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2章.嘘つきたちの現実。
07.違う。そうじゃない。
しおりを挟むテーブルクロスの中。わたしのふとももをまさぐる男の手は、スルスルとパンツを失くした場所に到達してしまった。
ぎゅっと足を閉じようとしても、不埒な手はベッタリ濡れた恥丘をくすぐって、足の力を抜かせる。パンツ……履いてないんだった!
人前でなにをするんだ、プリアポス・セキ!
ぎっと睨んでも、セキは優しげに微笑む。勝者の笑みか?
「ふふっ。きゆはお兄ちゃんっ子だからね」
くちゅり。指が、ひくひく反応している卑猥な場所を押してくる。さっき、
じゅうぶん触られなかっただけに、イタズラをするようにくすぐってくる固い指がやたらと気持ちいい。
でも、お兄ちゃんの前だ。いやらしいことをされているのがバレたら、セキと付き合っていると誤解されてしまう。いや、チカンされてるんだから、騒いだほうが得策ではないか?
「十歳も年が離れてるから、譲くんも季結さんが可愛いでしょう? 季結さんはクールビューティで綺麗だもの」
人生で初めてクールビューティなどと言われた。細めのつり上がった目、薄い唇と小さな口。三つ編みの癖すらつかない超直毛の長い黒髪。民芸品のこけしそのものである。言い換えればクールビューティに……は、ならない。
明日香さんもわたしを褒めるところを必死に探しての一言だろう。濃ゆい縄文系の兄の妹が弥生系薄味の顔ですまねぇだ。
頬を染めたお兄ちゃんは明日香さんをチラッと見てから、バッチリ見つめる。これが恋をするお兄ちゃんか……。実妹では決して浴びることができない熱視線。
「綺麗なのは明日香さんだよ。……ごほんっ。
季結にはこれまで寂しい思いと、家に縛りつける思いをさせていたから、これからは自由に自分に素直に生きていいんだぞ」
わたしは自由に生きてるよ、お兄ちゃん。わたしよりもフリーダムに生きてる隣の男の息の根を止めて。
奥歯を噛み締めているから、言いたい文句は口の中。自由勝手に動いている男の指は、ぐず濡れの熱い場所を静かにかき分ける。
たしかにイキたかったけど、それは小一時間ほど前の話だ。今はするな。触るな。こじ開けようとするな。
思いと裏腹なわたしの秘所は、セキの指を飲み込もうとしている。長い指がゆっくりいやらしく秘裂を何度も行き来し、お腹の奥を鈍く痺れさせる。
「…………っ」
わたしはとっさに口を押さえて下を向いた。セキの指が、刺激をずっと待っていた敏感なクリをごく軽くかすめた。それからソフトすぎるタッチでぬちぬちと扱いてくる。
……うう、ものすごいガマンをして腰が動かないようにしていても、揺れてしまう。こんな小さな刺激でも気持ちよくて、目の周りがかぁっと熱くなる。
「…………はぁ」
「泣くなよ、季結」
泣いてない! 泣いてない! 誤解だよ、お兄ちゃん! 仮に泣いてるとしても、違う涙だよ!
「きゆ。よしよし」
貴様ぁ! セキぃ! 片手を上げてみろ! わたしの体液でふやけているだろう!
ダメだ、そんなのお兄ちゃんに見られたら死んでしまう。二度目の死を迎えてしまう。
「おまえたち、いつからそんなに仲が良かったんだ?」
「二年半くらい前?」
「まじか。全然わからなかったぞ。言ってくれてたら祝ったのに」
「譲こそ。女性と……曽我さんと付き合ってたなんて、知らなかったよ。教えてくれてたら驚かなかったのに」
「時任くん、あのね。……初めはそんなつもりじゃなかったの。中学校の同窓会で会って……。その頃は元夫から浮気されて暴力も受けててね。何度も逃げたんだけども……ね」
「そっか。曽我さんもつらかったんだね」
穏やかな話の内容じゃない和やかな談笑中。現在わたしをつらい目にあわせてるのはセキ、あんただ。
長くて整った指が、愛液でぐず濡れの場所をゆっくり入っては出ていく。その絶妙な遅さが、今は気持ちいい。声……、出したい。
「そんな時に同窓会で譲くんに会って……。ほら、お仕事がお仕事だから、勇気を出して相談に乗ってもらってたの」
「そのうちに俺から好きになったのだが、話が話だからなかなか。彼女がシェルターに入って落ち着いてから、俺から守るようになったんだ。……ストーカーみたいだろ?」
「愛する人を守るのはストーカーとは言わないよ。譲はヒーローみたいに困ってる人を見過ごせないタイプだからさ。それで、落ち着いてから関係が?」
困っている妹が近くにいるよ、お兄ちゃん。隣のこの鉄面皮男がチカンだよ。逮捕してチン切りしてやって! いや、それはそれで若干困るから、わたしが困らない程度の罰を与えてやってよ!
って、思ったのが伝わったみたいに、指がなかの弱いところを引っ掻きながら、快感の塊になったクリを包皮ごとくちくちとやんわり擦る。
わたしは、よりセキに寄りかかってしまった。これではわたしがセキに熱を上げているように見えてしまう。違う。違う。
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