17 / 56
Chapter1
17 決戦! レイドボス
しおりを挟む戦線にいるキャラクターたちが、一斉に祈るような仕草をした。その直後、敵以外の全員が淡い緑色の光や青い光に包まれる。
《 リリア教団が“聖乙女の衣”を使用:ステータス異常【毒】を無効化(1回) 》
《 しまパン教団が“彷徨う呪刃”を使用:カウンター効果を追加(2ターン) 》
《 kokoro教団が“獣櫻武陣”を使用:物理防御120%UP(3ターン) 》
《 全裸体育祭教団が“煌く錬華”を使用:物理攻撃150%UP(1ターン) 》
《 リリア教団が“七星守護壁”を使用:魔法防御120%UP(3ターン) 》
《 おぽんちくるみ教団が“ミュー・ミュー・ダンス”を使用:魔法攻撃150%UP (1ターン) 》
《 おぽんちくるみ教団が“耽溺の鞭”を使用:必殺技の効果が1.5倍(1ターン) 》
《 全裸体育祭教団が“導きの六連星”を使用:即座に必殺技使用可能 》
視界の左下にワーッと文章が流れて少しびびる。「神の眼」のおかげでステータスの他に戦闘のログが表示されるようになったのか。早すぎて半分も読めなかったけど、これも便利だな。
自分のステータスウィンドウを確認すると、バフを示すアイコンがいくつも追加されていた。今はレイドバトル中だから、他の同盟のキャラクターにもアビリティの効果が適用される、っていうことか。ありがたい。
味方にバフを盛ったように、次は敵にデバフが盛られていく。防御力低下や攻撃力低下、眩暈痺れ魅了病原菌混乱などなど。状態異常の見本帳みたいだ。
キャラクターたちの統制の取れた動きに見とれていたら、ドームの天井――大きな穴の開いた辺りに複数の魔法陣が浮かび上がった。レイドバトルに参加している同盟のプレイヤーたちが、タイミングを合わせて奇跡を起こそうとしている。俺がさっきぶっ放したやつとは模様の複雑さが違う。それぞれが回転して、ドラゴンに向かって様々な色の光が放たれる。
「おわわわ!!!!」
すさまじい光と轟音。遅れてやってきた暴風によろけそうになって、リュカに庇われる。
リュカの背中から少しだけ顔を出して様子を見る。ドラゴンは背中のうろこが剥がれ、地面に這いつくばるような姿勢で完全に動きを止めていた。
アンスマーリン・リリアが右手を振り上げてドラゴンに向ける。それを合図に、いかにも強そうなキャラクターたちが一斉にドラゴンめがけて攻撃を放った。必殺技が重なり、ドラゴンに直撃する。頭がぐしゃりと半分潰れ、片足と尻尾も千切れて飛ぶ。どす黒い体液が地面に撒き散らされる。
「うおお! すげえ!」
こんなの即死でしょ。もう俺たちの出番はなさそうだな、と思ったけれど。HPゲージは10%程度しか減っていない。
――まじで? 今ので10%!?
《 カドメイア・ドラゴンが“搾手+++”を使用:状態異常回復 》
《 カドメイア・ドラゴンが“哭哭+++”を使用:HP回復 》
《 カドメイア・ドラゴンの“腐快+++”が発動:自動反撃(防御貫通) 》
視界の端に、今度は敵の行動が表示される。同時にドラゴンの状態異常を示していたアイコンが全てはじけ飛んで消えた。つぶれた頭部がぼこぼこと膨れ上がり、何事もなかったかのように元に戻った。必殺技を放ったキャラクターたちはすでに再生し終えていた尻尾でなぎ払われ、吹っ飛ばされてしまった。
そんなのアリかよ! と俺が叫ぶ間もなく、ドラゴンの追撃が続く。
攻撃を受けたキャラクターが苦悶のうめき声をあげるのを見下すように、ドラゴンは顔を真上に向けた。痰が絡んだような、泥がごぼごぼと煮え立つような、嫌な音が響く。
《 カドメイア・ドラゴンが“嘲毒+++”を使用:全体に状態異常【猛毒】を付与(蓄積) 》
その表示が出た瞬間、俺の目の前は真っ白になった。
「ニーナ、息を止めてください!」
リュカがそう叫んだけれど、俺は既にリュカのマントに包まれていたし、リュカが俺の口元をぐっと抑えているから息をしたくてもできない。
土石流が押し寄せているみたいな轟音が響く。ドラゴンが毒を吐いたらしい。呼吸を止めていても、皮膚がひりひりするような嫌な感覚がする。
「――蓄積する毒か」
「ああ、何回も浴びたらやばいな。腐食の効果もあるんじゃねえか?」
口元を覆いながら話しているのか、アルシュとハオシェンのくぐもった声が聞こえる。
何も見えないけれど、ステータスウィンドウだけは見える。毒を防ぐバフは機能したみたいだし、そろそろ息をしても大丈夫なのでは? リュカ? リュカさん!? 俺このままだと死にますけど!?
「んんー! んんんん!!!!」
ギブアップする時みたいにリュカの手をタップしたらようやく放してもらえた。
「ニーナ、防毒の加護があるとはいえ、穢れた空気が立ち込めています。まだお口元を塞がれた方がよろしいかと」
「いや俺そんな肺活量ないから! 毒で死ぬ前に窒息死する! っていうか前線で戦ってたキャラは――!?」
リュカのマントから出てグラウンドの方を見ると、赤黒い霧が充満していた。その中でドラゴンがうごめいている。最初に見たのと同じ光景だった。
――あそこまでやって、また振り出しに戻ったのか。
視界の端では、相変わらず戦況が表示されている。誰かがアビリティを使う。毒霧が消えて視界が晴れたけれど、半数以上のキャラクターたちが倒れている。
敵の攻撃が直撃したキャラクターは、明らかに助からないほどの大怪我を負っているのが遠目にもわかる。もう瓦礫と見分けのつかなくなった塊が、光になって消えていく。
いくつもの教団が全滅していく様子を、俺はただぼんやり眺めることしかできなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。
死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。
命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。
自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる