歩きスマホしてたら異世界に迷い込んじゃったけど世界って救う必要ある?

るき

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Chapter1

24 空夢の轍

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 反動をつけて起き上がり、制限時間を確認する。

 ――残りあと一分。

「二軍のエース」は効果が切れたけど、「空夢の轍」はまだ発動が続いている。
 時間がなくて焦るのに、不思議と確信があった。
 この力が、危機を乗り越える切り札になる。
 俺は目を閉じて、つかみどころのない感覚をとらえようと意識を集中した。

 ――聞こえてくる。

 声じゃない声。言葉じゃない言葉。
 漠然とした、気持ちのような、意思のようなものが、角を通して聞こえてくる。
 角がアンテナになって、リュカたちと繋がっているみたいだ。

 ――戦いたい。抗いたい。強くありたい。許されたい。解放されたい。諦めたくない。

 あえて表現するならそういう感じの、感情の断片が流れ込んでくる。
 中でも一番強く、揺るがないのは、「守りたい」という願い。

 もっとよく聴きたい。そう願うと、まぶたの裏に白い線のようなものが見えてきた。
 ほんのわずかに光り、か細くて、所々途切れている。それは小さな星が集まって形作られた道のようにも見えた。

 俺は、この道のことを、ずっと前から知っていたような気がする。子供の頃から、ずっと。

 光の道からぽとりとこぼれ落ちた小さな光に、反射的に手を伸ばす。
 目を開けると、俺の手の中に小さな星があった。

 これがなんなのか、どう使えばいいのかわからないまま、強く念じて、叫ぶ。

「行け! 願いを叶える力を、みんなに!」

 星が俺の手を離れ、弧を描いて飛んでいく。
 小さな流星は三つに分離して、前線で戦うリュカたちの頭上で弾け、光の輪に形を変えた。

 三人は唐突な変化にも一切怯まない。むしろ待っていたかのように、最前線へ躍り出た。

 ハオシェンが地面に這うように低く構え、目玉お化けの足を突き上げるようにして必殺技を放つ。

「命乞いは聞かねえ! 喰らえ! ――四獣真拳!」

 ゲームと同じセリフと技名叫んでくれた! イェーイ! かっこいい!!
 ハオシェンの拳がカッと光り、四頭の幻獣たちが現れる。ハオシェンの拳が目玉お化けの前足を吹き飛ばし、光の幻獣たちが四方から連撃を食らわせる。

 目玉お化けはしぶとく這い回り、元々頭があった場所から「ギィヤアアア!」と不快な叫び声を上げた。
 のたうち回りながら、使い物にならなくなった手足の代わりとばかりに触手を生やす。

 眼球から直接、黒くてブヨブヨとした蛇のような触手が無数に伸びていく。
 グロさを極めた触手がハオシェンを捉えるよりも、アルシュの攻撃の方が早かった。

「これが貴様の弱さの報いだ――シュドラ・レイ!」

 アルシュが大声出した!!!!
 いや驚くのはそこじゃない。俺の身の丈ぐらいある光の刃が何本も降り注ぎ、触手や尻尾に刺さる。目玉お化けは悲鳴をあげ、一瞬だけ体を硬直させた。

 その隙をリュカが見逃すはずがない。
 もう防御の必要もないというように、ただ一点を見据えて目玉お化けの真正面から切り込んでいく。
 頭上の光の輪が、リュカの想いに反応するみたいに、より一層強く輝く。

「願わくば、我が一撃が汝の救いにならんことを――焄蒿星槍ニル・エヴァリス!」

 俺には、その攻撃は稲妻のように見えた。
 巨大な眼球に青白い閃光が吸い込まれ、反対側に突き抜ける。
 周囲に立ち込める赤黒い霧が線条に晴れる。遅れて風を切り裂いたような音が届く。

 ――残り時間がゼロになる。

 目玉お化けはまぶたを閉じるように、肉の中に眼球を埋もれさせた。

 戦場が静まり返ったのは、ほんの一瞬だったと思う。

「ォオオオオオオオオ――――……!!!!」

 鼓膜が痛くなるぐらい不愉快な絶叫と共に、目玉お化けは噴水のように血しぶきを上げた。

 悔し紛れのように巨体をゆすり、あたりかまわず毒液を飛び散らせる。
 一番後方にいる俺にまで毒の飛沫が届いたけれど、ステータス異常防御の光に触れると「ジュッ」と蒸発するような音を立てて消えた。

 目玉お化けは自らの毒で腐り落ちていく。ボコボコと毒の沼に沈んでいくように溶けて、やがて全てが黒い霧になって消えた。
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