レスト:ランプ

昔懐かし怖いハナシ

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噂話

異世界なんて…1

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「絶対、行ってはならない、世界があるって知ってる?」
「??」
明子は、友達の雪から聞いた言葉にびっくり、そして、興味があった。
「また、そんな類のやつじゃないの?ある事をしたら、どこか迷い込むやつ。」
嘘だろうと信じているが、どんなやつなのか噂話なのか聞いてみたかった。
「それはね、この国の中で、移動し続けているんだ。だから、決まった行動をしなくても、たまに現れるやつなんだ。
 でも、ある条件に当てはまる人にだけ現れるそうなんだ。」
ふふふ、と不気味に笑っていた。
「明子は運命だなんて信じる?」
「そんなの信じないよ。運命なんて、勝手に人が決めたものじゃないの?それに、そんなものに私の人生変えられちゃ、たまんないもん。」
一口ジュースを飲んだ。
「そうなんだ。でもそれは、この先の運命が悪い人の前にだけ、現れるそうなんだ。」
「じゃあ、結局誰の前に現れるか分からない訳だね。」
「そうなんだよね。結局確実に入ることが出来ない世界なんだ。」
ここで、その話題は終わった。

 授業中、パトカーが何台か通った。何か、調べているのだろうか。そんな事が一瞬だけ頭をよぎった。
 放課後、ちょうど部活がなかった二人は、同じ方面に家があったので、一緒に帰った。
「ねえ。さっきの話の事。どこから聞いたの?」
朋子は聞いた。
「あれ、新聞とか見ない?この地域に、昔から伝わる話だって、新聞で知ったんだ。でも、そんなに昔ではないらしいよ。ここ最近出回ってきたらしい。」
「そうなんだ。」
「話変わるんだけど、不思議な事件がこの地域で起きたそうなんだ。これ見てよ。」
雪のスマホには、学校の近くで起こった。未解決事件が写っていた。
“ブラック会社の社員。近くの小屋で遺体となって、発見。死因は不明。現在、調査中”
と、

「最近、物騒だよね」
そんな事は私には関係ない。そう他人事だった。
「てかこんな所に、店あったけ?」
雪にそう言われて、ある“元空き地だった”場所に目線をずらした。
「新しくできたのかな?それにしても、古そうだね。」
ランプがたくさん、飾ってあった。昼間なのに、中は火が灯っていた。少し熱を感じる。
「入ってみない?無性に入りたいんだ。」
雪がこんなにも興味津々なのは、見たことがない。
「わかったよ。少しだけだよ。」
私は、のり気ではなかった。

ギギーっと、木のドアが開いた。中は、ガランとしていた。誰も居ないのか?
「すみませ~ん!」
雪の拍子抜けな言葉が、レストランの中に響いた。
「はいはい!ようこそ、未来予兆へ、」
そういえば、名前を見てなかった。最近、そんな不思議な名前は、そうそう無い。
「好きな場所へお座りください。」
シンプルな、少し時代を感じる、雰囲気だった。
「あそこ座ろう。」
雪は早速、窓側の席に座った。
「では、こちらがメニューとなっています。」
メニューも特別不思議なものはない。どこでもあるメニューだ。しかし、
「この未来予兆コースとは、なんですか?」
雪はなんだか違う人みたい。メニュー板をすぐに開き、聞いた。
「それが気になりますか?」
「はい。すごく。」
「そうですか。そうですか。では、是非ともそれを選びなさってください。そちらの方は、このメニュー、気になります?」
ターゲットが明子になっていた。
「いや、そんなにではないですけど、でも雪が選ぶなら、それにします。」
変なことを言う店員だ。
「分かりました。」
あまり乗り気ではないらしい。感じで分かった。
「楽しみだね。」
そう言って、はしゃいでいた雪を、明子は不思議な目で見ていた。
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