歩きスマホしてたら異世界に迷い込んじゃったけど世界って救う必要ある?

るき

文字の大きさ
19 / 56
Chapter1

19 必殺! 陽キャのふり

しおりを挟む
「ニーナ! どうか、どうかお気を確かに……!」

 肩を揺さぶられて我に返る。
 いつの間にか目の前に、必死な顔をしたリュカがいた。

「あ……!? えっと、俺は……どうしたんだっけ……!?」
「お怪我はございませんか!?」

 リュカは一通り俺の体を点検して、最後にステータスを見て無傷であることを確認すると、ようやくほっとした顔をして俺の口元を拭ってくれた。

 アルシュとハオシェンも俺の近くにいて、ドラゴンの攻撃を警戒している。俺を心配してみんな戻ってきてくれたらしい。

 俺のすぐ近くで死んでいたキャラクターは、既に光になって消えていた。

「あ……あはは、ゴメン大丈夫! ちょっと驚いただけで、もうなんともないから心配しないで!」

 空元気を出して、笑いながら立ち上がる。みんなは前線で戦ってるのに、なんにもしてない俺がびびって腰を抜かしてるとか。恥かしすぎる。

「――それよりみんなの方が怪我してるじゃん!」

 よく見たら、リュカの左腕がだらりと不自然に下がっていた。「全然、まだいける」と笑っているハオシェンは、わき腹から血を流している。アルシュは毒を食らってしまったのか、時折苦しげに咳き込んでいた。ステータスに表示されているHPも、全員半分以上減っている。

 やばい超痛そう! 急いでポーションを使うと、見る間に傷口がふさがっていった。

「ありがとう、ニーナ。そしたらもういっちょいってくるか!」
「いや、ちょっと待って!」

 勇ましく先陣を切って飛び出していこうとするハオシェンの手首を掴んで止める。

「うん? なんか作戦?」
「作戦っていうか……ほら、もう時間がないし……」

 俺たちの話を聞いてたのか、スマホが操作パネルを出す。表示されている制限時間はもう三十分を切っていた。

「そうですね、闇雲に挑んでいては勝機を逸してしまいますね」
「腹の辺りが弱そうだ」
「腹か~。そういやずっと腹ばいになってるもんな。弱点があるとしたらそこしかねえか」
「あの巨体をうまくひっくり返せる機会があればよいのですが――」

 三人とも真剣に攻略法を探っている。
 もう時間がないし、これ以上戦っても意味がないから諦めようぜ! ……って思ったんだけど。そんなこと言える空気ではない。

「ニーナ、いかがなさいましたか」

 俺が言いにくそうにしているのを察したのか、リュカがふと俺に向き直る。

「あー、えっと……あのさ……レイドボスを倒せなかったら、どうなるのかなって思って」
「ダンジョンから悪しき者共があふれ出し、近隣の村が襲われることになるでしょう。なんとしても阻止しなくてはなりません」

 近隣の村。そういえば転送魔法でダンジョンに来た時、畑が見えた。あの村が被害を受けるのか。

「もし、村の人たちがモンスターに襲われて、死んじゃったとして……リュカたちみたいに生き返れるんだよね?」
「――いいえ、残念ながら。神の使徒たる我らならば復活の加護を受けることができるのですが、彼の者たちは……」

 リュカは悲しそうに首を振った。ハオシェンは気合を入れ直すように腕を回し、ドラゴンを睨みつける。

「だから俺達がここで踏ん張らねえとな」 
「もう時間がない」

 アルシュの表情は変わらないけれど、声の感じが焦っている。
 絶望的に力の差があるにもかかわらず折れない三人の眼差しから、俺は逃げるように目を逸らせた。

 リュカたちも、レイドバトルに挑んでいる他のキャラクターも全員、モンスターを倒して世界を平和にするためにここにいる。そういう設定だから。

 でもあの敵は絶対に倒せなくない?
 これ以上がんばっても、無駄なんじゃない?

「おい! 魔人がいるぞ!」

 背後から大声が聞こえて、驚いて振り返る。
 復活して再び戦場に舞い戻ってきた他の教団のキャラクターたちが集まって、俺たちの方を指差していた。

「えっ、魔人!? どこに!?」

 まじかよ! あのドラゴンだけでもとんでもなく強いのに、まだ他にも敵がいるのかよ!
 あわてながら周囲を見渡す。ドラゴンはレフトの方にいる。俺たちの近くに敵がいる気配はないけど、魔人? 魔人って――。

 はっとして頭を抑える。いつの間にかパーカーのフードがずり落ちて、角のない俺の頭が見えていた。

「あああああ! しまったぁああああ!」

 アルシュがすばやく俺のフードを戻してくれたけど、もう遅い。

「違います! この方は魔人ではなく、その……私の特別な方です!」

 俺に詰め寄る他の教団のキャラクターたちの前にリュカが立ちはだかり、俺を庇ってくれる。「私の特別な方」って言い方はどうなんですかとか突っ込んでる場合じゃない。

「貴殿らは魔人に魅了されているのか!?」
「なんということだ、神の使徒が魔人の手先に成り下がるなど!」
「え~っと違いまーす! この子は魔人じゃなくて俺らの仲間で、バカには見えない特別な角を持った子でーす!」

 ハオシェンが例によって怪しげな誤魔化しを口にするが、俺を糾弾する声は止まらない。

「へー、そうなんや……ってなるかいなボケェ!」
「そんな詭弁が通じると思うか! 貴殿は我らを愚弄しているのか!?」
「ええい、そこをどくのじゃ! どかねばそなたらごと打ち倒す!」
「やってみろ」

 ひえええやばい、こんな戦闘中に揉めるとか。てゆうか「やってみろ」つったのアルシュか!? 意外と好戦的だな!? 挑発すんのやめて!!

「あの! すいません! 俺は魔人じゃありません!」

 とにかく落ち着いて、誤解を解かないと。言葉が通じるんだから話せばわかる。
 そうだ! 今こそ必殺技「陽キャのふり」を使う時なのでは!? いつの間にかSPゲージも100%になってるし! いける!
 俺が必殺技を使うと強く念じると、アイコンがピキーンと光った。

「てか魔人とか草生えるんだけどwww あんま難しいこと考えないで楽しく行こうよ! 俺は魔人じゃなくてむしろ神だからみんなよろしく~☆」

 ウェーイ。

 全員ぽかんとした顔で俺を見る。おっ、いけた?

「……魔人を殺せ!!!!」

 ああああ! いけてなかった! むしろ火に油! しょせん陽キャの「ふり」だからなあ! ていうか陽キャだからってどんな場面でも受け入れられるなんてこたあねえわな!
 それよりスマホ! スマホを出さないと! 最初からこっちを見せればよかった!

 リュカの背中に隠れつつポケットを探っていたら、ドラゴンが咆哮を上げた。揉めていた全員の注意がそちらに逸れる。ドラゴンは後ろ足で立ち上がり、巨体に似つかわしくない速度でこちらめがけて突っ込んできた。
 あいつ走れんのかよ!
 俺たちの周りに集まっていたキャラクターたちがすばやく散開する。

「ニーナ!」

 ただひとり動けないでいる俺を、リュカが抱える。
 俺に理解できたのは、リュカが俺を抱えたまま跳躍したところまでだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
 2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。  死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。  命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。  自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

処理中です...