歩きスマホしてたら異世界に迷い込んじゃったけど世界って救う必要ある?

るき

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Chapter1

16 ステータスウィンドウ

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 目の前に光のゲートが現れる。ここをくぐるとレイドボスに挑戦できるっぽい。
 リュカを先頭にして、俺も続く。

「ニーナ! 危ない!」

 ゲートを通り抜けるなりリュカに庇われる。俺たちの真横の壁に何かが勢いよく叩きつけられ、どさりと床に転がる鈍い音がした。
 おおお早速敵の登場か!? リュカの背中からちらりと顔を出して確認してみると、吹っ飛んできた「何か」は、モンスターではなく人だった。

「おわあああ! 大丈夫ですか!!!!」

 急いで駆け寄る。頭から血を流した人は苦しげな顔をしているけど、俺の声に反応してすぐに上半身を起こした。でも片足がおかしな方向に曲がっている。めちゃくちゃ大怪我じゃんやばい!

「――貴殿は不可侵の掟を知らないのか?」

 その人は自分の怪我よりも俺が声を掛けたことに驚いたようだった。

「えっ!? あ、すいません、俺新人で……!」

 そういう掟があんの!? 仲間たちを振り返ると、俺のすぐ近くでリュカがおろおろしていた。そういえば昨日飯を食いに行く途中でそんな話を聞いた気がするけど、腹が減りすぎて頭に入ってなかった。毎度ごめん。

「いや、気持ちは嬉しい。神が為、世界の平穏の為、共に力を尽くそう」

 そう言うと、その人は祈りを捧げる仕草をした。すると体全体が淡く発光し、頭から流れていた血が光の粒になって消えた。足の怪我も治り、所々焦げたり破れたりしていた服まで元に戻った。

 あっ、この人知ってる!
 リリア姐さんが推してるめっちゃかわいい女性キャラ、ヒーラーのアンスマーリンだ!
 水色のショートボブに、羊のような巻き角。聖職者っぽいローブ。もうリュカを見て慣れたと思ったけど、この人も綺麗すぎて目が痛い。金色の瞳がぼんやり光って見えるのは美人特有の目力なのか?

 アンスマーリンは俺を励ますみたいに一瞬だけ笑みを浮かべ、すぐに戦場へ駆け戻っていった。

「よし、俺たちも――」

 俺たちも戦うぞ! と思ったけども。
 アンスマーリンが向かった先には。なんか。やばい。めちゃくちゃでっかい、鱗のようなもので覆われた何かが、赤黒い霧の中でのたうっている。

「………………まずは様子を見よう!」

 いやべつにびびってませんけど。勝負の前に相手のデータを集めるのも戦いのうちじゃないですか。

 瓦礫の山を避けつつ迂回して、全体が見渡せる場所まで移動する。ドームの天井に穴が開いているせいで、中はそれほど暗くはない。
 他の教団の誰かがアビリティを使ったのか、霧が晴れる。おかげで敵の全体が見えた。

「う、うわぁ……!」

 体の大きさは鎌倉の大仏ぐらいだろうか。見た目はコウモリの羽が生えたトカゲ。ドラゴンっぽいなにか。でも全然かっこよくない。やたらとでかい頭。大きく開いた口からでたらめに飛び出している牙。四つある目はそれぞれ独立した生き物みたいにぎょろぎょろと動き回っている。

 ――グロい。おぞい。トラウマになるレベルで気持ち悪い。
 子供が見たらおしっこ漏らす。俺はもう十五歳ですし大人ですから耐えられますけども。ほんとちびってなどいませんけども。問題ありませんけども。

 グロきもドラゴンの周囲には他の教団のキャラクターたちが大勢集まって戦っていた。

「アンスマーリン多っ!」

 俺から見える範囲で十人。さっき俺と会話したアンスマーリンもあの中にいるのだろうか。ちょっとずつ装備が違うけれど、全然見分けがつかない。
 同じキャラが複数存在してるのって変な感じがするけど、この世界ではこれが普通なんだろうな。

「誰がどこの教団のキャラなのかわからんな……」

 俺の言葉に反応したのか、ポケットの中に突っ込んでいたスマホがもごもごと動いている。なんだと思ったら目の前がふわっと明るくなって、キャラクターそれぞれに小さなウィンドウのようなものが表示されて見えるようになった。

「あっ、ゲームと同じやつだ!」

 小さなウィンドウにはキャラクターの名前とレベル、HPゲージとSPゲージ、必殺技アイコン、アビリティアイコンが表示されている。なんだ! あるんじゃんステータスウィンドウ!

「ねえリュカ、この名前とかが書いてある窓みたいなのってリュカたちにも見えてる?」
「はい、私たちの身分や生命力を明示してくださる『神の眼』のことですね」

 リュカは目を閉じ、指先でまぶたをすっと撫でた。目を開けると、紫色の瞳が明るく光っていた。アルシュとハオシェンも似たような仕草をした。やっぱり同じように瞳が光る。
 そういえば戦闘中にみんな目が光ってたかも。イケメン特有のオーラかと思ってた……。

「私からは、ここにニーナの生命力が数値となって表示されているのが見えております」

 リュカが指差したのは俺の真横。みんなと同じく、俺にもウィンドウが出ていた。

「へえ、俺にも出……なんだこれ!」

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
 ニーナ・チョココロニー Lv.12
 HP 192
 SP 0%
 必殺技:陽キャのふり
 アビリティ:二軍のエース
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 突っ込みどころ多いな!?
 HP低すぎだし! 「陽キャのふり」ってなんだよ! そりゃクラスでは陰キャだと思われないようにちょい無理して明るく振舞ってるとこあるけど! それが必殺技ってどういうこと!?
 あとアビリティの「二軍のエース」って! 流行ってるからっていう理由だけでサッカー部に入って万年補欠状態なのを自嘲して言ってたやつじゃん! どんな効果があるんだよ!?

 それに、名前。「ニーナ・チョココロニー」って書いてあるんだけど。恐るおそるみんなのウィンドウをよく見たら、三人とも名前の後に「チョココロニー」がついていた。ああ~……教団名だけじゃなく、まさかこんな苗字的な扱いになるとは……。

 後悔しつつ他の教団のキャラクターたちを見る。「アンスマーリン・おぽんちくるみ」「レイラ・全裸体育祭」「ユエリン・わきおにぎり」などなど。

 ――チョココロニーってそんな悪い名前じゃないな?

 俺から見て一番右にいるアンスマーリンには「アンスマーリン・リリア」と表示されていた。つまり、リリア姐さんが操作している、リリア教団のキャラクターってことか。

 敵のドラゴンにもステータス表示が出ている。遠くてもちゃんと拡大して見えるのがありがたい。
 名前は「カドメイア・ドラゴン」。HPは「???」になっている。でも俺たちが来る前から攻撃を受けているはずなのに、ゲージが全然減っていないのはなんでだ?

 俺がステータス表示に気を取られている間に、前線で戦っていたキャラクターたちが一斉に散開してドラゴンから距離をとった。
 おっ。もしかして総攻撃が始まるのか!?
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