歩きスマホしてたら異世界に迷い込んじゃったけど世界って救う必要ある?

るき

文字の大きさ
15 / 56
Chapter1

15 奇跡

しおりを挟む
 ドームに近づくにつれて、強めのモンスターが頻繁に湧いて出るようになってきた。

「うわぁあなんかいっぱい来たああああ!」

 バグったコウモリみたいなモンスターが群れを成して、上空から俺たちめがけて滑空してくる。
 俺が悲鳴を上げるよりも早く、すでにハオシェンが飛びかかっていた。打撃を叩き込むのと同時に光の虎が現れ、複数の敵をまとめて食い千切る。
 ハオシェンの必殺技かっこいい! 確か白虎真拳? 白虎剛拳? みたいな名前のやつ。

 俺が「すっげー!」と歓声を上げると、ハオシェンは誇らしげに笑い、軽く上げた手を俺に向けた。俺も手を上げてハイタッチする。ウェーイ。

「次やるとき必殺技の名前を言いながらやって!」
「え~敵に避けられるじゃん」
「あ、そっか……」

 そういうとこはリアルなんだなー。ゲームだと技名を叫びながら攻撃してるのに、と少しだけがっかりしてたら「ニーナがそう言うなら余裕のある時にやるよ」と付け加えてくれた。やったぜ。

 トリファンのキャラクターが使える技は二種類。「アビリティ」と「必殺技」だ。
 アビリティはキャラクター固有の能力で、任意のタイミングで使えるけれど再使用まで時間がかかる。
 必殺技は戦闘中に行動するとSP(スキルポイント)が溜まって、ゲージが100%になると使えるようになる。

 でも別に俺が操作とか指示とかしなくても、みんなそれぞれ自分で考えて戦ってくれてるんだよな。その方が断然助かる。

「いいな~必殺技! 俺もなんか出せないかな」

 必殺技って少年心をくすぐられる。絶対みんな子供の頃に漫画に出てくる技を真似したでしょ。
 試しに気合を入れながら掌底打ちのポーズをしてみたりしたけど、全然なにも出る気配はなかった。まあそうだと思ったけど。せっかくゲームの世界に来たんだから俺も必殺技を使えたらいいのに。

「ニーナはすっげえ技使えるじゃん」
「ん?」

 俺が? 技? 覚えがないけど。

「私たちが危機に陥った時、ニーナは悪しき者共に天罰を下してくださいました」
「あ、あれか! 奇跡ね!」

 リュカに言われて思い出した。プレイヤーは「奇跡」を起こして戦闘をサポートできるんだった。
 攻撃と防御、あとバフとか。一日一回しか使えないけど、レベルが上がると使える回数や種類が増えるってチュートリアルで言ってたな。あと課金アイテムを使うと打てる回数が増える。

 奇跡が使えたらすっごい楽しそうなんだけど。ポケットに入れていたスマホを取り出して操作パネルを出す。ゲームだと戦闘中の画面の端にカミナリみたいなアイコンが表示されてて、それをタップすると奇跡が使えたんだけど。

「えーと。奇跡、奇跡のアイコン……」

 画面をいじりながら探してたら、スマホから新しい操作パネルが飛び出た。
 パネルには奇跡のアイコンと、その下に小難しい呪文のような文章が書いてある。

「これを読めばいいの?」

 スマホに聞いてみたら、体を前にふにふにと曲げて「うん」と頷くような仕草をした。へー。こういうのって詠唱っていうんだよな。ゲームではアイコンをタップするだけだったけど。

 試しに使ってみようかと思ってたら、カフェの前に一つ目ゴリラが五体ほど集まっているのが目に入った。ちょうどいいところに。昨日はよくもびびらせてくれたな! お前ら全員ブッ倒してやるからなあ!

「ここは俺がやる。みんなは下がってて」

 一度は言ってみたかったこのセリフ! 今の俺はこの世界に来て一番かっこいいんじゃないか!?
 みんなに背中を向け、若干にやつきながらパネルに表示された呪文を唱える。ああ~中二心をくすぐられるぅ~俺中三だけど~。

「闇夜にさざめく ついの夢
 無窮むきゅうに輝く あけの爪
 女神の命によりて 我が敵を 破砕せよ
 ――新星の鉄槌パラス・ティアーナ

 ……。
 …………。
 ………………なんも起こらねえじゃねえか!

 パネルをよく見たら、呪文の最後に矢印が出ていた。もしかして、呪文を唱えた後でこの矢印をスワイプすると発動するとか?
 試しに指先でシュッとしてみたら、目の前に光の魔法陣が現れた。おおっ、いいぞ、これぞファンタジーって感じ! やったぜ! と喜ぶ間もなく、魔法陣が回転してカッと光る。

「アーッ! 目が! 目がぁあああ!!!!」

 まぶしっっっ! 両手で目を押さえていたら、ジェットエンジンと雷を合わせたみたいなすさまじい爆音が響いた。耳も痛ぃいいいい!

 キーンとした耳鳴り以外、何も聞こえなくなる。光が収まって視界が戻ると、土煙が俟っていた。
 咳き込みながら周囲を見る。一つ目ゴリラどころか、後ろにあったカフェも爆撃を受けたみたいに倒壊していた。

 まじかよ! 奇跡の力、やばすぎでは!?

 後ろを振り返ると、仲間たちはすっごい感激したみたいな顔でなにか喋っていた。多分俺を褒め称える感じのことを言ってくれてる気がするけど、瓦礫が崩れる音が地響きみたいに頭の中で反響するだけで、全然聞き取れない。
 これアレじゃん? 鼓膜がイっちゃってる系じゃん? 頭もくらくらするし。 目の周りがちかちかする。

「……あの、なにか回復アイテム的なものってありませんか……?」

 自分の技でダメージ食らうとか。神なのにかっこ悪くてすいません……。

 とりあえず、俺にもすごい技が使えるということと、回復アイテムのポーションがくそまずいけどよく効くということがわかった。
 あと俺の罪状がどんどん重くなっていきますね。火事場泥棒に建築物損壊……それについては今は考えないことにしよ……。


 気を取り直してドームに向かう。
 総合案内所のあるゲートの前までたどり着くと、奥の方からモンスターの咆哮や爆発音が聞こえてきた。明らかにこの中で戦闘が行われている。

 様子を見ていたら、スマホがポケットから飛び出して俺の肩によじ登り、目の前に光の操作パネルを出した。そこには《 レイドボスに挑戦しますか? はい/いいえ 》という表示が出ていた。

「おお~! レイドボスだって!」

 今までの敵とは違って、同盟のメンバー全員で強敵と戦うことになるはずだ。
 仲間たちは全員きりりと表情を引き締め、決戦に挑む気概を高めていた。

「いよいよ決戦ですね」
「ガツンとかましたろうぜ!」

 リュカとハオシェンが盛り上がっている。アルシュは何も言わないけど、好戦的に口の端を吊り上げている。
 よし。ここまで来たら行くっきゃないな。

 でも――もし、ボスを倒すことで元の世界に戻れる仕組みだったら。
 元の世界に帰れたら、またこの世界にやってこられるかどうかわからない。みんなと一緒にいられるのはこれが最後になるかもしれない。

「……ここまで俺を連れてきてくれて、ありがとう」

 仮定の話だけど、一応先にお礼を言っておく。

「ニーナの御許で戦えることを誇りに思います」
「よっしゃ、期待してくれよな!」
「ニーナに勝利を」

 みんなそれぞれ応えてくれる。
 まだ一日だけだけど、俺の為に力を尽くしてくれた。
 みんなの為にも、ちょっとは神様らしくしないとな。

「じゃあ、行こう!」

 俺は気合を入れてパーカーのフードをかぶり、操作パネルに表示された《 はい 》をタップした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
旧題:神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜を改題し、本日2026/3/9発売です!書籍は2026/3/11に発売(予約受付中)です! イラストは、にとろん様です。 よろしくお願い致します! ※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
 2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。  死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。  命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。  自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...