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第二章 婚約者様、どうか僕と恋愛してください
報告と久しぶりの隊長
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伯爵邸に潜って一ヶ月後、イリスの元へ報告に向かった。
出掛けにフリージアの娘のマリアに出くわし、”お父様”の帰宅予定を尋ねられた。
「お父様とは、クリフ様のことでしょうか」
「そうよ。お父様はクリフお父様しかいないでしょ」
差し出口を挟むのはやめて、クリフ様の帰宅予定は私ではわかりかねます、と答えておいた。
「ねえ、なんで執事もあなたもクリフお父様を本当のお父様ではないように言うの?
気分悪いのだけど」
「申し訳ございません」
見送っていると執事が後ろから声を掛けてきた。
「マリア様は何と?」
「旦那様の帰宅予定を聞かれました。次はいつご帰宅される予定ですか」
「今晩、戻られます。
マリア様は当家のお嬢様ではありませんので、目に余るわがままや、金額の嵩む買い物を言いつけて来たら断って、内容は私にお伝えください。
さぞ不思議に思われるでしょうが、他所には内密に願います」
「承知いたしました」
イリス様に報告に戻ると、サロンでルーザーと話をしていた。彼はチームのリーダーで、特技は交渉と言ったらいいのか。
人たらしで、特に男ウケがすごい。その中でもダーク系からの引きの強さが半端ない。本人はダーク寄りではなく、いい男と言われるタイプだが、何故か腹黒親父や、なんとか界の頭領、元締とかにものすごく好意を持たれる。
騎士を辞めたら彼の争奪戦が始まり、即どこかの組織の頭になるだろう。
この国の王妃様も、彼に目配せしているうちの一人だ。公爵が絶対に首を縦に振らないのをわかっているので、女で釣ろうと見目の良い令嬢をちらつかせては、返り討ちにあっている。
「アイラ、報告か。久しぶりだな。今回は爽やかな若者か?相変わらず化けるな」
柔らかそうな赤毛と黒っぽい茶色の目、大柄な体躯でゆったりとした動作、ライオンを彷彿させる男だ。如何にも男だな。このタイプはどうしたって真似できない。
「ええ、先行調査で推測した絵柄と少し違うようなので、報告しておこうと思いまして」
「どんなところが?」
「フリージアは女主人ではなく、侍女長として雇われており、愛人かも不明です。クリフからはそういう熱を全く感じません。
社交の場に出かけることも、人を招くこともこの一か月の内ではありません。立場がはっきりしないので、社交が難しいのかもしれません。でも使用人は奥様と呼び、子供は実子のように振る舞っていて、執事はそれを抑えようとしています。
そんなわけで、屋敷内での親子の立場が不明確です」
「侍女長ということは使用人、で、奥様呼び?」
「執事はこの状況を改善したいようで、子供がクリフをお父様と呼ぶのも矯正しようとしているようです」
「お父様か。それじゃあ新入りには、奥様とお子様にしか思えないわね。何らかの事情があるとして、実質そういうことと思うでしょうね」
ルーザーが割り込んできた。
「今回の案件、私が絡む必要はありそうですか」
「無いわね」
「無いですね」
イリスとアイラが被った。今回は人間関係の機微に関するもので、力技は多分必要がない。
そういう案件が中心なので、ルーザーは出番が少なく、今は軍の訓練教官をしている。本人は何かやりたいようだが、適材適所というものがある。人目を引く容姿でおまけに存在感が大きいので、記憶に残りやすく、小回りは利かない。
なんとなくしゅんとしている様子が可愛くて、あの赤い髪をワシャワシャして慰めたくなってしまう。
目敏いアイラが、
「また、モフモフとかワシャワシャとかしたくなっているでしょう。本当に好きですね、犬」
「ルーザーはライオン系だからネコ科じゃなかった?」
「イリス様は猫科もいけるんですね。
王太子殿下は完璧猫科だったから、好みではないと思っていたけど、ありですか。シャム猫っぽかったですよね」
アイラが思いがけない人物を話題に載せてきた。
「シャム猫ではモフモフもワシャワシャもできないじゃない」
少し前まで蓋をして閉じ込めていた話題だったが、今は軽口が言える。だいぶ消化されて来たようだ。するとルーザーが思いがけない事を言った。
「この間、国に戻った時に会ったけど、体がしっかりしてきてましたよ。十六歳ですから、大人に変わっていく年代だ。シャム猫より、もう少し大型獣かな」
「イリス様、モフモフかワシャワシャができる大人に育ってくれるといいですね」
ほっといて頂戴。
脱線から戻って、今後の方針を決めた。2人の関係は、今は冷え込んだ状態と想定し、情報は執事とフリージアと子供から集めることにした。
クリフは屋敷にいる時間が少なすぎて難しいだろう。2人が話をしている様子をもう少し頻繁に見ることが出来れば推測も可能なのだが。
出掛けにフリージアの娘のマリアに出くわし、”お父様”の帰宅予定を尋ねられた。
「お父様とは、クリフ様のことでしょうか」
「そうよ。お父様はクリフお父様しかいないでしょ」
差し出口を挟むのはやめて、クリフ様の帰宅予定は私ではわかりかねます、と答えておいた。
「ねえ、なんで執事もあなたもクリフお父様を本当のお父様ではないように言うの?
気分悪いのだけど」
「申し訳ございません」
見送っていると執事が後ろから声を掛けてきた。
「マリア様は何と?」
「旦那様の帰宅予定を聞かれました。次はいつご帰宅される予定ですか」
「今晩、戻られます。
マリア様は当家のお嬢様ではありませんので、目に余るわがままや、金額の嵩む買い物を言いつけて来たら断って、内容は私にお伝えください。
さぞ不思議に思われるでしょうが、他所には内密に願います」
「承知いたしました」
イリス様に報告に戻ると、サロンでルーザーと話をしていた。彼はチームのリーダーで、特技は交渉と言ったらいいのか。
人たらしで、特に男ウケがすごい。その中でもダーク系からの引きの強さが半端ない。本人はダーク寄りではなく、いい男と言われるタイプだが、何故か腹黒親父や、なんとか界の頭領、元締とかにものすごく好意を持たれる。
騎士を辞めたら彼の争奪戦が始まり、即どこかの組織の頭になるだろう。
この国の王妃様も、彼に目配せしているうちの一人だ。公爵が絶対に首を縦に振らないのをわかっているので、女で釣ろうと見目の良い令嬢をちらつかせては、返り討ちにあっている。
「アイラ、報告か。久しぶりだな。今回は爽やかな若者か?相変わらず化けるな」
柔らかそうな赤毛と黒っぽい茶色の目、大柄な体躯でゆったりとした動作、ライオンを彷彿させる男だ。如何にも男だな。このタイプはどうしたって真似できない。
「ええ、先行調査で推測した絵柄と少し違うようなので、報告しておこうと思いまして」
「どんなところが?」
「フリージアは女主人ではなく、侍女長として雇われており、愛人かも不明です。クリフからはそういう熱を全く感じません。
社交の場に出かけることも、人を招くこともこの一か月の内ではありません。立場がはっきりしないので、社交が難しいのかもしれません。でも使用人は奥様と呼び、子供は実子のように振る舞っていて、執事はそれを抑えようとしています。
そんなわけで、屋敷内での親子の立場が不明確です」
「侍女長ということは使用人、で、奥様呼び?」
「執事はこの状況を改善したいようで、子供がクリフをお父様と呼ぶのも矯正しようとしているようです」
「お父様か。それじゃあ新入りには、奥様とお子様にしか思えないわね。何らかの事情があるとして、実質そういうことと思うでしょうね」
ルーザーが割り込んできた。
「今回の案件、私が絡む必要はありそうですか」
「無いわね」
「無いですね」
イリスとアイラが被った。今回は人間関係の機微に関するもので、力技は多分必要がない。
そういう案件が中心なので、ルーザーは出番が少なく、今は軍の訓練教官をしている。本人は何かやりたいようだが、適材適所というものがある。人目を引く容姿でおまけに存在感が大きいので、記憶に残りやすく、小回りは利かない。
なんとなくしゅんとしている様子が可愛くて、あの赤い髪をワシャワシャして慰めたくなってしまう。
目敏いアイラが、
「また、モフモフとかワシャワシャとかしたくなっているでしょう。本当に好きですね、犬」
「ルーザーはライオン系だからネコ科じゃなかった?」
「イリス様は猫科もいけるんですね。
王太子殿下は完璧猫科だったから、好みではないと思っていたけど、ありですか。シャム猫っぽかったですよね」
アイラが思いがけない人物を話題に載せてきた。
「シャム猫ではモフモフもワシャワシャもできないじゃない」
少し前まで蓋をして閉じ込めていた話題だったが、今は軽口が言える。だいぶ消化されて来たようだ。するとルーザーが思いがけない事を言った。
「この間、国に戻った時に会ったけど、体がしっかりしてきてましたよ。十六歳ですから、大人に変わっていく年代だ。シャム猫より、もう少し大型獣かな」
「イリス様、モフモフかワシャワシャができる大人に育ってくれるといいですね」
ほっといて頂戴。
脱線から戻って、今後の方針を決めた。2人の関係は、今は冷え込んだ状態と想定し、情報は執事とフリージアと子供から集めることにした。
クリフは屋敷にいる時間が少なすぎて難しいだろう。2人が話をしている様子をもう少し頻繁に見ることが出来れば推測も可能なのだが。
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