歩きスマホしてたら異世界に迷い込んじゃったけど世界って救う必要ある?

るき

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Chapter1

17 決戦! レイドボス

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 戦線にいるキャラクターたちが、一斉に祈るような仕草をした。その直後、敵以外の全員が淡い緑色の光や青い光に包まれる。

《 リリア教団が“聖乙女の衣エル・ヴァリス”を使用:ステータス異常【毒】を無効化(1回) 》
《 しまパン教団が“彷徨う呪刃”を使用:カウンター効果を追加(2ターン) 》
《 kokoro教団が“獣櫻武陣じゅうおうむじん”を使用:物理防御120%UP(3ターン) 》
《 全裸体育祭教団が“煌く錬華リリスタニア”を使用:物理攻撃150%UP(1ターン) 》
《 リリア教団が“七星守護壁セスファリテ”を使用:魔法防御120%UP(3ターン) 》
《 おぽんちくるみ教団が“ミュー・ミュー・ダンス”を使用:魔法攻撃150%UP (1ターン) 》
《 おぽんちくるみ教団が“耽溺の鞭”を使用:必殺技の効果が1.5倍(1ターン) 》
《 全裸体育祭教団が“導きの六連星ハイレンライヒェ”を使用:即座に必殺技使用可能 》

 視界の左下にワーッと文章が流れて少しびびる。「神の眼」のおかげでステータスの他に戦闘のログが表示されるようになったのか。早すぎて半分も読めなかったけど、これも便利だな。

 自分のステータスウィンドウを確認すると、バフを示すアイコンがいくつも追加されていた。今はレイドバトル中だから、他の同盟のキャラクターにもアビリティの効果が適用される、っていうことか。ありがたい。

 味方にバフを盛ったように、次は敵にデバフが盛られていく。防御力低下や攻撃力低下、眩暈痺れ魅了病原菌混乱などなど。状態異常の見本帳みたいだ。

 キャラクターたちの統制の取れた動きに見とれていたら、ドームの天井――大きな穴の開いた辺りに複数の魔法陣が浮かび上がった。レイドバトルに参加している同盟のプレイヤーたちが、タイミングを合わせて奇跡を起こそうとしている。俺がさっきぶっ放したやつとは模様の複雑さが違う。それぞれが回転して、ドラゴンに向かって様々な色の光が放たれる。

「おわわわ!!!!」

 すさまじい光と轟音。遅れてやってきた暴風によろけそうになって、リュカに庇われる。

 リュカの背中から少しだけ顔を出して様子を見る。ドラゴンは背中のうろこが剥がれ、地面に這いつくばるような姿勢で完全に動きを止めていた。

 アンスマーリン・リリアが右手を振り上げてドラゴンに向ける。それを合図に、いかにも強そうなキャラクターたちが一斉にドラゴンめがけて攻撃を放った。必殺技が重なり、ドラゴンに直撃する。頭がぐしゃりと半分潰れ、片足と尻尾も千切れて飛ぶ。どす黒い体液が地面に撒き散らされる。

「うおお! すげえ!」

 こんなの即死でしょ。もう俺たちの出番はなさそうだな、と思ったけれど。HPゲージは10%程度しか減っていない。
 ――まじで? 今ので10%!?

《 カドメイア・ドラゴンが“搾手+++”を使用:状態異常回復 》
《 カドメイア・ドラゴンが“哭哭+++”を使用:HP回復 》
《 カドメイア・ドラゴンの“腐快+++”が発動:自動反撃(防御貫通) 》

 視界の端に、今度は敵の行動が表示される。同時にドラゴンの状態異常を示していたアイコンが全てはじけ飛んで消えた。つぶれた頭部がぼこぼこと膨れ上がり、何事もなかったかのように元に戻った。必殺技を放ったキャラクターたちはすでに再生し終えていた尻尾でなぎ払われ、吹っ飛ばされてしまった。

 そんなのアリかよ! と俺が叫ぶ間もなく、ドラゴンの追撃が続く。
 攻撃を受けたキャラクターが苦悶のうめき声をあげるのを見下すように、ドラゴンは顔を真上に向けた。痰が絡んだような、泥がごぼごぼと煮え立つような、嫌な音が響く。

《 カドメイア・ドラゴンが“嘲毒+++”を使用:全体に状態異常【猛毒】を付与(蓄積) 》

 その表示が出た瞬間、俺の目の前は真っ白になった。

「ニーナ、息を止めてください!」

 リュカがそう叫んだけれど、俺は既にリュカのマントに包まれていたし、リュカが俺の口元をぐっと抑えているから息をしたくてもできない。
 土石流が押し寄せているみたいな轟音が響く。ドラゴンが毒を吐いたらしい。呼吸を止めていても、皮膚がひりひりするような嫌な感覚がする。

「――蓄積する毒か」
「ああ、何回も浴びたらやばいな。腐食の効果もあるんじゃねえか?」

 口元を覆いながら話しているのか、アルシュとハオシェンのくぐもった声が聞こえる。
 何も見えないけれど、ステータスウィンドウだけは見える。毒を防ぐバフは機能したみたいだし、そろそろ息をしても大丈夫なのでは? リュカ? リュカさん!? 俺このままだと死にますけど!?

「んんー! んんんん!!!!」

 ギブアップする時みたいにリュカの手をタップしたらようやく放してもらえた。

「ニーナ、防毒の加護があるとはいえ、穢れた空気が立ち込めています。まだお口元を塞がれた方がよろしいかと」
「いや俺そんな肺活量ないから! 毒で死ぬ前に窒息死する! っていうか前線で戦ってたキャラは――!?」

 リュカのマントから出てグラウンドの方を見ると、赤黒い霧が充満していた。その中でドラゴンがうごめいている。最初に見たのと同じ光景だった。

 ――あそこまでやって、また振り出しに戻ったのか。

 視界の端では、相変わらず戦況が表示されている。誰かがアビリティを使う。毒霧が消えて視界が晴れたけれど、半数以上のキャラクターたちが倒れている。

 敵の攻撃が直撃したキャラクターは、明らかに助からないほどの大怪我を負っているのが遠目にもわかる。もう瓦礫と見分けのつかなくなった塊が、光になって消えていく。

 いくつもの教団が全滅していく様子を、俺はただぼんやり眺めることしかできなかった。
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