰よりも拙い動きなのに、やたら興奮して昂るのは嬉しいからだ。
「直接触ってもいい?」
それはまずい。ここはリビングだ。興奮して目を潤ませた菊華が見上げてきても、ブレーキをかけるべきなのだ。
けれど、本能には抗い難い。
「……ん」
先の丸みに触れた指先に反応して、思わず声が出てしまった八千代に、菊華が目を輝かせてうっとりとした。
「やっくん、かわいい」
それはタブーの言葉だった。トランスの入口手前の八千代は、精神力をすべて使って、ブレーキをかけた。四年間の寸止めはやはり修行だったのだ。
「キッカ。誰がなんだって?」
菊華から年下扱いは絶対にされたくない意地で、トランクスもボトムスも上げ直した。
「えっ!? きょあっ!」
屈んで菊華を肩に担ぎ上げ、自室へ向かう。
「返礼は倍返しでいいよな?」
「やややっくん?」
調子に乗っていた興奮から一気に醒めた菊華は、やや蒼い顔だ。
「まってまって。晩御飯作らなきゃだし、ね? 着替えもしたいし……ね?」
慌てている菊華を無視して部屋に入って、鍵をかけた。
スマホのミュージックをオーディオスピーカーにペアリングさせれば、気分転換用のUKロックが大音量で流れ始める。
さあ、これで邪魔者に侵入はさせない。(両親が帰宅した時の牽制的な意味で)
「遠慮するなよ」
ベッドに降ろした菊華を押し倒して、首筋に食らいついた。かわいいと言われてムッとしてたのが、トリガーになっただけで、早かれ遅かれこうしたかったのだ。
「あんっ」
無遠慮に衿を開いて襦袢の衿も開く。菊華がかわいくないと気にした和装用ブラジャーは、いっさい気することをせず、八千代は前ファスナーを下ろした。
胸を押し潰していた下着から、手品のように乳房の丸みがふっくらふるんと膨らんで八千代を誘う。
「あふ……、や……くん」
乳房の柔らかさを捏ねながら、広がった胸元の白い素肌にキスを落とす。
艷やかな乳首を指で舌で嬲れば、菊華は深い甘やかな息を零す。
「……ん、今日は、私が……してあげたいのに」
まだ言っている。
「そう? じゃあ、菊華にもがんばってもらおうか」
ここぞとばかりの八千代の優等生スマイルを見た菊華は、こんな時だけ察した。意地悪をされるのだと。
□
いい加減トロトロにされた菊華は、ほとんど和服を着ていないに等しい姿だ。脱いだのは、羽織と固い名古屋帯だけのしどけない姿になっている。
その乱れた和服の裾を持ち上げた菊華が、まろやかな尻を向けて八千代の膝の上に座ろうとしている。いいかげんグズグズの菊華の泥濘は愛液を滴らせ、獰猛な八千代の肉を濡らした。
「……ふ、ぁ……あぅ……はぁ、んん」
熱い媚肉を早く割り入りたがっているのに、ゆっくりと隘路に招き入れられ、快感に震える華奢な背中を抱きしめたくなった。
「やっくぅん、いい?」
「いいよ。……もっとこっちに来いよ」
菊華ががんばって全部取り込む。耐えていた甲斐が報われる以上の快感に、八千代は息を深く吐いた。持っていくように蠱惑的にうごめく襞に、歯を食いしばる。
「菊華、がんばるんだろ?」
「う、ん……ん、ま……って」
このままでは生殺しもいいところだ。乱れた髪が散らばる首筋にキスをすると、ぎゅううと菊華のなかが締めつけた。
「ふ、ふかいの……」
「うん。痛い?」
「ううん。ち、ちがうの……あ」
八千代をちらりと見ようとする横顔のまつ毛は、涙で濡れてふるふる小刻みに震えて美しい。
「こんな、体制……は、はじめてなのに……。わたし……」
「言って?」
言いにくそうにしているくちびるは、色づいて甘い溜息を零す。
「……きもち、いいの」
菊華の細い肩を堪りかねて抱きしめた。奥の熱い襞をぐりぐり圧し上げ華奢な身体ごと揺さぶる。
「あっ! やぁっ!」
「限界」
「はぁ……あっ。あっんっ、あっ」
抑えきれない衝動は、菊華が〈はじめて〉だと言ったから。
菊華が男性経験が皆無ではないのはわかっている。先に大人になったのは菊華だ。胸の内にある小さな嫉妬は消えることはない。過去の四年間もこの先を菊華が八千代しか見ないとわかっていても――、だからこそ。
「アッ、あっ。や……、さわっちゃ」
大きく乱れた裾を捲りあげ、交わりに昂っている小さな陰核を指でくちくち扱く。
菊華がビクビク震えるたびに、ぎゅうぎゅう八千代を締めつけるのがたまらない。
「い、いく……いっちゃ……ぁあ――っ」
身体を強ばらせた菊華は、みだれ髪をより乱して絶頂している。普段は匂わない菊華の女の香りが強くなり、八千代は酩酊感に襲われる。
「キッカ……すごくきれいだ」
和服姿の菊華としたことがあるが、その時とは桁外れに満たされる。それでいてなお、菊華を気遣う余裕なんてない。
「やっくん……はぁっ、やっくん」
恍惚としている菊華を抱きしめた。時を重ねる毎に、知れば知るほど、愛しい。
狂おしいほどの愛しさ込めて、八千代は夢中で穿つ。やがて来る一点へ向けて。
□
狭いシングルベッドだからこそ、隙間なく抱きしめているのに、菊華が抜け出ようとしているのが気に食わない。
「どこに行くんだ?」
「起きてたの?」
そもそも八千代は寝ていない。疲れて寝ていたのは菊華だ。あれから着替えて軽い夕食を済ませたあと、再び八千代が求めるまま蕩けきったせいだ。
「やっくん、勉強があるのに……私ってば」
菊華のまぶたを伏せた視線は、ベッドボードの目覚まし時計だ。
寝て起きたら夜中で、完全に受験勉強の邪魔をしてしまったのだと菊華がしょげている。
勉強をしていないのは八千代のわがままなのに、菊華は責めない。
「正月一日ぐらい、一緒にいさせろよ」
抱いている腕に力を入れ直して、菊華の瞼へ鼻へ頬へキスをする。
それでも一日じゃ足りない。満たされたのにすぐにほしくなる。こんなに近くにいるのに。
「甘えてるの?」
「おとしだまがわりに」
今まで菊華からお年玉を貰うのを拒否していた。金銭がどうのではなく、子供扱いされるのが嫌いだからだ。そう思っているのか、菊華はくすくす笑う。
「……ふふっ。やっくんかわ……んんっ、なんでもないよ」
さすがの菊華もさっきの今で懲りたのか、〈かわいい〉は禁句だと学習したようだ。そのうち忘れて懲りもせずに言うだろうが。
「今年も来年も再来年も……よろしくね」
「その先もずっとだろ?」
「うん」
ひめはじめ・・・おわり
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