公爵令嬢イリスをめぐるトラブル 

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第四章 ミカエルの旅

ミカエルの旅

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 きれいな服を着て、まるで天使のようにかわいらしいミカエルは、喜びでいっぱいだった。

 大好きなルイスお姉さまがお嫁さんになった。そしてとってもきれいだ。いつもだってきれいだけど、もっともっときれい。周囲の大人達と一緒にミカエルも浮き浮きした気分で教会に座っていた。

 そして興味深く結婚式の様子を見つめていた。

 
◇~+~◇~+~◇


 今日は大好きなルイスお姉様の結婚式の日です。
 特別な日だから、いつもと違って、皆じっと花婿さんたちを見ています。

 いつもは、下を向いてあくびしたり、ハンカチをいじったり、喋ったりするんです。僕は小さいから全部見えます。四歳になったけど、まだまだ背が低いので、皆を下から見ているのです。本当に色々な事をしています。


 でも今日は皆一箇所を見ています。

 花婿さんが走っています。結婚式は走るのですね。
 あ、外に出た。かっこいいなあ。でも何でお姉様じゃない人と走るんだろう。

 教会から花婿さんがいなくなった後、大人達がおしゃべりを始めました。うるさいので、人があまりいない方へ行ったら指輪が落ちていました。

 さっきコロコロしてたあれかな。どこかのおばさん達のスカートや、おじさんの靴で、またコロコロしています。僕の靴にコツンとしたので指輪を拾いました。

 お祖父様のお家に帰ってお昼寝をしたあと、花婿さんは走ってどこへ行ったのか、お母様に聞きました。

 知らないそうです。

 結婚式は走るのね、と言ったら、絶対に走っちゃ駄目、と言われました。何で?

 そしてお姉様はお嫁さんにならなかったそうです。何で?

 お姉様は可哀想なんですって。お嫁さんにならなかったから?

 僕はキラキラした指輪を見ながら考えました。そして気付いたのです。これは、あの指輪だって。この間お母様が読んでくれたお話に出てくる悪い指輪なんだって。

 皆のところに行って、指輪を高く掲げて、僕は言いました。

「僕は踏ん付けられた指輪を捨てる旅にでます」

 皆がぶほっと咳をしました。苦しそうです。

「これは悪い指輪なんです。これが無くなればお姉様は幸せになって、お嫁さんになるんです」

 皆の咳が止んだ頃、ルイスお姉様が僕を抱っこしてくれました。少し泣いています。僕が泣かせてしまったのでしょうか。
 ハンカチで涙を拭きながらルイスお姉さまが言いました。

「ミカちゃん、ありがとう。やっぱり少し泣きたかったのかもしれない。やっと足が地に付いた気がするわ。
 ミカちゃんが指輪を捨ててくれたら、皆がスッキリしそう。お願いするわね」 

「うん。じゃあ僕行ってきます」

 そのまま、すぐに行こうとする僕を、お姉さまが止めました。

「待って、待って。一人で勝手に出掛けちゃだめよ。旅には仲間が必要でしょ。
仲間を見つけて、お母様にお許しをもらってから行こうね。お姉様も旅の仲間に入れてね」

 わかった。僕は仲間を探します。


 お母様とお姉さまがフード付きのマントと、背中に背負う袋を作ってくれました。
 たくさん歩ける靴も買ってきてくれました。
 それから僕は色々な人を見て、旅の仲間を探しました。でも、絶対にこの人が仲間だ、と思う人が見つかりません。

 たくさんの人が、一緒に行ってあげると言います。でも、なんだか、違うのです。僕は困ってしまいました。


 どうしようかな、と思っていたら、王妃様が良い仲間を見つけたそうです。会わせてあげるから、遊びにおいでと言われました。それで、僕はお姉さまと二人で、王妃様のところに遊びに行きました。

 すると、そこにはとってもきれいな、黒い髪の妖精の王女様と、僕の仲間になる騎士がいたのです。

 王女様は僕を抱きしめて髪を撫で、可愛いわ、もふもふしたいって言いました。

 そして僕は、物語の通りに、王女様の耳にそっと、僕が悪い指輪を持っているんだよって言いました。

 王女様はびっくりしたように僕をみた後、ぎゅうっと抱きしめてくれました。僕はうれしくて、きゅうって抱き着きました。お母様やお姉さまの抱っことは違う感じがしました。

 いい匂いだなあって言ったら、王妃様が、小さくても男ね、と言いました。そうです。僕は男の子です。

 そして、旅の仲間になる騎士と握手をしました。

 この騎士はいい人です。きっとルイス姉さまを守ってくれます。だから旅の仲間に加えました。

 騎士はルーザーという名前です。赤いたてがみのような髪の毛をした、大きな男の人です。大きいけど怖くありません。

 その後、皆でものすごくおいしいお菓子を食べました。
 僕はこんなにおいしいいお菓子を食べたことがありません。小さいからたくさんは食べられないけど、すごく一杯あったので、困ってしまいました。

 そうしたら妖精の王女様がバスケットを用意してくれて、そこにお菓子を詰めてくれると言いました。
 どれが好きって聞かれたので、一番はこれ、二番はこれって言ったら、すぐに追加で作ってもらうから、好きなだけ食べてねって言いました。

 少しして、白い服を着たおじさんがワゴンを押して部屋まで持って来てくれました。侍女達が、天使が居ると言うので、ぜひお会いしたくてと言っていました。

 僕がそっと、天使ではなく、妖精の王女様ですよって教えてあげたら、ああ、そうですよねって言って僕と握手しました。
 王妃様が、いくつでも、男は男ね、と言いました。

 ここはすごく気持ちの良い場所です。
 妖精の王女様が居るからでしょうか。


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