26 / 123
第二章 婚約者様、どうか僕と恋愛してください
酒場をはしごして憂さ晴らし
しおりを挟む
そのままルーザーと二人で飲みに出掛け、二軒はしごしてゆっくり飲み食いし話した。すごく久しぶりのことで楽しかったが、女と男が寄ってきて面倒なのはいつも通りだった。
女装していれば、女避けはできたのにと愚痴っていたら、ルーザーが帰国時の話を持ち出した。
国王軍の騎馬試合の指南役として国に戻っていたのだが、試合が今一つ盛り上がらなかったので、不完全燃焼だと言う。
「指揮官がダメなんだ。もう少し、こう、クレバーな指揮がとれないかなあ。見ていてイライラする感じでさ」
「ああ、もっさり、かあ。センスが悪いんだな。イリス様に指揮官をしてもらったら、ずっと面白くなるのにな」
「そうだな、イリス様の指揮能力はずば抜けているから。視野が広いのか、先読みがすごいのか。去年の公爵家の騎馬試合で圧勝していただろ。戦ってみたい相手だよな」
「帰国したら、騎馬試合で対戦しようよ。ルーザーが相手側の指揮官になってさ。私はイリス様の副官に付くから、よろしく。
ところで、さっきの王太子殿下の話、何?」
帰国して王太子殿下に会ったのは、待ち伏せされて捕まったそうだ。
イリス様の様子を聞きたかったようで、聞かれたことに返答したが、なぜか不満そうで、アイラかケインは戻らないのかと言われたそうだ。
「何聞かれたの」
「イリス嬢とブルーシャドウの皆は元気にしているか、だ」
「それで、なんて」
「皆、元気です、と答えたら何故か無言で、その後さっきのを言われた。結構ショックだ」
「そりゃあね、もう少し何かあるだろうよ。彼はイリス様の様子を知りたいのさ。日々のご様子とか、更に美しくなられたとか、元気以外のあれこれ」
赤ワインをカラフェからグラスに注ぎ、ぐっと飲んでから唇を引き結んで苦い顔をした。
「そういうのは苦手なんだ。お前帰れよ。何か教えてやれ」
「そうねえ。王妃様がいい男ばっかり相談所に誘うから、どんどん目が肥えていっています、とか、モフモフ撫でまわせる男を探していますとか吹いてこようかな」
「止めろ」
「でも、本当のことよ。
多分、王妃様はイリス様に、いい男といい恋愛に触れる機会を与えてくださっているのよね。腹黒いだけじゃないわね」
「女になっているぞ」
「イリス様にも恋愛のチャンスが訪れますように。ところでルーザー、この間、王妃様が引き合わせようとした女、どうだった。好み?」
「面倒くさい」
「つまらない男だな。二十九歳だろ。そろそろ嫁さん欲しくならないか」
「まだだな」
「そうか。つまらない。ところで、俺は今お前を真似ているんだが、どんな男に見える?」
ルーザーがちょっと体を後ろに引き、アイラをじろじろと見た。
「悪い男かな、で、変に色っぽい。俺に似ているとは思わんが、男女両方共、群がって来るぞ。新しい顔を増やしたな」
そのまま他愛もないことを話し、屋敷に戻ったのは真夜中だった。
一応戸締まりの確認をしようと巡回していたら、クリフの部屋で女の声がした。これは確認のチャンスとドアに近付いてみたところ、どうやら揉め事が起こっている様子だった。
主に女が喚いている。私のことを、とか好きだって言ったじゃない、とか切れ切れに聞こえてくる。
それに対する声は低くて聞き取れない。
別れ話か?と思ったら、急にドアが開いて女がまろび出て来た。バッチリ目の前だ。実際うろたえたが、この場面でこの態度は自然だろう。
クリフは部屋の入口で、こちらをじっと見ている。無口な奴だ。
寛いだ感じの部屋着姿で髪も崩していて、昼間に見る隙の無い様子とはまた違った魅力がある。
「旦那様、どうかなさいましたか」
フリージアに手を差し伸べて、しっかりと立たせてからお伺いを立てる。
「いや、特別なことは無い。巡回か?」
「はい、戸締まりの確認に回っております」
「そうか、ご苦労。フリージアを部屋に送ってやってくれ」
そう言うと、あっさりとドアを閉めた。フリージアはというと、泣いたのか化粧が剥がれて顔がボロボロだった。
あまり顔を見ないようにして、部屋までゆっくりと先導した。彼女は何も話さないので、こちらも無言だ。部屋に着いて、何か飲み物でもお持ちしましょうかと言ってみたが、何もいらないと言うのでそのまま巡回に戻った。
痴話喧嘩か、別れ話か、二人の関係はどんなものなのだろう。
2人の仲が、揺らいでいる様子なのはわかった。今回はハニートラップを使う必要もなさそうだ。
女装していれば、女避けはできたのにと愚痴っていたら、ルーザーが帰国時の話を持ち出した。
国王軍の騎馬試合の指南役として国に戻っていたのだが、試合が今一つ盛り上がらなかったので、不完全燃焼だと言う。
「指揮官がダメなんだ。もう少し、こう、クレバーな指揮がとれないかなあ。見ていてイライラする感じでさ」
「ああ、もっさり、かあ。センスが悪いんだな。イリス様に指揮官をしてもらったら、ずっと面白くなるのにな」
「そうだな、イリス様の指揮能力はずば抜けているから。視野が広いのか、先読みがすごいのか。去年の公爵家の騎馬試合で圧勝していただろ。戦ってみたい相手だよな」
「帰国したら、騎馬試合で対戦しようよ。ルーザーが相手側の指揮官になってさ。私はイリス様の副官に付くから、よろしく。
ところで、さっきの王太子殿下の話、何?」
帰国して王太子殿下に会ったのは、待ち伏せされて捕まったそうだ。
イリス様の様子を聞きたかったようで、聞かれたことに返答したが、なぜか不満そうで、アイラかケインは戻らないのかと言われたそうだ。
「何聞かれたの」
「イリス嬢とブルーシャドウの皆は元気にしているか、だ」
「それで、なんて」
「皆、元気です、と答えたら何故か無言で、その後さっきのを言われた。結構ショックだ」
「そりゃあね、もう少し何かあるだろうよ。彼はイリス様の様子を知りたいのさ。日々のご様子とか、更に美しくなられたとか、元気以外のあれこれ」
赤ワインをカラフェからグラスに注ぎ、ぐっと飲んでから唇を引き結んで苦い顔をした。
「そういうのは苦手なんだ。お前帰れよ。何か教えてやれ」
「そうねえ。王妃様がいい男ばっかり相談所に誘うから、どんどん目が肥えていっています、とか、モフモフ撫でまわせる男を探していますとか吹いてこようかな」
「止めろ」
「でも、本当のことよ。
多分、王妃様はイリス様に、いい男といい恋愛に触れる機会を与えてくださっているのよね。腹黒いだけじゃないわね」
「女になっているぞ」
「イリス様にも恋愛のチャンスが訪れますように。ところでルーザー、この間、王妃様が引き合わせようとした女、どうだった。好み?」
「面倒くさい」
「つまらない男だな。二十九歳だろ。そろそろ嫁さん欲しくならないか」
「まだだな」
「そうか。つまらない。ところで、俺は今お前を真似ているんだが、どんな男に見える?」
ルーザーがちょっと体を後ろに引き、アイラをじろじろと見た。
「悪い男かな、で、変に色っぽい。俺に似ているとは思わんが、男女両方共、群がって来るぞ。新しい顔を増やしたな」
そのまま他愛もないことを話し、屋敷に戻ったのは真夜中だった。
一応戸締まりの確認をしようと巡回していたら、クリフの部屋で女の声がした。これは確認のチャンスとドアに近付いてみたところ、どうやら揉め事が起こっている様子だった。
主に女が喚いている。私のことを、とか好きだって言ったじゃない、とか切れ切れに聞こえてくる。
それに対する声は低くて聞き取れない。
別れ話か?と思ったら、急にドアが開いて女がまろび出て来た。バッチリ目の前だ。実際うろたえたが、この場面でこの態度は自然だろう。
クリフは部屋の入口で、こちらをじっと見ている。無口な奴だ。
寛いだ感じの部屋着姿で髪も崩していて、昼間に見る隙の無い様子とはまた違った魅力がある。
「旦那様、どうかなさいましたか」
フリージアに手を差し伸べて、しっかりと立たせてからお伺いを立てる。
「いや、特別なことは無い。巡回か?」
「はい、戸締まりの確認に回っております」
「そうか、ご苦労。フリージアを部屋に送ってやってくれ」
そう言うと、あっさりとドアを閉めた。フリージアはというと、泣いたのか化粧が剥がれて顔がボロボロだった。
あまり顔を見ないようにして、部屋までゆっくりと先導した。彼女は何も話さないので、こちらも無言だ。部屋に着いて、何か飲み物でもお持ちしましょうかと言ってみたが、何もいらないと言うのでそのまま巡回に戻った。
痴話喧嘩か、別れ話か、二人の関係はどんなものなのだろう。
2人の仲が、揺らいでいる様子なのはわかった。今回はハニートラップを使う必要もなさそうだ。
54
あなたにおすすめの小説
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
迎えに行ったら、すでに君は行方知れずになっていた
月山 歩
恋愛
孤児院で育った二人は彼が貴族の息子であることから、引き取られ離れ離れになる。好きだから、一緒に住むために準備を整え、迎えに行くと、少女はもういなくなっていた。事故に合い、行方知れずに。そして、時をかけて二人は再び巡り会う。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる