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ある日。
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「お母さん。遊ぼう。」
「いいわよ。ほら、帽子かぶって。秋だけど、まだ暑いからね。あと、マスクもしなさい。」
広義は、黒いキャップをかぶった。半袖シャツに短パン。今から、公園に行くのだった。
この数ヶ月で、流行だった風邪は不思議と無くなっていった。これは、あの男の人のおかげだろうか。そのおかげで、人と人との関わりは増えていった。学校も始まり、あの通学路に響く笑い声が再び聞こえるようになった頃。
「さちちゃん。これから、公園で遊ぶんだ。ごめんね。きるよ。」
広義はウキウキしていた。電話先では、
「そうなんだ。私も出掛けるつもり。」
「じゃあね。」
そう言って、広義はきった。
「ずっと電話でさちちゃんとしゃべってるね。迷惑じゃないの?」
お母さんはそう心配したが、さちは相変わらず元気そうで、いきいきしていた。大丈夫だろう、広義はそう思った。
「じゃあ、行くよ。」
玄関のドアをお母さんは大きく開いた。
「こんにちは。」
門を出て、そこには隣に住んでいる男の人と会った。
広義のお母さんは、
「こんにちは。暑いですね。」
と応えた。
「娘さんとお出かけですか?」
「そうなんですよ。公園へ行こうと。」
男の人の後ろに隠れていた、小さな女の子。
広義はハッとした。そして、笑顔になった。
「さちちゃん。隣、住んでいたんだね。」
「あ!!こうき君。」
さちちゃんは、広義に駆け寄った。
これは、運命というものだろう。誰もがそう思う。しかしそんな事は、幼い二人にとってどうでも良かった。二人が再び会う事ができたのだから。
「あのね。お母さん。いなくなったの。だから、お父さんと一緒に住んでいるの。」
「それは、寂しくないの?」
「ううん。お父さんいるし、こうき君と電話してたから、全然寂しくない。」
「良かった。」
広義の後ろでは、お母さんとさちのお父さんが話していた。二人は聞いていなかったが。
「そういえば、お母さん最近見かけませんけど。」
「あ~。あいつとは離婚したんですよ。」
「あ、そうなんですね。」
「でも、それでもさちは元気ですよ。むしろ前よりも。多分、毎日こうき君と話をしているからでしょう。」
「すみません。迷惑でありませんか?」
「いえいえ。こうき君と話をしている時が、一番さちは喜んでいますから。」
「そうですか。…あの。テレビの中に入るという、話聞いた事あります?」
「あ~、子供の時聞きました。ただのウワサでしたが。」
「そうですよね。」
お母さんは笑っていた。そして、さちちゃんとこうきくんの二人を後ろから見ていた。
そんなウワサが彼らを会わせたということは、お母さんとその二人だけの秘密だったのだ。
「こうき君、早く早く。」
さちは走って公園へと向かった。
「待って。」
後からかけていく、広義。
さちは、ひざまでの長い白い靴下をくるぶしまで下げ、公園へと入った。
夕方には、二人とも汗がびっしょりかくまで、服が汚れるまで、思いっきり遊んだ。
服や靴下の汚れも、二人は気づかないほどまで、夢中に遊んだ。
「これで、全てのぞみは叶った。」
しかし中学生に入った時、いつの間にかさちは居なくなっていた。
「いいわよ。ほら、帽子かぶって。秋だけど、まだ暑いからね。あと、マスクもしなさい。」
広義は、黒いキャップをかぶった。半袖シャツに短パン。今から、公園に行くのだった。
この数ヶ月で、流行だった風邪は不思議と無くなっていった。これは、あの男の人のおかげだろうか。そのおかげで、人と人との関わりは増えていった。学校も始まり、あの通学路に響く笑い声が再び聞こえるようになった頃。
「さちちゃん。これから、公園で遊ぶんだ。ごめんね。きるよ。」
広義はウキウキしていた。電話先では、
「そうなんだ。私も出掛けるつもり。」
「じゃあね。」
そう言って、広義はきった。
「ずっと電話でさちちゃんとしゃべってるね。迷惑じゃないの?」
お母さんはそう心配したが、さちは相変わらず元気そうで、いきいきしていた。大丈夫だろう、広義はそう思った。
「じゃあ、行くよ。」
玄関のドアをお母さんは大きく開いた。
「こんにちは。」
門を出て、そこには隣に住んでいる男の人と会った。
広義のお母さんは、
「こんにちは。暑いですね。」
と応えた。
「娘さんとお出かけですか?」
「そうなんですよ。公園へ行こうと。」
男の人の後ろに隠れていた、小さな女の子。
広義はハッとした。そして、笑顔になった。
「さちちゃん。隣、住んでいたんだね。」
「あ!!こうき君。」
さちちゃんは、広義に駆け寄った。
これは、運命というものだろう。誰もがそう思う。しかしそんな事は、幼い二人にとってどうでも良かった。二人が再び会う事ができたのだから。
「あのね。お母さん。いなくなったの。だから、お父さんと一緒に住んでいるの。」
「それは、寂しくないの?」
「ううん。お父さんいるし、こうき君と電話してたから、全然寂しくない。」
「良かった。」
広義の後ろでは、お母さんとさちのお父さんが話していた。二人は聞いていなかったが。
「そういえば、お母さん最近見かけませんけど。」
「あ~。あいつとは離婚したんですよ。」
「あ、そうなんですね。」
「でも、それでもさちは元気ですよ。むしろ前よりも。多分、毎日こうき君と話をしているからでしょう。」
「すみません。迷惑でありませんか?」
「いえいえ。こうき君と話をしている時が、一番さちは喜んでいますから。」
「そうですか。…あの。テレビの中に入るという、話聞いた事あります?」
「あ~、子供の時聞きました。ただのウワサでしたが。」
「そうですよね。」
お母さんは笑っていた。そして、さちちゃんとこうきくんの二人を後ろから見ていた。
そんなウワサが彼らを会わせたということは、お母さんとその二人だけの秘密だったのだ。
「こうき君、早く早く。」
さちは走って公園へと向かった。
「待って。」
後からかけていく、広義。
さちは、ひざまでの長い白い靴下をくるぶしまで下げ、公園へと入った。
夕方には、二人とも汗がびっしょりかくまで、服が汚れるまで、思いっきり遊んだ。
服や靴下の汚れも、二人は気づかないほどまで、夢中に遊んだ。
「これで、全てのぞみは叶った。」
しかし中学生に入った時、いつの間にかさちは居なくなっていた。
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