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Chapter1
18 死の意味
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「ニーナ、俺らはいつでも行けるけど?」
出番が待ちきれないというように、ハオシェンは拳を手のひらに打ち付けた。
「今の見てた!?!?!?」
「え? 見てたけど? あんなデカくて強い相手なら戦い甲斐がありそうだよね」
「いやだって死ぬでしょあんなのと戦ったら!!!!」
古参の人たちが敵わないのに。そりゃハオシェンたちだって強いけど、いくらなんでもレベル差がありすぎる。
及び腰になる俺に、ハオシェンはなんでもないことのように首をかしげた。
「そりゃ死ぬだろうけど。そしたらニーナが生き返らせてくれるだろ?」
「それは……そうかもしんないけど……」
俺が生き返らせるっていうか、ゲームのシステムで生き返ることが出来るんだけど。
ハオシェンだけではなく、リュカとアルシュにも怯んだ様子は一切ない。
――そっか。死の意味が、俺の世界とは違うのか。
そりゃそうだ。ここはゲームの世界なんだから。この世界では俺の考えの方がずれてるんだよな、きっと。
一人で納得してたら、ゲートの方から大勢の足音が聞こえてきた。さっき全滅した教団が復活して、またレイドボス戦に戻ってきているようだった。勇ましく観客席からグラウンドへ飛び出し、再びドラゴンと対峙する。
あのキャラクターたちは、俺達がここにたどり着くまでに、何度も死んで、同じ数だけ生き返って戦ってるんだろうな。
「ニーナ。どうか私たちに、ニーナの為に戦う栄誉をお与えください」
リュカが右手を胸に沿え、俯いた俺と視線を合わせるようにかがんだ。目を合わせると、戦いに臨む高揚感が俺にも伝わってきた。
でも、なんだろう。死を恐れないリュカの純粋な眼差しに、気持ちがざらっとする。今まで考えたことのない、言葉に出来ない、変な感じ。
――まあ、みんなが戦いたいって言ってるんだし。深く考えなくてもいいか。
「よし! じゃあ戦ってきてください!」
俺の言葉に、三人の心強い返事が重なる。
「ニーナに勝利を!」
リュカの声を合図に、一斉に敵に向かって駆けていく。
「あのでも、なるべく怪我しないで! 絶対死なないで! 作戦は『命を大事に』でお願いします!」
背中に向かって叫ぶと、心強い仲間たちは心得たとばかりに片手を上げて応えた。
俺達がいた一階スタンドの一塁側からバックスクリーンまで、瞬く間に接敵する。
一番素早く動いたのはアルシュだった。ドラゴンの目の前に躍り出て両腕を開く。広げた手の間に、アビリティで複製されたナイフが何本も現れる。鋭い刃が一斉に首めがけて飛んでいくが、硬いうろこに跳ね返されてしまった。
ドラゴンが煩わしそうに羽を動かす。暴風が瓦礫を巻き上げ、石の雨がアルシュを襲う。リュカが前進して盾で防ぎ、ドラゴンの注意が正面に向いている隙にハオシェンが側面から必殺技を叩き込む。息の合った連係プレーが決まった。
ドラゴンは反動をつけて尾を振り回すが、三人とも既に攻撃が届く範囲外まで下がっている。
「おおっ、やっぱみんなすげえ!」
それでもドラゴンのHPゲージが目に見えて減ることはないのだけれど。
リュカたちが下がった後、待ち構えていた他の教団のキャラクターたちが前線に躍り出る。投擲や魔法の弾丸などの援護を受けながら、近距離から直接打撃を叩き込む。
次から次へ、隙間なく波状攻撃を受けて、ドラゴンのHPゲージが徐々に減り始める。しかし次の瞬間にはすぐさま回復してしまうし、えげつない素早さで反撃してくる。
なんなの? あいつチートなの?
イラッとしながらドラゴンのステータスウィンドウを睨んでいたら、スマホからもう一枚パネルが出てきた。
「これってあの敵の詳しいステータス?」
気が利くじゃん、助かる~。
戦闘中の簡易的なステータス表示よりも、使う攻撃の種類や効果が詳細に書いてある。
ここに攻略の糸口があればいいけど……? なんだこれ。この《 【特殊強化】”女王の下僕”:三回連続行動が可能/全てのアビリティを強化 》ってやつ。
まじでチートやないかいこんなもん!!
「なあ、この特殊強化って剥がせない? この“二軍のエース”っていうアビでなんとかなったりしない?」
スマホを掴んで聞いてみる。スマホは俺の手からジャンプして、そのままポケットに潜り込んだ。
やっぱダメか……二軍のエースじゃなぁ……。
せめて「奇跡」を使えたらいいのに。さっき雑魚相手に実験しないで温存しておけば良かった。いやリリア姐さんたちの「奇跡」が効かないんだから、俺のなんか屁のつっぱりなんだけど。
攻略の制限時間も残りあと少し。
俺の為に戦ってくれているみんなには悪いけど、もう諦めた方がいいんだろうな。
でも、もしあれを倒せなかったら俺は元の世界に戻れないっていうことだったとしたら。
「……無理ゲーじゃねえ?」
俺の呟きをかき消すみたいに、ドラゴンがけたたましく吼える。伏せをして尻だけを高く掲げるような姿勢をとったと思ったら、長い尻尾を勢いよく地面にたたきつけた。
「おわわわわ!」
すさまじい地響き。とても立っていられない。しゃがみ込んでずるずると地面を這いながら座席の影に隠れる。
みんなは今の攻撃を避けられただろうか。地響きが止んでから恐るおそる顔を出すと、ドラゴンが尻尾でなぎ払った瓦礫がこちらに向かって飛んでくるのが見えた。
「うわわわわわ!!!!」
四つんばいになったまま逃げると、さっきまで俺がいた場所に鉄骨が落下した。
あっっっぶねえ! まじで危なかった。鉄骨が床に衝突した時の轟音だけで心臓が止まりそうになったのに、こんなもん直撃したらどうにもならん。ただちに死ぬ。即死。
尻餅をついた姿勢でガクブルしながら後ずさったら、何かにぶつかった。
「――――!」
瓦礫と一緒に、吹き飛ばされてきていた、他の教団のキャラクター。
もう人の形をしていない。
ステータスウィンドウの「HP:0」という数値が示す、あまりに酷い状態を見て、俺は、吐いてしまった。
出番が待ちきれないというように、ハオシェンは拳を手のひらに打ち付けた。
「今の見てた!?!?!?」
「え? 見てたけど? あんなデカくて強い相手なら戦い甲斐がありそうだよね」
「いやだって死ぬでしょあんなのと戦ったら!!!!」
古参の人たちが敵わないのに。そりゃハオシェンたちだって強いけど、いくらなんでもレベル差がありすぎる。
及び腰になる俺に、ハオシェンはなんでもないことのように首をかしげた。
「そりゃ死ぬだろうけど。そしたらニーナが生き返らせてくれるだろ?」
「それは……そうかもしんないけど……」
俺が生き返らせるっていうか、ゲームのシステムで生き返ることが出来るんだけど。
ハオシェンだけではなく、リュカとアルシュにも怯んだ様子は一切ない。
――そっか。死の意味が、俺の世界とは違うのか。
そりゃそうだ。ここはゲームの世界なんだから。この世界では俺の考えの方がずれてるんだよな、きっと。
一人で納得してたら、ゲートの方から大勢の足音が聞こえてきた。さっき全滅した教団が復活して、またレイドボス戦に戻ってきているようだった。勇ましく観客席からグラウンドへ飛び出し、再びドラゴンと対峙する。
あのキャラクターたちは、俺達がここにたどり着くまでに、何度も死んで、同じ数だけ生き返って戦ってるんだろうな。
「ニーナ。どうか私たちに、ニーナの為に戦う栄誉をお与えください」
リュカが右手を胸に沿え、俯いた俺と視線を合わせるようにかがんだ。目を合わせると、戦いに臨む高揚感が俺にも伝わってきた。
でも、なんだろう。死を恐れないリュカの純粋な眼差しに、気持ちがざらっとする。今まで考えたことのない、言葉に出来ない、変な感じ。
――まあ、みんなが戦いたいって言ってるんだし。深く考えなくてもいいか。
「よし! じゃあ戦ってきてください!」
俺の言葉に、三人の心強い返事が重なる。
「ニーナに勝利を!」
リュカの声を合図に、一斉に敵に向かって駆けていく。
「あのでも、なるべく怪我しないで! 絶対死なないで! 作戦は『命を大事に』でお願いします!」
背中に向かって叫ぶと、心強い仲間たちは心得たとばかりに片手を上げて応えた。
俺達がいた一階スタンドの一塁側からバックスクリーンまで、瞬く間に接敵する。
一番素早く動いたのはアルシュだった。ドラゴンの目の前に躍り出て両腕を開く。広げた手の間に、アビリティで複製されたナイフが何本も現れる。鋭い刃が一斉に首めがけて飛んでいくが、硬いうろこに跳ね返されてしまった。
ドラゴンが煩わしそうに羽を動かす。暴風が瓦礫を巻き上げ、石の雨がアルシュを襲う。リュカが前進して盾で防ぎ、ドラゴンの注意が正面に向いている隙にハオシェンが側面から必殺技を叩き込む。息の合った連係プレーが決まった。
ドラゴンは反動をつけて尾を振り回すが、三人とも既に攻撃が届く範囲外まで下がっている。
「おおっ、やっぱみんなすげえ!」
それでもドラゴンのHPゲージが目に見えて減ることはないのだけれど。
リュカたちが下がった後、待ち構えていた他の教団のキャラクターたちが前線に躍り出る。投擲や魔法の弾丸などの援護を受けながら、近距離から直接打撃を叩き込む。
次から次へ、隙間なく波状攻撃を受けて、ドラゴンのHPゲージが徐々に減り始める。しかし次の瞬間にはすぐさま回復してしまうし、えげつない素早さで反撃してくる。
なんなの? あいつチートなの?
イラッとしながらドラゴンのステータスウィンドウを睨んでいたら、スマホからもう一枚パネルが出てきた。
「これってあの敵の詳しいステータス?」
気が利くじゃん、助かる~。
戦闘中の簡易的なステータス表示よりも、使う攻撃の種類や効果が詳細に書いてある。
ここに攻略の糸口があればいいけど……? なんだこれ。この《 【特殊強化】”女王の下僕”:三回連続行動が可能/全てのアビリティを強化 》ってやつ。
まじでチートやないかいこんなもん!!
「なあ、この特殊強化って剥がせない? この“二軍のエース”っていうアビでなんとかなったりしない?」
スマホを掴んで聞いてみる。スマホは俺の手からジャンプして、そのままポケットに潜り込んだ。
やっぱダメか……二軍のエースじゃなぁ……。
せめて「奇跡」を使えたらいいのに。さっき雑魚相手に実験しないで温存しておけば良かった。いやリリア姐さんたちの「奇跡」が効かないんだから、俺のなんか屁のつっぱりなんだけど。
攻略の制限時間も残りあと少し。
俺の為に戦ってくれているみんなには悪いけど、もう諦めた方がいいんだろうな。
でも、もしあれを倒せなかったら俺は元の世界に戻れないっていうことだったとしたら。
「……無理ゲーじゃねえ?」
俺の呟きをかき消すみたいに、ドラゴンがけたたましく吼える。伏せをして尻だけを高く掲げるような姿勢をとったと思ったら、長い尻尾を勢いよく地面にたたきつけた。
「おわわわわ!」
すさまじい地響き。とても立っていられない。しゃがみ込んでずるずると地面を這いながら座席の影に隠れる。
みんなは今の攻撃を避けられただろうか。地響きが止んでから恐るおそる顔を出すと、ドラゴンが尻尾でなぎ払った瓦礫がこちらに向かって飛んでくるのが見えた。
「うわわわわわ!!!!」
四つんばいになったまま逃げると、さっきまで俺がいた場所に鉄骨が落下した。
あっっっぶねえ! まじで危なかった。鉄骨が床に衝突した時の轟音だけで心臓が止まりそうになったのに、こんなもん直撃したらどうにもならん。ただちに死ぬ。即死。
尻餅をついた姿勢でガクブルしながら後ずさったら、何かにぶつかった。
「――――!」
瓦礫と一緒に、吹き飛ばされてきていた、他の教団のキャラクター。
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