レスト:ランプ

昔懐かし怖いハナシ

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二人の自分

その後の事

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 次の日休みをとるため、仕事場に電話をした。昨日のあの記憶の事がとても気になっていた。一応、準備をしといた方がいいのだろうか。そう思い、仕事の電話は一日だけ受けない事に決め、それを上司に伝えて、電話を待った。
 待っている間段々と、バカバカしいなと思ってきた。だが、どうしても気になる。真偽を確かめたいからだ。
 昼を過ぎ、家で映画を見ながら待っていた。
 時間がすぎるのは早い。意外とすぐにあの”トキ“になった。
 女は、息を潜め電話を見続けていた。家の中では、少し緊張が走っていた。もうすぐ、四十五分になりそうだ。今、五十八秒。そしてついに、
「ピロピロピロローン。」
軽快な音楽が鳴った。もちろん、誰かからなのか分からない。思い切って出てみた。
「もし、もし。」
「こんにちは!私だよ。あなたは、自分だよね?」
ややこしいけど、聞いてみた。
「何かようですか?」
「いや、大した事ないんだけど、なんか困ったことあるらしいね。私はあなただから、悩みの事、分かるんだよね。どう?何か手伝おうか。嫌ならいいんだけど。」
相手は、どうやら自分(ドッペルゲンガー)らしい。親しい人ならグイグイと食い込んでいく性格。全く一緒だ。そして、
「分かった。お願いがある。一週間だけ、仕事してくれないかな?忙しいから、少しでも休みたいの。」
バレたら恐いと思ったが、勇気を出して提案をしてみた。
「いいさ。それぐらいなら。でも、一つ約束して欲しいことがあるの。少し、欲しい物がある。貰いに来るから、一週間の間に。
 後、私を見ないでほしい。よろしくね。じゃあ、明日から頑張るよ!」
 物事を言い終わると、すぐに駆け出してしまう性格も全く一緒だった。すぐに、電話が切れてしまった。話している時、現実じゃない感じだった。
 今日は、不安を感じつつも早く寝た。
 次の日、本当に"自分"は出勤していた。
 上司に、
「私は来ているか?」
と聞いてみたが、
「寝ぼけてるのか。今さっき何処かに出かけたじゃないか」
とだけ言い、切られた。
 女は舞いあがり、嬉しくなった。いつもは行かない店に行ったり、買い物したり、毎日が楽しかった。これが生きているという感じなのか。
 しかも、自分は働いている。遊んでいる間給料も貰えるのだ。一石二鳥じゃないか。 
 女は、夜遅くに帰ってくることが多くなった。
 そんな一週間が早くも過ぎようとしていた。どうにか、もう一週間だけ働いてもらえないか、そのもう一人の自分に聞こうとした。
 しかし、その電話番号は使われていないらしい。仕方がないため、仕事場から出てくるのを待ち伏せしていた。
「ん?近くに、誰かがいる気がする。」
背後に、自分自身がいた。冷や汗が、だらだらと出てきた。これは、やばい。女は、ふと振り返ってしまった。
「あ~あ、馬鹿だね。せっかく、この世を楽しんでもらおうとこの企画を立てたのに。自分から、私の所に来てくれるなんて、嬉しいじゃないの。」
相手は不気味に笑っていた。
「なぜ、自分を助けようとしたと思う?あなたの命がとても短かった。だから、死神と言われる私は、慈悲を働いて楽しんでもらおうとしたんだよ。
 でも、今死ぬか、あと少し生きるかは生きているあなた自身が決める事。
 私は、それを決めさせる為に、毎晩あなたの家に行ったんだよ。もし、約束を破って私に会ったら殺していたかもしれない。
 でも、夜居ないんだよね。それは良かった」
女は、いつも遊んで帰りが遅かった為、運よく会わずにすんでいたのだった。
「しかし、自ら約束を破って私に会いに来たってことは、覚悟はついているらしい。さぁ、参ろうか。」
彼女はいつの間にか、黒いお面、コートなど身につけていた。今にも、あの世に連れて行かれそうだった。
 女は、生きるため逃げようとした。
 でも、自分の運命を決めたのは自分。もう、どうしようもなかった。
 





«その女性は、いつの間にか失踪してしまった。誰も連絡が取れずにいたが、最後に仕事場に来ていた日の一週間後。遂に、仕事場の近くで死んでいた。
 この事件。不思議な事だらけで、結局犯人は見つからなかった。»
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