話し相手

糸子(イトコ)

文字の大きさ
53 / 104
相談

おもちゃの羽

しおりを挟む
同窓会か~。いやだな~…なんとなく。
「うわ!雨!とりあえず雨宿り!」

記憶の片隅
「天気予報じゃ晴れだったよね~?も~!あれ?折りたたみ傘な~い!もう!ふざけるのもいい加減にしろ!」
「ずいぶん荒れてますね。」
「は!す…すいません!恥ずかしい限りです…」
「お暇でしたら、一杯飲まれませんか?夕方はお客様があまり来ないもので。」
「え?あ、ここバーなのね。」
「ええ。」
「ん~…相談とか、オッケーかしら?」
「大丈夫ですよ。」
「入ります!」
一人の女性が入店した。
「なにか、おすすめとかありますか?」
「特にはないです。」
「じゃあなにかお願いします。」
「かしこまりました。」
「え?いいの?」
「え?」
「いや、おすすめはないのにおすすめ出るんだって…」
「商品的なおすすめはありません。しかし、今のあなたには飲んでいただきたいものがあるので。」
「へ?」
女性はそれがおすすめだろと思った。
マスターは白く、甘い匂いのするものをだした。
「甘酒?」
「いえ。林檎酒に特別なエタ…ジンを混ぜたものです。」
「エタノールじゃなくて?」
「言い間違えただけです。」
「ふふ。ジンとエタノールは間違えんだろ。」
「まぁまぁ…これは、題して「記憶の片隅」というカクテルになります。」
「雰囲気あるね。記憶の片隅か。」
「ええ。あなたの、今思い出すべき小さな記憶が蘇るはずです。」
「記憶が?」
「まぁ飲んでみたらわかりますよ。」
「ん~?」
女性は半信半疑でほんの一口。ほんの数滴レベルに少しのんだ。
(ん…ここは…家の中?)
「最近なにか嫌なことでも?」
「ん~今度同窓会があるらしくてね。」
(あれ?体が勝手に…)
「なんとなく…なんとなく嫌なのよ。なんでか忘れちゃったけど。」
(私の部屋…クローゼット…これ!思い出ボックス!懐かしい!)
「なんか…大事なこと忘れてたような気が…」
「もしかしてそれは…」
(記念として持ってる教科書類!手紙!懐かしい~!)
「ケンカの話だったりするんじゃないでしょうか?」
「…そんな気がする。」
(これ…なに?)
「ケンカ…ケンカ…そうだ…」
(これ…まゆちゃんの人形の羽の部分…)
「友達のもの、壊したまま卒業して、そのまま連絡もできなかった…」
(クローゼットの奥にしまってたの忘れてた~)
「そうだ。私は…まゆちゃんの物を壊して、謝ることも、部品を返すこともできずに終わっちゃって…」
(ん?また手紙…)
「なんとなく怖かったんだ…まゆちゃんに怒られることが…いや、悲しまれることが。」
(「つぎあったときにわたすだいじな物」)
「それで…それで忘れちゃったけど、なんか嫌なことだけ覚えてて…」
(私…返さなきゃ。)
「結論は出ましたか?」
「返さないと。いやなんて言ってられない。小中の頃の親友だったもの。…仲直りしに行く。仲直りできたら…また来る。」
「はい。」
「今日はありがとう。大切な事、思い出せた。」
「ええ。仲直り、上手くいくと良いですね。」
「うん。ありがとう。」
「にしても、フレンドリーな人ですね。」
「え?そう?」
「きっと、すぐ仲直りできますよ。」
「ありがと。じゃあまた今度、お願い。」
「ええ。待っておりますよ。いつでも。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

心のすきまに【社会人恋愛短編集】

山田森湖
恋愛
仕事に追われる毎日、でも心のすきまに、あの人の存在が忍び込む――。 偶然の出会い、初めての感情、すれ違いのもどかしさ。 大人の社会人恋愛を描いた短編集です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...