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シャノワール・王妃様の相談所 :第一章 やせ細っていく婚約者
依頼者と依頼内容
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2週間後に調査報告することにし、それまでは今まで通りに接して、態度を変えないよう念を押した。
「費用はお支払いいたしますので、おっしゃってください」
彼は実務にたけ、誠実な人柄のようだ。本当に優良物件だ。
「いいえ、お金儲けのためのサロンではありませんので不要です。王妃様の趣味と実益を兼ねたサロンなのです。選ばれて幸運だった、くらいにお考えください」
このサロンは、王妃様の好奇心を満たし、貴族間の情報を集めるためのものなのだ。
ついでに、私の影たちの訓練と、私の気晴らしも兼ねたサロンなので、一石で四鳥もあるのだ。
「2週間後、いい報告ができるよう力を尽くしますね。しばらくは心を休めてのんびりとしていてください。ビクター様もお疲れのはずですわ」
ビクターを送り出し、調査メンバーを選択した。今回はミラとケインにまかせようか。破壊工作のスペシャリストのミラと、人心操作にたけたケインだが、今回の案件は特殊な技能が必要なケースではない。単に手が空いている者という人選だ。つくづく、もったいない話だ。
このサロンでは王妃様が厳選した問題のみを取り扱う。基本は恋愛関係のトラブルだ。
ちなみにシャノワールとは、この相談所を続けるうちに、いつの間にか社交界で定着してしまった名である。一応秘密サロンで、場所も、メンバーも、どんなトラブルに対応したかも秘密。
ただ、その存在は全く隠されていない。
依頼主が秘密を守ったとしても、王妃様が御声を掛けたことは特に隠されていない。そのため周囲の者達は興味津々で依頼主周辺の変化に注目するのだ。
そして勝手な憶測や、妄想ではというような噂から、サロンの評判が上がっていったようだ。
イリスは数日前の夜のやり取りを思い出した。
「過去の辛い経験が年輪になっているのね。しかし、30代とはね」
伯母は苦笑した。ついで、にやっと笑って言う。
「弱冠15歳の殿下が、太刀打ちできるはずもなかったわね」
古傷を容赦なく抉る伯母をキッと睨むが、カエルの面になんとやらで知らん顔だ。伯母にかかると国を揺るがせた一大スキャンダルもこの程度の扱いだ。
そう、1年前にイリスは、自国の王太子がらみの陰謀に巻き込まれた。
その陰謀を阻止する過程で王族に傷を負わせ、その責任を取って王太子の婚約者の座を降りた。そして、この国に留学し、伯母の元に身を寄せている。
口をとがらせてイリスは反論した。
「あの頃は、私もまだ17歳でした。年上に思われるのは、このサロンで人様の人生に関わってきたせいですわ。私まだ10代ですのよ」
伯母と話すと、どうも幼児帰りしてしまう。全然かなわない大人の伯母に対するとき、私は明らかに子供だ。大人びていると言われ、そう扱われてきたので、この関係が実は心地良い。
「そうね、まだ若いのだから、そろそろ傷も癒えたでしょ。国に帰って公爵家に戻り、一貴族としての立ち位置を固めなさい。もし帰りたくないなら、私がこの国でいい男を見繕ってあげるわ。うちの子になってくれてもいいのよ」
うちの子って、王族でしょ。なんて大胆なことを。ついで、従兄弟たちの、冗談でもやめてくれ、という声が頭の中に響いた。
他の国の王妃様なら冗談でも、伯母の場合は注意しないと本気の本気だったりする。そして実行力、影響力とも半端ないため、時にごりごりと、時にぬらりくらりと、いつの間にか事はなっているのだ。
その時になって、えーっと驚く周囲に、私あの時に言ったわよ、とあっけらかんと返してくる。
だから周囲の者たちはいつも危機管理に努め、不穏な言葉は聞き逃さない。
早速、侍っていた伯爵夫人のヘレン様が伯母を誘導した。
「まあ、イリス様は公爵家の後継者ですし、公爵様が手放すはずがありませんわ。それにしても、どのタイミングで、どのように国に戻るか、難しいところですわね」
出た。難問を与えて気をそらす絶妙テク。
伯母さまも、それよね、と思案顔になる。
本当にヘレン様も上手い。さすが長年のご友人だけある。まだまだ私はひよっこだと思い知らされるのだった。
「費用はお支払いいたしますので、おっしゃってください」
彼は実務にたけ、誠実な人柄のようだ。本当に優良物件だ。
「いいえ、お金儲けのためのサロンではありませんので不要です。王妃様の趣味と実益を兼ねたサロンなのです。選ばれて幸運だった、くらいにお考えください」
このサロンは、王妃様の好奇心を満たし、貴族間の情報を集めるためのものなのだ。
ついでに、私の影たちの訓練と、私の気晴らしも兼ねたサロンなので、一石で四鳥もあるのだ。
「2週間後、いい報告ができるよう力を尽くしますね。しばらくは心を休めてのんびりとしていてください。ビクター様もお疲れのはずですわ」
ビクターを送り出し、調査メンバーを選択した。今回はミラとケインにまかせようか。破壊工作のスペシャリストのミラと、人心操作にたけたケインだが、今回の案件は特殊な技能が必要なケースではない。単に手が空いている者という人選だ。つくづく、もったいない話だ。
このサロンでは王妃様が厳選した問題のみを取り扱う。基本は恋愛関係のトラブルだ。
ちなみにシャノワールとは、この相談所を続けるうちに、いつの間にか社交界で定着してしまった名である。一応秘密サロンで、場所も、メンバーも、どんなトラブルに対応したかも秘密。
ただ、その存在は全く隠されていない。
依頼主が秘密を守ったとしても、王妃様が御声を掛けたことは特に隠されていない。そのため周囲の者達は興味津々で依頼主周辺の変化に注目するのだ。
そして勝手な憶測や、妄想ではというような噂から、サロンの評判が上がっていったようだ。
イリスは数日前の夜のやり取りを思い出した。
「過去の辛い経験が年輪になっているのね。しかし、30代とはね」
伯母は苦笑した。ついで、にやっと笑って言う。
「弱冠15歳の殿下が、太刀打ちできるはずもなかったわね」
古傷を容赦なく抉る伯母をキッと睨むが、カエルの面になんとやらで知らん顔だ。伯母にかかると国を揺るがせた一大スキャンダルもこの程度の扱いだ。
そう、1年前にイリスは、自国の王太子がらみの陰謀に巻き込まれた。
その陰謀を阻止する過程で王族に傷を負わせ、その責任を取って王太子の婚約者の座を降りた。そして、この国に留学し、伯母の元に身を寄せている。
口をとがらせてイリスは反論した。
「あの頃は、私もまだ17歳でした。年上に思われるのは、このサロンで人様の人生に関わってきたせいですわ。私まだ10代ですのよ」
伯母と話すと、どうも幼児帰りしてしまう。全然かなわない大人の伯母に対するとき、私は明らかに子供だ。大人びていると言われ、そう扱われてきたので、この関係が実は心地良い。
「そうね、まだ若いのだから、そろそろ傷も癒えたでしょ。国に帰って公爵家に戻り、一貴族としての立ち位置を固めなさい。もし帰りたくないなら、私がこの国でいい男を見繕ってあげるわ。うちの子になってくれてもいいのよ」
うちの子って、王族でしょ。なんて大胆なことを。ついで、従兄弟たちの、冗談でもやめてくれ、という声が頭の中に響いた。
他の国の王妃様なら冗談でも、伯母の場合は注意しないと本気の本気だったりする。そして実行力、影響力とも半端ないため、時にごりごりと、時にぬらりくらりと、いつの間にか事はなっているのだ。
その時になって、えーっと驚く周囲に、私あの時に言ったわよ、とあっけらかんと返してくる。
だから周囲の者たちはいつも危機管理に努め、不穏な言葉は聞き逃さない。
早速、侍っていた伯爵夫人のヘレン様が伯母を誘導した。
「まあ、イリス様は公爵家の後継者ですし、公爵様が手放すはずがありませんわ。それにしても、どのタイミングで、どのように国に戻るか、難しいところですわね」
出た。難問を与えて気をそらす絶妙テク。
伯母さまも、それよね、と思案顔になる。
本当にヘレン様も上手い。さすが長年のご友人だけある。まだまだ私はひよっこだと思い知らされるのだった。
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