公爵令嬢イリスをめぐるトラブル 

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第二章 婚約者様、どうか僕と恋愛してください

酒場をはしごして憂さ晴らし

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 そのままルーザーと二人で飲みに出掛け、二軒はしごしてゆっくり飲み食いし話した。すごく久しぶりのことで楽しかったが、女と男が寄ってきて面倒なのはいつも通りだった。

 女装していれば、女避けはできたのにと愚痴っていたら、ルーザーが帰国時の話を持ち出した。

 国王軍の騎馬試合の指南役として国に戻っていたのだが、試合が今一つ盛り上がらなかったので、不完全燃焼だと言う。

「指揮官がダメなんだ。もう少し、こう、クレバーな指揮がとれないかなあ。見ていてイライラする感じでさ」

「ああ、もっさり、かあ。センスが悪いんだな。イリス様に指揮官をしてもらったら、ずっと面白くなるのにな」

「そうだな、イリス様の指揮能力はずば抜けているから。視野が広いのか、先読みがすごいのか。去年の公爵家の騎馬試合で圧勝していただろ。戦ってみたい相手だよな」

「帰国したら、騎馬試合で対戦しようよ。ルーザーが相手側の指揮官になってさ。私はイリス様の副官に付くから、よろしく。
 ところで、さっきの王太子殿下の話、何?」

 帰国して王太子殿下に会ったのは、待ち伏せされて捕まったそうだ。

 イリス様の様子を聞きたかったようで、聞かれたことに返答したが、なぜか不満そうで、アイラかケインは戻らないのかと言われたそうだ。

「何聞かれたの」

「イリス嬢とブルーシャドウの皆は元気にしているか、だ」

「それで、なんて」

「皆、元気です、と答えたら何故か無言で、その後さっきのを言われた。結構ショックだ」

「そりゃあね、もう少し何かあるだろうよ。彼はイリス様の様子を知りたいのさ。日々のご様子とか、更に美しくなられたとか、元気以外のあれこれ」

 赤ワインをカラフェからグラスに注ぎ、ぐっと飲んでから唇を引き結んで苦い顔をした。

「そういうのは苦手なんだ。お前帰れよ。何か教えてやれ」

「そうねえ。王妃様がいい男ばっかり相談所に誘うから、どんどん目が肥えていっています、とか、モフモフ撫でまわせる男を探していますとか吹いてこようかな」

「止めろ」

「でも、本当のことよ。
 多分、王妃様はイリス様に、いい男といい恋愛に触れる機会を与えてくださっているのよね。腹黒いだけじゃないわね」

「女になっているぞ」

「イリス様にも恋愛のチャンスが訪れますように。ところでルーザー、この間、王妃様が引き合わせようとした女、どうだった。好み?」

「面倒くさい」

「つまらない男だな。二十九歳だろ。そろそろ嫁さん欲しくならないか」

「まだだな」

「そうか。つまらない。ところで、俺は今お前を真似ているんだが、どんな男に見える?」

 ルーザーがちょっと体を後ろに引き、アイラをじろじろと見た。

「悪い男かな、で、変に色っぽい。俺に似ているとは思わんが、男女両方共、群がって来るぞ。新しい顔を増やしたな」

 そのまま他愛もないことを話し、屋敷に戻ったのは真夜中だった。

 一応戸締まりの確認をしようと巡回していたら、クリフの部屋で女の声がした。これは確認のチャンスとドアに近付いてみたところ、どうやら揉め事が起こっている様子だった。

 主に女が喚いている。私のことを、とか好きだって言ったじゃない、とか切れ切れに聞こえてくる。

 それに対する声は低くて聞き取れない。

 別れ話か?と思ったら、急にドアが開いて女がまろび出て来た。バッチリ目の前だ。実際うろたえたが、この場面でこの態度は自然だろう。

 クリフは部屋の入口で、こちらをじっと見ている。無口な奴だ。
 寛いだ感じの部屋着姿で髪も崩していて、昼間に見る隙の無い様子とはまた違った魅力がある。

「旦那様、どうかなさいましたか」
 フリージアに手を差し伸べて、しっかりと立たせてからお伺いを立てる。

「いや、特別なことは無い。巡回か?」

「はい、戸締まりの確認に回っております」

「そうか、ご苦労。フリージアを部屋に送ってやってくれ」

 そう言うと、あっさりとドアを閉めた。フリージアはというと、泣いたのか化粧が剥がれて顔がボロボロだった。

 あまり顔を見ないようにして、部屋までゆっくりと先導した。彼女は何も話さないので、こちらも無言だ。部屋に着いて、何か飲み物でもお持ちしましょうかと言ってみたが、何もいらないと言うのでそのまま巡回に戻った。

 痴話喧嘩か、別れ話か、二人の関係はどんなものなのだろう。
 2人の仲が、揺らいでいる様子なのはわかった。今回はハニートラップを使う必要もなさそうだ。

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