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第四章 ミカエルの旅
母達の後悔
花嫁が置き去りされた結婚式で、両家の母達は各々、複雑な思いを抱えていた。
双方にそれなりの事情や背景があり、それには他人からは伺いしれない部分もあるようだ。同じように困惑と狼狽を浮かべる母達の胸の内をのぞいてみると、その心象風景は全く違うものだった。
◇~+~ 花嫁の母の後悔 ~+~◇
ルイス、ごめんなさい。
あの時、駆け出した二人に見とれていた母を許して。あまりにきれいで目が離せなかったの。
人の想いって、あんなに伝わって来るものなのね。見交わす目や、繋いだ手や、体の動き全てが物語っていたわ。愛と喜び、底辺を流れる抑えた悲しみ。
だから、あんなに際立って見えたのかしら。
そうね、ただキャッキャウフフで走り去るバカップルなら、どんなに美男美女でも呆れていたでしょう。
それは参列者の皆様も同じはずよ。
誰もが魅入っていた、実はルイスもでしょ。母にはわかる。他人事のように、素敵なんて思っていたでしょう。あなたって、そういう子よね。
母の耳にバックグラウンドミュージックが流れていたわ。きれいな声の少し物寂しいきれいな音楽が。それの最後を締めくくるのが、鳩の羽ばたきと、鐘の音。完璧だった。
そしてバーンと閉まったドアの音が第二幕の開幕合図。
ごめんなさい。ちらっとだけ、本当にちらっとよ、そんなふうに思ってしまいました。
祭壇の前のあなたはいつもと違って、とても存在感があったわ。ベールを被っていて顔も見えないのに、目が引き寄せられる強い何かを発していた。皆があなたを見つめ、息を殺していた。
ベールを上げた時は驚きました。
いつもよりずっときれい。緊張感で引き締まった表情のせいもあるけど、ほら見なさい。
常日頃、もっとしっかり化粧しなさいって言ってるでしょ。化粧すれば三割アップよ。母の忠告は結構役に立つものなのよ。ああ、我が娘ながら仲々の美人だったわ。
でも、あなたと目があった時、現実に戻った。私は立ち上がって、あなたの傍に寄り添わなくてはいけないのに、あなたに丸投げしてしまっていた事に気付いたの。
置き去りにされた花嫁の母として、ありえないわね。
でも動けなかった。それは許されなかった。誰にって? あの時のあの場全体の雰囲気によ。
参列者にお詫びの言葉を述べ、教会から帰っていく参列者を、両家の両親と神父様とでお見送りしたわ。
皆様、嘆かわしいとか、とんだことでしたね、とかの当たり障りない言葉を短く掛けて帰っていかれたのだけど、何故かムンムンと強い熱量を纏っていて、言葉と表情と雰囲気の違和感が凄かったわ。
とにかくご挨拶を済ませて、やっと家に帰ることができてホッとしたのよ。
ところがすぐに叔母一家が押しかけて来て、二日ほど滞在したいって言い出して。そのすぐ後に他の親戚達もやってきて、我が家はホテル状態よ。
従姉妹たちはすぐにルイスの部屋に駆け込むと、きゃーとか、わあとかうるさいこと。何を言っているのかもわからないけど、すごい興奮状態。淑女教育どこ行った、という様子。
ルイスはぐったりしているわね。疲れたでしょうよ。この気力に乏しい娘が、あれだけの力を発揮したのだもの。1年分位の気力を使い果たしているでしょうね。
今晩はゆっくりお休みなさい。
あ、初夜用のナイトドレスが無駄になったわね。こんなひらひらした物が高いのよねえ。驚くわ。これはきれいに仕舞って置かなくては。
次の朝、まず一番にバーンズ侯爵家よりの手紙が届いたの。謝罪と賠償と今後のことを相談したいので日を決めたいそう。
手紙と花束を持ってきたのは、侯爵の甥のカイト様だった。なぜ、使用人ではなく、と疑問に思ったのを感じ取ったのか、丁寧に説明してくれたわ。
「今回のことを深くお詫びすると共に、お互いにとってより良い道を探っていきたいと叔父が言っております。
手紙も使用人では失礼だと思い、僕が持ってまいりました」
と言って、花束をルイス嬢にと渡して帰られました。
では、ルイスを呼びますと言ったら、ルイス嬢は傷心でお辛いでしょうから、と労わってくださった。いい人ね。なんだか釈然としないけど、さすが侯爵家、対応迅速、そして花束が豪華よ。
花束と手紙を持って客間に戻ると泊っている親族たちが集まっていて、こっちを見ていたわ。花束と手紙を交互に見ているけど、どっちに興味があるのかしら。
「バーンズ侯爵家はなんて言ってきたの」
と私の叔母が聞き、
「その花は誰に贈られたもの?」
とその妹のもう一人の叔母が聞き、
「今の貴公子誰?かっこいい人ね」
その娘の従姉妹達がさえずり、
「お母様、朝ごはんにしませんか。私お腹が空いてしまって」
ルイスが言った。
「張り合いのない娘だな、全くいつも通りじゃあないか」
と夫の叔父が言うと、他の皆もそうねと言って頷いている。
ルイスの幼い甥のミカエルが、
「ルイス姉様、泣かないの?
花嫁にならなかったのでしょ。僕泣いていると思ったの」
これは直撃だわ。マギー、ミカちゃんを別室に、早く。
え、一緒に聞く?あなた姉でしょ。妹の傷心に寄り添う麗しい姉妹愛とか無いの?
「泣かないわよ。疲れて眠いのと、お腹が空いているだけ。いっぱい食べましょうね」
「ね」
天使のミカちゃんと可愛らしく言い合う姿は、可愛いけどなんだか疲れたわ。
こんな事になったのも、元はと言えば家庭教師のスミス氏が縁談を持ち込んだからだったわね。
おとなしくて浮ついたところのない、頭の良い令嬢を探している、と声を掛けられて、すぐにルイス嬢のことを思い出したのです。顔合わせの話を受けてみませんか、と言われてその気になったのだった。
なにせ、親がお膳立てしてあげなければ、一生家で本を読んで過ごしそうな子なのだ。いい縁があれば何でも掴まねば、と焦ったのが結局間違いだったということ。
なぜか娘が選ばれ、なぜかダニエル様にも気に入られ、話はスムーズに進んでいった。
訳アリの匂いは有ったけれど、そんなに気にしなくてもいいのでは、と楽観的に考えていた。
娘に負担を…どんな負担かしら。世間様が思うのとは違う気がするけど。
まあ、いいか。
「奥様、お手紙が届いておりますが、どう致しましょうか」
執事が声を掛けてきた。
「ありがとう。朝食の支度をお願い。ちょっと多めで豪華なメニューにしてね。
ミカちゃんが喜びそうな甘いものも加えて頂戴」
そう言いながら、手紙を受取ろうとしたら、トレイに山盛りに手紙が盛られていた。
「これ、何?」
「手紙でございます。こちらは高位の貴族からの手紙で、早めにお返事が必要かと思われますので、お持ちいたしました。
その他のものと釣書は執務室に置いてあります。釣書は嵩ばりますし。
今まで付き合いのある家と、初めての家で分けて執務室に置いてありますので、目通しをお願いいたします」
ルイス、ごめんなさい。なんだか疲れることになりそうよ。いっぱい食べて体力をつけてね。
双方にそれなりの事情や背景があり、それには他人からは伺いしれない部分もあるようだ。同じように困惑と狼狽を浮かべる母達の胸の内をのぞいてみると、その心象風景は全く違うものだった。
◇~+~ 花嫁の母の後悔 ~+~◇
ルイス、ごめんなさい。
あの時、駆け出した二人に見とれていた母を許して。あまりにきれいで目が離せなかったの。
人の想いって、あんなに伝わって来るものなのね。見交わす目や、繋いだ手や、体の動き全てが物語っていたわ。愛と喜び、底辺を流れる抑えた悲しみ。
だから、あんなに際立って見えたのかしら。
そうね、ただキャッキャウフフで走り去るバカップルなら、どんなに美男美女でも呆れていたでしょう。
それは参列者の皆様も同じはずよ。
誰もが魅入っていた、実はルイスもでしょ。母にはわかる。他人事のように、素敵なんて思っていたでしょう。あなたって、そういう子よね。
母の耳にバックグラウンドミュージックが流れていたわ。きれいな声の少し物寂しいきれいな音楽が。それの最後を締めくくるのが、鳩の羽ばたきと、鐘の音。完璧だった。
そしてバーンと閉まったドアの音が第二幕の開幕合図。
ごめんなさい。ちらっとだけ、本当にちらっとよ、そんなふうに思ってしまいました。
祭壇の前のあなたはいつもと違って、とても存在感があったわ。ベールを被っていて顔も見えないのに、目が引き寄せられる強い何かを発していた。皆があなたを見つめ、息を殺していた。
ベールを上げた時は驚きました。
いつもよりずっときれい。緊張感で引き締まった表情のせいもあるけど、ほら見なさい。
常日頃、もっとしっかり化粧しなさいって言ってるでしょ。化粧すれば三割アップよ。母の忠告は結構役に立つものなのよ。ああ、我が娘ながら仲々の美人だったわ。
でも、あなたと目があった時、現実に戻った。私は立ち上がって、あなたの傍に寄り添わなくてはいけないのに、あなたに丸投げしてしまっていた事に気付いたの。
置き去りにされた花嫁の母として、ありえないわね。
でも動けなかった。それは許されなかった。誰にって? あの時のあの場全体の雰囲気によ。
参列者にお詫びの言葉を述べ、教会から帰っていく参列者を、両家の両親と神父様とでお見送りしたわ。
皆様、嘆かわしいとか、とんだことでしたね、とかの当たり障りない言葉を短く掛けて帰っていかれたのだけど、何故かムンムンと強い熱量を纏っていて、言葉と表情と雰囲気の違和感が凄かったわ。
とにかくご挨拶を済ませて、やっと家に帰ることができてホッとしたのよ。
ところがすぐに叔母一家が押しかけて来て、二日ほど滞在したいって言い出して。そのすぐ後に他の親戚達もやってきて、我が家はホテル状態よ。
従姉妹たちはすぐにルイスの部屋に駆け込むと、きゃーとか、わあとかうるさいこと。何を言っているのかもわからないけど、すごい興奮状態。淑女教育どこ行った、という様子。
ルイスはぐったりしているわね。疲れたでしょうよ。この気力に乏しい娘が、あれだけの力を発揮したのだもの。1年分位の気力を使い果たしているでしょうね。
今晩はゆっくりお休みなさい。
あ、初夜用のナイトドレスが無駄になったわね。こんなひらひらした物が高いのよねえ。驚くわ。これはきれいに仕舞って置かなくては。
次の朝、まず一番にバーンズ侯爵家よりの手紙が届いたの。謝罪と賠償と今後のことを相談したいので日を決めたいそう。
手紙と花束を持ってきたのは、侯爵の甥のカイト様だった。なぜ、使用人ではなく、と疑問に思ったのを感じ取ったのか、丁寧に説明してくれたわ。
「今回のことを深くお詫びすると共に、お互いにとってより良い道を探っていきたいと叔父が言っております。
手紙も使用人では失礼だと思い、僕が持ってまいりました」
と言って、花束をルイス嬢にと渡して帰られました。
では、ルイスを呼びますと言ったら、ルイス嬢は傷心でお辛いでしょうから、と労わってくださった。いい人ね。なんだか釈然としないけど、さすが侯爵家、対応迅速、そして花束が豪華よ。
花束と手紙を持って客間に戻ると泊っている親族たちが集まっていて、こっちを見ていたわ。花束と手紙を交互に見ているけど、どっちに興味があるのかしら。
「バーンズ侯爵家はなんて言ってきたの」
と私の叔母が聞き、
「その花は誰に贈られたもの?」
とその妹のもう一人の叔母が聞き、
「今の貴公子誰?かっこいい人ね」
その娘の従姉妹達がさえずり、
「お母様、朝ごはんにしませんか。私お腹が空いてしまって」
ルイスが言った。
「張り合いのない娘だな、全くいつも通りじゃあないか」
と夫の叔父が言うと、他の皆もそうねと言って頷いている。
ルイスの幼い甥のミカエルが、
「ルイス姉様、泣かないの?
花嫁にならなかったのでしょ。僕泣いていると思ったの」
これは直撃だわ。マギー、ミカちゃんを別室に、早く。
え、一緒に聞く?あなた姉でしょ。妹の傷心に寄り添う麗しい姉妹愛とか無いの?
「泣かないわよ。疲れて眠いのと、お腹が空いているだけ。いっぱい食べましょうね」
「ね」
天使のミカちゃんと可愛らしく言い合う姿は、可愛いけどなんだか疲れたわ。
こんな事になったのも、元はと言えば家庭教師のスミス氏が縁談を持ち込んだからだったわね。
おとなしくて浮ついたところのない、頭の良い令嬢を探している、と声を掛けられて、すぐにルイス嬢のことを思い出したのです。顔合わせの話を受けてみませんか、と言われてその気になったのだった。
なにせ、親がお膳立てしてあげなければ、一生家で本を読んで過ごしそうな子なのだ。いい縁があれば何でも掴まねば、と焦ったのが結局間違いだったということ。
なぜか娘が選ばれ、なぜかダニエル様にも気に入られ、話はスムーズに進んでいった。
訳アリの匂いは有ったけれど、そんなに気にしなくてもいいのでは、と楽観的に考えていた。
娘に負担を…どんな負担かしら。世間様が思うのとは違う気がするけど。
まあ、いいか。
「奥様、お手紙が届いておりますが、どう致しましょうか」
執事が声を掛けてきた。
「ありがとう。朝食の支度をお願い。ちょっと多めで豪華なメニューにしてね。
ミカちゃんが喜びそうな甘いものも加えて頂戴」
そう言いながら、手紙を受取ろうとしたら、トレイに山盛りに手紙が盛られていた。
「これ、何?」
「手紙でございます。こちらは高位の貴族からの手紙で、早めにお返事が必要かと思われますので、お持ちいたしました。
その他のものと釣書は執務室に置いてあります。釣書は嵩ばりますし。
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